2DCGデザイナーとは - 4つの役割とキャリアアップについて詳細解説
今回は、2DCGデザイナーの概要と、ドット絵・カード画といった2DCGデザイナーを知る上で重要な流れ・主な業務内容までを幅広く解説します。2DCG分野の流れを知りつつ、より深く2DCGデザイナーについて理解していきましょう。
2DCGデザイナーとは
2DCGデザイナーとは、一般的にAdobe Photoshopなどの描画ソフトウェアを使って平面のグラフィックを描くデザイナーの事を指します。3DCGデザイナーは、基本的にはポリゴンを駆使して作りこむのに対して、2DCGデザイナーは、ドットを駆使して描画を行います。2DCGデザイナーは主に『Photoshop』や『Corel Painter』、『SAI』などのラスタ系描画ソフトウェアを用いて、グラフィックを作成することが多いですが、『Adobe Illustrator』のようなベクトルを扱うベクタ系描画ソフトウェアも存在し、どちらも非常に多くのクリエイターが使用しています。
ここでは2DCGデザイナーが主に担う「ドット絵」「カード画」について解説します。
ドット絵
※オフィス・コンピュータの略称。業者の他にも、マニアには割と普及していた。
無論、アニメーションも可能です。2DCGデザイナーはパラパラマンガアニメの要領で、その動きに必要な枚数の画を描きそろえ、順番に表示させていくだけというシンプルなものでした。また、着色(前述のタイルの色だと思ってください)にはパレットという機能があり、そのパレットは4色(3色+透明色)が1セットになったなったものが4つまで使えました。このパレットを上手く使って、パレットを定時で切り替えることでアニメさせるという「パレットチェンジ」という技もありました。
セオリー通りの使い方としては、格闘ゲームの場合で同じキャラクターで2Pカラーというのがありますが、あれは2P用のカラーを設定したパレットで着色されていて、それを用いるだけというごく単純な仕組みになっています。
ここでは簡単にドット絵について触れましたが、こちらの「2DCGデザイナーなら知っておきたい2DCGゲームの歴史」でも詳しく解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
カード画
レアリティ別に多くの画像を加工する必要があるので、バッチ処理といった、自動で画像加工と書き出しを行えるプラグインが制作の現場では要となります。2DCGデザイナーは、描画だけでなく、ソフトウェアのプラグインも使いこなす必要があります。次では、2DCGデザイナーが主に担う役割を紹介します。
2DCGデザイナーの4つの役割
近年のゲーム開発では2DCGデザイナー、3DCGデザイナーに限らずキャラクター担当、背景担当など、各担当部署ごとに専任して仕事を進めていくのが普通です。しかしゲーム開発はチームの連携作業です。他の部署の作業の理屈も知っておくことで円滑に作業進行が期待できます。
01. キャラクター担当の2DCGデザイナー
担当の2DCGデザイナーがキャラクターの絵を描きますが、アニメーションが必要になる場合は、そのゲーム性や世界観、ターゲットにする(年齢や嗜好などの)ユーザ層などから判断し、現在は大きく2つの動かす方法に分けられます。
ひとつは前述のパラパラマンガアニメのように、2DCGデザイナーがポーズ全身を一枚一枚描いて動かす方法があります。「GIFアニメのように作る」といった方が分かりやすいかも知れません。手間はかかりますが、対戦格闘系などアクションに派手さを求められるゲームに最適です。勿論、アニメーターとしての技術が必要とされます。
もうひとつは顔や髪、身体の各パーツを分けておき、必要な動作に合わせてそれぞれを動かすという方法です。アドベンチャー系のゲームなど、キャラクターを大きく表示したり、表情の微妙な変化が重要になるゲームに向いています。また、キャラクターを描く担当、動きを付ける担当などと2DCGデザイナーの作業分担ができますので、それぞれに専念できます。ソフトウェアはLive2D社の『Live2D』などが有名です。
