サーバーエンジニアのスキル証明に役立つ5つの資格

資格取得はサーバーエンジニアとしての技量を証明する有効な手段であると共に、もう1つ、大きなメリットがあります。それは、試験勉強をすることで汎用的な知識やスキルをバランスよく習得できることです。資格は必ずしも転職を有利にするものではありませんが、挑戦すること自体に大きな意味があるのです。

そこで今回は、サーバーエンジニアにとって有益な資格を5つご紹介します。それぞれの概要や資格取得方法、受検費用についてまとめたので、ぜひ参考にしてください。

サーバーエンジニアに役立つ資格5選

IT系の数ある資格の中から、サーバーエンジニアにとって有益な資格をまとめました。ご自身の志向に合うものがあれば、ぜひチャレンジしてみましょう。

01. LinuC(Linux技術者認定)

LPI-Japanが提供する「LinuC(リナック)」は、サーバーエンジニアにとって必須スキルとなるLinux(リナックス)関連の資格です。LinuCの認定を取得することは、今のサーバーエンジニアに強く求められるクラウド/仮想化技術を身に付けたサーバーエンジニアであることをアピールできます。なお、LinuCの試験は難易度によって4段階に分かれており、出題範囲や問われる技術レベルの難度が異なります。以下で、各レベル別の特徴についてご紹介します。

LinuCレベル1(LinuC-1)

物理/仮想の環境を問わず、Linuxシステムの基本操作とシステム管理を問われるのが特徴。Linuxの基本操作とシステム管理を実務でこなしているサーバーエンジニアであれば十分取得可能ですが、基本的なクラウド環境でのセキュリティの考え方を理解することや、オープンソースの文化についても理解しておくとよいでしょう。
資格を取得するには、101試験と102試験のいずれにも合格する必要があります。

LinuCレベル2(LinuC-2)

仮想マシン・コンテナを含むLinuxシステム、およびネットワークの設定・構築のスキルを問われるのがレベル2です。仮想環境を含むLinuxのシステム構築やネットワークの構築はもちろんのこと、アーキテクチャに基づいた設計・導入・保守・問題解決ができるエンジニアであることを証明する資格です。
認定を取得するには、201試験と202試験のいずれにも合格する必要があります。

LinuCレベル3(LinuC-3)

サーバーエンジニアが関わるべき、さまざまな分野のエキスパートであることが認められる資格です。なお、試験内容は以下の分野に分けられています。

  • 300試験:混合環境(Windows、Linux、Unix)における設計・構築、運用・保守に関わる技能
  • 303試験:高度なセキュリティレベルにおけるシステム設計・保守の技能
  • 304試験:クラウドコンピューティングシステムの設計・保守の技能

上記3つのいずれかに合格すると、その分野におけるスペシャリストであることが認定されます。つまり、LinuCレベル3の認定取得は、それぞれの専門性について深い知識と技能を持つサーバーエンジニアであるという裏付けにもなるのです。

LinuCシステムアーキテクト

大規模なシステムにおいて、最適なアーキテクチャを設計・構築できる、上級エンジニアであることが認められる資格です。
認定を取得するには、「有意なLinuCレベル2の認定」を保有し、かつ、201試験と202試験のいずれにも合格する必要があります。

参照:LinuCが証明する技術レベル

LinuC(Linux技術者認定)
  • 運営:LPI-Japan
  • 受験費用:
    • LinuCレベル1:16,500円/1試験
      (101試験と102試験の受験が必要なので、資格取得には合計で33,000円が必要)
    • LinuCレベル2:16,500円/1試験
      (201試験と202試験の受験が必要なので、資格取得には合計で33,000円が必要)
    • LinuCレベル3:16,500円/1試験
    • LinuCシステムアーキテクト:27,500円/1試験
  • 受験方法:
    試験を受ける順番に制限はありません。また、それぞれ受験する試験ごとに合否の結果は出ます。
    ただし、認定を取得するためには下位の認定を取得する必要があります(つまり、レベル2の認定を取得するには、レベル1の認定を取得する必要があります)。
  • 出題形式:多肢選択、コマンド入力参照

