一緒にモノ作りを考えてくれるメンバーと、新しいクリエイティブを生み出すために ―― ビーワークス 漆迫雅充氏インタビュー

Web・ゲーム業界のキーパーソンを特集する「Creator's File」Vol.05

第一線で活躍しているクリエイター達のリアルな声をお届けしています。自分とは異なった環境で働くクリエイター達の熱意や考え方を、ぜひ、あなたらしいキャリア形成のためにお役立てください。

小学館の「CanCam」をはじめ、宣伝会議の「販促会議」といった有名雑誌のアートディレクションやデザインのほか、ナショナルクライアントの大規模Webサイトの開発・リニューアルにも携わり、アプリ分野では「おさわり探偵 なめこ栽培キット」などのヒットも飛ばす株式会社ビーワークス

雑誌・書籍、広告・販促ツール、Webサイトなどのデザイン・制作から、スマートフォンアプリやゲーム、業務支援システムの開発まで、幅広く事業を展開するビーワークスとは、いったいどんな会社なのか。そして、ビーワークスにおけるWebディレクターはどんな存在なのか。情報開発事業部 Web制作部 ディレクショングループで活躍する漆迫雅充氏にお話を伺った。

そこにデザインが介在するのなら、それはビーワークスの領域

── まずはビーワークスという会社についてお伺いしたいと思います。コーポレートサイトを拝見したのですが、一般的なデザイン・制作会社とは少し趣が異なる印象を受けました。

漆迫氏:おっしゃるとおりです。事業として紹介すると、雑誌や広告、Webサイトのデザイン・制作、スマートフォン向けのアプリの開発といった月並みな言葉になってしまうのですが、実際の我々のミッションは、「デザイン」というものの、もっと本質的な価値の追求といえるのかもしれません。

雑誌、広告、Webサイトなどのデザイン・制作という目に見えるクリエイティブの部分はもちろん、プログラムやシステム、さらにはモノづくりのプロセスといった目に見えないものまでもデザインするというミッションを掲げ、それを実践している珍しい会社だと思います。プロダクト、サービス、プロセス…、そこにデザインが介在するのであれば、そのあらゆるものが弊社の携わるべき領域だと考えています。

── いくつか具体的な事業を挙げていただきましたが、現在、もしくは将来的に注力する領域を定められているのでしょうか。

漆迫氏:紙媒体のデザインから出発している企業なので、雑誌のデザインには強みを持っていますし、広告や販促ツール、Webサイトのデザイン・制作にも注力していきます。また、「おさわり探偵 なめこ栽培キット」のように、自社でスマートフォン向けのゲームを開発しており、こちらも重要な事業です。ただし、これらにこだわっているわけではありません。

そもそも弊社には、事業方針をトップダウンで決定するという文化がないのです。基本的にすべてがボトムアップで決まっていきます。大きな枠として事業はあるものの、各部門がそれぞれに進むべき道を考え、事業化しているというイメージが近いと思います。

スマートフォン向けゲームアプリの開発はその好例です。元々、弊社では受託形式でゲームの開発を行っていたのですが、スマートフォンでゲームをするという行為が一般化する中で、ゲーム開発の部門から、我々のノウハウを活かせば、ゲームのパブリッシャーになれるのではないかという意見が出たのです。そしてそれが、「おさわり探偵 なめこ栽培キット」となり、事業の軸のひとつとなっています。

Webディレクターによる緻密な収支管理が、高クオリティと働きやすさを実現

── ビーワークスという会社が、単にデザイン・制作を受注するだけの会社ではないということがひしひしと伝わってきましたが、ビーワークスのWebディレクターはどのような仕事をしているのでしょうか。

漆迫氏:作業ベースで申し上げますと、クライアントとの折衝はもちろんですし、Webサイトの情報設計からデザインディレクション、システム領域のディレクション、効果検証まで、Webサイトの制作・運用に関わる工程をすべて管理していきます。また、各プロジェクトにかかった工数と売上を分析して、収支管理をするという点が特徴的かもしれません。

── いわゆるデザイン・制作会社のWebディレクターが収支管理をするというのは珍しい例だと思います。

漆迫氏:毎月、プロジェクトごとの収益性が発表されますので、WebディレクターだけではなくWebデザイナーやエンジニアなどのメンバーも収益やコスト、効果に対する意識が高いと思います。収支管理をする以上、弊社のWebディレクターは工数管理も緻密です。そうすることで、「良いモノを作るためには時間とお金がかかっても仕方がない」という発想から脱却できるんです。

「時間が足りない」「予算が足りない」といった逃げ道を作らずに、最高のクオリティを実現するためにはどうすればいいかを考えて、現場をハンドリングできるのが弊社のWebディレクターであり、優れている点といえるかもしれません。

デザイン・制作会社では、年俸制など残業手当がつかない給与体系をとっている会社も多いと思いますが、弊社は残業代もしっかりと支給されます。それは、Webディレクターをはじめとする現場のメンバーが、しっかりと収支管理を行っているからです。現場の業務や意識の高さが、会社のしくみにも反映されているわけです。

Webディレクターの質を高める「ディレクターズポリシー」の7ヵ条

── 無駄な時間とコストをかけずに高いクオリティを維持する。非常に難しいことだと思いますが、ビーワークスのWebディレクターはどのように実現しているのでしょうか。

漆迫氏:弊社のWebディレクターには、ファシリテーション能力が高い人間が多い気がします。クライアントの要望は次々と生まれてきますし、時にはちゃぶ台返しのような事態も発生します。その中で、実際にいつまでに何をどのように作るのか、それによってどのような利益が生まれるのかを、プロセスを含めてデザインし、クライアントといっしょにプロジェクトを進めています。

