すべては「理由あってのデザイン」。それはなぜ?を追求しなければ仕事ははじまらない ―― GYAO 手塚瑛氏インタビュー

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Web・ゲーム業界のキーパーソンを特集する「Creator's File」Vol.18

第一線で活躍しているクリエイター達のリアルな声をお届けしています。自分とは異なった環境で働くクリエイター達の熱意や考え方を、ぜひ、あなたらしいキャリア形成のためにお役立てください。

株式会社GYAOはヤフー株式会社と共にYahoo! JAPANのサービスである映像サービス「GYAO!」を運営する企業で、国内における映像サービスの草分け的存在である。Web業界、ゲーム業界はもとより、クリエイターの転職、就職を目指す方々には、もはや説明の必要のない企業の一つであろう。

同社の事業部は主に広告営業、コンテンツ、プロダクトの3つの部門に分かれている。今回はそのプロダクト部門において、GYAO!のWebサービス全体のUI・UXデザインを手がける手塚瑛氏にインタビューをお願いした。UIの設計、ビジュアルデザインからコーディングまで、多彩な活躍を見せる手塚氏のクリエイターとして目指すものをインタビューで追ってみよう。

ヤフーからGYAOへの動きの中で、「なぜ?」と深掘りする自分の性格が、仕事をよりダイナミックに

GYAO ロゴ ── 今回はインタビューにご協力いただきありがとうございます。まずは手塚さんが現在のポジションでお仕事をされるまでのいきさつを教えてください。

手塚氏:私がGYAO!で仕事をすることになったのは2016年の10月から。2015年に新卒でヤフー株式会社に入社し、約1年半、Yahoo!メールのデザインをおこなっていました。昔からエンターティメントに関心があり、Yahoo!メールでの上司がGYAO!のサービスも兼務していたので、「エンタメをやってみたいんです」と希望するとそれが叶い、このGYAO!のサービスにジョインすることができました。

── 学生時代からデザイナーになりたいと考えていたのですか?

手塚氏:新卒の時には困っている人の役に立つこと、つまり「課題解決」ができる仕事がしたいと考えて就職先を探しましたね。大学ではWebサイトやパンフレットづくりなどの制作をおこなうサークルに所属して、さらに在学中の2年間はWebやグラフィックの制作会社でアルバイトをしていました。専門的に学ぶ機会はなかったのですが、このときの経験が、自分の「デザインをやりたい」という気持ちを明確にしてくれたのは間違いありません。

ヤフーを志望したのは、そんなデザインによる課題解決に取り組める企業だと思ったこと。そして、Web業界は企業の理念自体が新しく、若い人が活躍しやすい環境だとも考えていました。私は、「なぜ?」と思ったことをどうしてもそのままにできない性格です。ものづくりの上でも、自分が腹オチしないまま進行していくのは納得できないところがあります。だから年次やポジションに関係なくできるだけ自由に発言できる職場で仕事がしたい。そう思ったとき、Web業界がまず頭に浮かび、その中でもヤフーが自分のやりたいことのできる企業だと考えたのです。

── 就職活動をおこなった際、自分の強みだと考えたところはありますか?

手塚氏:今もそうですけど、スキル的な強みは特になかったと思っています。先にお話ししたアルバイト経験でWebデザインの基本スキルはなんとか身につけていましたが、大学での専攻は社会心理学で美大出身などではなく、デザインの基礎があるわけではありません。自分で自分を評価すると、「なんにでも挑戦してみる気はあるけれど、何かできるわけではない」そんな中途半端な存在だったと思います。

── 手塚さんがそれでも採用に至った理由はなんだと考えられますか?

手塚氏:当時採用を担当した人に、後日採用した理由を聞くことができました。私は面接で「デザインで課題解決をしたい」「困っている人がいたらそれを助けられる仕事がしたい」といいました。そしてそのためにはすべてにおいて「なぜ?」をそのままにすることなく、深掘りしていくことが必要だと考えているといったのです。

「スキルはまだまだ。でもその考え方はヤフーの方針に一致すると感じて採用を推した」採用担当者にはそういってもらえました。

手塚氏が働く上でやりたいと思っていたこと

  • 困っている人の助けになる「課題解決」のデザインに取り組めること
  • 経験や年齢に左右されず、自分の思いをストレートに発言できる職場で働くこと
  • 「なぜ?」を深掘りして、逃げたり先延ばしにしたりせず、課題の本質を見極めて解決に臨んでいくこと
  • その結果、多くの人々をデザインで幸せにできること

活躍の裏にある、手塚氏のデザインワークにおける原点とは

── ヤフーでの仕事はどんなふうにスタートしましたか?