02. CCNA

CCNAは、ネットワーク関連機器メーカーとして世界最大手となるCisco Systems(シスコシステムズ)が運営するネットワーク技術者の認定資格であり、Cisco技術者認定の1つです。合格することで取得できる資格は世界共通基準であり、ネットワーク業界において高い知名度を誇ります。

CCNAは国内の受験者数も非常に多く、ネットワークエンジニアはもちろん、サーバーエンジニアにとっても注目すべき資格と言えるでしょう。なお、有資格者になればCiscoルータやCatalystスイッチといったCisco製品に関わるスキルを持つサーバーエンジニアであることがアピールできるほか、基本的なネットワーク技術にも精通しているエビデンスになります。

また、2020年2月より、従来のCCNAは新しいCCNAへと大幅に改定されました。これまでは専門分野ごとに分かれていた試験科目が1つに集約されたのです。これにより受験者は試験内容の範囲が広がり難易度としては高くなったと言えるでしょう。こうしたCCNAの大幅改定には、日々新しくなる技術に対して、エンジニアも横断的な技術・知識が求められるようになったことがうかがえます。

旧試験 新試験
CCNA Routing & Switching CCNA
CCNA Cloud
CCNA Collaboration
CCNA Data Center
CCDA
CCNA Industrial
CCNA Security
CCNA Service Provider
CCNA Wireless

なお、新しいCCNAの試験範囲は以下の通りです。

ちなみに、Cisco技術者認定には難易度の低い方から「エントリー」「アソシエイト」「プロフェッショナル」「エキスパート」、そして最高水準にあたる「アーキテクト」という5つのグレードがあり、CCNAのグレードはこの中の「アソシエイト」にあたります。

CCNA(Cisco Certified Network Associate)
  • 運営:シスコシステムズ合同会社
  • 受験費用:CCNA 200-301 39,000円(税別)
  • 受験方法:
    Peason VUE(ピアソンビュー)の公式サイトから、Cisco技術者認定のアカウントを作成し、テストセンターと日時を予約します。
  • 出題形式:多肢選択、コマンド入力、ドラッグ&ドロップ、シミュレーション

03. CCNP

CCNPは、CCNAの上位にあたる資格です。Cisco技術者認定のグレードでは「プロフェッショナル」に分類されます。問われるのは大規模ネットワークの導入や、その保守・運用に関わる能力です。知名度こそCCNAに軍配が上がりますが、CCNPはその上位資格だけあって高い技術力や深い知識が求められます。一般的にはネットワークエンジニア寄りの資格とされていますが、サーバーエンジニアも取得しておいて損はありません。

また、CCNA同様、CCNPも2020年2月に大幅な改定が行われ、いくつかの試験が統合されました。もっともメジャーだった「CCNP Routing&Switching」は「CCNP Enterprise」に置き換わっています。

旧試験 新試験
CCNP Routing&Switching
CCNP Wireless
CCDP
CCNP Enterprise
CCNP Data Center
CCNP Cloud
CCNP Data Center
CCNP Security CCNP Security
CCNP Service Provider CCNP Service Provider
CCNP Collaboration CCNP Collaboration
CCNP(Cisco Certified Network Professional)
  • 運営:シスコシステムズ合同会社
  • 受験費用:
    コア試験44,800円(税別)/コンセントレーション試験33,600円(税別)
    ※2020年2月の改定により、コア試験、コンセントレーション試験の2試験となりました。
  • 受験方法:
    Peason VUE(ピアソンビュー)の公式サイトから、Cisco技術者認定のアカウントを作成し、テストセンターと日時を予約します。
    ※2020年2月の改定により、CCNPの前提条件(CCNAの取得/保持)は廃止されました。
  • 出題形式:多肢選択、コマンド入力、ドラッグ&ドロップ、シミュレーション

