主婦もデザイナーとして働ける?デザイナー業界の最新求人状況と両立して働くために必要なこと
目次
有識者に聞く、主婦デザイナーの求人動向は?
井筒祥子氏
株式会社キャリア・マム 代表取締役10万人の女性サイト『キャリア・マム』と『主婦と消費行動研究所』を運営。在宅で仕事のできる仕組みを作り上げ、年間のべ10,000人以上の在宅ワーカーに仕事を提供中。そのほか、企業の商品やサービスの開発企画やプロモーション企画も行う。現在は官公庁とともに、再就職、在宅ワークや創業支援など、一度仕事をやめて家庭に入った女性が、再び仕事に復帰するための各種就労支援事業を行っている。(特定非営利活動法人 日本キャリア開発協会認定CDAキャリア・デベロップメントアドバイザー)
主婦のデザイナー求人状況について詳しい、女性の就労支援を行う株式会社キャリア・マム取締役の井筒祥子氏からお話を伺いました。
── 主婦業と仕事を両立されている方はどのくらいいるのでしょうか?
共働き世帯はまもなく1200万世帯にはなると思います。男女雇用機会均等法が1986年に施行されてから徐々に増えてきていますね。それにともなって、デザイナーとして働く主婦も多くなっているのではないでしょうか。主婦業と両立される方の働き方としては、現状、正社員より時短勤務や非正規雇用が多いです。やはり仕事だけでなく、家事や子育てにも専念したいのだと思います。
── 子連れで出勤できる会社は増えていますか?
まだまだ少数ですが増えています。ただ子連れ出勤OKでも、実際子どもがオフィスにいるとなかなか仕事に集中できない場合も多いと思います。そこで、最近では国も事業所内保育や企業主導型保育に助成金を出し積極的に後押ししています。今後はさらに子連れ出勤可、社内託児所付きの企業が増えると思います。
他にも、シェアオフィスやコワーキングスペースで保育室を併設しているところが増え始めています。特にデザイナーやクリエイターに特化したコワーキングスペースの出現により、ネットワーク作りとしてスペースを利用される方もいらっしゃいます。シェアオフィスやコワーキングスペースだと、わりと家の近くで働けるというのもいいですね。
── デザイナーの求人についてもお聞きしたいのですが、デザイナーはどんな方のニーズがありますか?
デザイナーのようなクリエイティブの仕事の場合は、キャリアの長さよりもどんな仕事をしてきたか、また実績が大事ですね。キャリア・マムでは、官公庁の受託事業で在宅ワーカーの育成をしているんです。そこでの面接の際に、デザイナーとして在宅ワークを希望している人の中には最初の面接に何も持ってこない方も多いのです。そういった方には、次回はポートフォリオなどの作品を持ってきてくださいと話しています。
デザイナーに限らずクリエイティブ全般に言えることですが、「こんなことができますよ」と少しでも実績をアピールできる人のほうが求人につながります。採用する側からすると「見てみないと何とも言えない」のが本音なので、自己課題として作成した作品などを面接のときに見せるだけでもアピールになると思います。ちょっとしたことでもいいので、自分が関わった制作物を普段からポートフォリオにまとめて見せられるようにしておくと良いですね。
── キャリア・マムさんではどのようなデザイナーに需要がありますか?
当社だと、やはり女性にアピールできるデザイナーに需要があります。子ども向けやファミリー向け、食品、生活消費剤などのサイトを作れるWebデザイナーやパッケージデザイナーなどですね。キャリア・マムにはいわゆる普通の主婦が多いんです。特に何かに特化しているというよりも、自分たちがほしいと思うものを作れるデザイナーは仕事につながっています。
── 業界によってデザイナーのニーズの違いはありますか?
紙媒体が減ってきているので、Webデザイナーのほうがニーズが高いです。あとは名刺のデザインやフライヤー、パンフレットのデザイナーや、バッグや名刺入れなど女性向けの小物のデザイナーなどもニーズがあると感じています。
── 最後に、主婦業とデザイナー業を両立させるにはどのような働き方がおすすめだと思いますか?
