やはりポートフォリオは重要。ポートフォリオ作成サービスMATCHBOXで、採用側と転職側を行ったり来たりして感じたこと ―― PARTY 中村洋基氏インタビュー
今回インタビューに登場するのは、企業を率いる経営のキーパーソンであり、現役クリエイターとしても活躍する中村洋基氏。採用する側として見たポートフォリオの位置づけと、クリエイターとして自分の現在(いま)を表すポートフォリオの在り方を両面から聞いてみた。
プロフィール紹介
中村 洋基氏
株式会社PARTY クリエイティブディレクター
1979年栃木県生まれ。
早稲田大学第一文学部卒業後、株式会社電通に入社。
2011年に4人のメンバーとともに株式会社PARTYを設立し、取締役を務める。業界では知る人ぞ知るクリエイティブディレクター。プレイヤーとして活躍しながら、PARTYでは経営陣として人材採用も担当。
応募者のスキルセットとマインドを見るためにPARTYではポートフォリオと面接に注目
── 今日はお忙しいところお時間いただきありがとうございます。今回はPARTYでのクリエイターの採用方針について聞きたいと思います。
中村氏:こちらこそ。PARTYは人の採り方に特徴があって、なんでもできる人というより一芸に秀でた人を採用します。そもそも「PARTY」という名前は、RPGの隊列の「パーティー」から取っているんです。武闘家がいて魔術師がいて、それぞれのプロフェッショナルが自分の得意技を持ち、チームを組んで強い力を発揮するでしょ。それぞれの個の力を強みに、PARTYに結集して課題をクリアしていこうというのがこの会社の考え方です。
── そうなると、メンバーの採用という視点ではどんなところに注目することになるんですかね?
中村氏:「一芸に秀でた」という考え方の通り、まず専門的なスキルや技術力の高さが大事ですよね。特にエンジニアやデザイナーはそこで「欲しいもの」を持っていてくれないと採用の対象にはなりにくいし...。
── 人材のニーズに対して採用を行う時、それにハマってなければやっぱりどうしようもないというわけですね。
中村氏:近々のニーズとは違っていたとしても「この人は仲間に迎えておきたい」と思う出会いはありますよ。ただうちはまだ小さな会社です。中小はどこでもそうですが、人ひとりの採用でも命がけです。いま東京のメンバーで28人。どうしても「ニーズとは違うんだけど採用!」はやっぱりレアなケースになりますね。
中村氏:クリエイターとして欲しいスキルを持っていたら、後はマインドだけですね。企業のカルチャーに合う人かどうか。こればっかりは会ってみないとわからない。僕はちょっと変わった人が好きなところがあります。例えば、面接で目を合わせて話してくれなかったり、やたら汗をかく人だったり。エンジニアやデザイナーで尖ったスキルを持っている人って、逆に何らかのコンプレックスを持っている人の方が、自分の強い部分を磨き込んでいるんじゃないか。もちろんディレクターみたいにコミュニケーション力やプレゼンテーション能力が絶対必要な仕事もある。でもPARTYではみんながみんなそんな高度なコミュニケーション能力を持っていて欲しいというわけではないんです。「自分にしかできない何か」を持ち寄ってPARTYを組もうとしているわけですから。
── その人の持っているマインドってどんなふうに見ているんですか?
中村氏:面接で仕事以外の話をしてみたり、とことんエゴサーチしてSNSを探したりします(笑)。ただ、重要視はしないですね。やはり、スキルセットはポートフォリオで見せてもらうしかない。パっと見てサっとこっちが相手の人間性や力量をわかればいいんだけど、そう簡単にはいかない。だから大変で申し訳ないけれども、応募者の方には面接やポートフォリオでしっかり自分を見せて欲しいんです。
── ポートフォリオってどんなものが評価高いんですか?
