次のファイナルファンタジーをつくるのはあなたかも知れない - 熱意あふれる参加クリエイター50名へ ―― 第8BDトップリーダー4人によるトークセッション
まずはスクウェア・エニックスと第8BDの説明、採用の方針についてをディビジョン・エグゼクティブの広野氏がスピーチ。続いて、FINAL FANTASYシリーズ、聖剣伝説シリーズをはじめとする同社のビッグタイトルを生み出してきたレジェンド級のゲームクリエイター渋谷氏、時田氏、同BDでマーケティング&PRマネージャーを務め『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS』のプロモーションを手がける野間氏が登壇した。モデレーターを務めたのはIGN JAPAN副編集長の今井氏。ゲーム業界に精通する同氏ならではの切り口でトークセッションは熱を帯びた展開となった。
第8ビジネス・ディビジョン(第8BD)は、組織改編により、第四開発事業本部に再編されました。(2021/1/25更新)
登壇者紹介
第8BD ディビジョン・エグゼクティブ/プロデューサー
広野 啓 - Kei Hirono
2013年に株式会社スクウェア・エニックスに入社。入社後、ゲームの映像化タイトル『実在性ミリオンアーサー』やサガ シリーズ初のPCブラウザゲーム『インペリアル サガ』のプロデュースを手掛ける。2015年に『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS』をスタート。2016年には全世界向けに『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS』のグローバル版の配信を開始。現在までに全世界2700万ダウンロードを記録。作品のプロデュース業務と共に、第8BDのディビジョン・エグゼクティブを務める。
第8BD シニア・マネージャー
時田 貴司 - Takashi Tokita
1986年、株式会社スクウェア(現株式会社スクウェア・エニックス)入社。入社後はグラフィック、企画、サウンド、そしてシナリオとマルチに担当。『ライブ・ア・ライブ』で初めてディレクターを務め、『FINAL FANTASY IV』、『半熟英雄』シリーズ、『ナナシ ノ ゲエム』シリーズといった看板タイトルのディレクションやプロデュースを行う。現在は第8BDのシニア・マネージャー/プロデューサーを勤める。
第8BD CGデザイナー/アートディレクター
渋谷 員子 - Kazuko Shibuya
1986年、株式会社スクウェア(現株式会社スクウェア・エニックス)入社。これまで『FINAL FANTASY』や『ロマンシングサ・ガ』シリーズなどキャラクタードット絵やデザインを手掛ける。『FINAL FANTASY I』のオープニングシーンなど、今なおプレイヤーの記憶に印象深く刻まれている多数のグラフィックを担当し、「ドットの匠」としてファンを魅了。
近年はアートディレクターとしてモバイル用タイトルのデザイン監修や、音楽CD『FINAL FANTASY TRIBUTE〜THANKS〜』のジャケットデザイン、『FINAL FANTASY』の吹奏楽コンサート『BRA BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO』のメインビジュアルドット絵など、さまざまなシーンで活躍。
第8BD マーケティング&PR マネージャー
野間 崇弘 - Takahiro Noma
2008年に株式会社スクウェア・エニックスに入社。入社後以来、モバイルゲームとPCブラウザゲームのプロモーションを中心に担当。これまでにいくつものタイトルのマーケティングとプロモーションを手掛ける。現在は『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS』の国内外のプロモーションを担当すると共に、第8BDマーケティングチームのマネージャーを務める。
スクウェア・エニックスにおける第8ビジネス・ディビジョンとは。求める5職種の人物像
広野氏:スクウェア・エニックスはゲームづくりや収支をビジネス・ディビジョンと呼ばれる部門単位でおこなっています。現在10のBDが社内にあり、皆さんが目にしたことのある当社のゲームタイトルというのは必ずどこかのBDが制作に携わっています。第8BDでは『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS』や『聖剣伝説2 SECRET of MANA』の制作を行ったり、コンソールゲーム、F2P、アトラクション、アニメ作品など、面白いと思ったことなら何でもやるディビジョンだと思ってください。
