Webディレクターとしての力を感じさせる職務経歴書の書き方
Web制作の要となるWebディレクター。デザイナーやエンジニアなど、実際に手を動かす制作チームを束ね、サイトをゼロから作り上げていくプロジェクトチームのリーダー役を務める職種です。非常にやりがいがありますが、その分、豊富な知識とスキル、目配り気配りが要求されるポジションでもあります。
では、Webディレクターが(もしくは未経験からWebディレクターへ)転職を考える場合、どのような職務経歴書を作成し、提出すれば、採用担当者の目を引き、高い評価を得られるのでしょうか。
もちろん「これが正解」と言い切れる書き方はありません。ただ、採用担当者にぜひ会ってみたい!と思わせ、面接フェーズに進む確率が高くなるような職務経歴書の書き方や押さえるべきポイントはあります。今回は、私達マイナビクリエイターが実際にサポートさせていただいたWebディレクターの転職成功事例をもとに、職務経歴書の書き方における重要ポイントを3つに絞ってご紹介します。
目次
まずは、Webディレクターという職種をあらためて確認しよう
冒頭で述べた通り、Webディレクターというポジションは、Web制作現場のフロントに立ち、デザイナーやエンジニアなどの様々な専門職メンバーを束ねながら、チーム全体の力を最大化する責任を担っています。このため、よく「建設現場の監督」や「野球・サッカーなどの監督」に例えられることがありますが、Webディレクターの仕事は、制作チームをまとめるだけではありません。サイト設計をする際には、クライアントに対し、コンサルティング的な助言や提案をしなくてはならない時もあれば、制作開始後も、制作チームの代表者として、進行状況に合わせつつ、クライアントと折衝・交渉を重ねていく必要があります。
また、スケジュール通りにサイトを納品(ローンチ)するための進行管理やコンテンツの品質管理、予算管理などのマネジメントもWebディレクターの仕事です。もし、Webディレクターを野球の監督に例えるならば、監督業務に加えてコーチも兼任するようなもの。制作チームに経験の浅いスタッフがいれば、教育面でのトレーナー役も務めなくてはならないこともあるでしょう。
もちろん、それら全てをWebディレクターが絶対担う、というわけではなく、大規模サイトの構築の場合、予算管理はWebプロデューサー、進行管理はアシスタントディレクターが担当する場合もあります。しかし、情報設計やサイトデザイン、UI、テキストコンテンツ、写真、イラスト、動画、アニメーション、Webアプリケーションなど、Webサイトを構成する要素一つひとつのクオリティーを評価する能力は最低限必要であり、各要素を制作していく上で必要な情報の共有や支援を行うことは、Webディレクターの大切な仕事です。実際にコードを書くことは無くても、各要素の制作工程や制作所要時間などの概要は、把握しておく必要があるでしょう。
Webディレクターの転職で押さえておくべき職務経歴書3つのポイント
それでは、Webディレクターが職務経歴書を作成する際に、注意すべきポイントを3つ紹介していきましょう。もちろん他職種でも共通する大事なポイントはたくさんありますが、ここではWebディレクターならではの書き方に絞ってお伝えします。
冒頭の「職務経歴概要」項目は、Webディレクターのセンスを試される場所
職務経歴書のページ数が多い少ないに関わらず、Webディレクターであれば、冒頭には、必ず職務経歴を簡単にまとめた「概要」を配置しましょう。文字数は300〜400字、4〜6行程度で問題ありません。これは、ボリュームのある職務経歴書であればなおさらですが、「その人物像のアウトラインを把握してから詳細を読み進む流れを作ることができる」、という大切な役目を果たします。
作成の意識としては、普段のWebディレクターとしての業務と重ねるとわかりやすいと思います。Webディレクターは、ページ設計のためのワイヤーフレームを作成する際に、一番伝えたい要素(キャッチコピーや主要なナビゲーション)を、ユーザーが最も視認しやすいファーストビューエリアに配置すると思います。また、記事コンテンツを作成する際でも、本文全てを読まずとも(流し読みでも)、その概要が伝わるように、目にとまるような見出し文を熟慮すると思います。職務経歴概要の作成もこれと同じ考え方です。
「職務経歴書に書かれた全ての情報を読まずとも、あなたという人物像の大枠が伝わる」書き方が、Webディレクターとしてのセンスを感じさせ、採用担当者の興味をぐっと深めてくれます。つまり、当たり前のように職務経歴書の冒頭に職歴概要を配置するのではなく、「この部分は、Webディレクターとしての力量を試される最も重要な場所である」と強く意識し、念入りに考えていくことがポイントです。
【参考例】職務経歴概要
