ゲームプロデューサーに必要なスキルとは?企画からリリースまでの流れに沿って解説
そこで今回は、ゲームプロデューサーが円滑に仕事をするうえで、具体的にどういったスキルが必要になってくるか、ゲームの企画段階からリリースまでの流れに沿って解説していきます。
企画立案・マネタイズスキル
ゲームプロデューサーに求められるのは、マネタイズ戦略に基づいた企画を生み出すスキルです。ここでは、ゲームプロデューサーなら身に付けておきたい企画立案スキルと基礎的なマネタイズスキルについて説明します。
ゲームプロデューサーといってもさまざまですが、特に今もっとも盛り上がりを見せているソーシャルゲーム(アプリ)に焦点を当てていきます。
企画立案スキル
ゲームプロデューサーに必要なのは、出資者や経営者が納得するような企画を立案するスキルです。実際にゲームを企画するのはゲームプランナーの役割ですが、その企画が本当に実現可能か、売れるゲームになるかを判断して、ゲーム開発に結び付くようなプレゼンテーションをするのはゲームプロデューサーの役割です。
その際、ゲームプロデューサーは、企画実現に向けて、さまざまな視点からあらゆる状況を分析・予測していきます。企画を通すために必要なのはゲーム内容の面白さだけではないからです。どのような戦略でそのゲームを売り出すのか、リリースまでのスケジュールは保証されているのかなど、ゲームプロデューサーは綿密に計画し、提案する必要があります。
ゲームプロデューサーが備えるべき企画実現に向けた分析・予測スキル
- コンテンツはヒットするか?
ゲーム業界全体のニーズ、流行の分析 - ゲームの制作体制はどうするか?
アサインするメンバーの構成、個々の能力を見極めたうえでの人員配置の予測 - コストはどれくらいか?
人的工数、時間的工数の正確な予測
戦略策定においては、仮説・検証を繰り返しながら、会社や経営理念が目指すものを実現するためには具体的にどのようなアクションを取るべきか検討します。この作業を徹底して行うことによって、通る企画が提案できるようになるでしょう。
マネタイズスキル
当然ながら、ゲームプロデューサーにはマネタイズのスキルも求められます。ゲームをプロデュースする以上、収益を得られなければビジネスとして続けていくことができないからです。そのため、ゲームプロデューサーはあらゆるマネタイズモデルの特徴や仕組みを理解しておく必要があります。ここでは、ゲーム業界において収益を出していくための3つの手法について見ていきましょう。
広告収益
まず、マネタイズの手法の1つとして、アプリ内での広告収益があります。これは、アプリ内で広告配信することによって収益を得る方法です。アプリの性質に合わせ、より効果的に広告収益を得るために必要な知識として、「バナー広告」と「リワード広告」の2つを紹介します。
バナー広告 | ほとんどのアプリに導入可能な広告で、広告を表示しただけでは売上にならず、ユーザーがタップし、広告主や「App Store」などのページを訪れた際に初めて売上を得られます。逆に言えば広告をタップしてもらえれば収益に繋がるので、アプリ内で画面遷移があるなど、複数画面に広告が設置できるようなタイプのアプリに向いています。 |
リワード広告 | 広告を表示させた先で、ユーザーがアプリのダウンロードや商品の購入を行なった場合に成果が発生するタイプの広告です。このとき、広告主から広告媒体へ報酬が支払われ、さらに広告媒体からユーザーへ「媒体の中で使えるアイテム」などの成果が与えられるのが特徴です。ユーザー目線では、アプリをダウンロードするだけで、本来ならば課金しなければならないアイテムや機能を手に入れられるので、特にアプリ内課金を導入したアプリでは有効な広告であると言えます。 |
有料アプリの販売
次に、アプリやゲーム本体を有料で販売する方法です。ゲームの内容を体験できない状態でユーザーに購入してもらう必要があるので、有料アプリとして「Google Play」や「App Store」で売り出すのであれば、アプリの解説文やキャプチャ画像をわかりやすくするなど、内容の紹介ページを工夫する必要があるでしょう。またTVCMや交通広告を使った宣伝でユーザーの購買意欲を掻き立てるといった施策も欠かせません。
無料アプリの課金システム
最後に、無料アプリの課金システムです。こちらは、本体の価格によらず、各アプリ内でアイテムや機能を購入してもらう方法です。アプリをダウンロードした段階では使える機能が限られており、課金することでゲームの機能を拡張できたり、ゲームクリアへの最善の方法や裏技、ゲームデザインの装飾を華やかにしたりすることができます。
