Webマーケターとは?仕事内容や必要なスキル、年収を解説
今回は、Webマーケターが手がけるWebマーケティングとは何かという基本のほか、Webマーケターに必要なスキルや年収、未経験からWebマーケターになるためにやるべきことなど、総合的に解説します。
目次
Webマーケターとは、Webの特性をマーケティングに活かす職業
Webマーケターとは、自社サイトをはじめ、オウンドメディア、SNS、メールマガジン、チャットなど、さまざまなオンラインチャネルを活用して行われるマーケティング全般に関わる職業です。Web上の顧客の行動に沿ってあらゆる戦略を実行し、効率的に多くの製品やサービスが売れるように、広告宣伝や市場調査などの活動を担当します。
インターネットが普及する以前、製品やサービスの導入を検討している見込み顧客は、会社の営業やテレビなどのマスメディアから情報を仕入れ、検討を経て購入する流れが一般的でした。しかし、広く一般にインターネットが普及した今、Web検索をして情報の比較・検討が行いやすくなったことにより、顧客の購買行動は、まずオンライン上で情報収集をしてからという流れへとシフトしています。
こうした時代背景から、Webの特性を理解してマーケティングに活かし、会社の利益を生み出すWebマーケターの需要は、今後も高まっていくと考えられます。
そもそもWebマーケティングとは?
マーケティングとは、製品やサービスが多くの人に選ばれ、売れるようにするための仕組みづくりを指す概念です。その中でもWebマーケティングは、Web上で行われるこうした仕組みづくり全般のことを指します。
ここでは、Webマーケティングの理解を深めるため、その特長やできることについて詳しく見ていきましょう。
Webマーケティングでできること1:データをもとにした効果測定
Webマーケティングでは、Web上のツールを使うことによって、施策に対する顧客の動きを定量的に判断することができます。たとえば、メールマガジンの開封率やURLのクリック率のほか、Webサイトへのアクセス数、Webサイトでの成果率を表すコンバージョン率といった数字をデータとして測定し分析することができるのです。
これにより、従来の不特定多数を対象としたマーケティングでは難しかった効果測定が、より正確に行えるようになりました。
Webマーケティングでできること2:パーソナライズされたコミュニケーション
Webマーケティングでは、前述したように顧客の行動データをもとにした効果測定ができます。そのため、顧客を属性や趣味嗜好ごとに細かく区分し、各セグメントのニーズに合わせて施策の内容を変えていくことができるのです。たとえば、ショッピングサイトで自分が購入した商品と似たおすすめ商品が、その後も次々と表示される、なども1つです。
このように、Web上で顧客1人ひとりに合わせた最適な情報やサービスが提供できる、つまり、パーソナライズされたコミュニケーションが可能となり、効率よく効果的な施策を打つことが期待できます。
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これだけは押さえたい!Webマーケターの仕事内容
WebマーケターはWeb上におけるマーケティング全般を担当する職種です。では、具体的にどのような仕事をしているのでしょうか。
Webマーケターの仕事領域は、下記のような企画プロセスと運用プロセスに大きく分けられます。
企画プロセス |
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運用プロセス |
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ただし、企画プロセスと運用プロセスに厳密な区別はなく、Webマーケターが担当する領域は会社によってさまざまです。
また、自社の製品やサービスを持っている事業会社か、クライアントから仕事を受託しクライアントワークを行っている会社かによっても、Webマーケターの担当する領域は異なります。
事業会社の場合
事業会社のWebマーケターには、実に幅広い業務があります。たとえば、自社で何か新しいWebサービスをリリースするなら、まずは市場調査から始まり、ターゲットの選定や企画の立案、予算の確保や開発チームとの調整などが必要です。また、サービスをローンチした後には、効果測定をしながら施策の改善も継続的に行わなければならないでしょう。
こういった複数の業務を抱えながら、プロジェクトを円滑に進めるため、事業会社のWebマーケターは、企画プロセスを内部で行い、施策の実行、つまり運用プロセスからは支援会社に任せるケースもあります。ただ、KPIの達成状況や施策の効果検証、データ分析の結果などを把握し、次の打ち手を常に検討しておく必要があるでしょう。
事業会社のWebマーケターの仕事では、現状の課題をどのような手段で解決できるかを考え、実行していくことが求められます。
クライアントワークの場合
クライアントワークがメインの支援会社や代理店のWebマーケターは、企画プロセスから運用プロセスまで一貫して携わるというより、Webマーケターの仕事を細分化し、より専門性を絞り込んだ業務にあたることが多いです。
