アニメーターとは - 3DCGデザイナーのアニメーターが担う役割を詳細解説
モデラーが作った3DCGモデルを、実際に動かす(アニメーションさせる)のが3DCGデザイナーのアニメーターの仕事です。作業行程は「クレイアニメ」に似ています。
クレイアニメとは
ストップモーション・アニメーション技法のひとつ。被写体を粘土で作り、「1フレームごとに少し動かしては撮影」を繰り返して作り上げられたもの。
クレイアニメのアニメーターと比較して、デジタルであるアニメーターの場合、動きのコピー&ペーストや、やり直し作業もすぐに可能なため、慣れれば作業そのものは能率的に進められるでしょう。むしろ、熟練した3DCGデザイナーのアニメーターに求められるスキルは、「その動きの解析力」にあるといえます。そのひとつの例として「溜め・詰め(イーズイン・イーズアウト)」の感覚に長けており、動きをより自然に表現できるスキルは大切です。
本記事では、アニメーターにおける役割を詳細にご紹介しています。モデラー・エフェクターと並んで重要なこのアニメーターというポジションに触れ、ぜひ3DCG世界の制作シーンへの理解を深めてみてください。
目次
3DCGデザイナーのアニメーターが実践している「アニメーション」のつけ方
3DCGデザイナーのアニメーターが行う手付けアニメーションについて
動画編集ソフトなどでお馴染みの「タイムライン」という時間軸を基に、3DCGモデルにアニメーターが手作業でポーズを付けながら動き(アニメーション)を設定していきます。具体的には「任意の時間経過の間に」「任意の部分がどれだけ変化(もしくは移動、わん曲など)するか」という行程で動きを付けていきます。下記の「モーションキャプチャー」に比べ、特殊な撮影システムなどが必要なく、3DCGソフトのアニメーション作成画面で行いますが、熟練した3DCGデザイナーのアニメーターでないと思ったような動きにすることはなかなか困難です。
3DCGデザイナーのアニメーターが実践している「アニメーション」のつけ方
現場ではよく「モーキャプ」とも略称されます。その仕組みですが、例えば人の歩行の場合、前述の「手付けアニメーション」のように細かく脚や腕の動きを設定して歩く動きを付けるのではなく、実際に人が歩いている動きをビデオカメラで撮影し、その動きを3DCGモデルに反映させるという方法です。
とてもリアルな動きを再現できる反面、カメラが複数台必要で、広い専用スタジオ、その動きを実際に行う演者、収録するスタッフなど、多くの人手や手間、技術を要します。しかし近年では広いスタジオを必要としない、演者が着用するスーツから直に動きのデータを収集するという新しい技術も広まってきました。
動きのデータを収集したら次にゲームの3DCGモデルに反映させていきます。ゲームで使われる3DCG人体モデルのキャラクターはデフォルメされていることがほとんどなので頭の大きさ、腕や足の長さなど、身体のバランスが実際とは異なります。よって関節の位置などを合わせたり、必要のない余計な動きのデータを削除するといった「編集」作業が必要になります。ただ最近はキャプチャースタジオとその専門業者のおかげで編集作業は以前ほど時間をかけず対応できるようになりました。
手付けとモーションキャプチャーの併用
3DCGデザイナーのアニメーターが、前述したような「手付けアニメーションとモーションキャプチャーの2つを併用して作業を進めていく」場合ですが、主にセルアニメ作品のような動きの表現をしたいときに用いられることが多いようです。モーションキャプチャーによって本来のリアルな動きを基本データにして、手付けアニメーションでデータの単純化を行う、というイメージです。これも3DCGアニメーターが作業効率を上げるためのひとつの工夫といえます。
3DCGデザイナーのアニメーターが持つべき「実物から動きを観察する」という思考
中には「現実に存在しないものだからこそ、リアル世界の物体の動きを全く参考にしない」という方法論を支持する3DCGアニメーター志望者もいるかも知れません。ですがリアル世界すべての物体が現実の物理現象に影響された動きをしている以上、閲覧者(プレイヤー)側も現実にある物の動きをイメージ、または比較しながら見ています。よって閲覧者が理解しにくいあまりに非現実な動きをさせてみても、あまり反応はよくないことの方が多いようです。
ここからは3DCGデザイナーのアニメーター志望者が実際にアニメーションを作る上での基本的なフローを紹介します。
実物の動きを観察する
