Webマーケティングはしんどい仕事?その実態を現役マーケターが解説!
企業のマーケティング活動において、Webマーケティングは年々重要度を増しています。Webマーケティング人材の需要も増えていますが、仕事内容についてインターネットで調べると「Webマーケティングはしんどい」という記事やSNS投稿も目につきます。
Webマーケティングは本当にしんどくて、やめておいたほうがいいような仕事なのでしょうか。その実態を、マイナビクリエイターの現役Webマーケター本郷孝太郎が、実体験をもとに詳しく解説します。
プロフィール
大学卒業後、金融業界にて営業とマーケティング業務に従事。その後、マイナビワークスに入社し、現在は主にWeb・IT・ゲーム業界を専門とした人材紹介サービス「マイナビクリエイター」にて、サイト運営、SEO対策など幅広く担当。自身も独学でWebマーケティングを習得、その実績をもとに就職した経験あり。
目次
そもそもWebマーケティングの仕事内容とは?
Webマーケティングの仕事内容は、検索結果で自社のページを上位表示するためのSEO(Search Engine Optimization 検索エンジン最適化)、Web広告の企画や運用、SNSやメールマガジンの運用、自社サイト上でのコンテンツ発信やサイト導線の改善、各施策の効果測定と戦略策定など多岐にわたります。WebサイトやWeb広告に関する知識や、マーケティングに関する知識、自社の製品・サービスに関する知識のほか、コンテンツ企画やデータ分析のスキルなど、幅広い知識・スキルが求められる仕事です。
そもそもWebマーケティングとは何か、簡単に説明すると、Webサイトに多くのユーザーを集め、Webサイトを通じてモノやサービスが売れる仕組みを作る仕事です。
ユーザーは、Googleなどの検索結果、SNS投稿、さまざまなWebメディアやアプリ上に表示される広告やメールマガジン、チラシに掲載されたQRコードなどを通じて、Webサイトにたどり着きます。企業は、こういったさまざまなタッチポイントをより効果的に活用し、自社の製品サービスの潜在顧客と繋がるために、Webマーケティングを展開します。
現役マーケターが思う、Webマーケティングの仕事がしんどいと感じる6つの理由
Webマーケティングという言葉から最先端のきらびやかな仕事を想像し、何となく憧れている人も多いのではないでしょうか。最先端のイメージと「しんどい」という言葉にギャップを感じている人もいるかもしれません。
しかし、実際にWebマーケティングに携わっていると、たしかに「しんどい」と感じる場面は日常的にあります。私の体験から、Webマーケティング「しんどい」と感じる理由を6つご紹介します。
実装と効果測定の繰り替えしで地道な作業が多い
マーケティングといえば「企画を立てる」「プレゼンをする」といった、何となくクリエイティブなイメージが思い浮かぶかもしれませんが、これはPDCAの「P(Plan)」の部分で、業務における重要度は高いものの、ボリュームはそれほど大きくありません。実際の業務は「D(Do)」にあたる施策の実装と、「C(Check)」にあたる効果測定の部分が大半です。
自分のアイデアを生かしたい、華やかな仕事がしたい、と思ってWebマーケターになると、地道な作業の繰り返しにしんどさと感じるかもしれません。
Webマーケターになりたての頃に、「しんどい」と思った最大の理由は、想像していた仕事のイメージと実際の業務とのギャップでした。Webマーケターの仕事は、かなり地道な作業が続きます。

Webマーケターになりたての頃に、「しんどい」と思った最大の理由は、想像していた仕事のイメージと実際の業務とのギャップでした。Webマーケターの仕事は、かなり地道な作業が続きます。
常に数字に取りつかれる
日々、数字を追い続けなければならないことも、Webマーケティングを「しんどい」と感じる1つの要因です。
対面の場やマスメディアを使ったマーケティング活動では、実際の売上などに成果が表れるまでに時間差があります。ユーザーの行動を精緻に追跡することは難しく、効果測定を行うスパンも長めです。それに対してWebマーケティングでは、ユーザーの反応をリアルタイムにデータで確認することができるため、PDCAのサイクルが高速になります。
そのため、同時進行しているさまざまな施策の成果について日々数字をチェックしなければならず、業務時間外でも数字のことが頭から離れない、という状況に陥りやすいのです。
最新のトレンド、技術に常にアンテナを立てておく必要がある
もう1つ「しんどい」と感じるのは、日々変化するWebマーケティングの技術やトレンドにキャッチアップし続ける必要があることです。
