企画職と技術職がコラボレーションできる環境で、世の中にない「面白さ」を形にする ―― マーベラス 成田氏・多賀氏・駒形氏インタビュー
Web・ゲーム業界のキーパーソンを特集する「Creator's File」Vol.46
第一線で活躍しているクリエイターたちのリアルな声をお届けしています。自分とは異なった環境で働くクリエイターたちの熱意や考え方を、ぜひ、あなたらしいキャリア形成のためにお役立てください。
コンシューマーやオンラインのゲーム事業を中心に、音楽・映像コンテンツの制作・商品化、舞台・ミュージカル作品の企画・制作・興行などエンターテインメント事業を幅広く手がける株式会社マーベラス。アミューズメント施設で稼働するアミューズメントマシンも、その事業の1つだ。
マーベラスでは、どのような流れでアミューズメント開発が行われているのだろうか。プライズゲーム『TRYDECK』の制作に携わったアミューズメント事業部AM開発部の成田強氏、多賀信一郎氏、駒形直規氏の3名に、それぞれの仕事の内容や、マーベラスで働く魅力、仕事に感じるやりがいについて話を伺った。
プロフィール紹介
アミューズメント事業部AM開発部 副部長
成田 強氏(写真右)
2014年入社。アミューズメントマシンの開発から製造までを担当する同部署にて、主にマネジメントを担当。
アミューズメント事業部AM開発部 マネージャー
多賀 信一郎氏(写真中央)
2020年に中途入社。マシン本体のハードウェア開発において、エンジニアのマネジメントを担当。『TRYDECK』においては試作時の機構仕様策定からソフトウェアの制御検証、量産化における納期、コスト調整、電気試験から生産指導まで幅広く対応。
アミューズメント事業部AM開発部 マネージャー
駒形 直規氏(写真左)
2017年に新卒入社。『TRYDECK』ではプロデューサーとして、企画からリリースまで一貫して担当する。業務としては仕様作成や企画の取りまとめだけでなく、費用管理や外注管理、製作物検証・評価、販売サポート、運営にも携わった。自分の企画を形にするため、幅広い職種の半人前として日々勉強し、社内外のスペシャリストと共通言語を話せるよう努めている。
企画から開発まで一貫して関われる環境
―― まずは皆さんの経歴とお仕事の内容を教えてください。
成田氏:マーベラスには2014年に入社し、現在はアミューズメントマシンの開発部で主にマネジメントを担当しています。『TRYDECK』においては、ハードウェア開発・製造に携わり、チームメンバーのマネジメントを担当しています。
多賀氏:24年ほど同業他社で技術開発のエンジニアとして働いていました。その後、2020年にマーベラスへ中途入社。今は、マシン本体のハードウェア開発において、社内からの要望・提案に対し、エンジニアとして実現可能かの判断をしたり、協力会社への指示出しや開発進捗の確認なども担当しています。
駒形氏:2017年に新卒入社し、企画を担当しています。ただ業務範囲としてはとても幅広く、実際に企画したゲームを形にしてリリースするまでの工程すべてに携わっているので、プロデューサーのような動き方をしています。
―― プライズゲーム『TRYDECK』は、景品を支えるアームの真ん中を狙ってボタンを押すという、誰でも簡単に遊べるアミューズメントマシンです。この制作は、どのような流れで行われたのでしょうか。
駒形氏:『TRYDECK』は、私が新卒で入社して最初に企画したゲームです。アミューズメント施設に足を運んで、親子連れがどんなゲーム機をどのように遊んでいるのかをリサーチするところから始め、「小さい子どもでも遊びやすい、背が低いゲーム機を作ろう」という着想から企画を立てていきました。
子どもがターゲットですので、操作はとにかく簡単にすることを心がけました。「左右に動くバーをボタン押下で止める」「景品を支えるアームの真ん中に当たれば、アームが倒れて景品が取れる」といった動作を3Dモデルで作成し、リサーチ結果も絡めて企画をプレゼンしました。試作機で実際にゲームとして成り立つことを確認し、製作が決まってからは、プロデューサーとして携わっています。
成田氏:アミューズメントマシンの開発には、一作当たり2年ほどかかります。商品企画では、2〜3年後の未来を想像して内容を練り上げることが重要です。開発体制は、プロデューサーとエンジニア2名ほどの少人数チームですね。我々は画面のないプライズゲームを担当していますので、ハードウェアの開発製造は協力会社に依頼しています。
多賀氏:エンジニアの仕事は、机上の企画内容をいかに具現化させるかにあります。予算やスケジュールを加味しながら、動きを実現する機構や電気回路、ソフトウェアなどを仕様書に落とし込み、協力会社と一つひとつ確認しながら開発を進めていきます。安全性や耐久性、メンテナンス性など、企画書に現れない"裏"の部分も詰めていかねばなりません。
―― マネジメント職においては、円滑な開発環境を整えるために日頃からどのようなことを意識されていますか?
