転職回数が多くても不利にならない面接での受け答え方
目次
そもそも「転職回数が多い」=不利なのか?
クリエイター職は、他の職種に比べるとスキルや経験が重視されることから、「多少転職回数が多くても気にしない」という企業が多く見られます。とはいえ、現実問題としては「転職回数の多さ」をプラスに受けとめてくれる企業はごく少数です。このため、転職希望者の中には「自分は転職回数が多いから転職市場ではネガティブに評価されるのでは?」と心配する人も少なくありません。
また、企業側も面接の場で、「あなたは転職回数が多いですね。何か理由があるのですか?」といった質問を投げかけてくる場合があります。これは、「転職回数が多い人=当社でも長く続かない可能性が高い人ではないか?」という不安を感じるからです。
転職回数の多さをマイナス評価に繋げないためには、面接担当者に、「転職回数の多さには必然性があり、自分の人材価値にプラスになっている」ということを説明し、納得してもらう必要があります。そのためには、実際の採用面接で転職の理由を聞かれたとき、ポジティブに変換した受け答えが重要になってくるでしょう。
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日本人は平均して何回転職しているのか
かつて日本では、終身雇用が一般的ではありましたが、近年ではキャリアの多様化や非正規雇用の増加、さらには経済状況の変化などにより、転職がより一般的になっています。特に若年層では、キャリアアップやよりよい労働条件を求めて転職するケースが増えています。
そんな中、日本人が転職する回数は、平均してどれくらいなのでしょうか。もちろん個々の職業や業界、さらには個人のキャリアプランによっても大きく異なりますが、過去のデータや傾向に基づく一般的な見解としては、以下の通りです。
20代
20代の平均転職回数は、1回から2回程度と考えられますが、キャリア形成のための転職が一般的です。この年代では、キャリアの初期段階にあたり、職場環境や仕事内容に対する適応、またはキャリアアップを目指して転職する人が多いとされています。
30代
30代の平均転職回数は、2回から3回程度と考えられますが、より専門的なスキルや管理職への昇進を目指す転職が増えます。この年代では、キャリアの方向性が定まりつつあり、結婚や家庭の事情などライフスタイルの変化も転職の理由となることがあります。
40代
40代の平均転職回数は、3回以上とされていますが、安定した職を求める一方で、専門性を活かした転職も多いです。 この年代では、キャリアの中盤~後半に差しかかり、これまでの経験を活かした転職や、ライフスタイルの変化に合わせた仕事への転職が見られます。
転職回数に対する欧米と日本の認識の違い
一般的には、20代で3回以上、30代で5回以上の転職経験がある場合に、「転職回数が多い」と認識されているようです。私たちマイナビクリエイターが実際に取引させていただく中でも、企業の人事担当者は概ねそのような認識を持っていると言えます。
オーストラリアやシンガポールを含む欧米文化圏では、転職回数が多いことは「キャリアアップを真剣に考えた証拠」「チャレンジ精神旺盛な積極的な人」と評価され、むしろ経験の豊かさを歓迎される傾向があるのですが、日本では「仕事が続かないのでは?」「忍耐力がないのでは?」などと、採用に難色を示されることがあります。
最近は日本でも「労働力の流動化」が叫ばれ、いずれは転職回数の多さが転職におけるプラス要因になる日が来るかもしれません。しかし、日本と欧米では社会制度や国民性が違うため、企業側に「転職回数をプラスに考えてほしい」と望んでも、すぐには現実的ではありません。
