運営は「守り」ではなく「攻め」。エンジニアとしてユーザーの期待に応える喜び ―― ファンプレックス 宮山氏・菅澤氏・河鍋氏インタビュー

Web・ゲーム業界のキーパーソンを特集する「Creator's File」Vol.32

第一線で活躍しているクリエイターのリアルな声をお届けしています。自分とは異なった環境で働くクリエイターたちの熱意や考え方を、是非あなたらしいキャリア形成のためにお役立てください。

モバイルゲーム市場は成熟するにつれ、新規タイトルの企画や開発、運営などの分業化が進んできた。運営に特化した企業も次々生まれており、既存タイトルを長く楽しみたいユーザーの期待に応え続けている。開発元からの移管や運営における技術的な課題を解決するのは、運営事業者に属するエンジニアの役割だ。

運営特化型の企業におけるトッププレイヤーが、2015年に創業したファンプレックス株式会社(以下ファンプレックス)だ。グリー株式会社を親会社に持ち、運営するタイトルは20本を超えている。モバイルゲーム運営におけるエンジニアの魅力とは何か。チーフエンジニアからシニアマネージャーまで、役職の異なるエンジニア3人に登場していただき、自由に語ってもらった。

プロフィール紹介

エンジニア部 シニアマネージャー
宮山 純氏 - Jun Miyayama

2015年2月グリー入社。グリーの内製タイトル「探検ドリランド」でリードエンジニアを経験。その後、ウェブ・ネイティブ問わず複数タイトルのエンジニア部門の統括を務める。2017年1月に、ファンプレックスエンジニアグループの部門マネージャー就任。複数タイトルのエンジニア領域を横断的に統括し、メンバーの育成にも注力している。

エンジニア部 マネージャー
菅澤 要平氏 - Yohei Sugasawa

BtoB向けのシステム開発経験を経て、2017年1月にファンプレックスへ入社。 異業種からの転職ではありながら、入社してすぐに大規模な長期運営タイトルの移管を経験し、チーフエンジニアとして活躍する他、4つのウェブ系タイトルのエンジニアマネージャーも務める。

エンジニア部 チーフエンジニア
河鍋 遼一氏 - Ryoichi Kawanabe

2018年2月ファンプレックス入社。サーバーエンジニアとして、ウェブ系大型IPタイトルを経験。現在は、チーフエンジニアとして大規模な長期運営タイトルを担当する他、メンバーのタスクやスケジュール調整、育成サポートなどの管理業務も務める。

1を10にも100にもする、運営は「守り」ではなく「攻め」の仕事

―― 新規開発と運営において、エンジニアが果たす役割の違いを教えてください。

宮山氏:新規開発が0を1にするものだとすれば、運営は1を10にも100にもする仕事です。一般的なシステム開発では、リリース後の運用・保守は安定稼働を目的とした「守り」と言えるでしょう。対して、モバイルゲームの運営は「攻め」。ユーザーを飽きさせないように、ゲーム内のユーザー動向を分析し、イベントを仕掛け、ユーザーの声を反映していきます。たとえばカードゲームならば、どのカードがどのように遊ばれているかをビッグデータから解析し、改善や新機能を加えていく。リアルタイムに新たな価値を提供するところに、新規開発とは違った魅力を感じます。

菅澤氏:ファンプレックスのエンジニアは、「移管」と「運営」で組織が分かれています。移管グループは、他社さまから買い取ったゲームを自社で運営できるよう、環境を整えることがミッションです。とはいえ、すぐに自社へ引き取るわけではなく、最初は移管元にメンバーが常駐し、共に運営しながら既存の運営方法を学びます。ゲームを作り上げた方々に敬意を払い、相手のやり方を尊重する姿勢を忘れないようにしているんです。

運営方法以外にも、ゲームエンジンやインフラ構成、開発に用いたツール、問合せに対する返答のポリシーなど、把握すべきことは多岐に渡ります。すでに遊んでいるユーザーと同等のゲーム経験を得るため、「プレイ会」を設けることもしています。

河鍋氏:運営グループでは、移管したゲームの運営を担当します。既存の運営方法をブラッシュアップすると共に、コードやデータの効率化も併せて検討します。たとえばイベントやガチャについて、最小限のデータ登録で開催できるよう改善すれば、効率のよい運営が実現できます。パフォーマンスチューニングにより、ビルドジョブの時間短縮やサーバー構成の最適化を図り、費用の低減に繋げることも。運営として新たな視点からゲームを捉えることにより、改善点を見いだしていくんです。分析に必要なログ基盤の構築や、OSのバージョンアップ対応も運営の作業に含まれます。

多くのユーザーと向き合う時間が、エンジニアとしての成長を生む

―― エンジニアとして、どのような部分にやりがいを感じていますか?