この場合、アプリ内にいかに課金する価値を見出していけるかがポイントになるでしょう。無課金ユーザーが多い中、収益を上げるためには、ユーザーがどのような経験を求めているのか潜在的な需要を意識して、商品のコンセプトや購入までの導線を考えるスキルが必要です。
以上、ゲームプロデューサーはこれら3つの収益モデルをよく理解し、上手に組み合わせることで、「通る企画」を立案できるようになるでしょう。
他職種とのコミュニケーションスキル
ゲーム開発において、実制作に携わるのはゲームプログラマー、イラストレーター、シナリオライター、サーバーエンジニアなどのクリエイターやエンジニアです。しかし、ゲーム制作の統括者であるゲームプロデューサーなら、クリエイターたちの使用しているツールや制作工程など、ある程度は理解しておく必要があるでしょう。なぜなら、他職種の人とコミュニケーションをする際に、相手のやっていることが何もわからないと、進行に支障をきたしてしまうからです。
ゲームプロデューサーなら、著作権や下請法、個人情報保護法などについても、幅広く知っておく必要がありますが、ここでは主に開発メンバーと円滑なコミュニケーションを図るために取得しておきたい3つの知識について提示していきます。
知っておくべきゲーム開発工程
制作するゲームの種類や規模によって開発にかかる期間は異なりますが、おおよその流れはどれも同じです。ゲームプロデューサーは企画が煮詰まったら制作を進めつつ、進捗確認をこまめに行ないます。
モックアップ | モックアップとは、実物そのものに似せて制作された模型のことで、ここでは完成のイメージを実際に再現することを指します。モックアップがあれば構想段階では見過ごしていた課題やさらには内容のブラッシュアップも可能となります。ただし、あくまでも表面上の完成形なので、モックアップの段階では一切操作はできません。 |
プレイアブル | プレイアブルはゲーム内で、操作が可能なキャラクターのことを指します。この段階では、操作可能なキャラクターのパフォーマンスを確認し、こまめに改良していきます。 |
アルファバージョン | ひと通り操作できる段階にまで仕上がった状態を指します。この段階ではまだ完成とは言い難いものになりますが、アルファバージョンからユーザーにテスト公開し、リリースする前から技術的な問題などのデータを収集し改良を重ねていくことも珍しくはありません。 |
ベータバージョン | アルファバージョンよりも、さらにブラッシュアップされた状態で、リリース前の試用サンプルとしてユーザーに公開されることが多数あります。 |
マスターバージョン | ほぼ完成した状態です。リリースに向けて最終的な微調整を行います。 |
リリース | 正式にゲームが公開・発売されることを指します。 |
これらの開発工程がわかっていれば、実際にゲームを制作するクリエイターやエンジニア、プログラマーとの意思疎通に大変役立ち、的確な指示を出すことにも繋がるでしょう。
知っておくべき開発言語
開発工程と同様に、知識として押さえておきたいのが開発言語です。すべてを理解する必要はありませんが、どんな言語が存在し、それぞれにはどんな特徴があるのか知っておけば、より深い議論やコミュニケーションができるでしょう。
C++ | いわゆるC言語と呼ばれるものの1つで、Cよりも開発しやすいよう機能が拡張された言語です。大きな特徴としてはCとの互換性があることで、ソフトウェアの開発などで一緒に使われることも多いです。詳細な部分まで作り込むことができる便利な言語ですが、習得が難しいこと、プラットフォームを選ぶこと、開発に時間がかかることが言えます。 |
C# | こちらもC言語の1つですが、Javaの要素も取り入れられたまったく異なるプログラミング言語です。習得が比較的簡単にでき、Unityなどで使われています。オブジェクト指向の言語のため、CやC++での開発に慣れた人の多くは自身でコントロールできない部分の多さに戸惑いを覚えます。 |
Java Script | 名前から誤解されることが多いのですが、Javaとはまったく別の言語です。オブジェクト指向で、Webページ上で動作して入力された値のチェックなどをします。HTMLやCSSと同時に習得する人も多い人気の言語です。ゲーム作成においては、Unityなどのツールで利用されます。 |
Ruby | こちらもオブジェクト指向のスクリプト言語で、Perl、Smalltalk、Eiffel、Ada、Lispをブレンドして作られたものです。Web制作の場面で使われるイメージが強い言語ですが、特にミニゲームなどを作るときにはとても簡単にコードが書ける、便利な言語です。複雑なゲームを作る場合には、リファクタリングが面倒になる点を考慮する必要があります。 |
