フロントエンドエンジニアの平均年収は?他職種との比較、年収アップの方法も解説

スマートフォンの普及やデジタル技術の発展に伴い、WebサービスやWebアプリケーションの開発ニーズが増加する中で、フロントエンドエンジニアの需要が高まっています。実際、フロントエンドエンジニアは「どれくらいの年収が期待できるのか」「どうしたら年収アップできるのか」「将来性はあるのか」など興味を持つ方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、フロントエンドエンジニアの年収について地域別、業界別、さらに他職種との比較も交えてご紹介。フロントエンドエンジニアの業務内容にも触れながら、年収を上げるために必要なスキルや方法、将来性についても解説していきます。(2023.3.16更新)

フロントエンドエンジニアの業務内容

フロントエンドエンジニアの年収を語るうえで、まずはその一般的な業務内容から見ていきましょう。

フロントエンドエンジニアの主な業務内容は、Webデザイナーが手がけたデザインをHTML、CSS、JavaScriptといった言語を使って、見た目と機能の両面から、WebサイトやWebアプリケーションに実装することです。クライアントの要望を具現化しつつ、よりわかりやすく使いやすいサービスになるよう、ユーザーが直接目に触れる部分(フロントエンド)の開発を担います。

ただし、フロントエンドエンジニアの業務領域は幅広く、業界や所属する企業、携わるプロジェクトや参加するチームによっては、担当する範囲が異なることがあります。

フロントエンドエンジニアの平均年収

マイナビクリエイターの調査によると、フロントエンドエンジニアの平均年収は、約535万円※1となります。ただし、先述の通り、フロントエンドエンジニアは所属先などによって業務範囲が異なり、年収も前後する可能性があるので、この値はあくまでも参考として押さえておいてください。

この平均年収を基準に比較してみると、国税庁のWebサイトでは、日本人の平均年収は461万円※2となっているので、フロントエンドエンジニアは日本人の一般的な平均年収よりも高収入が期待できる職業と言えるでしょう。これはフロントエンドエンジニアという職種の需要に対して、人材が不足していることが要因の1つです。

フロントエンドエンジニアは同じWeb制作に関わる職種において、マークアップエンジニアやWebコーダーの上位にあたる職種とも言えます。Webサイトの実装方法の検討など、上流工程から携わることが多く、技術的な知識や経験が必要なことはもちろん、求められるスキルも高い傾向にあるのです。

そんなフロントエンドエンジニアとして活躍するためには一定の経験を積みスキルを身につける必要があることから、需要に対し人材の供給が追いついていません。そのため、比較的高い年収が期待できると言えます。

ではここで、さらに地域別・業界別で見た場合、フロントエンドエンジニアの年収にはどのような差があるのか、マイナビクリエイターが取り扱う求人のデータをもとにご紹介していきます。

※1 マイナビクリエイター調べ(2023年2月)
※2 国税庁│1年を通じて勤務した給与所得者

フロントエンドエンジニアの地域別の年収

フロントエンドエンジニアという職種について、地域ごとの年収に差はあるのでしょうか。以下、フロントエンドエンジニアの年収を地域別に比較してみました。

フロントエンドエンジニアの年収 地域別比較

  • 関東:586万円
  • 関西:518万円
  • その他:472万円

※ マイナビクリエイター調べ(2023年2月)

ご覧の通り、関東におけるフロントエンドエンジニアの年収が高水準であることがわかります。その要因として考えられるのは、フロントエンドエンジニアの主な活躍の場である、IT/Web関連の企業が首都圏に集中しているという点です。これまでIT/Web業界は、「企業間での強い結びつき」を背景に大きな発展を遂げてきました。さらに、フロントエンド開発においては、受託開発の業態も多く、企業間の物理的な距離の近さがメリットになります。結果として、人口や企業の多い首都圏にIT/Web関連企業が集中しているのです。