Webマーケティングの戦略は、主要な検索エンジンやSNSの仕様・アルゴリズム変更に大きく左右されます。
また広告管理や効果測定などに使っているツールの仕様が変わったり、新たなツールが登場したりすると、社内の業務フローが大きく変わることもあります。一方、生成AIの活用により業務効率を改善できる可能性も出てきています。新しい技術をいち早く活用することが戦略上有利に働くため、常にアンテナを高くしておく必要があるのです。
たとえば最近では、Googleの検索結果に「AIによる概要」が表示されるようになったことにより、検索結果からサイトへの流入が減少しました。こういった変化に直面するたびに、対策に追われます。

たとえば最近では、Googleの検索結果に「AIによる概要」が表示されるようになったことにより、検索結果からサイトへの流入が減少しました。こういった変化に直面するたびに、対策に追われます。
戦略策定が途方もない
戦略策定の難しさに直面したときも「しんどい」と感じることがあります。
常に技術やユーザーの動向が変化し続けるWebマーケティングにおいて、正解は誰にもわかりません。とくに新しい施策に取り組むときは、実際にやってみなければわからないことがほとんどです。
しかし、費用をかけ、人員を割いて施策を実装する判断をするには、慎重な戦略策定が必要です。具体的には、市場調査などをもとにユーザーのペルソナを設計し、ユーザーの行動を予想して施策を導き出します。そこからどれだけの効果が見込めるのか、どれだけの予算を割くべきかなどを検証します。こういった事前の調査やシミュレーションには、途方もない時間と労力がかかります。
デスクワークが多い
Webマーケターは細かい作業が多いため、肩こりや腰痛、眼精疲労などに悩まされる人も少なくありません。集中を要する作業が続き、気分転換をする時間がない、といった点も「しんどい」と感じる要因です。
ほとんどがPCと向き合ってのデスクワークなので、場所を選ばないため在宅勤務がしやすいなどのメリットはあります。しかし、運動不足になりがちなので、健康的な生活をするには個人の意思や努力が必要となります。
何でも屋だと思われることもある
WebマーケターはWebに関する幅広い業務を担当しているため、ほかの部署からWebに関する質問や相談を持ちかけられがちです。デザイナーならデザイン、エンジニアならコーディングやシステム関連と専門性がわかりやすいのですが、マーケターはWeb以外の部門の人から見ると、どんな業務をしているか想像がつきにくいのでしょう。
Webに関する知識やスキルが幅広いこともあり、社内で「Webの何でも屋」と認識され、本来業務以外の依頼や相談で時間が圧迫されてしまうこともあります。
こういった中途半端な立ち位置も「しんどい」に繋がっている要因です。
しんどい理由を払拭する、Webマーケティングの魅力5選
ここまで見てきたように、Webマーケティングの仕事が「しんどい」というのは事実です。ただし、そのしんどさをどれだけ感じるかは、その人のWebマーケティングの仕事に対する向き・不向きや、興味・関心によっても大きく変わってきます。
私自身は、仕事でしんどさを感じる場面はあるものの、Webマーケティングにはそれを上回る魅力があると考えています。

ここまで見てきたように、Webマーケティングの仕事が「しんどい」というのは事実です。ただし、そのしんどさをどれだけ感じるかは、その人のWebマーケティングの仕事に対する向き・不向きや、興味・関心によっても大きく変わってきます。
私自身は、仕事でしんどさを感じる場面はあるものの、Webマーケティングにはそれを上回る魅力があると考えています。
何よりも、Webマーケターの仕事には、将来のキャリアに対する明らかなメリットが数多くあります。主なメリットは以下の5つです。
ロジカルシンキングが身に付く
最大のメリットは、日々の業務の中で論理的に考える癖がつくことです。
Webマーケティングの仕事では、調査から仮説を立て、そこから施策を導き出して実装し、結果から原因を解明して施策の改善に繋げるなど、常にものごとの因果関係を考える必要があります。戦略を立てる際はもちろんのこと、戦略を人に伝える際にはロジックを明快に説明して相手を納得させる必要があります。
それによってロジカルシンキングやロジカルコミュニケーションが身に付きます。論理的に考え・伝えるスキルはビジネスのさまざまな場面で役立ち、たとえキャリアチェンジをしても生かすことができます。
ネットリテラシーが上がる
業務の中で常にWebマーケティングの最新トレンドに触れることで、ネットリテラシーが上がる点もメリットです。