どちらの場合も、(ゲームの開発規模にもよりますが)最近は複数の2DCGデザイナーがキャラクターごとに手分けして担当するのが普通です。また『Unity』などのゲームの統合開発環境を持つゲームエンジンの普及により、キャラクターの表示座標の指定も2DCGデザイナー側で行えるようになりました。
最近のゲーム機は高機能で画面表示も高解像度になりましたので微細な表現が可能になりました。なのでドットで描くというよりもペイントソフト感覚で描くことができるようになったのですが、だからといって2DCGデザイナーの作業そのものが楽になったわけではありません。
また、プログラム的にその絵全体を動かしたり、他の画と重ねて表示させたりすこともありますので、前述のように2DCGデザイナーはプログラマとの意志疎通も大事になります。これはもはや重要スキルのひとつとしてあげてもいいでしょう。例えば、キャラクターに持たせた武器や装備、爆発や光などの効果エフェクトなどの表示タイミングや座標などがあげられます。
02. ゲーム中のキャラクター以外の画像担当の2DCGデザイナー
爆発や攻撃やダメージを示す衝撃などの「エフェクト効果」があります。3DCGゲームでも2DCGの技術を使ったエフェクト表現には需要があり、前述のGIFアニメのような動画を作って任意の場所へ配置して表現します。例えば比較的小さな爆発などは2DCGとして描いたものをカメラに対して常に垂直になるように配置すれば、演出でカメラを回り込ませるようなことをしても不自然な見え方になることはありません。3DCGの部分とのなじみが悪く見えるのではないかという懸念はありますが、それをうまく違和感なくなじませて描くのも2DCGデザイナーに必要とされる技術のひとつといえるでしょう。
03. ゲーム周辺の画像担当の2DCGデザイナー
よく「ゲーム周り」と呼ばれますが、これはキャラクターのステイタス画面やレースゲームでの結果表示(リザルト)画面の文字や数字、オープニングやエンディングの字幕スーパーなども2DCGデザイナーの業務に含まれます。また、ウインドウ枠やアイコンなどもこれに含まれ、3DCGゲーム内での2D表現部分も同様です。
2DCGデザイナーの中でも少しステイタスの低い業務のように思われがちですが、最近では「UI」と呼ばれ、非常にデザインセンスを問われる部署でもあるのです。またデザインセンスだけでなく、視認性や操作性の良さ、つまり「UX」も同時に問われることもありますので、かなりインダストリアル・デザインに通じたスキルが要求されます。逆の言い方をすれば、このスキルをマスターしている2DCGデザイナーは、現実の家電などの液晶画面のデザインも可能かも知れません。実際、ゲーム開発でUI、UXデザインを経験したデザイナーはこちら方面への転職で重宝されていた時期がありました。
UI | 「User Interface(ユーザーインターフェイス)」の略。ゲーム内でのボタンやステイタス表示画面などのデザイン。企画面に大きく関わることも多いので通常は企画担当(プランナー)が考案してそれを2DCGデザイナーが絵にしていくことが多い。 |
UX | 「User Experience(ユーザーエクスペリエンス)」の略。ゲーム内でのボタンやステイタス表示画面などの機能的、感覚的に操作性の良いものにする仕組み。 |
04. その他の2DCGデザイナーの業務
これはソーシャル系の課金型ゲームでよくあることですが、2DCGデザイナーがゲーム開発作業を進めつつ、同時にそのゲームトップページ掲載用の告知バナーや、Webバナー広告の絵を作る作業が伴うことがあります。
これらのゲームの場合「KPI」が常にチェックされ、各キャラクターやアイテムの人気度、課金度が即座に分かるようになっています。成績の良いものはレギュラーをキープされ、悪いものは存在を見直されます。このことからも課金型ゲームはよりビジネスライクな作りになっていることが分かるのではないでしょうか。
