Webディレクターの転職を確実に実現させる10の手順
満足度の高い転職を実現するための手順を10段階に分解し、「なぜその手順を踏むのか」「どのように行動すべきなのか」を具体的に紹介しますので、転職を検討しているWebディレクターの方はぜひ参考にしてみてください。
Step.01〜04が事前準備、Step.05〜10が実際の転職活動となります。
目次
Step.01
転職する目的を明確にする - 内定をもらうことをゴールにしないために
転職活動を始めると、誰しもが「次の就職先を決めなければならない」というプレッシャーにさらされます。働き口が見つからなければ収入がなくなるのですから、それは仕方のないことです。しかし、その思考ばかりにとらわれてしまうと、内定の数や内定率に対する価値が必要以上に肥大化してしまい、「Webディレクターとして自分が仕事に何を求めているのか」「Webディレクターとして今後どんなスキルを身に付けたいのか」といった、転職に対する積極的な意思があいまいになっていきます。このような状況では、満足のできる転職は、まず望めないといえます。実際に転職の現場では、「内定をもらい、返答期限が迫ってきたのでとりあえず承諾してしまった」というWebディレクターも少なくないのです。
Step.02
転職活動スケジュールを立てる - Webディレクターの転職活動期間は「3ヵ月」が理想
Webディレクターにとって理想的な転職活動のスケジュール
1週目 | 実績・スキルの棚卸しや自己分析を行い、履歴書・職務経歴書・ポートフォリオなどの必要書類をしっかりと作成・準備する。 |
2週目 | 求人情報をチェックし、業界研究・企業研究を行った上で応募する企業を選定する。 |
3〜4週目 | 企業による書類選考には2週間程度かかるため、結果を待つ。 |
5〜8週目 | 書類選考を通過した企業の面接を受ける。多くのWeb関連の企業では1次面接(現場責任者)、2次面接(役員・経営者)の2段階面接。通常は3〜4週間で内定が出る。 |
9〜12週目 | 退職交渉を行う。退職日の1ヵ月前までに退職意思を伝える規則になっている企業が一般的。退職意思を伝え、残務整理を滞りなく遂行する。 |
上記のようなスケジュールが理想的な理由はいくつかありますが、ひとつは「企業側の都合に合わせる」ためです。Web関連職の中途採用は新卒採用と違い、事業拡大による人員増強や欠員補充が目的となっているのが一般的です。つまり、現場で必要な人材を必要な数だけ募集しているということです。
例えば、数ヶ月後に新規事業をスタートするためにWebディレクターの募集をしている企業があったとします。そのとき、「ほかの企業も見てみたいので半年待ってください」「現在の会社を辞めるまで6ヵ月かかります」というような人材を採用するでしょうか。よほど実績のある価値の高いWebディレクターでない限り、採用は見送られてしまうでしょう。転職活動においては短期間でバスッと決めるという点が、実は重要なのです。
事前準備を含めたスケジュールチャート
さらに、転職活動を3ヵ月に収めたいもうひとつの理由として、「転職活動の目的がぶれないようにするため」という理由があります。長期間、転職活動を続けているとさまざまな企業に出会うことになります。比較対象が増えることは悪いことではないのですが、多様な業種や条件、価値観に触れる中で、当初の目的が不明瞭になってしまうWebディレクターが多いことも事実です。「もっといい企業が見つかるまで」という考えで、ずるずると転職活動をするよりは、短期集中で転職活動をしたほうが、目的意識を持って行動できるようになるはずです。
Step.03
実績・スキルの棚卸しをする - 実績は数値ベースで、スキルは業務内容を分解
事業会社のWebディレクターであれば、KPIとしてPVやUU、CVRなどを追いかけてきたはずです。制作会社のWebディレクターであれば、クライアントに提案したWebサイトの実績や売上などが数値として残っているでしょう。そのほか、率いたチームのメンバー数、1ヵ月間でこなしてきた案件数といったものでもかまいません。とにかく、客観的な数値を洗い出してみるのです。
続いて「スキル」面の棚卸しです。Webディレクターのスキルは、「戦略スキル」「マネジメントスキル」「プレイヤースキル」に大別されます。まずは、これまでに担当してきた業務内容を「戦略スキル」「マネジメントスキル」「プレイヤースキル」に整理してみましょう。