── Webディレクターとしての本質をとらえた言葉だと思いますが、なかなか実践できずに悩んでいるWebディレクターも多いと思います。ビーワークスでそれが実現できるのはなぜでしょうか。

漆迫氏:特効薬的なものがあるわけではありませんが、弊社には「ディレクターズポリシー」というものがあり、それが役に立っているのではないかと思います。

ビーワークスディレクターズポリシー

ビーワークスで働く1人のWebディレクターとして、次の7つを心がけよう。

  • 「できない」ではなく「どうしたらできるか」を考えよう
  • 相手が動いてくれるように、自分が動こう
  • 気を利かせよう
  • 人の意見は肯定的に捉え、まずは肯定的な発言をしよう
  • 責任はすべてディレクターが持つものと考えよう
  • もっと効率の良い方法を考えよう
  • 新しい挑戦の機会をつくろう

非常に平易な言葉を使っているのでお恥ずかしいのですが、まさにこれがWebディレクターの本質だと思うのです。ちなみに、このディレクターズポリシーも、すべてボトムアップで作られたものです。「ビーワークスのWebディレクターとして絶対にぶれてはならないものをクリアにしよう」という意見が自然に持ち上がり、現場レベルでまとめていきました。

たくさんの人を巻き込んだほうが、モノづくりは間違いなく楽しい

── 続いて、漆迫さん個人のこともお伺いしたいと思います。まずはこれまでのキャリアと、現在の業務についてお聞かせいただけますか。

漆迫氏:ビーワークスには新卒で入社していて、当初の配属はWebデザイナーでした。Webディレクターになったのは入社してから数年後です。現在は、WEB制作部のディレクショングループで育成面をリーダーとして担当し、大規模案件のプロジェクトマネジメントが主要業務になっています。

とはいえ、情報設計やシステムの要件定義など、自分で手を動かす作業も少なくありません。割合としては、プロジェクトマネジメント業務が6割、プレイヤー業務が4割というところでしょうか。

── 当初はWebデザイナーだったのですね。Webディレクターになろうと思ったきっかけは何だったのでしょう。

漆迫氏:Webデザイナーとして働く中で、もう少し広い視野でモノづくりに携わりたいと考え始めたのがきっかけです。実はWebディレクターへの転身のタイミングが、キャリアというかクリエイターとしてのターニングポイントになっています。

Webディレクターになって比較的早いタイミングで、5,000ページ以上の大規模サイトのリニューアル案件のメインディレクションを任されたんです。Webデザイナー時代は「自分一人でどうにかしなければならない」という思考が強かったのですが、それだけの規模になると物理的にも時間的にも、自分一人で動かせるものではありません。

そのときに、「いっしょにモノを作ってくれる、考えてくれるメンバーがいる」ということに気付いたんです。そして、たくさんの人が関わってアイディアを出し合ったときに、自分一人で考えたモノよりもずっと優れたモノが生まれるということにも気付きました。小規模の案件ばかりを担当していたら、もしかしたら気付けなかったことかもしれません。仕事を通して、強引に視野を広げられた形ですが、その仕事を任せてくれた上司には感謝しています。

── 確かに、他人を巻き込む力がWebディレクターには必要だとよくいわれますね。

漆迫氏:必要なものだと思いますし、たくさんの人を巻き込んだほうが、間違いなく楽しいですよ。Webデザイナーやエンジニアとディスカッションすることで、新たなクリエイティブが生まれてくることもあります。協力してくれるメンバーが増えれば増えるほど、良いモノができると信じています。

「人が好き」という気持ちが、Webディレクターには必要不可欠

── たくさんの人と関わって仕事をしたいという気持ちが強いようですが、漆迫さんが「ぜひいっしょに働きたい」と思う人はどんな人でしょうか。

漆迫氏:弊社にご入社いただけるという前提でお話しするのであれば、1点目は、弊社や弊社のメンバーと相乗効果を生んで、より高い能力を発揮していただける方になります。曖昧な言い方になってしまいますが、既存のメンバーとその方のスキルやパーソナリティを掛け算して、お互いにどんなメリットが与えられるのかを考えます。

2点目は、修羅場をくぐれるタフさがあることです。勤務がハードだということではなく、困難な課題が提示されたり、越えるべきハードルが高かったりしたときに、どうすれば乗り越えられるのかを逃げずに考えられる、思考的なタフさを持っていてほしいです。

3点目は月並みですがコミュニケーションです。Webディレクターはチームを作り、チームを動かすことが仕事ですから、周りのメンバーとスムーズにコミュニケーションを図れることはとても大切です。

── それでは最後に、求職者の方へのメッセージをいただけますか。

漆迫氏:Webディレクターは、チームを作り、動かすのが仕事ですから、「人が好き」という気持ちがとても大切だと思います。先ほども申し上げましたように、たくさんの人が関わったほうが、間違いなく楽しいですし、良いモノが生まれると信じています。私自身も、チームを作ったり、人と関わったりしながら、モノを作るという仕事を大切にしていきたいと考えています。

インタビューを終えて

人との関わりという点を非常に重視するのがビーワークスのワークスタイル。Webディレクターのあいだでは、毎週定例ミーティングが開催されており、プロモーションのトレンドや新しいテクノロジーに関する情報交換、抱えている課題についての相談などが行われている。また、プロジェクト管理ツールの「Backlog」上にも、最新情報を投稿する場があるそうだ。

情報や課題を一人で抱え込むのではなく、チーム全体に広げていける風通しの良さと横のつながりがWebディレクターの成長を促進し、結果的に良いモノづくりにつながっているのかもしれない。

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