多賀氏:AM開発部は、世の中にないものを形にする部署です。メンバーには1つのやり方にこだわらず、ありとあらゆる可能性を探ってほしいと思っています。とは言え、最終的に形にならなくては意味がありません。マネジメント職としては、幅広く状況を捉えながら、1つの方向にベクトルをそろえていくような働きを心がけています。
成田氏:チームが少人数なこともあり、あまり分業化はせず、「みんなで製品を作ろう」という意識付けを常に行っています。企画職・技術職という役職はあるのですが、あまり垣根を設けずに、コミュニケーションを重視している形ですね。駒形も『TRYDECK』では企画だけでなく、設計にも入っていましたし、営業に同行してお客様に企画書の説明もしていましたから。
多賀氏:プラスチック成形の形がどうだとか、技術的にも結構細かいところまで自ら入ってくるタイプなんですよね。「ここは譲れない」と、エンジニアといい意味で戦っていたり。
駒形氏:どうしても気になってしまって(笑)。自分で企画したものですから、やはり「最終的に仕様を決めるのは自分」という思いがありましたね。
コミュニケーションの垣根を越えて、自分の可能性を追求する
―― マネジメント、企画、技術、それぞれのポジションにおける仕事のやりがいについて教えてください。
駒形氏:先ほどの話にも繋がるのですが、自分がやりたいことを形にできることにやりがいを感じています。部署内の他のメンバーとの垣根が低いからこそ、「自分はこっちだと思う」と責任を持って決められる関係にありますね。完成した筐体が倉庫にずらりと並んでいるのを見たときは喜びもひとしおでしたし、今でもアミューズメント施設で遊ばれているのを見かけると嬉しいですね。
多賀氏:エンジニアとしては、幅広い知識や経験が積めるところに仕事の面白さを感じています。前職では専業が進んでいて、自分が関われる範囲が限定されていたのですが、今は機構からソフトウェアまで幅広く携わらせてもらえています。
協力会社との会話では、「この仕様で作るにはこういう理由で時間がかかる」など、それぞれの分野について深い理解が求められます。正直、勉強することがたくさんあって大変ではあるのですが、得られた知識から新しいアイデアが生まれることも多くあり、よいサイクルを回せている手応えを感じています。
成田氏:マネジメント職としては、駒形のような若い人間にチームを任せて、うまく製品が完成したときは達成感がありますね。悩んでいるところをフォローしたり、新たに人材を採用したり、現場の"サポート役"として機能したときにやりがいを感じています。
―― 分業ではなく、メンバー間の垣根が低いというお話でしたが、円滑なコミュニケーションのために意識されていることはありますか?
多賀氏:お互いに声をかけ合っているのが、いつもの光景ですね。プロジェクトごとの定例ミーティングも、実はあまり行っていないんです。社内で話し合えることは、その場で話して決めてしまうので。ですので、風通しはとてもよいと思います。
駒形氏:私も事業部長の席まで行って、企画を直接見てもらっていますしね。
成田氏:ほかの企業だったら、駒形の直属の上司である私を通して、事業部長に企画を伝えることになると思うんです。ですが、うちは事業部長本人が"企画屋"ということもあり、企画者は自ら事業部長に体当たりしてOKをもらってくることになっています。事業部長本人も「いつでも来い」と(笑)。もちろん我々もサポートしますが、「1人の企画者として、会社から承認を得ることも仕事のうち」という方針なんですね。企画が通ったあとも、予算取りや日程管理などもすべて任せる形です。
駒形氏:入社してすぐ、最初の1年間は企画書を100本ほど書きましたが、1本も通りませんでしたね。でも、実際にアミューズメント施設に足繁く通ってアイデアを出したり、どうやって資料の形にまとめるか試行錯誤したり、1年目で過ごした日々は今でも糧になっていると感じます。
自分たちが考える「面白いもの」を世の中に生み出すために
―― 新しいメンバーを迎えるにあたり、どんな方と一緒に働きたいと思いますか?
駒形氏:職務の垣根を越えて、自分からさまざまなことにチャレンジしたい方と仕事がしたいなと思います。それこそ先ほど多賀が言っていたように、これまで触れたことがない分野でも勉強だと思えるか、そしてその知識を元に、さらに新しいことを生み出していこうと思えるかが、大事なポイントなのではないかと思います。
多賀氏:エンジニアとしても、未経験の分野に前向きに取り組めるかどうかは重視したいですね。世の中にないものを考えて作り出すわけなので、「できる」「できない」ではなく、「こうしたらできる」というところまで踏み込んで仕事ができる方であればと思います。
成田氏:私たちはメーカーなので、面白いものを世に出すことが一番の使命です。ですから、エンジニアも含め、全員が企画者のつもりでいないといけません。予算が厳しくても、技術的に難しくても、製品としてやるべきならば実現できる道を考える。分業ではなく、垣根を越えて集まれるからこそ可能なものづくりだと思っています。
そう考えると、月並みですがコミュニケーションが図れる方と働きたいですね。チーム内をはじめ、営業などの各部署や協力会社、販売先などと円滑にコミュニケーションができる人であればと思います。
―― 最後に、転職を考えている方へメッセージをお願いします。
駒形氏:AM開発部は風通しがよく、意欲さえあれば自ら物事を進めていける環境です。「自分で考えたものを形にしたい」という気持ちがある方は、ぜひ応募していただければと思います。
多賀氏:これまで培ってきた経験やノウハウを活かすことはもちろん、さらに専門性を押し広げて活躍できる環境です。エンジニアとしてさらにステップアップしたい、もう一段高いレイヤーでスキルや経験を磨きたいという方に、来ていただけたら嬉しいです。
成田氏:『TRYDECK』の事例のように、これからも若い方には年齢関係なく仕事を任せていきたいと思っています。未経験の部分は私たちが全力でサポートしますので、自分で企画を立てて実現してみたい方はぜひ来ていただきたいですね。
インタビューを終えて
『TRYDECK』の制作にあたり大変だったのは、景品を支えるアームの形状を決めるところだったという。あまりに簡単に景品が取れるようではいけないし、まったく歯が立たないように感じさせてもいけない。「もう1回やれば成功しそう」と思わせるように、企画職とエンジニアが一緒になって何パターンもの形状を試したそうだ。
インタビュー中に「垣根を越える」という表現が出てきたように、役職や専門分野を超えて、自分たちが信じる「面白さ」を追求できる環境があると感じた。作りたいものが実際に形になる手応えを感じたい方は、ぜひエントリーしてみてほしい。
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