3DCGデザイナーのモデラーが物の形状をよく観察することが重要であることと同様に、3DCGアニメーターはその動きをよく観察することが大事です。3DCG格闘ゲームの場合なら、やはり格闘技の試合をよく見てみるべきです。野球なら野球選手、ゴルフならゴルファー、走っているシーンならその求められる「走り」に応じて陸上の短距離、長距離ランナーなど、それぞれの動きをよく観察してみましょう。当然ですが鋭敏な動き、正確な動きを求めるならこそ上手い人の動きでないと意味がありません。またその逆に、鈍重な(または素人的な)動きを求めるなら専門外の人を参考にするのもいいでしょう。ですが基本は「上手い人の動き」です。その理屈を理解してこその「下手な人の動き」です。
優れた動きのモーションを作れる3DCGアニメーターは「なぜその動きが優れているのか?」という理屈が分かっています。その「なぜ?」を探求、理解していくことが優れた3DCGデザイナーにおけるアニメーターになるための近道といってもいいでしょう。
ところで、「優れた動き」の定義は人それぞれ微妙に異なります。自分ではカッコいいと思っていても他人はそう思わないかも知れません。基本は他人が見て「良い」か、「否」かでありそれがすべてといっても言い過ぎではないでしょう。むしろ他人の批判があったときこそ、その理由を考えてみることが大切です。その先に3DCGデザイナーのアニメーターとしての「自分オリジナルの優れた動き」の実現につながっていくかも知れません。
観察したら体験してみる
よく「身体で覚える」と言われますが、見るだけでなく動きを実演してみると、もっと理解しやすくなります。 3DCGデザイナーのアニメーター関連の専門書などではよく「動きの起点は腰」とか「身体動作の中心軸としての腰」などと書かれていることが多いですが、ただ言葉として聞いただけでそれを具体的にイメージすることは難しいでしょう。その動きを3DCGゲームで再現するとなると尚更です。そのための「体験」でもあります。
3DCGデザイナーにおけるアニメーターの参考:その1「演劇」
一例として、演劇です。稽古などを見学させてもらえる機会があればぜひ行ってみてください。間近で見ると演者の大げさすぎる動きに少々戸惑うかも知れませんが、演者から距離をとって見てみると意外と違和感がありません。舞台演劇には「カット割り」のようなカメラ的に視点を切り替える概念はありませんので、遠くの客席からでもその人物の動き、さらにはその心情が理解できるような演技が求められます。ここで重要なのは演者と観客との距離、つまり観劇する距離です。
そのために舞台演劇では、表情だけでなく身体も使って表現する手法が考案されたという説もあります。同様にゲームでも戦闘中など、ストーリーパート以外では遠景での表現が多くなりがちです。RPG物のパーティー戦などはその典型でしょう。しかも近年のゲーム機はそれが3DCGでも技術的に表現可能になってきたので、参考案件として今後はもっと重要視されてくると思います。
3DCGアニメーターとは分野違いの感じもあると思いますが、3DCGキャラクターの演技に物足りなさを感じたときは演劇論の本を紐解いてみるのも何かの参考になるかも知れません。
3DCGデザイナーにおけるアニメーターの参考:その2「パントマイム」
もっと純粋な「動き」そのものの考察にはパントマイムが参考になります。実際に、ある専門学校の3DCGアニメーターの授業で取り入れられていたこともあるようです。例えば重い物を持ち上げるときと、軽い物を持ち上げるときの違い。リアルな表現にこだわって、それぞれの動きの違いを実感するには実際に自分でやってみるのが一番です。ただ、ここで重要視したいのは「演出としての動き」です。リアルさを追求した動きというよりは、付け加えるとよりリアルになる「演出的な動き」になります。
具体的に例をあげて見てみましょう。水が大量に入った重いポットからコップに水を注ぐ場合と、水が少ない軽いポットからの場合との動作の違いです。ここではポットの重さを意識させない動きを基準にして、そこにある動きを付け加えるとポットの重さ(入っている水の量)が変わって見えるという例です。注ぐ動作を単純に速くするのも手ですが、もう少し考察の幅を広げてみましょう。
例えば、ポットを持つ逆側の手でコップを持ち上げる動作を加えるだけで軽いポットのように見えないでしょうか。
