転職の面接で退職理由をポジティブに言い換える方法と例文
そこで今回は、ネガティブな退職理由をポジティブなものに変換するコツについて、例文を交えながら解説します。
第1章で「退職理由説明の本質」について説明し、第2章では「退職理由のNG例とその言い換え術」として、以下の3点をセットにして、具体的な面接対策法を解説していきます。
- ありがちなNG例
- なぜNGなのかの理由
- どう言い換えればポジティブになるか?
ぜひあなたの面接対策にお役立てください。
目次
[第1章]退職理由説明の本質を理解する
転職は駆け込み寺ではない。自分の棚卸しをして臨む
職業は、その人にとって生活を支える収入を得る基盤です。退職すれば極めて不安定な状況に置かれるわけですから、たやすく退職することはできません。しかし、それでも退職を決意したからには、相応の理由があると考えるのが普通です。「この会社ではできない・やらせてもらえない仕事をどうしてもやりたい」というポジティブな動機の方も多いのですが、「自分を正当に評価してもらえない」「仕事がおもしろくない」などのネガティブな理由が、退職の直接のトリガーになっている人も多いのではないでしょうか。
また、「人間関係が悪い」「給料があまりにも安い」「仕事がきつすぎる」「無理難題を押し付けられる」などは、当人にとっては十分な退職理由です。「まともな会社に転職すれば、このような苦境から抜け出せるのでは?」と、転職に活路を見出そうとする人もいるでしょう。しかし、転職は駆け込み寺ではありません。「苦境から逃れたい」という転職理由は個人にとっては当然であっても、面接先の企業には無関係です。このようなネガティブな転職理由を、いくら事実ではあっても、ストレートにぶつけられては面接担当者が当惑するだけでしょう。
では、本当の退職理由がネガティブなものだった場合は、どうすればいいのでしょうか?
そういうときは、いったん意識を「自分」から外し、「人材としての自分」の棚卸しをしてみましょう。「なぜその理由で自分は退職を決意したのか?」を見つめ直すのです。退職理由について、次のような自問自答をしてみましょう。思考の過程を紙に書き出していくと整理しやすくなります。例えば、次のように書いてみてください。最初は思い付くことを、片っ端から書き出しましょう。それを何度も見直すうちに、重要で本質的な部分だけを抽出することができます。
▼人間関係が悪く、いづらかったから辞めた |
人間関係が悪いと、何が困る? |
▼仕事がつまらない |
なぜ仕事がつまらない? |
▼モチベーションが下がり前向きな思考ができない。必要な情報が伝達されず生産性が低い。新しいアイディアが否定されるから、など |
そのうち最も嫌だったのは? |
▼いくら建設的な提案をしても、ろくに検討されず上司に頭ごなしに否定され続けたこと |
では、もしも提案を正当に評価してもらっていたら、ほかの不満はもう少し我慢できた? 我慢できたなら、退職理由の本質は「自分の提案力を発揮できるチャンスを求めた」ということでは? |
このように、退職理由を深掘りして「自分の棚卸し」をすることで、自分でも気付いていなかった「真の(ポジティブな)退職理由」に到達できるのではないでしょうか。
何事も表裏一体。ものは言いようの真意を知る
人は本質的に、「明るく前向きでポジティブでありたい」という気持ちを持っています。クリエイターの方なら、なおその気持ちは強いでしょう。
どんなにネガティブな退職理由であれ、それは「ネガティブな要因に妨げられ、自分のポジティブな部分が発揮できない」という悩みからスタートしているはずです。それならネガティブな要因を主題にするのではなく、「自分が発揮したいポジティブな部分を発揮するために退職した」という話し方に変えるだけで、聞き手にポジティブな印象を与えられるのではないでしょうか。何事も「表裏一体」です。ネガティブな事象の裏側には、必ずポジティブな側面があるはずです。それを主題にして語ることが「ものは言いよう」という言葉の真意だと思われます。
とはいえ、自分に正面から向き合い、内面の本質を掘り下げる作業にはそれなりの苦痛を伴います。また、「嫌な過去のことは忘れて、明るい未来だけを見て前向きな転職活動をしたい」という気持ちも十分理解できます。しかし、退職理由説明だけに限らず、面接対策全般において「自分と向き合う」ことは非常に重要です。これをおろそかにすると、必要十分な「自分語り」ができず、志望企業の面接を突破することは困難でしょう。