企業や人が集まれば知識も集まり、最先端の情報が行き交います。そういった好循環によって、首都圏のフロントエンドエンジニアのスキルが高まり、人材獲得の競争も発生。平均年収が高まる傾向が続いているのです。また、首都圏の企業は他の地域と比べて事業規模が大きいことも関連しているでしょう。

フロントエンドエンジニアの業界別の年収

フロントエンドエンジニアに限った話ではありませんが、どこの業界で働くかによっても、年収は異なってきます。続いては、フロントエンドエンジニアの年収を業界別に比較した場合、どれくらい差があるのか見てみましょう。

フロントエンドエンジニアの年収 業界別比較

  • ゲーム業界:607万円
  • Web業界(代理店含む):562万円
  • それ以外:550万円

※ マイナビクリエイター調べ(2023年2月)

あくまでも「平均年収」ではありますが、ゲーム業界におけるフロントエンドエンジニアの年収は、ほかの業界と比べるとやや高めです。これは、ゲーム業界のフロントエンドエンジニアの業務範囲が幅広いからと言えるでしょう。

たとえば、ゲーム会社のフロントエンドエンジニアであれば、企業のWebサイトやWebサービスのサイト運営に関わるものから、ブラウザゲームに関わるものまで、異なる領域にも携わる可能性があり、扱う言語も違ってきます。そのため、担当する業務範囲によって年収の振り幅は大きく、当然ながらより幅広い業務が担当できるフロントエンドエンジニアであれば高い年収が期待できるでしょう。ゲーム業界の企業の場合、幅広い業務とそれに伴うスキルを考慮し、求人票では年収に幅を持たせて提示する企業が多いです。そのため、業界別で見ると、ゲーム業界の方が、Web業界よりも平均年収が高くなっているのではないでしょうか。

一方で、Web業界のフロントエンドエンジニアの場合、ReactなどWebサイトを構築するうえで特化した技術や求めるもの、業務範囲がある程度明確なことが多いです。そのため求人票では具体的なスキルや業務範囲に合わせて年収を提示することが多く、より現実的な金額が掲示されていると言えるかもしれません。

他の職種とフロントエンドエンジニアの年収比較

続いては、フロントエンドエンジニアの年収を他の職種の平均年収と比較してみましょう。どのような違いがあるでしょうか。ここではWeb業界の職種の中でも、バックエンド側を扱うサーバーサイドエンジニアと、Webデザイナーを取り上げます。

サーバーサイドエンジニアとの比較

フロントエンドエンジニアがユーザーの目に触れる部分の開発業務を担当するのに対し、サーバーサイドエンジニアはWebサーバー側やデータベースのシステムなど、ユーザーの目に見えない部分の開発業務を担当する職種です。そんなサーバーサイドエンジニアの平均年収は、約650万円※3で、フロントエンドエンジニアよりも高めの傾向です。

サーバーサイドエンジニアの年収が高めなのは、フロントエンドエンジニア以上に人材不足が顕著であり、市場価値が高いというのが大きな要因の1つでしょう。

ひと口にサーバーサイドと言っても、サーバーには「Webサーバー」「メールサーバー」「ファイルサーバー」など種類がいくつかあり、それぞれ異なる言語の習得が必要です。そのほかにも適切な通信速度かどうか、容量に不足はないかなど、業務の中で幅広い知識が求められます。あらゆるシステムを開発・運用するうえで、その根幹を担う職種として重要なポジションであり、またシステム開発や運用業務以外にも、システムの設計や要件定義といった上流工程に関わることもあります。

そんなサーバーサイドエンジニアは、責任重大な業務を抱えているにもかかわらず、フロントエンドエンジニアほどの華やかさがないことも相まって、人材の移動も多いため、インフラの需要が高まる中で単純に供給が追い付いていない状況です。

これらの理由から、結果的にサーバーサイドエンジニアの平均年収はフロントエンドエンジニアより高い傾向にあります。

※3 日本のサーバーサイドエンジニアの平均年収・給与(2023年3月時点)