中村氏:僕は自分の特別な専門性をもって仕事をしているクリエイターは、転職想定だけではなくてポートフォリオは折々で更新しながら絶えず公開すべきなんじゃないかと思っています。応募者の皆さんも採用する側がそれぐらい真剣に見ているってことに気がついて欲しいです。転職のためのポートフォリオに絞って言うと、作品なら何でも載せればいいとうのではなくて、自分の見せたいものにちゃんと絞れているかということ。いくつかのスキルのバリエーションで見せられる3〜4作品に絞ったものが良いと思っています。1番が代表作で、2番で目先を変えて別の側面も見せたり。3番、4番で自分の得意分野やクオリティをはっきりさせる。野球のクリーンナップみたいな構成がいいんじゃないですかね。
クリエイターの職種は色々ですが、ものづくりのスキルを見せる以上、見た目は大事です。特にデザイナーのポートフォリオでセンスが感じられないとキツイかも。でもポートフォリオの仕組みづくりに手間暇かけて欲しいわけではないんです。既存のポートフォリオ作成サービスをスマートに使って中身で勝負というのも、比較がしやすくて実は好ましいんですよ。サイトつくりました、何ヶ月かかりましたというのはまた別の評価ができるのだけれども、中身が今一つだとかえって評価を落とすことになりかねないですからね。
書類で出したり、面接に持ち込む紙のポートフォリオは装丁にもデザイナーのこだわりが出るところです。僕は面接に来る人の服装なんかは、その人なりに最低限気をつかっていればなんでもいいと思っています。でもポートフォリオの装丁は良いものほど目が行きます。そこに間違いなくその人のクリエイターとしてのファーストインプレッションがあるからです。
インパクトのある公開されたポートフォリオは業界内でも当然話題になります。この広がり方の早さはいまのWebならではですね。あっちでも、こっちでも新しい才能が。そんなSNSやポートフォリオサービスのセルフプロモーションによってチャンスを掴む人がいることをもう皆さんもご存知でしょう。クリエイターとしてのスキルを外へ向けて表現するのはもちろん、自分自身のいま現在の力量を測るためにも、いまやポートフォリオはクリエイターの必須科目なんです。
中村洋基氏×MATCHBOXでいきなりポートフォリオ作成に突入!
── そうなると中村さんのポートフォリオも見たいですね。
中村氏:え?
── 中村さんのポートフォリオです。今おっしゃっていたクリエイターの必須科目。
中村氏:僕のポートフォリオですか...?まあ、でも、僕ぁ、ほら、たぶんもう転職しないからね。経営者だし。
── あれ、中村さんポートフォリオ持ってないのですか?
中村氏:いや、持ってないわけではないんですけど ...。
インタビュアーがネット検索---中村洋基でポチッと...
── なんだ、検索したら出てくるじゃないですか。拝見しますね...。
インタビューアーが中村氏のポートフォリオを閲覧。しばらく沈黙が...。
── うん...?これ?最終更新が2012年になってます...。うん?しかも英語だけで作品を紹介しているのもあってスッと内容が理解できない...。あれ、それに84作品も載ってて、ひたすらページが長い...。。うわ、しかもリンク切れがめちゃくちゃありますよ...。
中村氏:...。
── これはちょっとまずいですね...。これじゃ読む人に「クリエイターのポートフォリオはこうあれ!」なんて言っちゃダメですよ...。
中村氏:僕も採用側として、このポートフォリオを面接に持って来られたら、採用しないです...。
── せっかくだから『MATCHBOX』でちゃちゃっと、新しい中村さんのポートフォリオ作成して、つじつま合わせしちゃいませんか?
── 採用側である中村さんがクリエイターとして『MATCHBOX』でポートフォリオをつくる。読者は絶対見たいと思いますよ。中村さんが採用したいと思えるクリエイターのポートフォリオをつくってみましょうよ。ぜひお願いします!
中村氏:うーん、急な展開。気が重い...。ま、でも確かに3つくらいならすぐできるかも。...(しばし思慮)...しかたない!そこまで言うならやってみましょう!
その場でアカウント作成して『MATCHBOX』にログイン!
『MATCHBOX』をさわりはじめるとインタビューそっちのけでポートフォリオづくりに入り込む中村氏
以下中村氏のポートフォリオ作成中の独り言
- フォントはゴシック、背景は白を選択。僕の作品はポップなのが多いので、逆に『MATCHBOX』の落ち着いたトーンがいいね。いっそ明朝フォントでもいいかも。
- プロフィールは300文字まで入るけど、 採用側の感覚としてはこんなに書いちゃいけないなー。ポイント重視で極力削る。ああでも210文字になっちゃった。いざ入力すると、詰め込みたくなるなこれは。
- 3〜4作品でクリーンナップを、なんて言っちゃったけど、自分の作品の選択は手こずるねー。やっぱり、ファーストインプレッションになるトップのビジュアルと1作品目が大事だわ。
- 短くてもそれぞれの作品の解説が肝心だね。掲載するコンテンツに対して自分がどう関わったかをしっかり表せているかが問題。僕もクリエイティブディレクターって書くだけじゃ結局いるだけの人だったと思われてしまう。
- 面接官は「あなたはこの仕事の中でどこをやったの?」と聞くはず。スキルが表せているのは第一段階、次の段階はポートフォリオ全体で「私はこんなヤツです」とわかってもらえるようにしないと...。