退職リスクの不安を払拭してください、と翻訳する
面接の場で「なぜ前職を退職したのですか?」と質問されたら、それは「『もしあなたを採用しても、また退職してしまうのでは?』という私たち人事部の不安を払拭してください」という意味だと受け止めましょう(翻訳しましょう)。
面接担当者が感じる代表的な不安要素は、以下のようなものが挙げられます。
▼退職理由と志望動機のあいだに必然的な流れが感じられない |
当社の仕事に本当に意欲があるのか? |
▼待遇や報酬の不満が理由 |
楽で給料の高い会社ならどこでもいいのでは? |
▼前職の職場や個人を非難する |
人間性に問題があるのでは? |
▼人間関係を退職理由としている |
ストレス耐性やコミュニケーション能力に問題があるのでは? |
▼退職の原因となった問題解決のための努力が感じられない |
当社も些細なことで退職してしまうのでは? |
面接担当者の不安を払拭するためには、退職理由説明の中で、これらの不安要素を否定・排除すればいいのです。
転職理由は減点方式
日本社会では、どのような理由であろうと「会社を退職した」という事実は原則としてプラスには評価されません。「新たなチャレンジをしたい」「自分を成長させたい」という、純粋にポジティブな理由であっても同様です。このため、転職面接では、転職理由の説明は「満点からの減点方式」で評価される項目だと考えてください。理由にポジティブな内容を加えてプラス評価を得ようとしても、期待薄です。
面接担当者も、退職理由を質問するにあたって、「退職という事実があった以上、大なり小なりネガティブな要因もあったのだろうな」という想定はしています。そこに「無理矢理こじつけたポジティブな理由」を加えれば、話に不自然な部分が出てきます。不自然な部分を追及されれば、どこかで話が破綻してしまうでしょう。これは、評価の上で不必要な大量失点につながります。
[第2章]退職理由のNG例とその言い換え術
一般編
ここでは、特定の職種に限らず、広くクリエイター職全般に多く見られる一般的な退職理由について、NG例とポジティブな言い換え例を紹介していきます。
「望むキャリアが積めなかった」系
自分のキャリアマップを考えたとき、「このままこの会社にとどまっていては、望むキャリアが積めない→自分の可能性が狭まる」と見切りをつけ、退職に踏み切る人は多いと思います。この動機自体は決してネガティブではないのですが、説明を間違えるとネガティブな印象を与えてしまいます。
ありがちなNG例
デザイナー職からディレクター職への異動を希望したのに叶えられなかった。
○○の分野の仕事をしたかったのに、させてもらえなかった。
主体性や努力の跡が感じられないから。
希望を叶えるため○○や○○の努力をしたが実らず、見切りをつけて退職した。
解説
昇進・異動・活動領域に関する不満は、ビジネスマンにとって付き物であり、転職で解消できるものではありません。そこから逃げるのではなく、「希望を実現するためにどう努力したか?」という過程を語ることが、その人の信用と評価につながります。また、「見切りをつける」という判断にも主体性が感じられますから、上記のような文脈で退職理由を説明できれば、「必然性のある退職だった」と面接担当者を納得させることは難しくないでしょう。
「人間関係の不満」系
この理由は、たとえ本当のことだったとしても、原則として触れないほうがいいでしょう。なぜなら、説明すればするほど前職の職場や上司・同僚の悪口を並べることになってしまい、面接担当者にネガティブで後味の悪い印象だけを残してしまうからです。どうしても触れざるを得ない場合は、下記のように言い換えることで評価の失点をかなり防げるでしょう。
ありがちなNG例
人間関係が悪く、居心地が悪かった。
上司に嫌われ、実績を評価してもらえなかった。
面接担当者が話の信憑性を確認しようがないから。
自己実現したいことができないから/自分のポジティブな面が発揮できないから(事実のみに話を絞る|第1章Point1を参照)。
解説