Webデザイナーとの比較

WebデザイナーはWebサイトやWebアプリケーションの画面のレイアウトをはじめとする見た目のデザインを作り上げる職種です。平均年収は、約490万円※4でフロントエンドエンジニアの平均年収と比較すると低めの傾向です。Webデザイナーもフロントエンドエンジニアも、ユーザーの目に触れる部分の開発に携わるという点で、業務的には似ているのですが、年収に差が生じるのはなぜでしょうか。

それは、Webデザイナーはデザイン分野の開発をメインに行う職種である一方、フロントエンドエンジニアはデザインを考慮したうえでプログラミング、つまりサイトの設計・構築にも携わる職種であり、専門とする業務領域が異なるうえ、そのスキルの習得範囲も広いことから、難易度も高くなるためです。そのため、平均年収もWebデザイナーより高い傾向にあると言えるでしょう。

※4 マイナビクリエイター調べ(2023年2月時点)

フロントエンドエンジニアとして年収アップする3つの方法

フロントエンドエンジニアの年収について、地域別・業界別・職種別で比較しながら、その傾向について解説しました。続いては、それらの傾向があることを理解したうえで、今よりもフロントエンドエンジニアとして年収を上げるためには、どのような方法があるか、考えられる3つの選択肢についてご紹介します。

1.関わる案件の数を増やす

近年、多様な働き方を実現するために、副業を可とする企業も増えてきました。そのため、企業に属して仕事をしながら、個人でも業務委託で開発やデザインの案件を受注しやすくなっています。物理的に関わる案件数を増やすことで、収入アップが期待できるでしょう。

こういった社外案件はIT人材向けの求人サイト、あるいはインターネット上で業務委託の案件をスポットで紹介してくれるようなサービスに登録することでも受注可能です。このほか、ビジネスの繋がりから人脈を広げ、人を介して仕事を紹介してもらい受注に繋がることも考えられます。

この方法では、収入がアップする以外にも、案件を通じて自身の経験値も上がることで、専門性の向上やスキルアップも期待できるといったメリットもあります。

2.異なる領域のスキルのかけ合わせでキャリア形成する

フロントエンドエンジニアとして年収を上げるためには、スキルアップが欠かせません。とはいえ、ただやみくもに、あらゆるスキルを身に付けようとしても、スキルアップの方向性に行き詰まってしまうことがあるでしょう。これを回避するためには、まず自身のキャリアプランを思い描き、それを実現するために必要なスキルを優先的に習得するのがおすすめです。フロントエンドエンジニアとしての軸を持ちつつ、他領域のスキルを身に付けることで、キャリアの幅が広がり、人材としての希少価値も高まるので、年収アップも期待できるでしょう。

以下、年収アップに繋がることが期待できる「キャリアのかけ合わせ」について、その一例をご紹介します。

フロントエンドエンジニア×サーバーサイド領域のキャリア形成

フロントエンド領域のみならず、データベースやサーバーなど、バックエンド関連の知識やスキルを習得した人材は「フルスタックエンジニア」とも呼ばれます。

フルスタックエンジニアは、フレームワーク・ライブラリを使ったフロントエンド開発のみならず、サーバーサイドの開発やインフラストラクチャの設定など、分野にとらわれない幅広い業務をこなせる点、プロジェクト全体を管理できる点から、一般的なフロントエンドエンジニアよりも高収入が期待できます。

フロントエンドエンジニア×デザイン領域のキャリア形成

ユーザーとのタッチポイントでもあるフロント領域において「デザイン」が担う役割はとても重要です。見た目の良し悪しだけでなく、ユーザーへの配慮が足りないデザインや設計では、ユーザーがWebサイトに滞在する時間が短くなったり、成果に結びつく行動に繋がらなかったりと、結果的にサービスそのものの価値を損なわせる恐れがあります。