例えば、「Webサイトの予算計画を立てていた」「新サービス・新機能の企画を立てていた」といったものは「戦略スキル」に、「複数の人間をまとめてプロジェクトを成功させた」「Web制作の進行管理を主体に行ってきた」という場合は「マネジメントスキル」に、「自分でコーディングやデザインも手掛けていた」「Googleアナリティクスを使ってアクセス解析をしていた」といったものは「プレイヤースキル」に分類していくのです。
Webディレクターが、実績やスキルの棚卸しをする際に注意したいのは、自己判断に陥らないことです。日々の業務として携わってきたことだけに、せっかくの実績やスキルを「アピールするほどのことではない」と軽視してしまうケースが多々あるのです。すると、適切なアピールができず、自分を安売りするだけの転職になってしまいます。転職経験のある先輩に聞いてみたり、私達のような転職エージェントを活用して、Webディレクターとして、自分がやってきた仕事が、Web業界においてどれだけの価値を持っているのか、一度確認してみたほうがいいでしょう。
Step.04
公平な視点で自己分析をする - 他者の目と客観的な事実から自己の適性を把握する
このような悲劇を招く要因になっているのが、自己分析不足です。Webディレクターとしての自分の適性を正確に把握していないと、判断軸が弱くなってしまうため、巡り合った仕事が自分に合っていると思ってしまうのです。
自己分析をする際の最大のポイントは、逆説的なようですが「自己分析を信用しない」ことです。自己分析には必ず、自分の主観というバイアスがかかってしまいます。良いところばかりに目が行ってしまったり、苦手な部分だけをピックアップしてしまったりと、公平さに欠けるのです。自分の適性を知りたいと思うなら、他人からの情報を得るようにしましょう。Webディレクターはたくさんの人に囲まれて仕事をしています。自分の仕事ぶりがどう見えているか、良い面、悪い面などを尋ねてみてもいいでしょう。そのほうが手っ取り早く、自己の適性を知ることができます。
やや観念的ですが、「尊敬する人物を挙げてみる」という方法もおすすめです。尊敬する人物は、自分が理想とする人物であるはずです。事業プロデュースなどを志すWebディレクターであれば、松下幸之助や孫正義などの経営者を挙げるかもしれません。現場志向のWebディレクターであれば、佐藤可士和、糸井重里といったよりクリエイター寄りの人物を挙げるかもしれません。自分の適性と相違がある可能性はありますが、キャリアの方向性を考える際にはきっと役に立つでしょう。
Step.05
履歴書・職務経歴書・ポートフォリオの作成に取りかかる - 必ずデータで作成し、細部まで気を配ること
基本的に各書類のフォーマットは自由です。見やすければごく一般的なものでもかまいません。ただし、最終的には必ずデータで作成することです。Webディレクターであれば、特別な指定がない限り、手書きは避けてください。いくつか理由があるのですが、「手書き文字は万人にとって見やすいものではない」「PCを扱う職業なのに、PCを使いこなせないというイメージを与える」「新卒のような頼りない印象を与える」といったデメリットが挙げられます。データで作成しておくと、「応募する企業に合わせてアピールポイントを効率的に修正できる」「誤字脱字などの修正が手軽」といったメリットもあります。メールで送信するケースも考えて、応募書類はWordやExcelのような汎用的なファイル形式で作成し、保存しておきましょう。
履歴書は応募先の事業形態によって書き分ける
職務経歴書は必ず客観的な評価指標を提示する
Webディレクターの職務経歴書に関しては、「Webディレクターとしての力を感じさせる職務経歴書の書き方」、ポートフォリオの作り方に関しては、「Webディレクターの転職を成功に導くポートフォリオの作り方」ページでも紹介していますので、ぜひご覧ください。
そしてもうひとつ大切なのが、応募書類の細部にまで神経を張り巡らせることです。誤字脱字はもってのほかです。誤字脱字があるだけで不採用とする企業もあります。改行、句読点、かぎ括弧の使い方など、読みやすくする工夫がなされているかどうかもチェックされています。履歴書の趣味欄も、注意深く記入しなければなりません。採用担当者は必ず目を通しています。趣味の内容で評価が上がることはありませんが、場合によっては「適当に書いたな」と見なされ、マイナスに働くことがあります。応募書類は、自分の実績やスキル、人柄を伝える重要なツールです。すべての項目を自己アピールの武器として磨き上げてください。
Step.06
求人情報をチェックし、応募企業を選定する - 業務内容を確認し、80%くらいの自信があれば応募OK
Webディレクターが求人情報を確認する際に、注意すべき点やチェックすべきポイントをいくつか紹介しましょう。
転職サイトの求人情報だけを見て応募するのはNG