河鍋氏:ユーザーとの距離の近さです。SNS等でユーザーの生の声を聞く機会が多く、自分たちが作ってきたものへの思いをダイレクトに感じられるところが魅力だと思っています。以前、トラブルからメンテナンス時間を延長させてしまったことがありました。メンテナンス中はゲームが遊べないため、厳しい言葉も覚悟したのですが、「長時間のメンテナンスお疲れ様でした」「これからも楽しませてもらいます」といった声をかけていただけたんです。疲れが吹っ飛ぶと共に、待ってくれているユーザーがたくさんいることを改めて実感しました。

菅澤氏:ユーザーの声を踏まえ、すぐに改修を行うこともあります。イベントリリース後、問題点を指摘する書き込みを見つけた場合は、その日のうちにミーティングを開き、次の日にはリリースするんです。ハイスピードな開発サイクルにも耐えうるように設計を施すのも、エンジニアの腕の見せどころ。開発サイクルが早く、密度の濃い経験を積めることから、自分の成長スピードも早いように感じますね。わずかな改修でも「よくなった」「遅くなった」と気が付くヘビーユーザーもおり、品質にはとても気を使います。逆にいえば、それだけお客さまの期待値も高いということ。その期待にすぐ応えることができるのも、運営の醍醐味だと思います。

宮山氏:ファンプレックスが運営するゲームは、1日数万〜数十万といったユーザーがアクセスする規模で稼働しています。これほどのユーザーに快適にゲームを楽しんでもらうには、高負荷に耐えうる設計が必要不可欠。自分のエンジニアとしてのスキルがどれだけ通用するかが試されます。

過去に、直近のアクセスデータから試算して、1日数十万ユーザーのアクセスを想定したデータベース設計、処理設計を行い、負荷が上がることなく無事にリリースできたときは、体が震えましたね。多くのユーザーが遊んでくれているからこそ、貴重なスキルアップの機会を得られるし、生の声というフィードバックもある。ファンプレックスのエンジニアでよかった、と感じています。

―― エンジニアのキャリアパスについて教えてください。

宮山氏:エンジニアとして経験を積んだのちチーフエンジニア、マネージャーと、プロジェクトや組織のマネジメントに特化するキャリアや、技術を突き詰めて「スペシャリスト」を目指すキャリアに分かれます。移管元が開発したゲームには独自エンジンで動いているものもあり、どんな技術にも対応できるスキルがなくては移管が成立しません。そこでスペシャリストたちが戦略を練り、技術をキャッチアップするんです。複数のプロジェクトを横断して技術的課題を解決するスペシャリストと、チームを束ねてプロジェクトを着実に進行させるマネジメント。その両者が連携して運営にあたっていきます。

多様なバックグラウンドを持つ社員たちと、「信頼」や「愛」で繋がる会社

―― 最後に、どんな人と一緒に働きたいですか? 転職を考えている方へメッセージをお願いします。

河鍋氏:自分の芯をしっかり持ち、物事に積極的に関わっていく方と一緒に仕事がしたいですね。ファンプレックスは1on1やメンター制度など、社員の声に耳を傾ける場が整っており、社員同士がお互いを認め合いながら働ける環境であると感じています。チームメンバーとして前向きに取り組み、周りと助け合うことで、チーム一丸となって成果を生むことができるでしょう。私も中途採用で、最初は会社に馴染めるのか不安でいっぱいでしたが、ファンプレックスなら大丈夫です。安心して門を叩いてもらえればと思います。

菅澤氏:運営に携わっていると、通常の開発に加え、定期的なイベント開催や障害対応、問合せついての調査など、さまざまなタスクが発生します。そこで「自分はこれしかできない」と拒むよりも、どんなことにもチャレンジして、自分の領域を広げてもらいたいですね。ファンプレックスの人材もゲーム業界にとどまらず、元公務員や元バリスタなど、今の仕事からは想像できないような前職をもつ人ばかり。多種多様な領域に触れることで日々発見があり、自分の成長にも繋がります。どんな経験でも、運営という仕事に活かせるところがあると言えるでしょう。臆することなく一歩を踏み出してほしいですね。

宮山氏:ファンプレックスは「CHANGE」「TRUST」「LOVE」の3つを「ファンプレックス クオリティ」と名付け、すべてのお客さまにお約束する提供価値を定義付けしているのですが、これを体現してくれている人がファンプレックスには本当に多いと感じています。攻めの姿勢で改善を繰り返し(CHANGE)、有言実行で頼りになり(TRUST)、ユーザーや社員を楽しませる気持ちを忘れない(LOVE)。エンジニアとして成長するのはもちろんのこと、働きやすさや人と人との繋がりに重点をおきたいと思われている方には、ぴったりの会社なのではと思います。あなたの熱い思いを、是非聞かせてください。

インタビューを終えて

ファンプレックスが2018年に行った調査によれば、モバイルゲーム運営市場は2015年以降から急成長を遂げ、2017年には502億円に達したという。2020年には1000億円を超える予想だ。新規開発のためのリソース確保や、高収益タイトルへの取り組みを理由に、移管への需要は今後も高まるだろう。

一般的なシステム開発のイメージからすれば、リリースは「ゴール」そのもの。しかし、ゲーム運営にとっては「スタート」だ。移管元が開発したゲームをゼロから理解し、自社の環境に移し替え、改善や効率化を図るためには、高度なスキルを必要とする。加えて、その成果はユーザーからの声となって届けられる。まさにエンジニア冥利に尽きる環境ではないだろうか。

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