デザイナーには個人事業主として起業される方も多いです。キャリア・マムでは女性の起業支援も行っているのですが、0歳〜3歳ぐらいの未就学児のお子さんを持つ方が多く起業されています。雇用されて働くと「9時〜17時まで会社に来てください」とか「子どもが熱を出したからといって休んでは困るよ」とか、会社の都合を押し付けられてしまいます。そうならないためにも自分のペースで働き続けるべく、フリーランスという形で起業する方が多いですね。
あとはリモートワークですよね。ここ5年ぐらいはクラウドソーシングが増えて、ネット上で仕事の受発注を行うことも当たり前になりました。それにより、在宅ワーカーが、非常に増えたという印象があります。将来的には、会社に勤務しながらリモートワークするデザイナーも増えてくるかもしれません。特にデザイナーは企業に勤めながらも、会社から離れていてもできる仕事が多いので、フリーランス、リモートワークなどの働き方を模索してみるとよいでしょう。主婦のデザイナーは、会社での雇用にしばられず、さまざまな働き方で活躍できると感じています。
国税調査の統計データからみる、これからの女性の働き方
インタビューで、現在のデザイナーや主婦の求人動向が見えてきました。次に、データをもとに主婦層の働き方の現状を探ってみましょう。
実際に働いている女性の人口は?
平成22年国勢調査 産業等基本集計結果参照(2018.06.22時点)
上記は、「男女別の労働力人口」の推移についての資料です。平成22年15歳以上の人口の労働力率(労働力人口の割合)は61.2%で、昭和60年の63.7%から比較するとゆるやかに減少していることがわかります。男女別のデータで見ると、男性は昭和60年には80.5%だったものが平成22年には73.8%に減少しています。しかし、女性は昭和60年には47.8%だったものが平成22年には49.6%に上昇しています。このデータから女性の労働力人口が年々増加していることがわかります。
このデータには既婚者だけでなく独身者も含まれているので一概には言えないですが、「主婦は家庭に入る」と考える時代から「結婚後・出産後も働ける場がある」と考える時代へ変わってきていると言えそうです。
実際に、20代〜40代女性は働けているの?
平成22年国勢調査 産業等基本集計結果参照(2018.06.22時点)
上記のデータからは「年齢、男女別労働力率」の推移が読み取れます。男女雇用機会均等法が施行される直前の昭和60年からみると、女性の労働力率は上昇しています。女性は20代〜40代でいったん労働力人口が落ち込むものの、年齢的に出産を終えたり子育てが一段落した50代以上で復職している方も多いです。また20代〜40代までの落ち込みも減少しているので、主婦業を行なっても働き続けている女性は年々増えているといえそうです。
働いている女性の地位は?
平成22年国勢調査 産業等基本集計結果参照(2018.06.22時点)
こちらのデータからは、男女別の「従業上の地位」が読み取れます。20歳から29歳までは男女共に「正規の職員・従業員」が多いですが、女性は30歳を過ぎると「正規の職員・従業員」以外の割合が増えています。
主婦の方は家事や育児の負担を考慮した働き方をする傾向にあります。また、子どもが大きくなった50代を過ぎても、「正規の職員・従業員」以外で働いている方が多くいます。
実際に専業主婦と共働きはどっちが多いの?
1980〜2001年は総務省「労働力調査特別調査」
2002年以降は総務省「労働力調査」を基に作成
こちらのデータからは、「専業主婦業世帯と共働き世代」の推移が読み取れます。平成3年以前は専業主婦世帯が多かったのですが、この年からはほぼ専業主婦世帯と共働き世帯は同数になり、そこからは共働き世帯が年々増加しています。これまでのデータとあわせて考えると、結婚や出産などで社会から離脱せずに活躍したいという女性は増えてきていると考えられます。
共働き世帯の割合は?
