根幹となる部分をいかにお客様に伝えられるか。アトラスのデザイナーが担う責任とは ―― アトラス 前田直哉氏インタビュー

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Web・ゲーム業界のキーパーソンを特集する「Creator's File」Vol.33

第一線で活躍しているクリエイターのリアルな声をお届けしています。自分とは異なった環境で働くクリエイター達の熱意や考え方を、是非あなたらしいキャリア形成のためにお役立てください。

株式会社アトラスは「女神転生」シリーズ、「ペルソナ」シリーズなど、長年にわたって多くのファンを魅了し続ける大ヒットシリーズを擁するゲームメーカーである。

1つのタイトルで2年以上の開発期間、数億、十数億円に上るバジェットと開発コストが高騰する中にあって、コンシューマーゲームの制作は受託を除けば国内では一部の超大手ゲームメーカーによる寡占状態にある。そんな中にあってアトラスは大資本を背景に潤沢なリソースで大規模なゲーム開発を行っているのではない。社内に湧きおこるアイデアとカウンターカルチャー的なゲーム作りでアトラスらしさを打ち出したタイトルをリリースし続け、ファンからの強力な支持を獲得しているのである。

今回はそんなアトラスのゲーム作りの現場からチーフデザイナーを務める前田氏が登場。同氏がアトラスを選んだ理由から、アトラスの現場の独自性、今後求めるメンバーの人物像など幅広く伺った。

『ペルソナ2』のイラストに衝撃。アトラスでしかできないゲーム作りに挑戦したい

―― アトラスへの入社のきっかけを教えてください。

前田氏:学生だった当時の私は、3DCGのデザイナーを目指していて、漠然とですが映像業界に進もうと考えていました。それでもゲーム業界でこのアトラスを選んだのは、イラストレーターの金子一馬氏の影響が大きいです。就職活動をしていたとき、ふとゲーム雑誌で見た『ペルソナ2』の金子イラストに強い衝撃を受けました。そのページだけが、他と明らかに違っていて、ゲームのイラストというよりファッションデザインのような前衛的なイラストでした。このキャラクターを3DCGで動かすことができたらどんなに面白いだろう。そう思ったときに私の中でほかのすべての選択肢は消えて「アトラスでゲームを作りたい!」という気持ちに固まりました。

イラスト

金子一馬氏のイラスト

そして幸いなことに希望が叶い、アトラスに入社することができました。入社後は3DCGのデザイナーとしてゲーム制作に参加し、イベント班やモーション班で仕事を経験していきました。現在はチーフデザイナーの業務のほかにも、デザインセクションマネージャーとしてデザイナーのマネジメントも行っています。

―― 新しく入ったデザイナーはどんなふうに仕事に入っていきますか?

前田氏:新卒か中途でアサイン方法は異なります。新卒の場合はデザインセクションのさまざまな班で仕事を体験して、本人の適正や希望をヒアリングしつつ、キャリアプランを立てていきます。中途の場合はクリエイターとしてすでに実績がありますので、得意分野を活かせる班についてもらいます。とはいえ、どちらの場合でもアトラスでの仕事は初めてですから、中途採用でも試用期間を必ず設けるようにしていて、必要な場合はメンターのような形でサポートがつくこともあります。デザインセクションに限らず、新メンバーが参入しやすいように全社で取り組んでおり、開発メンバーは常にアトラスでしかできないゲーム作りに挑戦しています。

見た目に魅力がなければ、お客様は買ってくれない。ゲーム作りにおけるデザインの重要度

―― アトラスのゲーム作りの特徴は何でしょうか?

前田氏:アトラスのゲーム作りのこだわりは、全セクション全員参加のスタイルに表れていると思います。進行中のプロジェクトについて、企画、プログラマー、デザインといった全セクションが節目節目でテストプレーを行い活発に意見交換します。自社のタイトルに対して強いこだわりを持ったスタッフばかりですので、フィードバックも身内ながら本当に容赦がありません。でも、そういった厳しさがアトラスにしかできないゲーム作りを可能にしているのだと思います。若手もベテランも関係なくゲーム作りに対して自分の意見が自由に言えるのもアトラスが培ってきた環境です。

―― そんなゲーム作りの中でのデザイナーの役割とは何ですか?

