ソーシャルゲームで2DCGデザイナーが担う役割とは

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昨今のゲームビジネスの屋台骨を支えているのは、スマートフォンをはじめとするモバイル端末をプラットホームにしたソーシャルゲームの数々であることは間違いないでしょう。スマートフォン端末の性能も数年前では想像もできないほど高性能化し、3DCGのゲームも快適に楽しめるようになりました。

そんな中、3DCGゲームが注目される一方で、2DCGデザイナーの活躍の場がなくなってしまったわけではありません。むしろ、これまでは考えられなかった需要に供給が追いつかなくなってきているくらいです。そこで今回は、盛り上がりを見せるソーシャルゲーム市場において、2DCGデザイナーの置かれている状況からその役割までを詳しく解説していきます。

ソーシャルゲームと2DCGデザイナーを繋ぐ時代背景

1999年、NTTドコモが「iモード」のサービスを開始。当時はまだ、いわゆるガラケー(ガラパゴス携帯)ではありましたが、インターネットと携帯電話を繋ぐという革新的な出来事であり、このとき誕生したゲームアプリが現在のソーシャルゲーム(Social Network Game)の先駆けでもあります。しかし当時は回線速度が遅いうえにパケット通信料も高額。ゲームのための画像を頻繁にダウンロードする必要があるものも多く、携帯ゲームに打ち込むヘビーユーザーにとっては経済的なダメージがかなり大きかったことは否めません。

一方で、ゲーム業界の時代の流れとしては、この少し前(1994年)にセガ社のセガサターンやソニー社のプレイステーションが発売され、「次世代機」というキャッチーな言葉と共に、もうこれからのゲームは3DCGをメインに開発していくという「空気」ができつつありました。当時ドット画を専任としていた2DCGデザイナーの人材は薄れ、ドット画にこだわりを持っていた2DCGデザイナーは、この頃に発売された任天堂のゲームボーイカラー(1998年発売)や、ゲームボーイアドバンス(2001年発売)の開発に移行していったのです。

その結果、「iモード」におけるゲームアプリの開発は困難を極めます。考えてみれば「iモード」という文化はゲーム産業とは別の分野からやってきたので、人材確保という意味ではそもそもスムーズな人材移行は難しかったのかもしれません。

やっと人材が確保できても、当時の携帯電話の機能の限界が2DCGデザイナーを苦しめます。画像に許されるファイルサイズはわずか百数十KB。しかも、その画像をGIFファイルとして動かしたくても、版権上の問題からGIF画像技術を使えない開発が多く、画像の管理も大変でした。当時のソーシャルゲームにおけるコンテンツは、ユーザーにも2DCGデザイナーをはじめとする開発側にとってももどかしいもので、いうなれば時代を先取りしすぎていたのかもしれません。

ソーシャルゲームにおける2DCGデザイナーの需要

現在のソーシャルゲームには欠かせないジャンルがあります。それはTCG(トレーディングカードゲーム)です。当初は現実のカード製品ならともかく、バーチャルなカードでユーザーの心をつかめるのか、訴求力はあるのか、という懸念の声もありました。しかし、トレーディングカードの「買う」「集める」「交換する」といった従来の意味合いがユーザーに浸透していたこともあり、ソーシャルゲームにおけるTCGは、ユーザーのカード収集欲を刺激し活況をもたらしたのです。

その魅力の1つと言えるのが、ゲームの世界観をさまざまな表現で描いた「カード画」でしょう。ゲームの中に登場するカードには個性豊かなキャラクターやアイテムが描かれており、物語が進んでキャラクターがレベルアップすれば、それに伴って装備や装飾が加えられ、カード画が変わっていく演出はもはや定番。と同時に、課題となったのが2DCGデザイナーの不足でした。レアなキャラクターや限定アイテムなどカードの種類が増えれば増えるほど、膨大な数をデザインしなければならないからです。

このような危機を救ったのが、同人コミックなどの分野で「絵師」と呼ばれる人たちでした。ただ、依然としてソーシャルゲームにおけるTCGの人気がある限り、「カード画」が描ける2DCGデザイナーの需要はあり続けます。昨今、開発技術の発展もあり、実写画像を加工してリアルなキャラクターを作り出すことも可能になりました。もはや「2DCGデザイナー=ドット画制作」ではありません。これからは幅広い表現ができる2DCGデザイナーが求められるでしょう。