たとえば、広告分野においてはSEM、広告運用、Webアナリスト、Web解析など、それぞれの役割における専門性を高め、クライアントのニーズに応えていきます。その際、最新のアドテクノロジーに触れる機会もあるでしょう。
常に新しい情報をキャッチアップできることや、1つのサービスだけでなく、クライアントの数だけ多岐に渡る業種や製品、サービスのマーケティングに携わり、幅広い経験を積めることは、クライアントワークをメインに行う会社のWebマーケターにとって大きな魅力と言えます。また、その中で得たWebマーケティングの専門知識はWebマーケターとして重要なスキルセットになるのは間違いありません。
内製化する事業会社、パートナー化する支援会社や代理店
昨今の事業会社には、Webマーケティングを内製化する動きも出てきており、社内のメンバーが専任で施策の実行やデータ分析など運用プロセスを行う場合もあります。これは自社のサービスやプロダクトへの理解が深いメンバーでマーケティングチームを組織化した方が、スピード感を持って効率的にPDCAサイクルを回していけるといった利点があるためです。
また、支援会社や代理店においては、事業会社と単なる受発注の関係ではなく、パートナーとしてより深い関係を築き、企画立案から並走するケースもあります。これはさまざまなマーケティング手法、選択肢がある中で、効果的な一手を打つためにも、ターゲット選定や企画立案といった工程から入って考えたほうが成果に繋がるケースが増えてきたからです。
これらの背景を踏まえると、企画プロセスを事業会社、運用プロセスを支援会社や代理店というような仕事領域のすみ分けは曖昧になってきたようにも見受けられます。
WebマーケターとWebディレクターの違いとは?
Webマーケターに似た言葉として混同されやすく、違いがわかりにくい職種にWebディレクターがあります。WebマーケターとWebディレクターの最も大きな違いは、軸足をどこに置いているかです。
Webディレクターの仕事の軸足はWebサイトの制作全般にあり、制作を担当するメンバーへの指示出しや顧客とのコミュニケーション、進行管理などを主に担当します。
一方、Webマーケターの軸足はWeb戦略にあり、Webに特化した専門知識を活かしてWebマーケティング施策の企画・実行、改善に取り組みます。
たとえば、施策の実行にあたっては、Webマーケターを含むマーケティング部門がWeb広告の出稿を決め、Webディレクターが率いる制作部門が、クリエイティブの制作を担当するのが一般的な流れです。そのため、WebマーケターとWebディレクターは、業務で関わることが多いでしょう。
ただし、この2つの職種のあいだに、厳密な棲み分けの定義があるわけではなく、会社によっては1人の担当者が両方の職種を担う場合があります。
また、最近では、ユーザーに納得感と満足感を与えられるコンテンツを制作するために、ものづくりの現場でもWebマーケティングの知識が求められるようになりました。たとえば、Webディレクターの場合、Webマーケティングまで考えたものづくりが求められているため、Webマーケティングの知識を備えている人材の需要が増えています。
一方、Webマーケターは、制作したものをどのように発信していくかがメインとなるため、ものづくりの視点が必ずしも求められるわけではありません。
Webマーケターが行うWebマーケティング施策
続いては、Webマーケターが実行する、主なWebマーケティング施策を見ていきましょう。
リスティング広告運用:ユーザーの流入を増やす
国内で有名なリスティング広告は、GoogleとYahoo!の広告で、検索結果の上部または下部に表示されます。スマートフォンが普及し、幅広い年代が検索サイトを使っている今、リスティング広告は非常に有効なWebマーケティング手段だといえるでしょう。
リスティング広告の運用は、Webに特化した広告代理店に依頼したり、Webマーケターが自身で行ったりします。
SEO施策:検索で上位表示させる
Webマーケターは、Webサイトが多くの人の目にふれるよう、コンテンツの内容を最適化して、検索結果での上位表示を目指します。近年は、ユーザーファーストでコンテンツの質を重視したサイトが上位表示されるようになりました。
Webマーケターには、ユーザーの検索意図を満たすコンテンツを作成し、上位表示させたいキーワードを自然に盛り込みながら、コンテンツそのものの価値を上げることが求められます。
ランディングページ最適化:コンバージョン率を上げる
ランディングページ(LP)は、一般的に集客した顧客に詳しい説明を提供して、サイトから離脱させることなくコンバージョンに結びつける構成になっています。Webマーケターは、商品の売上向上や問い合わせの増加を目的として、ランディングページの集客率やコンバージョン率を検証し、コンテンツの内容を改善します。
SNS運用:ターゲット層の流入を増やす
自社のターゲットに合ったSNSをうまく活用することで、情報発信による集客の効率化やユーザーの動向チェックはもちろん、ユーザーとの直接的なコミュニケーションによる自社ブランド・製品へのロイヤリティー向上とファン獲得が期待できます。
Webマーケターは、SNSから自社ブランドや製品のターゲット層の流入増加を目的として、インプレッションを獲得できるコンテンツの企画立案や、SNS広告の運用などを担います。
Webマーケターとして活躍していくために必要なスキルとは?