あなたの言い分がいくら正しくても、面接担当者は「それは相手が悪い。あなたは被害者だ」というジャッジを下す根拠がありません。事実関係を確認しようがないからです。こういう理由で前職を退職した場合は、第1章のポイント1で説明したように、自分と向き合い、「自分のポジティブな部分を発揮するために退職した」という文脈で語りましょう。
「待遇・報酬の不満」系
待遇や報酬の不満を退職理由にしてしまうと、一定の理解は得られたとしても、「では、なぜ当社を志望したのですか?」という志望動機を聞かれた段階で説明に窮します。「待遇や収入が不満で退職した」と言ったあとに、いくら立派な志望動機を語っても説得力に乏しいからです。
ありがちなNG例
あまりに薄給だった。
実は前職がブラック企業だった。
残業や休日出勤が多すぎたから体を壊しそうになった。
不満の解決が志望動機だと思われてしまうから。
前職では○○という自己目標が達成できないと判断したから。
○○のような改善努力をしたが、個人の努力では解決できないと判断したから。
解説
このようなケースでは、「自分は最善の努力をしたが、個人の能力を超えた問題だった」ということが面接担当者に納得してもらえれば、ネガティブな評価をされずに済むでしょう。ただし、どんな職場でも逆風や逆境というものはありますから、「どれくらい耐えたのか、状況を改善するためにどんなアクションを起こしたのか」という部分が語れないと、「困難に直面したらすぐに辞めてしまうのではないか?」などと勘ぐられてしまうリスクがあります。
基本的には「自分は被害者である」というストーリーは避け、「困難な状況で自分はどうしてきたか」を前向きに語り、やむを得ず転職を選んだという方向性が望ましいでしょう。ただし、うまく志望動機に結び付く伏線を張ることは忘れないでください。
職種別編
職種別編では、Webディレクター、Webデザイナー、ゲームプランナーの3職種に多く見られる退職理由について、一般編で説明した内容をどう応用すればいいかを説明していきます。
Webディレクター編
Webディレクターは、渉外やチームマネジメントなど、幅広い業務に対応するポジションであることから、「将来を見据え、幅広いキャリアを積むために転職する」という人が多くいます。また、デザイナー職などからのキャリアチェンジを希望して、転職に踏み切る人も少なくありません。これらの退職理由は、一般編の「望むキャリアが積めなかった」系に分類できます。
ありがちなNG例
Webディレクターとして必要なキャリアが積めなかった。
Webディレクター職を希望したが、認められなかった。
主体性や努力の跡が感じられないから。
希望を叶えるため○○や○○の努力をしたが実らず、希望が実現できる会社への転職を決意した。
解説
退職理由そのものはまったくネガティブではないのですから、「希望を上司や周囲にアピールした/希望を実現するために、できる限りの努力をした/見切りをつけて転職を決意した、という文脈で説明すれば、ポジティブに受け止められると思います。
例えば、「自分がやりたいタイプの仕事を受注できるよう活動した」「自分の職域内でディレクター的役割を果たした」などの客観的事実を説明した上で、努力の限界を感じて転職を決意したというストーリーなら退職理由も正当と認められ、自分をアピールしながら自然に志望動機に話をつなげられるというメリットもあるでしょう。
Webデザイナー編
Webデザイナーの退職理由として多いのが、「実力を発揮できる仕事をさせてもらえなかった」という「望むキャリアが積めなかった」系と、「自分は優秀なのに評価してもらえなかった」という「人間関係の不満」系の2つです。
「望むキャリアが積めなかった」系はWebディレクター編を参照していただくこととして、ここでは「人間関係の不満」系について説明します。
ありがちなNG例
センスや能力が評価してもらえなかった。
自分を被害者として語っているから。
(自分のスキルと実績をアピールした上で)○○という目標のために退職を選んだ。
解説
クリエイターの場合、「センスや才能」といった資質は客観的評価が難しく、評価者の主観や数的実績に評価が左右されるという現実は避けて通れません。このため、自己評価と会社の評価に大きなギャップがあった場合、それが退職理由になることは十分理解できます。
しかし、転職したからといって、この問題が解決できるとは限りません。仮に転職先の上司や経営者があなたに近い価値観を持ち、あなたの能力を高く評価したとしても、今後担当する案件のクライアントも同様だとは限らないからです。
