アイデアを出し合える柔軟な環境で全員が思う「面白さ」を追求する ―― マーベラス 伊藤氏・山田氏・渡辺氏インタビュー
Web・ゲーム業界のキーパーソンを特集する「Creator's File」Vol.44
第一線で活躍しているクリエイターたちのリアルな声をお届けしています。自分とは異なった環境で働くクリエイターたちの熱意や考え方を、ぜひ、あなたらしいキャリア形成のためにお役立てください。
コンシューマ・オンライン・アミューズメントのゲーム事業を中心に、音楽・映像コンテンツの制作・商品化、舞台・ミュージカル作品の企画・制作・興行などエンターテイメント事業を幅広く手がける株式会社マーベラス。特にコンシューマゲームでは、『牧場物語』、『ルーンファクトリー』など数多くの人気シリーズがあり、2022年5月には新作『DEADCRAFT』がリリースされた。
数々のヒット作を生み出すマーベラスでは、どのような流れでゲーム制作が行われているのだろうか。『DEADCRAFT』の制作に携わったリードプランナーの渡辺大樹氏、リードエンジニアの山田恭之氏、キャラクターデザイナー伊藤迅一氏の3名に、それぞれの仕事の内容や、マーベラスで働く魅力、仕事に感じるやりがいについて話をうかがった。
プロフィール紹介
キャラクターデザイナー
伊藤 迅一氏(写真左)
『DEADCRAFT』コンセプトアートリード。2015年に新卒入社。主にコンシューマゲームにおける、背景コンセプトアート、武器やキャラクターのデザイン、プロップデザインなど各種2Dのアートワークを担当。『DEADCRAFT』においては世界観やキャラを含む美術設定全般に携わる。「世紀末」と「ゾンビ」というベーシックな題材で、新鮮さとユーザーが受け入れやすいわかりやすさの両立を目指し、バカゲーの雰囲気がありながらシリアスなストーリーを活かす独特の世界観を成立させた。
リードエンジニア
山田 恭之氏(写真中央)
『DEADCRAFT』リードエンジニア。2011年に新卒入社。受託案件を中心にAI、プレイヤー、UIなど幅広いパートを担当。現在は高度専門職エンジニアとして、プロジェクトでの開発のほか管理業務や開発環境整備などにも尽力中。『DEADCRAFT』においてはシステム設計や開発環境の整備などを中心に担当し、初挑戦となる世界6プラットフォームでの同時発売に貢献した。
リードプランナー
渡辺 大樹氏(写真右)
『DEADCRAFT』リードプランナー。2006年中途入社より任天堂、Microsoft、Sonyの各家庭用ゲームプラットフォーム向けの開発プロジェクトに従事。RPG、アクション、シミュレーション、スポーツ等、幅広いジャンルのプロジェクトで仕様作成に携わる。『DEADCRAFT』においては初めてUnreal Engine4を用いた開発に携わり、リードプランナーとして企画全体の取りまとめを行いつつ、ローカライズ周りの実作業を行った。特にゲームバランスが重要なプロジェクトであったため、長めのプレイ期間を設け問題点の洗い出しを行うなどの取り組みを行った。
プロジェクトに携わる全員がアイデアを提案できる環境
―― まずは皆さんの経歴とお仕事の内容を教えてください。
渡辺氏:マーベラスには2006年に中途採用で入社しました。以来、プランナーとしてRPGやアクション、シミュレーション、スポーツなど幅広いジャンルで仕様作成に携わってきました。『DEADCRAFT』ではリードプランナーとして、プランナー陣の取りまとめやローカライズ周りの窓口を担当しています。
山田氏:2011年に新卒で入社し、受託案件を中心にプレイヤーやUIなど、さまざまな開発を手がけてきました。『DEADCRAFT』では初めてリードエンジニアを務め、開発環境の整備やメンバーのマネジメントなどを担当しています。
伊藤氏:2015年に新卒で入社しました。コンシューマ部門で、背景や世界観を含めたコンセプトアート、武器やキャラクターのデザインといった2Dアートワークを主に担当しています。『DEADCRAFT』では美術設定全般に携わりました。
―― 『DEADCRAFT』の制作はどのような流れで進んだのでしょうか?