Java | Javaは、さまざまな言語のよいところを引き継ぎ、言語仕様や構文の難しい部分を排除するよう設計されました。構文はCおよびC++から多くを引き継ぎ、Perl、Smalltalkなどもブレンドしています。JavaはPHSやスマートフォン等のシステムから、企業の情報システムを担う大規模なデータベース、サーバ、スーパーコンピューターまで、多くの分野で使用されます。 |
知っておくべき開発ツール
広く使用されているものとして「Maya」「3ds Max」「Live2D」「Photoshop」「Illustrator」「Unity」「Unreal Engine」「Processing」などが挙げられます。これらの中から、ゲームプロデューサーは作りたいゲームやプラットフォームによって適当なツールを選択することが重要です。
「Maya」「3ds Max」「Live2D」「Photoshop」「Illustrator」などのCG関連ツールについて、ゲームプロデューサーが知っておくべきスキルについて掘り下げてみます。
Maya | Autodesk(オートデスク)社が開発した、3DCGを作成できるソフトです。実写映像にも利用されるほど人気で、スクリプトの書き方を学べばさまざまなプラグインにも対応できるようになります。 |
3ds Max | 「Maya」に対し「3ds Max」は、はじめからプラグインが豊富に用意されているため、プログラミングを学ぶことなく幅広い機能を使用できます。アニメーション作成の現場でよく利用されていますが、「iOS」には対応しておらず、高度なプラグインは高価なものが多いところが難点であると言えます。 |
Live2D | 近年よく見られるようになったツールで、イラストに動きをつけることができます。原画をそのまま動かすことができる心地よさから、ゲームのみならずテレビやアプリに活用されています。ただし、ソフト自体が新しいため、使えるデザイナーが不足しているのが現状です。 |
Photoshop | 現在では一般的なソフトとなりました。主に画像や写真の加工を得意としますが、0から絵を描くこともできる、2Dグラフィックのツールです。 |
Illustrator | ロゴやレイアウトの作成など、正確な操作が求められるデザイン系の仕事に広く使われています。「Photoshop」と組み合わて使うことで高いクリエイティビティを発揮します。ゲーム業界では、素材の作成に使われることが多いソフトです。 |
Unity | 世界で最も使われているゲームエンジンの1つです。モバイルやブラウザゲームの開発でよく使用されています。「Windows」と「iOS」に対応しており、使用言語はC#とJavaScriptなのでアマチュアからプロまで利用しています。また、別ソースで作成したキャラクターや背景などを取り込むこともできる、便利なゲームエンジンです。 |
Unreal Engine | 「Unity」同様、ゲームでの実績はもちろん、3D映画や訓練用シミュレーション、ビジュアライゼーションなど幅広い現場で使用されているゲームエンジンです。ビジュアル面の性能もよいため、高く評価されています。C++を使った開発ができ、エンジニアも使いやすいのが利点です。 |
Processing | Javaをもとに作られたプログラミング言語であり、GNU/Linux、iOS、Windows、Android、ARMで使用できるマルチなシステムです。ただし、動作速度が少々劣るため、戦闘ゲームなど素早い反応を求められるゲームには向かないツールです。 |
プロモーション・運用・サポートスキル
スマートフォンの普及に伴い、現在では多くのアプリゲームが世に出ています。しかし、アプリゲームは一度リリースしてしまえばそれで終了ではありません。リリース後も新規機能の追加や不具合の修正など、更新に力を注ぎながら運用を続けていかなければならないのです。ゲームプロデューサーはレビューなどを有効に活用しサポート体制を整えることも忘れないようにしましょう。
ここからは、ゲームプロデューサーが継続的に会社を発展させるために身に付けておかなければならない、ゲームのリリース後に求められるスキルについて解説します。
プロモーションスキル
リリースの目処が立ったら、ゲームプロデューサーは早めにプロモーションの準備を始めます。さまざまな方法を組み合わせてプロモーションを行なうことになりますが、準備にかかる時間や情報の浸透するスピードはそれぞれ異なります。プランニングを間違うと立ち上げから失敗、なんてことになる危険性がゲームプロデューサーにはあります。効果的にプロモーションできるかどうか判断できるように理解を深めましょう。まずは、プロモーションに適した媒体の特徴を紹介します。
