ポートフォリオの「あるべき姿」を形にする ―― ポートフォリオ作成サービス『MATCHBOX』ができるまで

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デザイナーの転職活動に必要不可欠なポートフォリオ。しかし、求職者がいざ転職を始めるときに、ポートフォリオを準備できていないことも少なくありません。そこでマイナビクリエイターは、ポートフォリオを簡単に作成できる無料サービス『MATCHBOX(マッチボックス)』を株式会社PARTYと共同開発しました。

人材紹介サービスを運営する私たちマイナビクリエイターと、クリエイティブを専業とするPARTYは、それぞれMATCHBOXにどのような想いを込め、そしてどのように共同開発を進めていったのか、当事者であるPARTYの山中啓司氏とマイナビクリエイターの萱沼守が語ります。

プロフィール紹介

株式会社PARTY
山中 啓司氏 - Yamanaka Hiroshi
(写真右)
Web、映像、イベント、プロダクト・サービス開発など、幅広い領域で企画・プロデュース、プロジェクトマネージメントを行う。最近の主な仕事に「SUNSTAR / G・U・M PLAY」、「TOYOTA / FCV PLUS」、「UNIQLO / UT Picks」、「paymo / Table Trick」、「マイナビクリエイター / MATCHBOX」など。

株式会社マイナビワークス
萱沼 守 - Kayanuma Mamoru
(写真左)
2013年に株式会社マイナビワークスに入社し、Webマーケティングチームの部長として、転職情報の発信やリアルイベントの企画・運営など、集客・プロモーション全般に携わる。得意分野は、最適なSEO設計やコンテンツマーケティングによる自社サイトのグロース。MATCHBOXプロジェクトでは、プロデューサーとして企画・開発から運用まで、全体の指揮をとっている。

デザイナーが抱える「転職の不便さ」を解決したい

―― ポートフォリオ作成サービス「MATCHBOX」が生まれた背景について教えてください。

萱沼:きっかけは「クリエイティブ職、主にデザイナー職への転職を希望する人材の多くが、ポートフォリオを実は持っていない」ことに気付いたことでした。採用側にとって、ポートフォリオはその人の経歴・実績を知る大事なもの。それなのに、マイナビクリエイターで人材紹介サービスの利用を希望されている方のうち、実に73.5%がポートフォリオの用意ができていなかった、もしくは着手はしているけど未完成状態だったんです。

ポートフォリオの提出を希望する企業 ポートフォリオを準備できているデザイナー

参照:マイナビクリエイターによる調査結果(対象期間:2017/9/1〜2018/2/28)/マイナビクリエイターと取引があり、デザイナー職の採用を検討している企業284社からの回答

萱沼:誰しもポートフォリオを準備したい気持ちはあるはずなのですが、どう作ればいいかわからないうえに、日常の忙しさもあって後回しになってしまっているのが実態でした。しかし、「これはしょうがないよね」という言葉で片づけてしまってはとてももったいないこと。むしろこれは、「ポートフォリオさえきちんと準備できれば転職が有利に働く」といことを示唆しているわけですから、我々のような人材紹介サービスこそ、ポートフォリオを簡単に作成できるサービスを提供するべきではないだろうか、という考えに至りました。

―― MATCHBOXの開発はどのように進んだのでしょうか。

萱沼:人材業界に身を置く我々は、社会の変化や価値観の変化に常に向き合っていかなければなりません。そんな中、パートナーとして一緒にそういった変化を楽しみながら取り組める専門家はいないかと探していたとき、PARTYさんと出会いました。PARTYさんの実績は言うまでもありませんが、「未来の体験を社会にインストールする」を社是に掲げているように、Webだけでなく、空間デザインやIoT、インスタレーション分野など、未来を見据えながら、さまざまなことに挑戦しているところに魅力を感じ、声をかけさせてもらったんです。

山中氏:萱沼さん、ウチのコーポレートサイトから普通に問合せされましたよね。

萱沼:あのときは、本当に飛び込みで門を叩く感じでしたよね。今考えるとよく相手をしてもらえました(笑)。

山中氏:PARTYとしても、実はちょうどいいタイミングだったんです。これまで主に広告案件を手がけてきたのですが、プロダクトやサービスの開発からグロースまでご一緒するお仕事も増えてきたときだったので。萱沼さんからのご相談も、「サイトやWebサービスをリリースしたら両社の関係は終わり」という内容なら、断ろうと思っていたくらいでしたが、「事業としてご一緒できる可能性はありますか」とうかがったところ、OKをいただいたので、「共同開発」の形でスタートしました。

萱沼:上流工程から二人三脚で進めました。テクニカルな部分はもちろんPARTYさんにお願いすることになりますが、それ以外は役割を分けることなく、一緒に仕様を検討していきましたね。