このような転職理由の場合、避けたいのは、「自分が犠牲者であるかのように語ってしまう」ということです。誰に原因があるか特定しようのない問題で一方的に自分の正当性を主張すれば、「独善的・自己中心的な性格かもしれない」と疑われても仕方ありません。
このような場合は、職務経歴や自己PRなどの段階で、ポートフォリオなどを使って自分のスキルと実績を面接担当者に評価してもらい、「自分には○○という目標がある。それを達成するために退職を選んだ」というストーリーにして語れば、退職理由に正当性と説得力を持たすことができ、志望動機にスムーズに話をつなげることができるでしょう。
ゲームプランナー編
ゲームプランナーの転職で多く見られるのは、「チャンスに恵まれず、実力が発揮できなかった」「やりたい仕事ができなかった」という退職理由です。これは広い意味で、一般編の「待遇・報酬の不満」系に分類できます。
ありがちなNG例
自分の作りたいゲームを作らせてもらえなかった。
たまたま運が悪く、実力が低く評価されてしまった。
不満の解決が志望動機だと思われてしまうから。
前職では○○という自己目標が達成できないと判断したから。
○○のような改善努力をしたが、個人の努力では解決できないと判断したから。
解説
ゲームプランナーの仕事には、「斬新なアイディアを実現する」「ユーザーが没入できる世界観を作り込む」といった、属人性の高い内容が大きな要素を占めます。しかし、そのゲームがヒットするかどうかは、運やタイミングといった偶然性に大きく左右されます。にもかかわらず、会社の評価としては収益性やKPIの達成率など、「結果を数字で判断する」しか方法がありません。ここに大きなギャップが生じると、ゲームプランナーに大きな不満が蓄積されます。
また、会社の経営方針やゲーム制作体制といった事情から、ゲームプランナーが実力を発揮しようがない状況に置かれてしまうこともしばしばあります。これは客観的に見ても、決してネガティブな退職理由とは受け止められないでしょう。
しかし、面接の場では、一般編の「待遇・報酬の不満」系で説明したように、「では、チャンスをつかむために何をしたか?」「逆境を乗り越えるために何をしたか?」というアクションの内容や努力の質が問われます。そうした説明は、忘れず添えるようにしてください。
もうひとつの対策としては、自分のスキルや実績を語れる職務経歴書を面接担当者に見せた上で、「このゲームを実現したかった。そのためには御社に転職する必要があった」と言って新しい企画書を見せるなど、「逆境から逃げたのではなく新たなチャレンジのために前職と離別した」というストーリーを語ることで、退職理由説明のフェーズをクリアできるのではないでしょうか。
まとめ
第1章では、「自分と向き合い、人材としての自分を棚卸しする」ことで退職理由をポジティブに語れるという説明をしてきました。第2章では退職理由のNG(ネガティブ)例と、それをポジティブに言い換える方法をご紹介しました。これらを通読していただくことで、「そうか、退職理由にポジティブもネガティブもないんだ。ただ『ポジティブな話し方』と『ネガティブな話し方』があるだけなんだ!」という気付きを得ていただければ幸いです。そして、それに気付いていただくことで、「なぜ退職理由がポジティブでなくてはならないか?」という理由もご理解いただけることと思います。
そもそも転職は、「より活躍できる職場」を探してアクションを起こすというポジティブな活動です。ですから、前職の退職理由は「会社を辞める」という結論ではなく、「転職する」という動機として語られるべきでしょう。
その視点から自分を掘り下げ、棚卸しをしていけば、退職理由は自然にポジティブなものとなるはずです。にもかかわらず、退職理由をネガティブに語ってしまうと、面接担当者に「この人は自分の棚卸が不十分だな」「転職活動に十分な心構えができていないのだな」といった評価をされてしまいます。だからこそ、「退職理由は必ずポジティブでなくてはならない」という結論に至ります。
ただし、本文中でも説明したように、転職理由の説明は「満点からの減点方式」で評価される項目です。必要以上に盛り上げず、面接のメインとなる志望動機を盛り上げるための伏線として、さらりと述べるようにしましょう。