2DCGデザイナー不足の中で築いた独特な文化

さまざまな分野の「絵師」の活躍によって、2DCGデザイナーの人材不足はかなり解消し、画像の質も飛躍的に向上しました。ただ、そのことによってこれまでのゲームではありえないことが起こったのです。

それは、それぞれの絵師が描いた異なるタッチのキャラクターが同じゲーム内に共存すること。従来のゲームにおけるキャラクターデザインは、その世界観や絵のタッチが統一されているのが当然であり、そうなるよう気をつけて開発されてきました。しかし、個々の絵の持ち味を信条としている絵師を大量投入したことによって、それができなくなってしまったのです。

ただ、このことはユーザーにとって受け入れがたいことではありませんでした。現在ではむしろ「いろいろな絵師の絵が楽しめる」と歓迎するユーザーも多く、ソーシャルにおけるTCGの醍醐味として受け入れられているのです。

ソーシャルゲーム市場で、より求められる2DCGデザイナーになるために

ここまでソーシャルゲームと2DCGデザイナーを繋ぐ時代背景ついて説明してきました。ここからは、ソーシャルゲーム市場でより活躍できる2DCGデザイナーになるために、押さえておきたいポイントを解説していきます。特にソーシャルゲームの中でも人気が絶えないトレーディングカードゲームを例に、2DCGデザイナーが制作プロセスの中でどういった姿勢で仕事に臨むべきか、また描画スキルのほかに、今後はどんなスキルがあるとより幅広く活躍していけるのか見ていきましょう。

2DCGデザイナーがカード画を作成するときに押さえておきたいポイント

ソーシャルゲームにおけるカード画を作成する際、2DCGデザイナーは、単にユーザーがコレクションしたいと思うような魅力的なデザインを考えるだけではなく、そのゲームのストーリーや先の展開も考えてデザインする必要があるでしょう。ゲームが進むにつれて、たとえばキャラクターに鎧や武器を装備させた場合、それらのアイテムをカード画にも反映しなければならないからです。

同じキャラクターであっても、その装備ごとに別のカード画を用意する場合はともかく、1つのカード画でキャラクターを表現し続ける場合は、2DCGデザイナーはその画の上にさまざまな装備の画を書き加えていきます。ここで重要になってくるのがキャラクターのポーズを2DCGデザイナーがどう描くかです。

たとえば、装備するアイテムによって、キャラクターが身に着けている胸のペンダントの形状が変わるとしましょう。当然そのキャラクター画は、正面を向いて両手を広げているなど胸の部分がわかりやすいポーズにしておくべきです。少なくとも両手を組んで祈りを捧げているようなポーズにしたいときは、両手の位置に気を配るべきでしょう。

例:キャラクターのポーズによるアイテム(ペンダント)の見え方

ただ、こういうことは2DCGデザイナーの側では何をどうすべきなのか判断することはできません。2DCGデザイナーがテキスト文面によるキャラクター設定だけでイメージを膨らませて、それを画像にしていくことはよくあることですが、それをどんなポーズにするか、どんなカメラアングルにするかを勝手に決めるべきではないのです。

そこで、2DCGデザイナーにとって重要になってくるのがカード画発注のクライアント、もしくはゲームプランナーに細かくゲームの設定やキャラクターについて確認し情報を聞き出すことです。画を描く前に、必要な資料はそろっているとは思いますが、ゲーム全体を開発進行しながらカード画の構成も進めていく中で、企画内容が変わることなど日常的であり、それが現場の2DCGデザイナーの側にまで連絡が行き届かないというミスやトラブルもよくあることです。

ここは2DCGデザイナーの方から「先手を打っておく」くらいの気持ちで指摘、提案ができるとよいでしょう。その際、開発全体は神経質になっていることが多いので、相手の立場や事情も考慮しながら話を聞き出す、話に入り込むことが大事です。

こういったことから、2DCGデザイナーには、描画スキルと併せてコミュニケーション能力も必要なのがわかります。円滑なコミュニケーションができれば、ゲームプランナーからも「頼れる2DCGデザイナー」として一目置かれるのはもちろん、スムーズな制作進行ができるでしょう。