そこで求められるのが、UI・UXを意識したフロントエンド設計です。WebサイトやWebアプリケーションの成果に大きく影響を及ぼすといわれるUI・UXの設計ができる人材は、とても重宝されます。

デザイン面の開発スキルに加えて、UI・UXデザインに関する知見があれば、デザイン性と使いやすさを両立したフロントエンド構築ができることへの期待から、さらなる年収アップに繋がる可能性があるでしょう。

フロントエンドエンジニア×Webマーケティング領域のキャリア形成

Webマーケティングとは、Web上での集客をはじめ、ユーザーに商品やサービスなどの購入を促すための活動すべてを指します。

Web上での集客という意味では、まず、Webサイトにより多くのユーザーを集めなければなりません。どんなにすばらしいサービス、Webサイトでも、見てくれる人・利用してくれる人がいなければ意味がないからです。フロントエンドエンジニアがWebサイトを開発するうえで、どうしたら集客できるかという視点は重要でしょう。そのための施策として考えられる一つがSEO(検索エンジン最適化)です。たとえばWebページを設計する際に、必要なメタ情報を設定できているか、ページの表示速度は良好か、などWebサイトに適切な対策を施してはじめて、検索エンジンでの上位表示や閲覧数の増加が狙えます。

こういったSEOスキルと視点を持ち、Webページを設計する段階からさまざまな施策を想定した開発を進めることができるフロントエンドエンジニアなら、収入アップも期待できるでしょう。

3.転職して環境を変える

たとえば、「今の会社では年収アップが期待できない」「キャリアアップが難しい」「スキルが正当に評価されていない気がする」などと感じる場合には、転職も1つの手段となります。年収アップに繋がる可能性を含め、転職を通じて以下のようなメリットが期待できるでしょう。

スキルアップに繋がる可能性がある

以前の会社とは異なるフロントエンド業務を通じて、新たなスキルが習得できる可能性があります。これによって、人材としての価値を高めることが期待できます。

キャリアの選択肢が広がる可能性がある

新たな役職を経験したり、以前とは異なる業界に身を置いたりすることで、フロントエンドエンジニアとしてのキャリアの選択肢を広げることが期待できます。

同じポジションのまま年収アップする可能性がある

スキルアップを目指したり、業務領域を広げなくても、転職先がフロントエンドエンジニアの需要が高い企業、勢いのある企業、将来性の高いスタートアップ企業等であれば、現在担っているフロントエンドエンジニアとしての業務範囲のままでも年収アップを狙える可能性があります。

フロントエンドエンジニアの今後と将来性

フロントエンドエンジニアの年収や年収アップの方法について解説してきましたが、最後にフロントエンドエンジニアの今後と将来性について触れていきます。結論から言うと、フロントエンドエンジニアをはじめとするIT人材は、今後ますます需要が高まる傾向にあるようです

2019年に公開された「IT人材需給に関する調査(経済産業省)」によれば「IT人材の需要は拡大するにもかかわらず、その供給が追いつかない」との予測がされています。具体的には、2030年時点で最大約79万人のIT人材が不足すると試算されており、当分はIT人材にとって売り手市場が続くと考えられます。フロントエンドエンジニアももちろんこれに該当し、引き続き、将来的にも需要が高い職種だと言えるでしょう。

まとめ

フロントエンドエンジニアの年収について、さまざまな切り口で解説してきました。年収はもちろんのこと、今後の将来性についても、かなり期待できる職種であることがわかったのではないでしょうか。

フロントエンドエンジニアはIT人材としての市場価値が高く、多くの企業から求められています。ただし、急速に変わりゆくWeb業界において、市場価値を保ち続けるには自身のアップデートが欠かせません。今後も求められる人材として活躍し、年収アップを望むのであれば、フロントエンドエンジニアとしての専門性を高めると同時に、異なるキャリアをかけ合わせ、できる領域を広げていくことも重要になってくるでしょう。

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