── 見る見る仕上がっていきますね。トップのメインビジュアルも中村さんのパーソナリティーが見えますね。
中村氏:採用担当者が、書類審査で一人の応募者のポートフォリオにかけられる時間はせいぜい5分ってところです。だから最初に来るビジュアルの印象がポートフォリオを見終わる最後まで続くと思った方がいい。今回僕は自分のポートフォリオのコンテンツとして「Paymo Table Trick」を最初に持ってきました。仕事の関わり方として「バレンタインポスト」が前という選択肢もあったんですが、「バレンタインポスト」はビジュアルがポップなために、「こういうポップなのが得意な人なんだ」と採用側に先入観を与えてしまうことになるのを避けてこの配置を選びました。
1番に置く作品というのはその人の定義づけになる重要な部分。誰が見ても一番かっこいい作品を置くべきです。そして2番は1番とは違ったテイストの作品で「お、こんなこともできるんだ」と幅や個性を見せる。正攻法ですが結局これが一番効くはずです。トップのビジュアルはいわばポートフォリオの顔ですから僕も最後まで悩みましたね。大きな企業の大きな仕事を前面に出すのも効果的です。皆さんも代表作となる渾身の一撃を用意するべきでしょう。
採用者×クリエイターの目線で中村洋基氏が語るMATCHBOXの価値とポートフォリオの存在意義
中村氏:クリエイターがポートフォリオをつくるとき、相当な準備が必要なイメージがあります。さっき見ていただいた僕の以前のポートフォリオは、Movable Typeというブログツールをカスタム自作していて、都度更新できるようにしてあったんです。それをつくりあげるだけで疲れてしまって(笑)。本当なら色々やりたいはずのポートフォリオが自由度が低くて画一的なものになってしまっていた。それが5年間もほぼ放置されていた理由です。
一方『MATCHBOX』のポートフォリオは時間をかけてじっくりつくったわけではありません。自分がアピールしたいスキルを考えて、それを表せる作品を選択して画像やムービーをアップロードしていくだけ。僕の場合は「ソーシャルで仕組みをつくって多くの人にシェアしてもらうこと」だとか、「バズるコンテンツをつくれること」「拡がるアプリをつくれること」などをテーマに作品を選択してその解説を書きました。クリエイティブディレクターという仕事はともすれば「何をやったかわからない」状態に陥ってしまうので、どんなところで自分のバリューを出せたかを、ポイントで明確に表すことを狙いました。
解説のテキストは、凝った文章よりも、しっかりと具体的な内容が語られていること。また作品に対する客観的な評価を瞬時に読み取ってもらうには受賞歴があれば効果的です。自分のスキルセットを示すものとして必ず書き込むべきですね。
── 今回、中村さんには、採用側と転職側の両方の立場を行き来していただきました。それでは最後に、採用に携わる経営者として、そして自らもクリエイティブを行うプレイヤーとして、転職を考えているクリエイターの皆さんにポートフォリオづくりについて、ひと言お願いします。
中村氏:ポートフォリオは用意して見てもらう受け身なものと思われがちですが、実は自分のプレゼンテーションで「クリエイターの攻め手の一つ」だと思うんです。目標はあなたのスキルセットがシンプルで明確に表現されていること。それで採用担当者をうならせることができれば可能性が広がります。これまで応募書類の一つでしかなかったポートフォリオですが、いまでは様々な職種のクリエイターがセルフプロモーションとして公開型のポートフォリオに取り組んでいます。SNSや業界内の口コミでその評判が拡散し、クリエイターに大きなチャンスが訪れることもいまでは珍しいことではありません。
『MATCHBOX』は、今さら自分のポートフォリオをつくろうなんて思っていなかった僕でも、取りかかるとすぐに完成形が見えてきました。使い方は本当に簡単なので、ちょっと自分の作品を配置してみるといいですよ。それだけでポートフォリオづくりの敷居がぐっと低くなるはずです。自分のいま現在の力を客観的に自身の目で見つめるために、そして確実に新たなチャンスを掴むために。私たちの業界ではいまやポートフォリオはクリエイターにとって欠かすことのできない重要なアイテムとなりました。クリエイターを採用する側としてもポートフォリオほど真剣に見るものはありません。これから未来を拓こうというクリエイターにはぜひ全力で取り組んでいただきたいテーマですね。
インタビューを終えて
いまをときめくクリエイター集団PARTYの取締役でクリエイティブディレクターとして現在も数々のプロジェクトを進行する中村氏。多忙な中、採用者と転職者の両方の目線から『MATCHBOX』を体験するという今回の企画にお付き合いいただいた。この体験を、読者の皆様に臨場感をもって楽しんでいただくため、インタビューではありのままをお届けしたが、この記事を読んで、ぜひ「ポートフォリオの重要性」を再認識してもらえたらありがたい。
私達マイナビクリエイターも、日々、クリエイターの転職を支援させていただく中で気付いたポイントなどを、「ポートフォリオの作成ノウハウ」として、提供している。ぜひ、あなたも、これを機会に「クリエイターの攻めの一手」としてのポートフォリオを作成してみてはいかがだろうか。