広野氏から社内の部門でありながら独立性を持って動くBDの説明が終わると、続いては今回の第8BDで採用を進めている5つのポジションについて人物像の説明がなされた。また今回招かれた50名余りの参加者は、事前お申し込みによって5職種のいずれかを志望する転職者である。広野氏が考える各ポジションの人物像のポイントは以下の通り。
各ポジションにおける人物像のポイント
プロデューサー
- 面白いか・つくれるか・儲かるかを考え、プロジェクト全体と収支に責任を持つ。
- 支配者ではなくプロジェクトを成功に導く先導者。
- やりたいことがしっかりあって熱意のある人。
ディレクター
- 収支やプロジェクト全体ではなくゲーム自体の面白さに責任を持つ。
- 自分のつくるゲームの面白さに絶対の自信を持っている。
- 独りよがりにならずコミュニケーション力でチームを引っ張れる。
プランナー
- コンシューマーからF2Pへの流れを理解した上でのサービス提供が前提。
- 企画・イベント・データ・PDCAなど、どこにでも関わる何でも屋さん。
- データプランニング、数字からユーザーの動向がわかる。
- コミュニケーション力+アイディア
アーティスト(デザイナー)
- 第8BDではグローバルでの呼称にあわせてデザイナーはアーティストと呼ぶ。
- スマホの進化、最先端の技術を絶えず追いかけて高みを目指せる人。
- 外部の協力会社と協業多くコミュニケーション力が必要。
- スマホでも3Dはリッチに、UnityやUnreal経験者歓迎。
- 2Dのアート全般スキルにも注目。
プロモーション
- プロモーションの側面、マーケティングの側面の両面で活躍。
- オンラインばかりでなくオフライン(イベント等のプロモーション)も。
- スクウェア・エニックスの作品について知っている。
以上のように第8BDの各ポジションのポイントが語られた。各職種のさらに詳細については、イベントの第2部となる現職メンバーによる座談会がそれぞれの職種に分かれておこなわれ、各職種への転職を検討する参加者にとって、貴重な情報を得る機会となった。
いよいよトップリーダーによるトークセッションスタート。スクウェア・エニックスにおけるゲームづくりの過去と未来。
- ファイナルファンタジーらしさとは何か?
- スクウェア・エニックスらしさとは何か?
- 第8BDの個性的なスタッフたちについて
それぞれの話題に対して登壇者たちから個性的な主張や意見が飛び出したが、印象的なコメントの一部を紹介していこう。
レジェンドクリエイターが創り上げてきた「ファイナルファンタジーらしさ」と今の『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS』
今井氏:それはキツイかも知れませんが、渋谷さんの指導を受けられるクリエイターはラッキーですね。
渋谷氏:今はだいぶ成長してくれています。
今井氏:FINAL FANTASYというと私はエフェクトに目がいきます。『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS』のエフェクトについてはどうなんでしょうか?
広野氏:もちろん『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS』には最新の3Dエフェクトが使われています。歴代のFINAL FANTASYの制作に携わってきた第1BDのアーティストに直接見てもらって、新しい中にも「ファイナルファンタジーらしさ」を出そうとしているんです。
時田氏:ゲームが時代を表すのって私はエフェクトだと思うんです。これまでのゲームを振り返ると、エフェクトによってその時代がわかる。私は『FINAL FANTASY』からドッターとして参加し『FINAL FANTASY IV』からディレクターを務めています。「ファイナルファンタジーらしさ」が何かひと言で言うのは難しいですが、やはりその時代の最新のエフェクトが絶えずFINAL FANTASYには求められていると感じています。
BDが相互に影響しビジネスの可能性を推し広げていく「スクウェア・エニックスらしさ」とは。
広野氏:私は2013年入社でまだ「ファイナルファンタジーらしさ」を語るのはおこがましい。『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS』のプロデューサーを務めるにあたって、これまでのFINAL FANTASYに携わった各BDに散っている多くのプロデューサーに直接ヒアリングしました。社内カンパニー的といってもそこはあくまでスクウェア・エニックスです。渋谷や時田もそうですが、社内に世界で巨匠といわれるクリエイターがゴロゴロいる。そして「会って話を聞きたい」と言うと、思いのほか普通に話してくれたりします。BDはライバルとして競い合いながら、面白いゲームづくりができるとなれば協力もする。その自由な感覚がスクウェア・エニックスらしさだといえますね。