Webマーケターとして活躍していくために必要なスキルとしては、論理的思考力やデジタル・ITスキルのほか、コミュニケーション能力が挙げられます。これらのスキルについて、詳しく見ていきましょう。
論理的思考力
Webマーケティングにおいては、経験や勘にもとづく直感的な判断は求められていません。必要なのは、得られたデータをもとに物事を体系的に考え、客観的に納得できる問題解決の筋道を見つけられる論理的思考力です。
論理的思考力は、ターゲットの選定や施策の立案だけでなく、施策の結果を分析・検証する際にも欠かせない能力です。
デジタル・ITスキル
効果的なWebマーケティングを行ううえで、デジタル・ITスキルは必須です。基本的なオフィス系ソフトはもちろん、より業務に直結するスキルとして、HTMLやCSSの知識のほか、施策の運用・改善の指標となる顧客獲得単価を表すCPA、クリック率を表すCTRといった、専門的な知識もあったほうがいいでしょう。GoogleやAdobeのアクセス解析ツールを活用している会社も多いため、こういったツールを使いこなせるITスキルがあると即戦力としての活躍が期待されやすくなります。
Webマーケターは、Web広告やSNSにふれる機会が多いので、普段からWebに慣れ親しみ、SNSのノウハウやWeb広告の仕組みについて理解を深めておくことも大切です。
コミュニケーション能力
データを前に黙々と作業する印象があるWebマーケターですが、実際にはチームで仕事を進めることが多く、社内の各部門との関わりやクライアントとの折衝を頻繁に行います。そのため、Webマーケターには、相手の意見や要望に耳を傾け、自分の理解している内容や仮説を言葉にしてわかりやすく伝えるコミュニケーション能力が欠かせません。
最近では、リモートワークが増えているため、画面越しでも相手に気持ちが伝わるようなコミュニケーションを心がけたいところです。
Webマーケターの年収
Webマーケターの年収は、平均610万円※です。
年収を大きく左右するのはスキルと経験で、未経験者や経験が浅い人は年収300万円前後から、経験豊富な層になると1000万円前後も見られます。
この「経験豊富」が具体的にどんなことを指すかというと、たとえばオンライン・オフライン両方でのマーケティング経験があることなどが挙げられます。テレビや新聞などのマスマーケティング(オフライン)とWeb広告やSNS広告などのWebマーケティング(オンライン)の知見や経験は、年収に反映されやすいでしょう。
現在では、実店舗とWeb上での施策を連携させるO2Oや、膨大なデータを分析し顧客目線で商品やサービスの改善を図るOMOといったマーケティングが重要視されています。この分野での実績は企業でも高く評価される傾向があり、オンライン・オフライン問わずさまざまなチャネルでユーザーに届く効果的な施策を打ち出せる人材を目指していくことが、Webマーケターとして市場価値を上げることに繋がるでしょう。
※マイナビクリエイター調べ(2024年7月)
未経験からWebマーケターになるには?今すぐやるべき3つのこと
未経験からWebマーケターになるには、業務に必要な知識を身に付け、親和性と意欲をアピールすることが大切です。続いては、未経験からWebマーケターを目指す際に、やっておくべき3つのことをご紹介します。
自分でブログを運営し、収益化させる
Webマーケティングに欠かせないアフィリエイト広告による収益の仕組みや、SNSとの連動によるサイトへの誘導のコツ、数値分析やPDCAサイクルの回し方など実践的な知識を得るには、経験するのが一番の近道です。そのため、まずはブログを開設し、運営してみることをおすすめします。
収益化を目指してブログを運営すると、コンテンツの質とSEOを踏まえたライティングや、ユーザーに伝わりやすいデザインのほか、HTMLやCSSなどの知識、Google Analytics、Google Search Consoleなどを使った数値分析の方法などを、体感しながら理解することができます。
ブログ運営を通して身に付けられる知識やスキル
- 顧客目線のコンテンツ制作スキル
- アフィリエイト広告の仕組みと運用方法
- 画像編集、UIデザインのスキル
- CVR改善方法