手塚氏:私はデザイナーとしてYahoo!メールのデザインをはじめました。そして気づかされたのは、自分がいかに感覚的にデザインをしていたかということ。理由をもってデザインをする必要性と重要性は頭ではわかっていたものの、実際に、仕事の場でアウトプットにするのは予想以上に大変で、とても苦労しました。仕事で何かをデザインするということはそこに課題があるということ。その課題を解決するための理論がデザインの中になくてはならないのです。

「理由あってのデザイン」。これができないことには、私たちのプロダクトは決して完成しないのだとそこで学びました。私はそれ以降、今に至るまで、この「理由あってのデザイン」を必ず頭に置いて仕事をしています。そしてこの考え方は、そもそも自分が持っていた「なぜ?をそのままにしない」という考え方にもとてもマッチすることにも気づいたのです。

── デザインにおける「理由」とはどんなものですか?

手塚氏:課題解決のための方法論がしっかりと検討されていること。理由の背景には、閲覧数、滞在時間などWebの利点であるユーザーから寄せられるさまざまな数値やデータが存在します。またストレートにアンケートやインタビューによって課題そのものの洗い出しや、解決方法のヒントを抽出したりしているのです。

今取り組まなければならない課題を見つけ出し、解決方法を考え、実行し、結果を検証していく。現在のWebデザインにおいては、このPDCAをしっかりと回していく手法が不可欠なのだと感じています。思いつき、行き当たりばったり、つくりっぱなしのデザインは通用しない。私自身、自分にそう言い聞かせてデザインにおける「理由」を突き詰めて仕事をしています。

── ヤフーからGYAOに移られてどのように仕事が変わりましたか?

手塚氏:課題の本質から目をそらすことなく「なぜ?」を突き詰めて仕事をするスタイルは、強い関連をもつ企業だけにヤフーもGYAOも共通です。ただ、Yahoo!メールからGYAO!のサービス全体のUI・UXと仕事のテーマが大きく変わりましたが、GYAOのデザイナーのロール(役割)の考え方は、ヤフーと共通していて、私にとって働きやすい職場だなと感じています。特にGYAOでは、プロダクトを良くするために、デザイナー、エンジニア、ディレクターといった職種のクリエイターがチームとして動いています。特に企画やアイデア出しの部分では、どの職種から発せられた意見かなどは全く考慮されず、いかにユーザーにとって魅力的か、多くの人が幸せになれるかが最大のポイントなのです。

手塚氏の考えるGYAO!で働く面白さ

  • ヤフー同様「なぜ?」を掘り下げ、課題の本質に迫る文化がある
  • 職種のロールにこだわることなく自分の仕事の幅を広げていける
  • エンタメコンテンツに関わる仕事に強いやりがいと魅力を感じる

自分のつくったUI・UXのデザインが多くの人の目に触れコンテンツを楽しんでもらえるように

── 手塚さんの今のGYAO!でのお仕事をさらに具体的に教えてください。

手塚氏:私はプロダクトの中でもGYAO!のWebサービス全般に関わるUI・UXの部分を担当していて、サイトを訪れるユーザーの皆さまに最高の映像体験をしていただくことが最大の目標です。

GYAO! が提供する10万本を超える映像コンテンツの魅力を120%伝えられるようにするにはどうすれば良いのか。いつもこの課題に向かって私を含むさまざまな職種のクリエイターが取り組んでいるのです。コンテンツの魅力をユーザーに最大限に感じてもらうことを最優先に考え、デザインとして削るべきところは削る、ユーザーの行動の流れを想像して自然でストレスなくコンテンツにたどり着けるための誘導をすることを心がけています。

また、映像コンテンツの楽しみ方をすでに知っている人だけを対象にするのではなく、これまであまり興味を持っていただけなかった方々にもGYAO!のサービスを体験して楽しんでいただけるような取り組みも積極的にしています。何かのきっかけでサイトを訪れた際に、見たいコンテンツを簡単に見つけていただける、ユーザーが受動的にコンテンツを楽しめるような施策も考えています。

── これまで取り組んだ課題解決の中で、問題に直面した経験はありますか?そしてそれをどうやって乗り越えましたか?