本来はWeb担当者が行う業務かも知れませんが、ゲーム中のキャラクターやアイテム画像をそのままバナー画像に流用することがよくありますので、ゲームの2DCGデザイナーが兼任するということはスピード重視である広告の作業効率を上げるための「工夫」と言えなくもありません。
バナー広告作成では掲載するキャッチコピーや文言は別部署から指定されることもありますが、閲覧者の眼を引くような構成にする技術やセンスは必要です。近年のゲーム2DCGデザイナーはここまで能力を求められます。また、現在ではほとんどないと思いますが、昔はゲームのジャケ画や告知用ポスターをゲームの2DCGデザイナーが担当することも稀にありました。
2DCGデザイナーの作業工程の変化
昔は画面全体を覆うような大きな絵でも、2DCGデザイナーはすべてドット絵の技術で描かれていました。高解像度画像が使えるということは作業ツールの選択肢を増やします。カード画などの一枚絵の2DCGデザイナーの中には、下描きではペンタブレットなどを使わず、紙と鉛筆で下描きを行ってからスキャナ取り込みして着色していくという行程を経て完成させていく人もいます。
こうしたアナログ+デジタルのハイブリッド作業を行う2DCGデザイナーは比較的フリーランスの人に多いようです。一方、会社所属の2DCGデザイナーは作業行程をある程度指定されてしまうケースがあり、それは個人作業でなく集団での作業を意識しているからでしょう。作業工程が2DCGデザイナーごとに違い過ぎると、不意なトラブルやメンバーに欠員などがあったとき他の2DCGデザイナーへの作業の引き継ぎがやりにくくなってしまいます。
2DCGデザイナー必須の業務、データの縮小化
いくらゲームソフトが大容量化してゲーム機のV-RAMが大きくなっても画像データを縮小化する作業が必要であることをゲームの2DCGデザイナーは意識しなければ行けません。その方法の一つに「画像の減色」があります。
例えば24ビットカラーで描かれた絵は(最大で)1677万7216色使われている可能性があります。これを256色まで減色するとデータサイズは格段に縮小できます。勿論、色数が減ることでグラデーション表現に境界線が表れる(バンディング)こともありますので注意が必要です。また、ゲームで使われる絵の場合、2DCGデザイナーは同じパレット色で減色するなどの制限があることがあります。つまり減色する色と色の数を固定しなければならないということです。
減色ソフトウェアはウェブテクノロジ社の『OPTPiX』シリーズなどが有名です。
2DCGデザイナーが今後のキャリアのために実践すべきこと
ただ、2DCGデザイナーからアートディレクターになるには、基本的なCG制作スキル・デザインスキルはもちろん、コミュニケーションスキル・企画・運用スキルも必要となり、それなりに実務経験を踏まないと、アートディレクターにすぐさまキャリアアップするのは難しいでしょう。ゲーム業界でのアートディレクターは、外部・内部のイラストレーター、アーティストの作画進行管理がメインになります。作画がコンセプトに沿っているかを細かくチェックする必要があるので、画の違和感を見抜けるように、デッサン力を日ごろから養っておくことも大事です。
2DCGデザイナーがアートディレクターにキャリアチェンジを果たせれば、それなりに責任が伴いますが、待遇も上昇し、作る側では知りえなかった、管理側の面白さにも気づけるでしょう。2DCGデザイナーとして、スキルを極めていくのも良いですが、長い人生のキャリアパスを踏まえて、2DCGデザイナーからアートディレクターへのキャリアアップも検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
しかし逆のことをいえば、2DCGで代用が可能な部分ならそうした方が作業時間の節約になる可能性があります。後々の調整も3DCGより短時間で行える期待も持てます。そもそもゲーム開発は「ビジネス」です。臨機応変に最良と思われる対応策を試みるのは、決して後ろ向きなことではありません。今後も2DCGデザイナーの活躍の場がなくなることはないでしょう。是非、2DCGデザイナーのキャリアの参考にしてみてください。