ここはむしろ、「転職回数の多さはプラス要因にはならない」と腹をくくったうえで、「転職回数の多さをいかにマイナス評価させないか」という、守備的な姿勢で面接に臨むべきでしょう。面接では、元々「減点方式」で評価されることが多い「転職回数が多い理由」。いかに失点を最小限にとどめて、次の話題に進むかを心がけるようにしましょう。
面接で、転職回数の多さをポジティブに変換して伝える方法
NG | すでに6回も転職してしまった。「なぜなら〜」 |
OK | 6回の転職で「このように」キャリアアップした。 |
面接担当者から転職経験について質問された場合、「●回です」などと端的に回数だけを伝えるのはNGです。そこでいったん面接での会話の流れが途切れてしまうからです。だからといって、いきなり言い訳から入っては「やはり自分でも引け目を感じているのだな」などという印象を与えてしまいます。
転職回数の多さを少しでも有利にとらえてもらうには、「目的意識があって必然的に転職を繰り返したのだ」と採用担当者に印象付けることが大切です。これまで、本気で自分の成長・キャリアアップを考えて転職をしてきて、それを面接担当者に納得させることができれば、転職回数の多さは決してマイナス評価にはなりません。
しかし、これは裏を返すと「目的意識がなく、数を重ねてしまったパターンが一番ダメ」ということになります。
「どのような人であれ、利益を出せる人なら即戦力として採用する」という欧米の価値観とは違い、日本では長く働いてくれる人をじっくり育てて、将来的に利益を出そうと考える会社のほうが圧倒的に多いのです。人材を育てるにはコストも時間もかかりますから、「1〜2年で辞めてしまいそうな人は採用したくはない」というのが本音です。面接担当者や人事担当者は、特にそう考える傾向があります。
確かに、ひとつの会社に長年勤めるには相応の覚悟や忍耐力が必要ですから、「転職経験が多いと意志薄弱で忍耐力もない人かも」という偏見を持たれるのも仕方がないかもしれません。ですが、面接ではこの偏見を払拭させる必要があります。
NG | 別の会社に行けばもっと能力が発揮できる。 |
OK | もっと能力を発揮するために別の会社に行く。 |
面接担当者に、「この人はしっかりした目的意識があってさまざまな会社を渡り歩いて来た。一つひとつの転職は自己成長のためのステップだった」と理解してもらえれば、転職が多いことによるマイナスイメージはかなり払拭できるはずです。
NG | 転職理由はブラック企業だったから(自分の意思ではない)。 |
OK | 転職理由は自己成長のため(自分の意思)。 |
たとえば、以前の会社が給料の未払いや社会保険がないなど、社会的に見て明らかなブラック企業だった場合、それを説明すれば面接担当者に同情してもらえるかもしれません。ですが、それが採用に結びつくかというと、そうではないのです。
実際に、採用された会社がことごとく倒産し、その結果、転職を重ねてしまった人がいました。クリエイティブ能力もヒューマンスキルも問題ありませんでしたが、応募した会社はことごとく不採用になりました。
キャリアアドバイザーが人事担当者に不採用の理由を聞くと、「運が悪すぎるから採用しなかった」とのことでした。不合理な判断のようにも思いますが、あの松下幸之助でさえ、「『自分は運が悪い』と言う人は、どんなに優秀でも絶対採用しない」と言っていたくらいですから、一概に笑い飛ばすことはできません。
「運」や「自信」などの目に見えない事柄ほど情緒的な判断が入ることが多いので、「運が悪い」「自信がない」などというネガティブな言葉で自分の印象を悪くしないように注意しましょう。また、家庭の事情、前職の会社の経営状況など、「自分が望まない転職をせざるをえない事情があった場合」も同様です。
面接でのアピールポイント
面接担当者が「転職回数が多くても採用したい」と思う人材とは?