前田氏:ゲーム制作の初期段階で“コンセプト”や“テーマ”といった根幹が設定されます。その根幹部分をお客様に伝えられ、楽しんでいただけるかどうかがゲームの良し悪しを決め、よいゲームを作り続けられれば結果もついてくるものと考えています。そして根幹を伝えるという点においては、デザインが担う責任は重大です。どんなに深いテーマだとしても、画期的なゲームシステムだとしても、見た目に魅力がないと、お客様は手に取ってくださりません。ゲームは、まずデザインでお客様の心を惹きつけられなければならないのです。リレーのバトンのようなもので、最初にデザインでお客様の興味をひき、次にゲームの仕様やシナリオで楽しんでいただき、クリア後にメッセージを伝えられる。最初の走者がつまずくわけにはいかないのです。

―― アトラスで求められているデザイナーの人物像はどのようなものでしょうか?

前田氏:コンシューマーゲームの開発は短いものでも2年、ビッグタイトルなら3〜4年かけて開発に臨んでいます。長い期間一緒に働く他スタッフと、円滑に業務遂行するコミュニケーション能力は必要ですし協調性も不可欠です。それとバランス感覚も大事です。デザイナーの多くは、時間があれば、「よりよいものを!」とクオリティアップをし続けてしまいがちです。ですが当然締め切りはありますので、限られた期間の中で最大限の成果物を出していくバランス感覚は大事です。ほかにも、高いクオリティーのデザインを起こすときには、強い信念やこだわりが必要ですが、修正や方針転換を求められる局面もあります。信念を持ちつつも、さまざまな状況に対応できる柔軟性も持つといったバランス感覚も必要です。

困難を極めたイベントシーンの見せ方。2年の歳月を経てたどり着いた最終形とは

―― これまでのゲーム作りの中で感じた苦労ややりがいはありますか?

前田氏:『ペルソナ5』を作る際、イベントの見せ方をどうしていくか、どう変えていくかで非常に長く悩みました。メインシナリオのイベントの個数だけで1000以上ありますので、プレイされた方々にとって強く印象に残るパートです。下手なものは作れません。『ペルソナ5』以前のイベントシーンはバストアップイラストとモデルを両方表示させる手法だったのですが、モデルの頭身もハードのスペックも上がったということで新しい手法を模索することになりました。

当初は3DCGモデル“のみ”を用いる手法を検証していましたが、イラストで出せたダイナミックな表情や繊細な感情の機微が表現できないという壁にぶち当たりました。とはいえ「今時PS3、4でバストアップイラストを出すことは前時代的」というフィードバックにも強く共感できましたので、イラスト以外でほかにできないか検証に検証を重ねました。何本もサンプル動画を作成しました。結局最終形になるまで丸2年かかってしまい、ようやくたどり着いたのがバストアップイラストに加え、感情がたかぶったときにイラストカットインを表示するといった『古いかもしれないが既存仕様のメリットを保持しつつも新しい要素を入れる』という仕様が生まれました。

イラストカットインのシーン

バストアップについてはほんの一例ですが、皆、ゲームに対する想いが強いので意見衝突もありますし、目指すべき“絵”の実装難易度やコストが高いなどと、一筋縄ではいきません。

そんなさまざまな障壁を乗り越え実装できたときの喜びや、担当箇所について、お客様や社内のスタッフから評判がよいと、それまでの苦労が消し飛ぶほどの達成感を味わえます。

―― 前田さん自身が今後取り組みたいことをお聞かせください。

前田氏:今後プロダクション同士の情報交換や勉強会を企画して今まで以上に後進を育てることに注力したいと思っています。またデザイナーの皆さんには、デザインを生み出すことに集中できるよう、それ以外の雑音は極力なくして仕事をしやすい環境になるよう尽力します。

―― 最後に転職を考える人やゲームデザイナーを志望する人にメッセージをお願いします。

前田氏:「好きなIPの制作にかかわりたい」「ゲームがとにかく大好き」「誰も見たことがない映像、ビジュアルを世に出したい」「今のスキルを新しい環境でさらに磨きたい」ゲーム会社に転職するモチベーションは人それぞれだと思います。そのストレートな思いこそがデザイナーとして活躍できる原動力でもあります。そんな熱意のある方と、是非とも一緒にお仕事したいです。ご応募お待ちしております。

インタビューを終えて

ソーシャルゲーム隆盛の中にあって、本格ファンタジーRPGなどコンシューマーゲームの開発にこだわり、果敢に挑み続ける株式会社アトラス。前田氏のインタビューではそこで活躍するデザイナーのゲーム作りに対する強い思いと矜持を伺うことができた。アトラスのデザイナーに求められるのはゲーム作りを行ううえでのバランス感覚。業界の本流を目指すのではなく、ほかにはない独自性で活路を拓いてきたアトラスならではの特徴と言えるかもしれない。

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