- SEOを踏まえたライティングスキル
- WordPress、HTML、CSSの知識
- Google Analyticsなど数値分析ツールの使い方
- PDCAサイクルの回し方
- 顧客目線のコンテンツ制作スキル
- SEOを踏まえたライティングスキル
- アフィリエイト広告の仕組みと運用方法
- WordPress、HTML、CSSの知識
- 画像編集、UIデザインのスキル
- Google Analyticsなど数値分析ツールの使い方
- CVR改善方法
- PDCAサイクルの回し方
書籍などで知識を増やし、資格取得を目指す
未経験者の場合、即戦力にはなれないまでも、「基本的な知識を身に付けていること」「学ぶ意欲があること」をアピールして、ポテンシャルに期待してもらうことが重要です。専門のスクールに通ったり、書籍を読んだりして、Webマーケターに必要な知識を体系的に学びましょう。Webマーケティングの実践的な知識については、IMA(Internet Marketing Analyst)検定などに挑戦すると、資格取得に向けた勉強の中で自然と必要な知識を習得でき、会社からの信頼度もアップします。
また、Webマーケティングの世界は日進月歩で、次々に新しいツールや手法が登場しているため、最新の情報をキャッチアップできる力が不可欠です。独学で必要な知識を身に付けようとすることは、Webマーケティングに欠かせない情報収集能力として、高く評価してもらえる可能性があります。
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就業中の会社でWebマーケターに近しい経験を積む
就業中の会社でも、下記のように、工夫次第でWebマーケティングに繋がる経験を積むことができます。
業務の兼務や社内異動を申請する
社内にWebマーケティング部門がある場合は、業務の兼務や異動を申請するのも1つの手です。マーケティング部門への異動が叶わない場合は、WebライターやSNSの運用担当者といった関連職種へのキャリアチェンジを試み、少しでも現場に即したWebの知識と経験を積む努力をしましょう。
自分の職種とWebマーケティングの共通点を見つける
営業など、一見するとWebマーケティングとは畑違いの仕事でも、実はWebマーケティングに似た考え方をしている場合があります。
たとえば、営業の業務の中でも、今担当している顧客リストからアプローチするターゲットを絞り、アプローチの方法を考えて目標を設定したり、数値をもとにボトルネックを改善して次のアクションに活かしたりする取り組みは、マーケティングと非常に似ています。Webマーケターへの転身を考えた段階から、より意識的に数字と向き合い、分析する習慣をつけるようにするといいでしょう。
日々の業務内容を「どのようにターゲットを選定し、どうアプローチしたか」「売上を向上させるためにどのような対策を行ったか」「成果をもとにどのようにPDCAサイクルを回したか」という視点で見つめなおすことが大切です。
キャリアチェンジする際はクライアントワークからがおすすめ
未経験からWebマーケターを目指すなら、まずはクライアントワークのできる会社で幅広い案件に携わり、Webマーケティングの経験を積むのがよいでしょう。なぜなら、クライアントワークで培った多様な経験は、重要なスキルセットの1つとなり、人材価値をより高めてくれるからです。
事業会社のWebマーケターは、企画プロセスから運用プロセスまで広範囲にわたる業務を担当することが多く、各工程での経験値が必要なため、未経験からのキャリアチェンジはハードルが高い傾向にあります。将来的には、自社サービスにおけるWebマーケターを志したいという方でも、まずは、クライアントワークで十分な経験を積んでからキャリアチェンジを目指すのがおすすめです。
まとめ
広告やプロモーションの主流がWebに移行する中、Webマーケターの需要は今後も拡大が見込まれ、Webマーケターは、これからのビジネスに欠かせない職種となるといえるでしょう。ただし、変化の激しい業界ですので、現在のトレンドが長く続くとは限りません。身に付けたスキルや知識が過去のものになってしまわないよう、アンテナを高く張り、常にレベルアップを心がけましょう。