私たちマイナビクリエイターが把握している、面接担当者が「転職回数が多くても採用したい」と思う人材像はおよそ次の通りです。
- それぞれの転職で得たスキルや教訓を自分の言葉で語れる人
- 自分が「今できること」「これからやりたいこと」を具体的にイメージできている人
- 募集しているポジションをこなすうえで必要なスキルが身に付いている人
- コミュニケーション能力が高く、メンバー、上司、クライアントと円滑な関係を築けそうな人
- 今後のキャリアプラン、ライフプランを明確に語れる人
4つ目と5つ目は、面接対策で一朝一夕に準備できることではありませんが、1〜3つ目で求められている「転職で得たスキル」「できること」「やりたいこと」「キャリアプラン」「ライフプラン」については、面接までに文章にして、当日は自分の言葉で語れるように準備しておくことが大切です。
転職回数の多い人がやってはいけない面接でのNG対応と改善ポイント
WebディレクターAさんの場合
- 【プロフィール】
Webディレクター歴12年/転職経験5回 - 【面接中】
豊富な実績に基づいたスキルを具体的なエピソードを交えて話し、自分の有能さをアピール。しかし、複数の企業で得た経験を、すべて伝えようと立て続けに延々としゃべり続け、採用担当者がほとんど口を挟めなかった。 - 【面接担当者の反応】
優秀な方なので、別にうちじゃなくても...。
キャリアアドバイザーよりアドバイス
採用担当者は応募者が話す内容とともに、コミュニケーション能力や柔軟に対応できる能力などのヒューマンスキルも見ています。過去の実績をアピールすることは大切ですが、一方的に話し続けるよりも、採用担当者を巻き込む会話の工夫をしましょう。スキルの高さは十分伝わっていると思いますので、さらに応募先の企業理念を研究し、「自分のスキルをこのようにアレンジして利益を出せる」という結論に、採用担当者との対話の中で到達できれば心証がぐっとよくなると思います。
WebデザイナーBさんの場合
- 【プロフィール】
Webデザイナー歴5年/転職経験3回 - 【面接中】
それぞれの職場での就労期間が短いことを気にしていたBさんは、採用担当者に「若いのに退職回数が多いですね」と言われ、必死になって前職の退職理由を事細かく説明。何だか楽しくない面接になってしまった。 - 【面接担当者の反応】
別に責めてるわけじゃなかったんですけどね...。
キャリアアドバイザーよりアドバイス
転職回数について聞かれたら、退職理由を語りながらも「転職経験によって得られたもの」をアピールするチャンスです。Bさんは、中堅の不動産会社、小さな広告代理店、全国展開の量販店と転職し、まったく違う業界を見てきました。業種や会社の規模によって、同じWebデザイナーでも求められる能力が違うなど、異分野を経験したからこそわかった発見を伝えるだけでも好印象になったと思います。それぞれの職場で取り組んだ作品を見せて説明すれば、印象に残る自己PRになったのではないでしょうか。
ゲームプランナーCさんの場合
- 【プロフィール】
未経験でゲームプランナーへの転職を希望。ショップ店員とプログラマーの経験あり/転職回数3回 - 【面接中】
ブティックで働いたあと、IT専門学校に通いながら近くの大型電器店で働き、卒業してWebディレクターとして勤務。プログラマーに転職した経緯を説明し、幼少時から好きだったゲームの世界で働きたいと熱弁を振るう。 - 【面接担当者の反応】
ゲームへの熱意はわかりますが、行き当たりばったりの印象があります。ウチの会社もすぐ辞めてしまわれるのではと不安が...。
キャリアアドバイザーよりアドバイス
ショップ店員だったCさんは、もっと専門的な仕事をしたいとスクールに通うことを決め、近くの大型電器店でPCの販売をしながら勉強しました。卒業後は、まずWeb制作会社でWebディレクターとして働いたあと、プログラマーに転職。さらに、そのスキルを活かして好きな世界を探求しようとした結果、ゲームプランナーを目指しています。確実にステップアップのための転職ですし、「成長したい」という一貫した目的もあります。しかし、それがアピールポイントだという自覚がCさん本人自身になく、もちろん採用担当者にも伝わっていないという残念なケースです。
自分の職歴を文章にして客観的に見てみると、セールスポイントが見えやすくなります。さらに、信頼できる第三者や専門家に見てもらうと、よりはっきりすると思います。それから、採用担当者が不安に思うのは、「すぐに辞めてしまわれるのでは」ということです。一般的にはフルタイムの社員の場合、入社後3年しないと、給与相応の貢献ができない、要は元が取れないとされています。ですから、その不安を解消することが必要です。その会社の事業や沿革を研究して、その会社でのご自身の3年後、5年後の姿を想像して伝えてみてはいかがでしょうか。その想像にリアリティがあれば、人事担当の不安をやわらげることができます。
最後に
面接に際しては、「転職回数の多さを指摘されるだろうなあ...」といった不安要素を持って臨むべきではありません。上記のBさんの事例でもわかるように、「引け目に感じていること」を指摘されると、つい必要以上の説明をしてしまいがちですが、こうした姿勢が面接担当者の目には「弁解」に映ってしまい、総体的な評価を下げてしまうことに繋がります。
事前に十分な面接対策を立て、転職のプロからメンタル面のケアを受けることで、面接の場であなたの実力を存分にアピールすることができます。ぜひマイナビクリエイターをあなたの理想の転職にお役立てください。