04. ITIL

ITサービスマネジメントの成功事例を体系化し、ITシステムのライフサイクルマネジメントを示したガイドライン(書籍)をITILと言います。1989年に初めてITIL V1がリリースされ、以降、ITIL V2、ITIL V3、ITIL2011、そして2019年には最新版となるITIL4がリリースされました。この理解度を問うための試験に合格すると、英国のAXELOS(アクセロス)という組織によって認定がなされます。

ビジネス部門向けの内容ではあるものの、サーバーエンジニアにとっても押さえておきたい資格です。また、サーバーエンジニアとしてだけではなく、より幅広いITスキルを身に付けるという意味でも有益と言えるでしょう。

ITIL(Information Technology Infrastructure Library)
  • 運営:People Cert
  • 受験費用:ファンデーション/55,000~62,000円(税別)
    ※試験センターやバウチャー(割引)によって、受験費用は異なります。
  • 受験方法:
    People Certが認定したそれぞれの試験センターからお申込みできます。
  • 資格取得方法:
    ITIL4には5つの理解度に合わせた認定資格に分類されます。上位にチャレンジするためには、初級となるファンデーションの試験からはじめ、順を追って合格していかなくてはなりません。
    • ファンデーション:
      入門者向け。合格することで2単位が取得できます。
    • スペシャリスト:
      ファンデーションの1つ上に位置する資格。スペシャリストの中でも4つの資格に分類さています。
    • ストラテジスト
    • リーダー
    • マスター:
      最上位資格。経歴書の提出と面接によって認定がなされます。
  • 出題形式:多肢選択

05. 基本情報技術者試験・応用情報技術者試験

IPA(情報処理推進機構)が実施する情報処理技術者試験で、国家資格の1つです。基本情報技術者試験(FE)と応用情報技術者試験(AP)に分かれており、いずれもクライアントの課題に対して戦略立案やシステムの設計開発、保守・運用の知識・技術力が問われます。なお、具体的な出題カテゴリーは「テクノロジー系」「マネジメント系」「ストラテジー系」「情報セキュリティ」です。このように、幅広いITスキルを身に付けることが必要となる試験であるため、サーバーエンジニアを目指すのであれば、ぜひ学習に取り組んでみましょう。

基本情報技術者試験・応用情報技術者試験
  • 運営:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
  • 受験費用:各7,500円
  • 受験方法:
    • 基本情報技術者試験:
      2023年4月より通年試験となったため、受験者の都合に合わせて受検可能。
      科目A・科目Bと分かれて試験があります。
    • 応用情報技術者試験:
      春期(4月)と秋期(10月)の2回実施されます。
      午前と午後に150分の試験があり、それに合格することで資格取得となります。なお、受験資格は設けられていないので、サーバーエンジニアとしての実力がある方であれば、上位資格となる応用情報技術者試験(AP)から受検することも可能です。
  • 出題形式:多肢選択、記述

転職において、サーバーエンジニアが資格を有しておく必要性とは

サーバーエンジニアの転職では、資格よりも実務経験や実績が重視されます。とはいえ、初対面の採用担当者に自身の実績を伝えるのは難しいもの。そんなとき、資格があれば自己PRに繋げることができたり、未経験者であれば、前向きなアピールができます。

応募先の企業が求める資格があれば優先的に取得したり、外資系企業への転職や海外進出を視野に入れて世界共通の認定資格を目指すのもよいでしょう。中には「資格手当」制度を設けている企業もあるので、資格を持つことで金銭的なメリットを受けられることもあります。

まとめ

今回はサーバーエンジニアに有益な資格についてまとめました。サーバーエンジニア向けに資格取得の優先順位を付けるとするなら、紹介した順にLinuC、CCNAがおすすめです。もちろん、現場によってサーバーエンジニアに求められる知識・技能は異なります。状況に応じて最適なものを選ぶように心がけましょう。

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