20××年、株式会社△△△△に新卒でデザイナー兼アシスタントWebディレクターとして入社し、画面設計からコーディングまでの工程を4年経験。20××年、知人の紹介により、株式会社○○○○にWebディレクターとして入社。主にCMSで構築したメディアサイトの制作進行管理を中心に、SEM、アクセス解析などのマーケティング分野まで担当。現在の職場では、Webプロデューサー兼Webディレクターとして、予算管理も行っています。データベースとの連携を必要とするサイト構築、また、クライアントにヒアリングし要件段階から設計するクライアントワークに自信を持っています。
メインの「職務内容詳細」項目は、ポートフォリオでは伝えきれない事実をアピール
Webディレクターは、技術者ではなく、クリエイティブなセンスを持ち合わせたマネージメントポジションであることを忘れてはなりません。したがって、おのずと職務内容に書くべきことは、実際の現場クリエイターとはまったく異なるものになるべきです。Webデザイナーなどのクリエイティブ職の採用においては、職務経歴書よりもポートフォリオが重視される場合が多いのですが、Webディレクターの場合は、ポートフォリオよりも職務経歴書の方が、重要度が高いと言っていいでしょう。
ポイント
もちろんWebディレクターにとってポートフォリオが重要でないわけではありません。その重要性と作り方は、「Webディレクターの転職を成功に導くポートフォリオの作り方」ページでも、細かく紹介していますので、ぜひご覧ください。
Webディレクターの成果物とは、もちろんWebサイトそのものです。もし過去の成果物が、インターネット上に公開されていれば、そこで確認することができますし、これが言わば「生きたポートフォリオ」で、デザイン的なセンスやクリエイティブ性は、そこでアピールできます。しかし、この成果物だけでは、採用担当者は、管理職であるWebディレクターの資質、スキル、手腕、経験などを十分に評価することができません。Webディレクターの職務経歴書では、こうした「作品だけでは伝わらない部分」を中心にアピールしていきましょう。
では、どの部分をどのようにアピールしていけばよいのでしょうか。
どのような役割を担ってきたのか一発でわかるように具体的にアピール
職務内容詳細項目では、例えば「○○株式会社の制作部でWebディレクションを手掛ける」「株式会社○○のプロモーションサイトを制作する」などといった書き方では、採用担当者が「具体的にどんな働き方をしていたのか」をイメージすることができません。どんなに有名なWebサイトの制作・運営に携わっていたとしても、「プロジェクトの中でどのような役割を果たしていたのか」が、伝わらなければ、採用すべき人材かどうかの力量が計れないからです。
もちろん、職務経歴書は、面接フェーズに進むための段階的ツールであり、職務経歴書の提出時点であなたの全てを伝える必要はありません。ここが難しいところなのですが、あくまでここは、職務内容では、面接フェーズに進むために、採用担当者に「この人に会って直接話を聞いてみたい!」と思ってもらえれば勝ちです。「こういう役割を担ってきたんだな。もう少し話を聞いてみたい。」とイメージできるまで書くことが望ましいでしょう。
自分の得意分野・強みと企業の求める要件が合致していることをアピール
業務内容の中で、例えば「Google Analyticsを使用したサイト分析、metaデータのチューニングやコンテンツ企画・改善提案を担当」などと書いてあれば、採用担当者は「この人はSEO施策に強い人なのだな」という印象を持ちます。また、「予算策定、システム要件定義、データベース定義書作成」などと書いてあれば、「この人はどちらかというと制作進行管理だけでなくプロデューサーやSEよりのプロジェクトマネジメント分野に長けているようだ」という印象を持つでしょう。
Webディレクターという職種は、業態によって、大きく職務内容が大きく異なります。また、会社単位でも、求める人材像に差があります。したがって、自分は、どの分野に強みを持っているのかを職務経歴書で明確に記載し、同時に企業研究をした上で、自分が応募企業にぴったりの人材である、とピンポイントでアピールする書き方が望ましいでしょう。
もちろん、幅広い経験やスキルを持ち、何でもできる人材であるのに越したことはありません。しかし、あまりにあれもこれも「強み」にしてしまっては、採用担当者の中で人物像がぼやけてしまい、多くの応募者の中で、希薄な印象しか残せない可能性があります。「何でも一通りこなせるが、自分は特にこの分野に圧倒的な強みを持っている」というメリハリを利かせ、それを企業の採用ニーズとマッチングさせる意識で作成していきましょう。
ディレクション業務はもちろん、それ以外の領域でも即戦力性があることをアピール