転職サイトの求人情報を見て気に入ったからといって、そのまま応募するのは避けてください。Webディレクターであれば、応募前に必ずその企業のコーポレートサイトを確認すべきです。Web業界において、コーポレートサイトは自社の顔ともいうべきもの。コーポレートサイトのデザインが古いものであったり、更新が止まったりしている場合は、企業運営に問題がある場合もあるでしょう。人材育成やブランディングに、リソースを割けていない可能性があります。
常に社員募集をしている企業は要注意
常に社員を募集している場合、想定されるケースは2パターンあります。ひとつは、すぐに人が辞めてしまうので、募集をし続けなければならないというケースです。この場合、業務内容や待遇に何らかの問題を抱えている可能性があります。もうひとつは、慢性的に人不足に陥りがちな業界なので、とりあえず募集は続けているという場合です。一概に悪い企業ばかりではないのですが、もう一段階踏み込んだ情報収集が必要かもしれません。
福利厚生が充実しすぎている場合は要確認
求職者の中には、福利厚生を重視する人も少なくありません。企業も福利厚生の項目をできるだけ充実させようとします。そのため、嘘は書いていないが実態が伴っていないというケースが往々にして存在します。例えば「託児所完備」と書かれているが、実際にはグループ企業の本社にしかない、といったケースもあります。むやみに疑う必要はありませんが、求人情報は企業のアピールの場であることを忘れないようにしましょう。
年収○○円以上は信じてもOK
求人情報を見ていると、年収の下限しか書かれていないものや、「400万〜800万円」など、非常に幅広い金額が記載されているケースがあります。「どうせ下限近辺の金額しかもらえないのでは?」と、悪いほうに考えてしまいがちですが、決してそんなことはありません。Webディレクターという職種は、非常にスキルの幅が広いため、年収レベルを限定しづらいだけなのです。応募してきたWebディレクターの能力をもとに、それに見合ったポジションを作ろうと考えている企業すら存在します。自分の能力さえ高ければ、納得できるだけの収入を提示してもらえるはずです。
Step.07
業界研究・企業研究をする - 有効な情報源を見極め、精度の高い情報を集める
そもそも求職者が企業の社員募集に応募するということは、「その企業のことを調べた上で、その企業で働きたいと考えている」という、積極的意思を持っていることが大前提です。面接の最中に「この人はうちの会社に入りたいのではなく、とりあえず応募してきたんだな」と思われてしまうと、不採用になる可能性は高くなります。仮に、面接を乗り越え採用されたとしても、入社後に別の悲劇が待ち受けています。どのような企業であるか下調べもせずに入社してしまったので、先述した転職の目的とのギャップが発生してしまう可能性が高いのです。
とはいえ、個人で調べられることには限りがあります。そもそも転職活動時には、求職者と企業とのあいだに、大きな情報の不均衡が起きているのです。求職者は「こんな企業だろう」という仮説を立てることはできても、それを実証する手段を持っていません。暗幕の向こうにいる企業に対して、手探りで研究し、自己アピールをしなければならないのです。そんな状況の中でも、できるだけ精度の高い情報を集めるコツはあります。ぜひ実践してほしい手法を3つ紹介していきましょう。
転職市場を知るプロから情報を仕入れる
また、転職エージェントの価値は、企業からの求人に対して応募者を送り込むことではなく、求職者が入社したあとに一定期間以上の勤務を実現することにあります。そのため、企業と求職者のミスマッチを徹底的に排除しようとするのが一般的です。求職者からの質問に対しては、機密事項でない範囲で、可能な限り多くの情報を開示します。
公平性の高い第三者メディアから情報を収集する
プレスリリースなどには必ず企業PRのバイアスがかかっていますし、決算短信などを投資や経理に関する知識を持たずに読むと、本質を見誤ってしまう可能性が高いのです。自信を持って分析ができないのであれば、ニュースサイトの記事など、第三者が編集した公平性の高いメディアを主体に企業研究をしたほうがいいでしょう。
転職口コミサイトの情報は参考程度にとどめる
また、古い情報がそのまま残っているケースも少なくはなく、企業の現状と大きなギャップがあるケースも存在します。参考までにチェックするのはいいのですが、掲載されている情報を鵜呑みにしてはいけません。
Step.08
一次面接の対策をする - 安全策を取るのではなく、勝負所を決めて攻める