―― 山中さんは、萱沼から初めてサービスのアイデアを聞いたとき、どう思われましたか。

山中氏:「転職希望のデザイナーの73.5%がポートフォリオを準備できていない」と聞いて、にわかには信じられませんでしたね。我々もクリエイティブの会社なので、採用の面接で最も重要視するのはポートフォリオですから。ただ、萱沼さんから聞く課題については、客観的な根拠があり、作りたいサービスのイメージについてもとてもクリアでした。また、とにかくこのサービスにかける熱量を感じましたね。「デザイナー職の転職におけるこの不便さをどうにか解決したい」という想いが直球で伝わってきました。

ポートフォリオは単なる作品集ではなく「コミュニケーションツール」

―― 「MATCHBOX」の開発にあたり、特に意識された点はどこでしょうか。

萱沼:転職におけるポートフォリオの「あるべき姿」を明確にしたことです。採用側が見るポイントと、求職者がアピールしたいポイント、そこには必ずと言っていいほどギャップがあります。そのギャップを埋めることこそ、本来あるべきポートフォリオだと強く共通認識を持ちました。

―― 具体的にはどのような内容を想定したのでしょうか。

萱沼:転職の場面において、ポートフォリオは「人物像」を伝えるもの。ですから、最終的なアウトプット(作品や成果物)だけでなく、どんな思考を経てその表現に至ったのか、どんな苦労をどうやって乗り越えたか、どんな課題をどうやって解決したのか...など、最終形に至るまでのプロセスが見えるものを目指しました。

山中氏:最終形に至るまでのプロセスが見える...それはとても重要なことだと思います。採用側が知りたいのは、まさにそこですからね。これはデザイナーに限らず、どの職種に対しても言えますが、最終的な成果物だけでプロセスまで把握するのはなかなか難しい。だからこそ、ポートフォリオでは、どういうところでつまずいて、そこをどのように解消したのかなど、成果物だけでは見えないその人の性格や仕事の仕方を伝えることが非常に大切だし、採用側が本当に知りたいのもその部分だと思うんです。

萱沼:求職者には「かっこいいものを見せなくては...」と思い込んでいる人が多いんですよね。また、本当はしっかりした思考プロセスがあるのに、画像や動画をざっくりフォルダにまとめて提出、という人も結構多い。確かに作品自体は魅力的なのかもしれませんが、これでは「人物像」が見えません。ポートフォリオは単なる出力ではなく、コミュニケーションのツールなんです。

山中氏:そうですね。特に中途採用では、採用側は、「具体的にどんな作業まで関わったのか」も知りたいんです。少ししか関わっていないのに、メインで担当したようにアピールする人などもいるので。そうしたアピールで入社したとしても、結局は仕事とのミスマッチが起きて、お互い不幸なことになってしまいます。だからこそMATCHBOXでは、実際にやったことやプロセスが、ちゃんと伝わるポートフォリオを作成できるようにしたいと開発段階から心がけていました。

―― MATCHBOXはかなりシンプルなデザインだと感じました。

MATCH BOX

山中氏:やはり主役はアウトプットである作品や成果物、またそのプロセスですから、余計な色がつかないようにシンプルにしました。ただ、洗練されすぎると冷たい印象にもなりますし、転職には不安な気持ちも付きものなので、キャラクター(マッチ坊くん)を登場させるなどし、柔らかくとっつきやすい仕上がりにしています。

マッチ坊くん

ポートフォリオづくりをサポートするマッチ坊くん。ポートフォリオの作成状況に合わせて表情も変化する。

萱沼:PARTYさんのデザインには一つひとつ理由があって、あらゆるアイデアが反映されながらも、それぞれがゴチャつくことなく、要素間に整合性がとれている。僕なんかが言うのもおこがましいですが、論理的なんです。

山中氏:ありがとうございます。今回の開発では特にWeb上のUIに注力しました。MATCHBOXはWeb上で作成したポートフォリオをPDF出力できて、そのまま印刷して面接に持っていけるようにしています。「紙のポートフォリオを書いているようなUI」はとてもこだわったところで、開発を一緒に担当してくださったパートナー会社さんの協力もあり実現できました。

「紙のポートフォリオを書いているようなUI」にこだわったMATCHBOXの編集画面

「紙のポートフォリオを書いているようなUI」にこだわったMATCHBOXの編集画面。

MATCHBOX上でトリミングもできる

MATCHBOX上でトリミングもできる。

山中氏:ちなみに例えばですが、初めての外部パートナーと取り引きするとき、まずはどんな実績を持っているのか、企業サイトを見ますよね。そのとき感じるのは、仕事のクオリティが高い企業は、サイトの実績紹介の箇所にどんなツールを使ったか、どういうプロセスで制作したのかなど、具体的に説明されていることが多いということです。「初対面」というシチュエーションにおいて、そういった情報を受け取ることができれば、こちらも安心できます。

個人で作成するポートフォリオについてもこれと同様で、やはりプロセスを「言語化」し、ポートフォリオを介して正確なコミュニケーションを図ることが相手への信用に繋がるのではないでしょうか。

目指すゴールを一緒にすることで、ベストなソリューションに落とし込めた

―― 「MATCHBOX」は2018年3月に正式リリースされ、約1年10ヵ月の期間でアカウント数は1万8千を超えています。

萱沼:MATCHBOXを使いたいからマイナビクリエイターを選んだ、という方が劇的に増えました。なかには「すぐに転職は考えてないけど『MATCHBOX』だけ使いたい」という方も多い。そしてMATCHBOXを使ううちに、キャリアアップしたい気持ちが顕在化され、数ヵ月後に改めて人材紹介サービスを利用された方もいます。当初はMATCHBOXと人材紹介をセットに提供するポジショニングをイメージしていたので、転職マインドが顕在化していない層にも届いたのは嬉しい誤算でした。

―― MATCHBOXは「共同開発」という形で開発されましたが、良好な関係を保ちながらプロジェクトを進めるために、お互い意識されていたことはありますか?