ネットリテラシーが高ければ、ビジネスだけでなく、プライベートでも大いに役立ちます。怪しいDMやWeb広告を見抜き、Web上での個人情報開示などのコントロールも適切にできるようになり、Webを利用する際のストレスが減ります。
また、WebやSNSの広告やキャンペーンサイトなどを見れば相手の狙いがある程度わかるため、無駄な広告閲覧や余分な買い物を避けることもできます。こういったリテラシーは自分だけでなく家族や友人などへのアドバイスにも生かすことができ、周囲から重宝されます。
社内で重要な存在になれる
企業にとってWebは重要な集客ツールです。一方、Webの重要性を認識し、Webマーケティングに可能性を感じている役員や社員は多くても、具体的に何をどうすればいいのか知っている人は少数です。
そのため必然的にWebマーケティング部門は社内で頼られる存在になります。Webマーケターの人材としての重要度も高くなります。これもWebマーケティングの仕事をするうえでの大きな魅力と言えるでしょう。
副業など会社以外でも活躍できる
Webマーケティングの知見を持った人材を求めているのは、自社だけでなく他社も同様です。自社Webサイトへの集客に力を入れたくても、人材がいなくて困っている企業は多数あります。
そういった意味でWebマーケティングの知識・スキルは転職においても有利ですし、勤務先が副業OKであれば、休日などを使った副業として個人でWebマーケティングの仕事を受ける選択肢もあります。
Webマーケティングは、社会に役立ち、収入アップにも繋げられるスキルなのです。
肩書を超えた知見が身に付く
記事の前段でもお伝えしたように、WebマーケティングはWebに関する幅広い知識・スキルを求められる仕事です。それらを習得するためにはたくさんの勉強や業務での経験が必要なので、「しんどい」面はあるのですが、習得することでキャリアの選択肢は各段に広がります。
Webマーケティングの仕事をすることで、Webやマーケティングについての知見はもちろんのこと、広告クリエイティブなどのデザイン領域、Web接客などのフロントエンド領域などにも知見が広がります。
Web全般に関するマルチなスキルが身に付くため、Webマーケティング分野でのキャリアアップ、近接領域へのキャリアチェンジ、独立して個人やベンチャー企業でWebサービスを運用するなどの可能性も開けます。
今後活躍していくWebマーケターになるためには
ここまで、Webマーケティングのしんどさと、それを乗り越えて得ることができる数々のメリットについて解説してきました。
Webマーケターは、今後も需要が高まることが予想される、魅力ある職種です。とはいえ、変化し続けるWebのテクノロジーや、生成AIの活用など、不確定な要素もあります。
Webマーケティングの仕事に興味を持ち、Webマーケターを目指したいと思う人は、将来的に活躍できる人材になるために以下の3点を意識してみてください。
AIの動向に注意をはらう
生成AIの発達は、Webマーケティングの仕事に今後大きな影響を与えることが予想されます。技術の動向や、AI活用のトレンドから目を離さないようにしましょう。
Googleの検索結果にAIによる要約が追加されたように、AIは人々のWeb使用体験や、Webメディアのあり方を大きく変える可能性があります。変化をキャッチアップして、素早く適応できるようにしておくことが大切です。
AIを活用することで、戦略策定やコンテンツ作成、効果測定などの業務を大きく効率化できる可能性もあります。AIにできる作業はAIに任せて、業務の品質とスピードを上げることができれば、より必要とされる人材になれるはずです。
肩書に縛られない
Webマーケターという肩書にあまり縛られず、Web関連のさまざまな分野に関心を持つことも大切です。
たとえば、中途採用をしている企業の求人票をよく見ると「Webプランナー」「Webマスター」「Webディレクター」などの肩書で募集が出ていても、業務内容はWebマーケターに近い、というケースもあります。思うような求人が見つからないときは、近接の分野にも目を向けてみましょう。
Webマーケターとして入社したとしても、ときには業務範囲を超える相談や依頼が降ってくることもあります。もちろん主要な業務を疎かにはできないのでケースバイケースですが、時間的に対応可能なことであれば、経験のない業務にもチャレンジしてみることをおすすめします。きっと視野が広がり、その後のキャリア形成に役立つはずです。