転職市場にWebディレクターの人材を求める企業の多くは、基本、即戦力を望んでいます。ただ、外部から転職してくるのですから、どんな人材であれ、新しい環境で実力を発揮するまでには多少の時間はかかります。それは企業側も十分理解しています。
しかし、採用担当者に「このタイプの仕事を任せれば、即戦力として近いうちに活躍してもらえそうだな」という希望を与えられれば、「とりあえず会って話を聞こうか」と、面接フェーズに進みやすくなります。そういう意味でも、職務経歴書は「今まで何をやってきたか?」というスタンスだけでなく、「今、何ができるか?」をアピールしようという意識を持って書くべきです。
もちろん、他の職種からジョブチェンジを目指す人、つまり未経験者にも、十分チャンスはあります。ただし、その場合は「これまでに培ったスキルのうち、新しい職場で即戦力として活躍できる分野がある」ことをアピールし、「得意分野で会社に貢献しながら、すみやかに新しい環境に自分をアジャストできる」能力と、意欲がある人材であることも併せてアピールすると良いでしょう。
最後の「自己PR」項目では、「客観的評価」と「自己評価」を明確に書き分ける
自己PRを書くときは、「客観的評価」と「自己評価」をしっかり書き分けましょう。どちらか一方でも印象は偏りますし、一緒にあわせて書くと、内容が薄まってしまう可能性があります。客観的評価は、「サイトのPV数を月間15万から30万まで押し上げた」「5人の部下をマネジメントした」「サイトからの申し込み数の増加により、売上を前年比1.3倍まで伸張した」といった数的実績を添え、「これらの事実から自分の強みはこれである」と論理的・客観的に証明できる部分です。
一方、自己評価とは「自分は真面目な性格であり、SEOを得意としている。特に自社メディア運用は誰にも負けないと自負している」といった、自分の主観部分です。
採用担当者は、職務経歴書を読む時、あなたの「客観的な人材価値」を、推測で評価しながら、同時に「どんな人柄か?」という人物像も想像します。この両面で強い好印象を与えることが、面接フェーズに進むための近道です。
【参考例】自己PR
■得意分野
様々なサイト制作の中で、CMSを導入(データベースと連携)する中小規模サイト(50〜200ページ)の構築を得意としています。特に、○○のプロジェクトでは、WordPressを使用し、SEOを考慮したコンテンツ企画からサイト設計まで行い、PV数を前年比320%、セッション数を180%、CV(申し込み)数を140%に増加させることができ、大きく売上に貢献した経験は、今でもWebディレクターとしての自信になっています。
■今後のビジョン
クライアントワーク、自社サイトに関わらず、ユーザーが目的の情報にストレスなく辿り着けるUI設計を心がけ、目標(売上)達成に直接的に寄与するサイト構築を実現して参ります。PDCAを回しながら、得意分野であるコンテンツマーケティングを活かしつつ、将来はマーケティング分野全般に強みを持つWebプロデューサーにステップアップしたいと決意しています。
自己PR欄にどちらかしか書かれていない場合や混同している場合、採用担当者は、きっと情報が整理されてないイメージが先行し、「知りたいことを十分に知ることができない」というストレスを感じるでしょう。これはマイナス要素になり得ます。
もちろん、あなたのすべての情報を職務経歴書に盛り込むことは不可能ですし、盛り込む必要なないのですが、できるだけ「読む側の身になって、相手がほしいと思われる情報を、理解しやすい形で提供する」という姿勢を大切にすると「採用担当者が会いたくなる」職務経歴書の作成ができるでしょう。
まとめ - 全体としての注意点
いかがでしたでしょうか。
こうした事情から、Webディレクターの職務経歴書は、クリエイター職のそれに比べてやや枚数が多くなる傾向があります。特に職歴が長く、実務経験が豊富な人ほどそうなりがちです。しかし、どんなに多くてもA4用紙で5枚以内にまとめるのが理想です。あまりに分厚くなると、それだけで採用担当者に負担を感じさせてしまい、最後まで読んでもらえない可能性がありますので、気をつけながら簡潔にまとめていきましょう。
それでも、なかなか上手にまとまらない、書きたいことが多すぎてどこを削っていいかわからない、どうしてもその悪循環にはまってしまうことがあると思います。ただ、職務経歴書を頻繁に書いているWebディレクターはいませんし、これはしょうがないことです。
うまくまとめる方法としては、やはり応募企業によって入念に一部ずつ書き分けるということです。これには、しっかりと時間をかけた企業研究も必要となってきます。そんな際は、ぜひ、私達のようなマイナビクリエイターにご相談いただければと思います。要点を押さえ、作業時間を短縮しながらも、あなたの実力を感じさせる職務経歴書の作成ができるしょう。