萱沼:「同じ目的を持ち、そこから絶対にブレないこと」でしょうか。MATCHBOXのゴールは「その人にとって一番いい形で転職が実現すること」。あくまで転職・採用のためのツールであり、「ポートフォリオを作ること」自体が目的ではないんです。両社間で目的をきちんと共有していると、テクニカルな部分に縛られることなく、セミナー運営や転職相談などの人的な運用面で実はカバーできることがあったりと、効率的な気付きや発見がありました。部分部分の最適化ではなく、転職活動や採用活動の一連の流れにおいて最適なソリューションは何か、という本質的な論点が固く維持できたのではないでしょうか。

山中氏:対等な立場でお互い言うべきことを言って、ベストなソリューションに落とし込むことができましたよね。Webの仕事をしていると「システムは魔法」と考えている人に出会うことがあるんです。何か困ったことに直面すると、すぐに「システムでなんとかできるのでは?」という風に飛びついてしまったり...。しかし、目的から逆算すると、システムを開発したり改修することが必ずしもベストソリューションではなかったりします。人的なオペレーションであったり、コミュニケーションの取り方の方がまず重要だったりすることも多々あるんです。

萱沼さんと並走する中では、課題を解決したり目的を達成するために今、本当にやらないといけないことは何か?をフラットに会話できているのが嬉しかったですね。もちろん、長期的に開発を行うなかで、お互いに落とし所を見つけないといけないときもある。そんなときも、本質的な論点に立ち返ることで、建設的なやりとりができているのではないかなと思います。

―― 最後に、今後のMATCHBOXやクリエイティブ人材の採用に期待することをお聞かせください。

山中氏:私自身、最初にデジタルクリエイティブ業界に入ったときには、zipの包み方すら知らないズブの素人でした(笑)。うまくいかないことも多かったですし、今も日々格闘中です。ただ明確に言えるのは、「一貫してこの仕事が楽しくて好き」ということです。それは、よいものを作ろうというモチベーションを持った業界の仲間と共創したり、切磋琢磨できているからだと思っていて、クリエイティブ業界に対して、すごく感謝しているんです。なので、そんな自分が感じてきたモノづくりへのワクワクを1人でも多くの人に感じてもらいたいですし、この業界がさらに発展できるよう、MATCHBOXのプロジェクトを通して、幸せな就・転職を1つでも増やしていきたいです。

萱沼:MATCHBOXで、自分という人物像をプロデュースすることは、結局は自分と向き合う「自己成長」の時間に繋がると思うんです。転職活動は人生を変える重大な分岐点ですから、それを機に自分を客観的に見つめ、課題や弱さに気づき、それを解決しようとする勇気は、人材としての価値をアップさせるはずです。今後は、転職実現という一定期間のソリューションだけでなく、自己発見の場として、「自分らしい生き方、自分らしいキャリアを描くならMATCHBOXを使うべき」と言われるぐらいの存在にまで押し上げていきたいですね。

株式会社PARTY

未来の体験を創造し、社会にインストールするクリエイター集団。成田空港第3ターミナルの空間デザインをはじめとする数多くの実績を誇り、企業ブランディング、インスタレーションなどを幅広く手がけている。東京とニューヨークにオフィスを構え、「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」、「ONE SHOW」、「D&AD」などをはじめとする国内外の広告・デザイン賞を数多く受賞。また個人の価値に値段をつけてトレーディングカードのように流通させるフィンテックサービス「VALU」の設計・運営にも携わっている。

ポートフォリオサービス 『MATCHBOX』のご紹介

クリエイター集団「PARTY」と共同開発したポートフォリオサービス『MATCHBOX(マッチボックス)』。

採用担当者の知りたい情報を押さえたポートフォリオがWebと紙でつくれます。「オファー機能」を使えば、企業から面接のオファーを受け取ることも可能です。

マイナビクリエイターに申し込むと、MATCHBOXを無料ですぐにご利用できます。ぜひご活用ください。

MATCHBOXの詳細はこちらをご覧ください。

この記事を書いた人

マイナビクリエイター編集部

マイナビクリエイター編集部は、運営元であるマイナビクリエイターのキャリアアドバイザーやアナリスト、プロモーションチームメンバーで構成されています。「人材」という視点から、Web職・ゲーム業界の未来に向けて日々奮闘中です。

サービスに関するお問い合わせ
0120-410-470 マイナビクリエイター事務局 受付時間 9:15〜17:45

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