時田氏:スクウェア・エニックスは10のBDが競うことで、一つの業界のようなかたちで仕事が動いています。社内を見渡しだけで、現在のトレンドが見えてくる。週刊マンガ雑誌に冒険マンガがあればコメディマンガがあるようにあのBDがあれをやっているなら、うちのBDではこれを攻めてみようというように、今どこに隙間があるかを社内で見つけることができるのです。これがスクウェア・エニックスの大きな強みになっていると私は思います。
野間氏:プロモーションの部分でもBD間の行き来は活発ですね。既存のIPに対しては開発と同様に、以前の作品の制作者やプロモーションを手がけたメンバーからのヒアリングは欠かせませんし、現制作者の言葉に一番耳を傾けるのが私たちの仕事です。宣伝プロモーション担当としてこの会社に感じることはやはり仕事の自由度の高さです。私も前職からプロモーションを経験して2008年にこのスクウェア・エニックスに入社しているのですが、提案のしやすさ、アイディアを受け入れてくれる体制が他の会社とは違うと感じています。プロモーション担当としてやってみたいと思うことに果敢にチャレンジできるこの環境が私にとってのスクウェア・エニックスらしさですね。
新メンバーが成長できる、女性が伸び伸びと活躍する。働く場としてのスクウェア・エニックス第8BDの魅力
時田氏:目立つ才能はすぐに注目を浴びますから、新しいメンバーでもチャンスは得やすく、クリエイターとして遠慮なくのし上がれます。今の若い人は最新の技術や知識の共有は早くて、IQは我々よりずっと高いと思います。それなのになぜか合議制でできあがるものが均一化してしまっているように感じます。ヤバいところを集めた方が面白い。他と一緒になってしまっては面白くないと思いませんか。ゲームはオールインワンなコンテンツです。色んなクリエイターのとがった部分を集めて、面白いゲームづくりをおこなっていきましょう。
渋谷氏:女性クリエイターが元気なのも第8BDの特色じゃないですかね。女子会も頻繁におこなっています。子育て中のママも多くて、保育園や子どもの病気なんかの情報交換も活発。女子に活気があるかどうかは職場の働き易さの指針になると思いませんか。私は社内の衛生委員会に入っていて、職場環境の整備に努めています。インストラクターを呼んでヨガを行ったり、ウォーキング&バーベキューのイベントをおこなったり、勤務中、これもインストラクターを呼んで職場を回って10分ずつストレッチを行うようにしてみたり。働く環境の改善はこれからもどんどん進めていきたいと思っています。
野間氏:第8BDのマーケティング&プロモーションの部門ではグローバルな動きが活発で、アメリカやヨーロッパのグループ拠点との協力も多く、英語に強い人材が欲しいところです。海外とのテレビ会議が頻繁にあり、通訳もいるのですが直接話せれば仕事がしやすいです。グローバル業務担当者には優先的に社内で英語レッスンを受ける機会もあります。このBDならグローバルな動きも思う存分できます。
トークセッションを終えて
トークセッション後半の質問コーナーでは「シナリオを書くための必要な理論は?」「王道と呼ばれるゲームの定義とは」という経験のあるクリエイターならではの深い質問がトップクリエイターである登壇者に向けて飛びだしていた。広野氏、時田氏、野間氏のそれぞれのポジションから回答に対して渋谷氏の「私、ゲームはしないので」という回答は登壇者、参加者ともに笑いを誘った。しかしそれは事実で、渋谷氏はこれまでクリエイターとして目の前のゲームづくりに懸命に取り組んできただけで他の人のつくったゲームには関心がないとのこと。参加者の驚きとともに一流ゲームクリエイターの意外な一面とその類い希な才能を知らしめる機会となった。
トークセッションのあとには、今まさに現場で活躍するプロデューサー、ディレクター、プランナー、デザイナー、宣伝プロモーション担当によってそれぞれのコーナー座談会をおこない、職種別説明との参加者からの質問を受け付けた。ゲーム業界での転職を希望する人にとって、スクウェア・エニックスをこれほど身近に感じる機会はこれまでなかったはずである。このイベントを終えて大きな反響が参加者から同社とマイナビクリエイターに返ってきている。これからゲーム業界での転職を考える人のためにまた是非このようなイベントを開催していきたい。