渡辺氏:まず企画の大方針として「世紀末サバイバル牧場」というコンセプトがあり、これをゲームにどう落とし込むか詰めていくところから始めました。弊社は『牧場物語』シリーズを手がけているのですが、今作はテーマが「世紀末」ということもあり、よりコアなゲーマー層がターゲットです。生存を左右するシステムを設けるなど、難易度を高めるよう仕様を検討していきました。
伊藤氏:デザインも同時に走り出し、プランナーと会話を重ねながらコンセプトアートを作っています。苦労したのは、「ゾンビ」「世紀末」「牧場」というキーワードを調和させることですね。「主人公は人間とゾンビが融合した"ハーフゾンビ"」といった設定を提案したり、雑談の中から「ゾンビを"資源"として使おう」というアイデアが生まれたりなどして、イメージが固まっていきました。
山田氏:今回はPlayStation5やNintendo Switch、Xboxなど6つのプラットフォームで世界同時発売することが決まっていたので、スケジューリングには苦労しました。また、今回のチームで初めてUnreal Engine4を用いたので、最初はいかに早く開発環境に慣れるかを意識していました。開発中は「技術的にこういうことができるから、こうしてみたらどうか」とアイデアを提案することもありましたよね。
伊藤氏:開発チームが作ったデモには助けられましたね。最初はゾンビに抱くイメージが全員で異なっていたんです。ホラー寄りだったり、ポップなものだったり。どちらに舵を切るか悩んだときに、デモで"世紀末感もありつつユーモアもある"という感じが生まれた。これをきっかけに、「うちのゾンビはこういうゾンビだ」と認識が統一できたのが印象的に残っています。
多彩なプロジェクトでの経験が、キャリアに繋がるやりがい
―― ゲームプランナー、エンジニア、エフェクトデザイナーそれぞれのポジションで見えてくる、マーベラス社での仕事のやりがいについて教えてください。
渡辺氏:プロジェクトごとに多彩なジャンルを経験できるところに、やりがいを感じています。新たな知識をインプットしたり、別のジャンルの経験からアイデアが生まれたり、日々成長する実感がありますね。プロジェクトスタート時には、自分が担当したい部分についても相談ができるので、自分に合った役割を見つけられる環境だと思います。
山田氏:エンジニアとしても多様な経験が積めることは、やりがいに繋がっています。開発ではUIなどのフロントエンドや、ネットワークなどのバックエンドに至るまで、多くの分野が分業で進められています。私は当初から「将来的にリードの立場になりたい」と思っていたので、全体を俯瞰する力を身につけるために、自ら手を挙げて幅広い分野を経験させてもらいました。
伊藤氏:「自分はこうしていきたい」という希望を聞いてくれる環境ですよね。いろいろな経験ができて、そこでちゃんと信頼を得れば、重要な仕事も回ってくる。飽きずにどんどん楽しめるという意味では、この環境は大きなモチベーションになっています。
―― ゲーム制作では、各部署の連携がプロジェクトを成功させる秘訣になるかと思います。円滑なコミュニケーションのために意識されていることはありますか?
伊藤氏:コンセプトアートを作る場面では、プランナーの要望から真意を汲み取り、さらに補強して打ち返すことが重要になります。たとえば「キャラクターの目を直してほしい」と言われたとしても、実は目以外の部分に問題があったりする。言葉通りに受け止めるだけでは、正解にたどり着けないんです。
相手の真意はどこにあり、どんな地点を目指しているのか。この場面では個性的なデザインが求められているのか、そうではないのか。それを理解して、はじめて芯を捉えた提案ができると思っています。
山田氏:先ほどデモの話もありましたが、「説明するよりも動かして見せるほうが早い」というのがありますね。理解してもらうために手を動かすのも、1つのコミュニケーションだと思っています。リードエンジニアの立場としては、メンバーに代わって各セクションから情報を吸い上げることを意識していますね。誰かが何かに困ったままで、プロジェクトが先に進まない、という状況にならないように気を配っています。
渡辺氏:プロジェクト間のコミュニケーションでは、チャットを介した知見の共有も行っています。『DEADCRAFT』では、Unreal Engine4での開発や、複数プラットフォームの同時発売など、初めて経験することも多かったので、社内の有識者から情報を集めました。逆に、今回得た経験を共有することで、会社の強みがより増すのではと考えています。
伊藤氏:あとコミュニケーションといえば......『DEADCRAFT』の開発はコロナ禍真っただ中だったんですよね。2020年6月から2年間やっていましたから。
山田氏:仕事内容によってリモートの捉え方が違いましたよね。エンジニアの場合は「家で黙々とプログラムを書く方が効率がいい」と感じる人も多いですが、プランナーだと「顔を合わせて話したほうが話が早い」と感じるでしょうし、ディレクターやプロデューサーの立場になると「本当にリモートのままでよいものが作れるのか」という葛藤もある。正解がない中、全員で折り合いをつけてやってきた感じですね。
柔軟性の高い組織で、チームの中核となってゲーム制作に携わるチャンス
―― 新しいメンバーを迎えるにあたり、どんな方と一緒に働きたいと考えていますか?