究極を言ってしまえば、カード画のキャラクターのポーズはすべて両手を下げた正面からのスタンディングポーズのまま固定しておいた方が、2DCGデザイナーにとっても後々のことを考えると無難です。しかしながら、もはやカード画が「ゲームの華」と化した今、それでは少し物足りなさを感じるもの。やはり2DCGデザイナーの側から取材し、キャラクターのポーズを提案していくべきではないでしょうか。

静止画だけでは物足りない!覚えておきたいアニメーション用ソフトウェア

静止画メインの2DCGデザイナーでもアニメーションのスキルが必要になることがあります。最近は、カード画でも動かす技術が採用されたソーシャルゲームが多く配信されているからです。ここでは、2DCGの静止画をアニメーション化させるソフトウェアを一部ご紹介します。

Spine

Spine

参照:Spine

ゲーム用に開発されたアニメーションソフトウェアで「Unity」や「Unreal Engine」などのゲームエンジン環境との相性もよく、最近のソーシャルゲーム開発で採用されることが多いです。2DCG画像でも3DCGモデルのように「ボーン(骨)」を組み込むことによって、滑らかなアニメーションを可能にします。このソフトウェアを使いこなすには、ボーンの仕組みを知るなど2DCGデザイナーであってもある程度3DCGの知識があった方がいいでしょう。

Live2D

Live2D

参照:Live2D

目の瞬きや口パクなど、顔の表情をパーツごとに制御することができるソフトウェアです。キャラクターと会話する場面の多いアドベンチャー型のソーシャルゲームやアニメ塗りの画像に向いています。こちらも「Unity」や「Unreal Engine」などのゲームエンジンに対応しており、数々のソーシャルゲーム開発に使われています。

通常、カード画を描く2DCGデザイナーと、それを動かす2DCGデザイナーは別ですが、後の工程を知っていればスムーズな制作進行ができるでしょう。スマートフォンをはじめとするハードウェアの高性能化でますます表現の幅は広がっています。2DCGデザイナーという肩書きで業務を限定することなく、より豊かな表現を目指して新しいスキルはどんどん身に付けていきましょう。

ソーシャルゲーム運営における2DCGデザイナーの業務

ソーシャルゲームの開発は従来のゲームと大きく異なるところがあります。それは「開発」だけでなく、その後に「運営」が必要であること。また「運営」は「開発」とは別のスタッフで行われるのが普通であり、ここで注目すべきなのは「運営」における2DCGデザイナーの業務についてです。

ソーシャルゲームの運営はかなりシビアで、課金状態のよくないゲームタイトルはすぐに改善が図られ、場合によっては打ち切りになってしまいます。しかもその判断は迅速です。つまりマーケティングが従来のゲームに比べ、ずば抜けて発達しているのです。課金ユーザーを飽きさせないための施策として、期間限定イベントや特別キャンペーンなどが企画されますが、ただ単調にそれらを実施しているだけでは、ユーザーに気付かれにくく、新規ユーザーも集まりません。ですからそれらを「告知」することが非常に重要になってきます。そこで、2DCGデザイナーに新たに発生するのが、広告バナーなどに使われる告知用の画像を作る仕事です。

広告バナーとはいえ、作業内容としては実にさまざまで、まったくゼロの状態から新規に描き起こすこともありますし、すでにできているカード画を加工することもあります。昨今のゲームの2DCGデザイナーは、ソーシャルゲームを運用していくうえで広告バナーを作るスキルも要求されることがあるということを、認知しておいたほうがいいでしょう。

まとめ

スマートフォンの普及で、爆発的に拡大したソーシャルゲーム市場。その中でも根強い人気を誇るカードゲームにおいて、2DCGデザイナーの需要は高まる一方です。人気タイトルを支える魅力的なカード画、ゲームの公開後も継続して行われるアップデート、そしてその告知。それらに深く関わっていくのが2DCGデザイナーだからです。ソーシャルゲーム市場で求められる2DCGデザイナーを目指すなら、クオリティの高い描画スキルのほか、コミュニケーションスキルや3DCGに関する知識なども積極的に身に付けることで、仕事の幅や活躍の場はさらに広がっていくでしょう。

この記事を書いた人

マイナビクリエイター編集部

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