Webマーケターとして入社したとしても、ときには業務範囲を超える相談や依頼が降ってくることもあります。もちろん主要な業務を疎かにはできないのでケースバイケースですが、時間的に対応可能なことであれば、経験のない業務にもチャレンジしてみることをおすすめします。きっと視野が広がり、その後のキャリア形成に役立つはずです。
企業の上流の視点を持つ
Webマーケターとして働き始めたばかりのときは、データ集計など末端の細かい業務が中心かもしれません。それでも、つねに戦略視点を持って業務に臨むようにしましょう。
ただ作業をするだけでなく、Webマーケティング戦略に照らして望ましい結果が出ているのか、今後どう改善すべきなのか、たとえ自分が提案する立場になかったとしても、自分が上司の立場だったらどうするかを考え意見を持つことが大切です。
さらに、Webマーケティングにどれだけの費用が投入されているのか、どれだけの費用対効果が得られているのか、今後マーケティング費用全体のうちどれだけをWebに割り当てるのが適切かなど、経営の立場から考えてみましょう。こういった癖をつけることが、戦略立案のスキルに繫がっていきます。
Webマーケティングに向いている人の特徴
Webマーケティングの仕事は、向いている人であればしんどさをそれほど感じることなく、むしろ楽しんで仕事に取り組める場合もあります。
Webマーケティングに向いている人の特徴は、主に以下の4点です。
- ロジカルシンキングができる
- 数字を使った業務、分析が得意
- トレンドに敏感
- 発展思考
Webマーケティングでは、データをもとに論理的に戦略を立て、その結果を分析して改善を重ねることが求められます。苦手な人にとってはしんどい作業となる可能性がありますが、もともと得意な人であればとくに問題なく対応できるでしょう。
普段からWebのトレンドをチェックしている人ならば、「業務だから」という感覚なしに最新情報をキャッチアップできます。また、新しい技術やツールをいち早く取り入れ、新しい施策にチャレンジするのが好きな人ならば、戦略や施策のアップデートもワクワクする仕事になるはずです。
よくある質問
最後に、Webマーケティングの仕事について転職希望者からよくある質問をご紹介します。
Q.1未経験からでも独学でWebマーケティング職を目指すことはできますか?
Webマーケティングの実務経験がなくても、独学でWebマーケティングの知識やスキルを習得することは可能です。Webマーケターとして活躍している人の中にも、学校などでWebマーケティングの専門教育を受けた経験のない人は多数存在します。
今あなたがWebとは関係のない仕事をしていたとしても、WebサイトなどでWebマーケティングについての情報を調べたり、自分のブログやSNSの運用を通してWebマーケティング実務の基礎を身に付けたりすることは可能です。
独学する方法について、詳しくはこちらの記事も参考にしてください。
Q.2Webマーケティングに関する情報はどうやって収集していますか?
専門メディアやブログ、SNSなどから多くの情報を収集することができます。Webマーケティング分野は変化が激しい分野なので、最新のトレンドやツール情報など、オンラインであればリアルタイムで情報収集できます。
また、マーケティングの分野だけでなく、Webデザインのトレンドや、FigmaなどWeb関連のツール、新しい技術などについても、同様にさまざまなWebメディアやセミナーで情報収集できるでしょう。
私自身は、WebマーケターのSNSや、MarkeZine(マーケジン)などマーケティング関連のWebマガジンをチェックしたり、著名なマーケターが登壇するセミナーに参加したりして情報を集めています。

私自身は、WebマーケターのSNSや、MarkeZine(マーケジン)などマーケティング関連のWebマガジンをチェックしたり、著名なマーケターが登壇するセミナーに参加したりして情報を集めています。
Webマーケティングには「しんどい」を上回る魅力がある!
Webマーケティングの仕事に「しんどい」面があることは事実ですが、「しんどい=やめたほうがいい」という結論を出すのは早計です。Webマーケティングはしんどさを上回るメリットが得られる仕事であり、向いている人ならば楽しんで仕事に取り組める場合もあります。
マイナビクリエイターでは、Webマーケティングについて、ほかにもいろいろな記事を発信しています。Webマーケティングの仕事に興味を持った方は、こちらも参考にしてください。
この記事を書いた人
マイナビクリエイター編集部は、運営元であるマイナビクリエイターのキャリアアドバイザーやアナリスト、プロモーションチームメンバーで構成されています。「人材」という視点から、Web職・ゲーム業界の未来に向けて日々奮闘中です。