自己アピールをする際のポイントは、応募した企業が求めている内容に対し、深く掘り下げて話をすることです。Webディレクターは職域が広いため、あれもこれもとアピールする人が多いのですが、プレゼンする実績やスキルの幅を広げてしまうと、限られた時間の中ではどうしても薄っぺらな印象になってしまいます。しっかり企業研究をした上で、企業が求める人物像を把握し、一点集中で実績・スキルをアピールしたほうが効果的なのです。事業会社であれば、最低限、その会社が運営しているWebサイトの改善点を挙げられるレベルまで勉強をしておいたほうがいいでしょう。「安全策を取るのではなく、勝負所を決めて攻める」ことを心掛けてください。
Step.09
最終面接の対策をする - なぜ入社したいのかをロジカルに伝える
最終面接で注意が必要なのは、入社意思の伝え方です。「優先度が高い」「前向きに検討している」という程度にとどめておくのがベターです。「内定をいただけたら必ず入社します」というような確定的な言葉は避けたほうがいいでしょう。なぜなら、最終面接中も駆け引きは続いているからです。「この人はどうしても我が社に入らなければならない状態」と思われてしまうと、足元を見られて条件面が不利になるケースがあります。
入社意思を明確に伝えることは強烈なアピールになりますし、入社意思をあいまいにすることに恐怖を感じる人が多いかもしれません。しかしそれは、入社意思を表明することでしか、自己アピールができていないという裏返しです。入社意思の表明以外の部分で確実なアピールができていれば、本来、さほど怖いものではないはずです。転職は自分の市場価値を高める大きなチャンスです。企業に選んでもらうのではなく、最後は自分が企業を選ぶのだという意思を持つことが大切です。
Step.10
条件・待遇を調整し、円満退社をする - 入社を決定する前に「条件面談」の実施を求める
条件面談とは、年収などの条件・待遇を調整するために、人事担当者などと行う面談のことです。面接は「企業と求職者がお互いを評価・見極める場」であり、給与などの条件交渉を行う時間はほとんどありません。そのまま進行すると、企業から示された条件を飲むしかなくなってしまいます。そこで、内定後に改めて条件や待遇を調整する機会を設けてもらうのです。内定は契約ではないので、条件面で折り合いがつかない場合は、最終的に入社を辞退してもかまいません。
採用がうまくいっている企業ほど、条件面談を積極的に行っています。条件面のミスマッチは、早期離職を誘発し、結局は採用コストの増大につながるからです。条件面談は、遠慮することなく企業に求めていいものなのです。直接、条件面談の実施を要求するのが難しい場合は、転職エージェントを活用するのもいいでしょう。代わりに疑問点を問い合わせ、条件面談のアレンジをします。
条件面の交渉をしつつ、現職の退職手続きを進めておくことも忘れてはなりません。退職意思の通知は、退職日の1ヵ月前までと定めている企業が多いようです。とはいえ、有給休暇の消化などを考えると、できる限り早く退職の意思を上長に伝え、スムーズに業務の引継ぎができる環境を整えておくことが大切です。Web業界は意外に狭いものです。いつ元同僚といっしょに仕事をする機会が巡って来ないとも限りません。自身の職責を果たした上で円満退社できるよう、綿密に調整を行ってください。
Webディレクターができるなら、転職活動は必ず成功する
押さえておくべき手順は多く、難しく感じている人もいるかもしれません。しかし、転職活動はWebディレクターであれば、実は誰もが簡単に成功させられるものなのです。なぜなら、転職活動はWebディレクターが日常的に行っている業務と本質的に同じだからです。自分が担当しているWebサイトと自分自身を、置き換えて考えるだけでいいのです。
例えば「Step.01の転職をする目的を明確にする」は、新しいWebサイトの企画や施策の立案をするときに、誰もがそのWebサイトや施策の目的を明確にする作業を行っているはずです。枝葉末節にとらわれて、本質を見失ってしまうことのリスクを知っているからです。転職もそれと同じなのです。「Step.03の実績・スキルの棚卸しをする」「Step.04の自己分析をする」は、競合相手の分析と同じ考え方が利用できます。「Step.05の履歴書・職務経歴書・ポートフォリオの作成をする」から「Step.09の最終面接対策をする」までは、クライアントや上司への提案・プレゼンとまったく同じです。提案書は、必ずファクトベースの分析を行い、誤字脱字を排除し、細部まで気を配って作成するでしょう。提案前には、クライアントの抱えている課題をしっかりと調べ上げるはずです。プレゼン時には質疑応答を重ねながら、提案の効果をアピールすると思います。