テレビ
圧倒的な拡散力を持つメディアなので、テレビでの放映時期とゲームのリリース時期を合わせることが絶対条件です。ゲームプロデューサーならゲームの企画の時点でそれを意識しておかなければなりません。タイミングがずれ込むと、売上が10〜100倍と大きな振れ幅で影響するので、ゲームのプロモーションにおいて、テレビ戦略は重要な鍵となります。
雑誌・書籍
一度掲載すれば、長く効果を発揮できる媒体です。『週刊ファミ通』(KADOKAWA)や『アプリスタイル』(アプリスタイル)などのゲーム系雑誌に出稿すれば、関心のある人に向けたプロモーションができます。しかし、掲載の3〜4週間前に記事を用意する必要があり、ゲームのリリース日が確実ではない新規アプリのプロモーションには向きません。雑誌に取り上げられると流行を作りやすいですが、雑誌の発売時期とゲームのリリース時期がずれ込むと宣伝効果が落ちてしまいます。
アプリ紹介サイト
アプリを専門で扱うメディアはさまざまにありますが、中でもニュースサイトとの繋がりがある大手メディアで紹介できれば、かなりの集客が見込めます。ゲームのリリースと共に評判がよければ、無償で紹介されることもあるので、どんなアプリ紹介サイトがあるのか、事前に調べておくとよいでしょう。
自社メディア
FacebookやTwitterアカウントでの告知であれば、準備に時間をかけずタイムリーに情報を伝えることができますが、事前にファン(フォロワー)を集めておくことが条件です。既存のアプリがある場合はそれを利用して広告を出すと興味を持ってもらいやすく、また、リリース前に会員登録すると特典が付与されるなど、ダウンロードしたいと思わせる工夫があればファンをさらに増やすことができるでしょう。
運用・サポートスキル
売り切り型のゲームにしろ、アプリケーション型のゲームにしろ、ユーザーの反応を真摯に受け止め応えていくことで、ゲームもゲーム会社もさらなる成長が期待できます。逆にユーザーからの要望に耳を傾けず、バグの不具合にも対応しないでいれば、ファンはどんどん離れていくでしょう。そうならないためにも、ゲームプロデューサーとして重要になるのは、ソーシャルゲームで言えばリリース後の運用やサポートの対応スキルです。
まずは、運用の観点でKGIやKPIの管理についてお話しします。
KGI (Key Goal Indicator) |
最終目標を達成しているかどうかの指標で重要目標達成指標とも呼ばれる。客観的な数値を定めることが多い。 ・売上額 ・ダウンロード数 など |
KPI (Key Performance Indicator) |
KGIを達成するまでのプロセスで測定する指標で、重要業績評価指標とも呼ばれる。アプリの方向性を定めるのにも活用される。 ・日々の利用者数 ・継続利用しているユーザー数 ・課金額 など |
KPIの設定方法として、ロジックツリーモデルというものがあります。一番大きいところにKGIがあり、その下に少し小さな目標、KPIを設定します。さらにそれぞれのKPIを達成するためにはどのようなアクションを起こせばよいかの具体的な目標を決める、というように、普段の業務で実践しやすい形に落とし込んでいくのです。
KPIはKGIという大きな目標を達成するために必要な、小さな目標です。ゲームプロデューサーは開発シーンだけでなく、運用においてもこの目標達成とそれに付随する細かなタスクの洗い出しができるとよいでしょう。
また、KGIとKPIについては、「KGIとKPIを設定するとWebディレクター人生はうまくいく」でも解説されていますので、併せてご覧ください。
まとめ
ゲームプロデューサーとして転職、またはキャリアを築く際に、求められるスキルについて紹介しました。ゲームプロデューサーは1人〜100人の技術者およびクリエイターを管理する立場にあり、マネジメント力、交渉力、論理力、企画力、コミュニケーション力、技術力などの多様なスキルが求められ、開発が行き詰まった際には中心になって打開しなければならない重要な役割を担います。
また何十ものメンバーを管理し、経営者や投資家との橋渡しもする責任ある職種です。他の職種についてクオリティを満たさない場合は、修正指示や人員の配置を決める権限も持っているため、果敢にチャレンジするマインドや判断力も必要でしょう。責任もあり多様なスキルが求められるゲームプロデューサーですが、だからこそやりがいのある職種でもあります。是非、ゲームプロデューサーとして活躍したいと考える方は、スキルアップの参考にしてみてください。