渡辺氏:当事者意識のある方と働きたいですね。なにか問題が起きたとき「自分のセクションではないから」と無視せずに、チーム全体の問題と捉えて一緒に考えてもらいたい。あとは、自分の芯を持っている人。先ほど伊藤からも話がありましたが、聞いた言葉をそのまま受け取るのではなく、自分の言葉に置き換えて理解したり、説明したりできる人なら、どの現場でも強みを発揮できると思います。
山田氏:ゲーム開発は「家作り」に似ていると思っているんです。犬小屋くらいならエンジニア1人のDIYで作れても、規模が大きくなって一軒家になるとプランナーによる設計や、デザイナーによる壁や内装のデザインが必要になる。マンションやビルとなれば、さらに分業が必要になります。
この例えにならうなら、エンジニアは組み立てたり、ネジを締めたりするのが仕事です。言われた通りにネジを締めることもできますが、「この柱にはこういう意味があり、そのうえでこの材質なら、この程度の強さでネジを締めるのがベスト」と考えることもできるでしょう。よいものを生み出すためにも、相手の意図を感度高く拾える人やチームであってほしいと思っています。
伊藤氏:「相手の意図や真意を汲み取る」といっても、「黙って空気を読む」のとは違います。しっかりコミュニケーションを図り、共通の認識を持ったうえで決める、という言い方が近いでしょうか。
ですので、自分から積極的にコミュニケーションをとったり、アイデアを提案したりなど、「面白いゲームを目指して自ら動く」というスタンスは絶対に必要だと思っています。提案にあたっても、「自分が面白いと思うから」ではなく、共通認識に立ったうえで「このゲームならこうすれば面白いと思うから」と考えられる、そんなバランス感覚を持った方に来ていただきたいですね。
―― 最後に、転職を考えている方へメッセージをお願いします。
渡辺氏:最近、マーベラスでは勉強会が活発に開かれており、スキル向上に対する動きがあちこちで見られています。これはトップダウンではなく、現場の声を受けて行われているものです。非常に力を伸ばしやすい環境であると思いますので、向上心のある方、自分が実現したいゲームがある方に、ぜひ応募していただけたらと思います。
山田氏:ここまで出てきた「Unreal Engine4を初めて使った」「さまざまな分野の開発を経験できる」という話は、人によっては「開発体制が確立していないのでは」と不安を覚えるかもしれません。確かにそういう一面もありますが、だからこそ柔軟性があるとも考えています。これから自分のキャリアを組み立てたい方には、伸びしろを感じられる場なのではないでしょうか。
伊藤氏:しっかり実績を作れば重要なポジションを任せられる可能性があり、チームの中核となるチャンスがある環境と言えると思います。周りと連携しながら、自らチームを引っ張ってゲームを作っていきたいと考えている方に、マーベラスに興味を持っていただきたいですね。
インタビューを終えて
『DEADCRAFT』は世紀末を舞台にしたゾンビサバイバルでありながら、武器や作物を作り自給自足するクラフト要素も合わせ持つゲームだ。そのユニークなアイデアは、プランナーやデザイナー、エンジニアが有機的に結びついた環境だからこそ実現したのだろう。
多彩なジャンルやポジションを経験できる柔軟性は、言い換えれば「自分がなりたい姿」を追求できる環境でもある。現場の声に耳を傾ける社風も、マーベラスで働く魅力の1つだろう。次世代のゲーム制作を担いたいのであれば、ぜひエントリーしてみてほしい。
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この記事を書いた人
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