では重いポットの場合はどうすればいいでしょう。いろいろと「演出」の方法はあると思いますが、例えばコップをテーブルに置いたままにして、逆側の手でポットの底を支えるように持つなどするとどうでしょうか。他に、ポットを自分に近づけてから注ぐ動作に移るなどするのも効果的だと思います。
もちろん、実際は水が注がれ始めるポットの角度や、ポットを傾けるときに腕を使うのか、指を使うのかといった、重い場合と軽い場合の根本的な動作の違いも重要なのは言うまでもありません。
なお、人物キャラクターの心情の変化表現なども、顔の動き(表情)だけで表現するのではなく首から下の動きも交えると雰囲気が良くなることが多いです。そもそもゲームで3DCGの人物キャラクターが表情の変化を出せるようになったのは最近のことであり、以前は会話中でも口パク表現さえありませんでした。現在のゲーム機でも場合によっては表情の変化は割愛されることがありますので、こういったパントマイム的な表現は3DCGデザイナーのアニメーターにとって今後も有効な技術でしょう。
3DCGアニメーターとしてモーションの知識や技術に長けてくると、例えばデッサン人形のような特徴のないモデルであっても、心情の表現が可能なくらいの演出や動きができるようになれるでしょう。
体験したら記録する
これは3DCGデザイナーのアニメーター志望者に限ったことではありませんが、普段からメモを取る習慣を身につけておくことをおすすめします。さらにスマホやコンデジなどのカメラで動画撮影の記録も併用していくともっと理解しやすくなるでしょう。
ワンランク上のアニメーションにするために、3DCGデザイナーのアニメーターに求められる「取材力」とは
例えば格闘対戦型の3DCGゲームで、剣を振って敵を攻撃している状態を考えてみましょう。この種の基本的なゲーム性を考えると、3DCGアニメーターがこの動きを付けるときに重要になるのはキャラクターの体格と振っている剣の重さ(攻撃力の大きさ)でしょう。プレイヤーの感覚だと、体格のいいキャラクターに重い武器を使わせた方が、平均的なパラメータ(能力値)のキャラクターを選択したときよりも敵に大きいダメージを与えやすいというイメージを持つと思います。そういった長所がある反面、動きが遅いため敵の攻撃を受けやすいという短所のイメージも持たせられるでしょう。これらは「ゲーム性」ということになり、プレイヤーにも理解しやすい設定です。
キャラクターの体形:軽量型 | |
長所 |
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短所 |
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キャラクターの体形:ノーマル型 | |
長所 |
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短所 |
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キャラクターの体形:重量型 | |
長所 |
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短所 |
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キャラクターや武器など、ゲーム性に関わってくるモーション(動き)は3DCGアニメーターが勝手に決めることはできません。すべてゲームプランナー(企画担当)に確認する必要があります。例えば「武器を振るモーションがほしい」と注文を受けても、「それは剣なのか?」「重いのか?」「長さは?」などということが分からないと3DCGアニメーターはモーションを付けようがないのです。
そこで3DCGアニメーターは、ゲームプランナーから具体的なイメージを聞き出す能力「取材力」が必須になります。それは仕様が変わる(発注内容が変わる)可能性を常に孕んでいるからであって、3DCGデザイナーのアニメーターの実務では企画書や仕様書を確認するだけでは不十分な場合が多いのです。ましてやゲーム性に関わるモーションだと、仕様変更はさらに頻繁になるかも知れません。3DCGアニメーターはモーション付け作業を能率よく進めていくためにも、発注内容の確認を常に行うことはとても重要です。
まとめ
3DCGデザイナーのアニメーターの道を目指すなら、日頃から目に入る様々な「動き」を観察し、解析するクセを身に付けておくと、いざと言う時に役立つこともあるでしょう。「動き」のデータ蓄積は、その3DCGアニメーターの資産であり、延いては生活の糧になるはずです。