手塚氏:GYAO!の中でも重要な新規開発の案件に関わったときの話です。重要な案件かつスケジュールが非常にタイトだったこともあり、要件をプロジェクト内で決め切る前に仕様やビジュアルの検討を始める必要があったため、時間がない中手探りで進めていくような状況でした。自分を含めデザイナーは2人とリソースも十分ではなく、スケジュール通りに間に合うか、品質をしっかり担保できるかなど不安要素が多々あり、乗り越える山はかなり高かったように思います。

時間がないという焦りの中で、何からどうデザインを始めたら良いかがわからず最初は戸惑うばかりだったのですが、まずはじめに、デザインを進めていく上での軸をデザイナー内で時間をかけてしっかり話し合いました。

このプロダクトはどのような魅力があるのか、どういう影響を与えることができるのか、というところから議論を始め、最終的に「ユーザーにそのプロダクトをこう使って欲しい」、「プロダクトを使ったユーザーにこう行動してほしい」といったブレない軸を決めました。プロダクトとしての軸を最初に決めることで、手戻りなく効率的に質の高いアウトプットが出せるのではと思いました。

またこの軸を元に、本当に必要なものは何か、時間をかけて検討すべきことは何かを常に考え、目的に沿ったデザインを時間内に確実に行えるようにし、さまざまな方に協力をいただいて、スピードと品質のバランスを崩さずスケジュール通りに進めることができました。このときに改めて、「なぜ」「どうして」などを起点に、物事を分解して考えることの大切さを実感しました。一見結論が出ているようなことでも、「なぜ」「どうして」などから考えはじめると、実はその中に課題がたくさんあったり、より良い解決策が見つけられたり、新たな発見が多いように思います。不安要素だらけのこの案件でも、最初の段階でプロダクトに対するWhyを詰めたことで、行動の軸が定まり納得して素早く進められたのだと思います。Whyからアプローチをするというのはひとつの重要なスキルだと思います。

もちろん、ビジュアルの作成やコーディングなど実際に手を動せるスキルも重要ですが、そればかりではデザインは成立しません。本質を見極め、それを形にして生み出すことがデザイナーの仕事なので、本質を見極めるまでのプロセスが非常に重要だと私は思います。

GYAO!のサービスにおいて手塚氏が今取り組む課題映像コンテンツの魅力を最大限引き出す視聴体験をユーザーに提供へ

── 最後に転職を考えるクリエイターの皆さんにメッセージをお願いします。

手塚氏:いいたいことをいう。やりたいことをやる。自分は周りの人からそんな性格だと思われているそうです。確かに「なぜ?」と突き詰めていくことはたくさんの壁とぶち当たります。しかしそこで成功しても失敗しても、必ず得るものはあります。

未来のことは誰にもわかりません。自分が本当にやりたいことは先にやるべき。そんな思いに答えてくれる人も必ずいます。転職を考えるとき、自分が本当にやりたいことに向かっているかをよく考えて臨んでください。

インタビューを終えて

若手の起用が珍しくないWeb業界であっても、GYAO!ほどのメジャーサイトのクリエイティブにおいて、短期間で彼女ほど実績を認められたクリエイターは決して多くはない。遠回りせずストレートに本質を突く彼女のスタイルは、正攻法であるからこそ難しく、誰にでもできることではない。それでいて音楽やお笑い、映画などのエンターティメントに夢中だと語る姿も、彼女らしさの一つであることに思わず筆者はほっとした。

「10年後の展望は?」と訊いた筆者に「わかりません、デザイナーをやっているかどうかすらわからないですね(笑)」と答えたのも彼女の本音に違いない。彼女の手によって、これからのGYAO!のUI・UXがどれほどの魅力を持って変わっていくかにぜひ注目したい。

この記事を書いた人

マイナビクリエイター編集部

マイナビクリエイター編集部は、運営元であるマイナビクリエイターのキャリアアドバイザーやアナリスト、プロモーションチームメンバーで構成されています。「人材」という視点から、Web職・ゲーム業界の未来に向けて日々奮闘中です。

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