平成22年国勢調査 産業等基本集計結果参照(2018.06.22時点)
上記のデータからは、専業主婦世帯と共働き世代の世帯の推移が読み取れます。平成22年には、夫婦ともに「就業者」の世帯は1267万6000世帯となっており、全体の45.4%を占めています。平成7年以降、増加し続けています。
女性の活躍する場が増え、働く子育て世代の女性が多くなっています。デザイナーに限らず、多くの職種で主婦業と両立して働きたいと考えている女性も増えていると言えそうです。
主婦業とデザイナーを両立させるためには、どのような働き方をすべき?
時短勤務
フルタイムよりも短い時間で働けるため、主婦業もデザイナー業も頑張りたい方にはおすすめの働き方です。最近では、正社員であっても育児に積極的な企業が多くあり、時短勤務で働いている人もそれなりに見受けられます。ただし、会社によって時短ができる時間が短かったり、給与が大幅に減ってしまったりすることもあるので、まずは会社の制度を確認してみてください。
リモートワーク
会社から離れ、自宅やコワーキングスペースなどで勤務する形態です。時間や場所が選べるので家事・育児の負担も減らせます。デザイナーのようなクリエイティブ職の方には向いている働き方です。昔に比べて、リモートワーク制度を導入する企業も増えてきていますし、リモートワークが地方活性に役立つ例などもあるので、今後も注目しておきたい働き方です。
社内託児所を利用
社内託児所は、周囲にお子さんを預かってくれる施設や人がいない場合にオススメです。子育てに追われる主婦の方にとっても仕事と両立しやすいですが、会社に通わなければならないため、満員電車に子連れで乗るなどのデメリットもあります。ただ、職場が家から近い場合はとっても頼もしい制度と言えそうです。
子連れ出勤
子連れ出勤可の企業は増えてきています。特に小さなお子さまなどをお持ちの方は自分で子育てをしながら、仕事もできるのでうれしい制度です。ただし、職場にお子さんがいると仕事に集中できなかったり体力的に負担がかかったりすることも。メリット、デメリットをよく検討する必要がありそうです。
主婦業と両立してデザイナー業を行う女性に必要なことは?
家族の協力を得る
主婦業とデザイナー業を両立して働ける会社や働き方が増えたとはいえ、しっかりデザイナー業でキャリアを積むためには家事や育児を手伝ってくれる家族の存在が必要不可欠です。仕事で疲れ、家庭でも疲弊し体調を崩してしまった…ということにならないように、まずは家族の協力を得ましょう。
職場の理解を得る
子どもの行事があるので休みたい、具合が悪くなったので迎えに行かなければならないなど、子育てをしているとさまざまな理由で仕事を休むことや早退することがあると思います。どんなに制度が整っていても、職場での理解がなければ、制度を利用することはできません。就業する前にお子さまを持つ主婦の方が実際にきちんと働けているか、経営者が子どもに理解があるかなどを確認しましょう。
スケジュール管理やセルフマネジメントを身につける
スケジュール管理やセルフマネジメントは重要です。会社に仕事を押し付けられて肉体的にも精神的にも参ってしまい、主婦業に支障が出てしまうなんてことがあったら大変です。また、デザイナーは、あまり仕事をつめすぎると締め切りに追われて体を壊してしまうことも。きちんと時間管理を行いましょう。
完璧を求めず頑張り過ぎない
主婦業とデザイナー業を両立させると、忙しさのあまり自分のふがいなさを感じてしまうことも。なんでも完璧にできる人間はいません。無理をしない程度に、主婦業にもデザイナー業も焦らず取り組むのが両立させるコツかもしれません。自身の限界値を理解し、バランスの良い両立を目指しましょう。
まとめ
主婦業とデザイナー業の両立に大事なのは、どれだけ負担をかけず無理なく行えるかということでしょう。そのためにも時短勤務やリモートワークなど負担のかからない働き方をして、ワークライフバランスを保つことが重要になります。
人材不足が続く昨今、企業側も働き方の改革を行い、昔に比べて働く上での勤務形態は多様化されてきたように感じます。主婦としても、デザイナーとしても二足の草鞋で活躍できる事が当たり前になる時代が、近くまで来ているのかもしれません。