今、Webデザイナーに求められる「キャリアのかけ合わせ」とは ―― 木村よねこ氏「Web業界進化論#04」開催直前インタビュー
来たる3/25(木)、マイナビクリエイターではオンラインセミナーWeb業界進化論 実践講座#04「Webデザイナーのキャリアを進化させる、数字とデザインのかけ算とは?」を開催する。
「Web業界進化論 実践講座」の第4弾は、これからさらなる成長を目指すWebデザイナーに向けたもの。ディレクター兼Webデザイナーとして第一線で活躍する、AIS株式会社の木村よねこ氏をゲストに迎え、Webデザイナーのキャリア設計や成長ポイントについて語られる予定だ。
今回はイベント直前インタビューとして、木村氏にこれまで歩んだキャリアや、その選択の裏側、コロナ禍でのキャリア形成について伺った。
プロフィール紹介
木村 よねこ氏
AIS株式会社 開発事業部統括 / 一般社団法人 日本ディレクション協会 所属
茨城県出身。筑波研究学園専門学校グラフィックデザイン学科卒業後、外食産業の制作デザイナーとして就職。自社運営店舗のメニュー・ポスター、広報誌など広報販促物の制作・デザインを行う。2007年にWebデザイナーを目指して上京。多数の企業でWebデザイナー&クリエイティブディレクターとして活動しWeb制作・Webコンサルティング支援に従事。2010年よりGMOTECH株式会社にてSEO事業部のコーダー兼Webデザイナー、広告事業部のディレクターを経験。2015年にAIS株式会社の前身となる会社の立ち上げメンバーとして参画。新規サービス・メディアの立ち上げやサイト制作、ディレクションを行う。
現在はAIS株式会社で開発事業部の事業部長として、制作業務の傍らシステムディレクションや社内ディレクションを行う。日本ディレクション協会に所属。ディレクター同士の交流会やミートアップ等の運営サポート等も行っている。
自己流のグラフィックデザインから、根拠のあるWebデザインへ
―― まずはこれまでの経歴について伺えればと思います。木村さんはデザイナーのキャリアをどのようにスタートされたのでしょうか。
木村氏:専門学校を卒業後、地元で飲食チェーンを展開している企業に、制作デザイナーとして入社したのがキャリアのスタートです。店舗のメニューやPOP、のぼり、販促物などの制作とデザインを4年ほど手がけていました。
その後「これからはWebデザインが伸びるのでは」と思い、会社に勤めながらスクールに通ってWebデザインを勉強しました。そして半年後にスクールを卒業したタイミングで転職し、Webコンサルティング会社ではじめてWebデザイナーとしてWeb業界に関わることになります。
―― グラフィックデザイナーからWebデザイナーに転向するにあたり、どんな点で苦労されましたか?
木村氏:最初の会社ではデザイナーは私だけで、先輩がいなかったんです。なので、自分の好きなようにデザインをしていました。転職して驚いたのは「なぜこの色にしたの?」「なぜここにナビゲーションがあるの?」と、デザインに根拠を求められたこと。
これまですべて自己流だったので、改めて美術やデザインを勉強するなどして、ついていくのに必死でした。グラフィックデザインとWebデザインでは、UIデザインをはじめユーザー体験(UX)デザインなど表現の幅も異なります。Web業界の基礎知識から技術要素まで、だいぶ鍛えてもらいましたね。
―― その後、数社を経験し、前職の大手インターネット集客の企業を経て、現在所属されているAIS株式会社の前身となるベンチャー企業に転職されています。大手からベンチャーへの転職に、迷いや葛藤はなかったのでしょうか?
木村氏:葛藤はあまりなかったですね。前職では5年ほどSEOやWeb広告などといったインターネット集客に関する経験を積ませていただいたので、恵まれた環境ながら「そろそろ新しいことにチャレンジすべきでは」と考えていたんです。そうした中、一緒に仕事をしたことがある方が起業のタイミングで声をかけてくれて。転職の迷いよりも「ゼロから会社の立ち上げに携われる」というワクワク感のほうが大きかったです。根拠のない自信があったのかもしれません(笑)。
現在はAIS株式会社で開発事業部の事業部長を務めています。開発事業部ではWebサービス開発や保守、受託制作に携わっており、私は制作業務のかたわらシステムディレクションや社内ディレクションも担当しています。
Webデザイナーに軸足を置きながら、ビジネスを考える
―― 今回のセミナーのテーマである「数字×デザイン」について意識するようになったのは、いつ頃でしょうか?
木村氏:先ほども少しお話しに出ましたが、前職の頃ですね。27歳で転職したんですが、それまではWebデザイナーというキャリアとアウトプット(制作物)でお金を稼ぐことしか頭になかったんです。「企業にさえ属していれば誰かが仕事を持ってきてくれる」とすら考えていました。
ところが、前職では全員が数字(売上)を意識しており、毎月定例会で数字を共有するほか、新規事業立ち上げも目まぐるしく行われていました。そこで「ビジネスのことも考えなければダメだ」と気がついたんです。
思えばこれまでも、どんなにデザインがうまくいっても、ビジネスがうまくいかなければ、そのプロジェクトはあっけなく終わる運命にありました。クリエイティブがなかったことになるくらいなら、企画やマネタイズなど、ビジネスに真剣に向き合おうと思いました。
―― ビジネスに向き合うとなると、Webデザイナーからディレクターへ転向することになるかと思います。
木村氏:その選択肢もありましたが、Webデザインの現場から離れたくない気持ちもありました。デザイナーから離れると、現場の感覚を忘れてしまうのではと不安で。
Webデザインは一般的なデザインに比べ、コーディングなどの技術面や、ブラウザなどの環境面など、日々進化しています。常に知識をアップデートしていかないと、過去の知識や経験でディレクションすることになってしまう。作る側の気持ちがわかるからこそ、案件に対する想像力を失いたくないと思いました。
―― 完全にディレクターになるのではなく、Webデザイナーに軸足を置きつつ、ビジネスを考えると?
木村氏:そうですね。そのほうが自分にはしっくりきたんです。前職にいた頃は、周りのエンジニアやディレクターの意見を参考に、ビジネスアイデアを出したり、集客の仕組みが作れないか試行錯誤しながら、Webデザイナーの仕事もしていました。1人で2人分の仕事になりますが、フリーランスの方は1人ですべてこなしているわけですからね。大変ではありますが、やってできないことではありません。
施策を実施するにも、Webデザイナーとして制作の現場を知っていれば、より効果を発揮しやすい色やデザインなどを試しながら取り入れることもできます。自分で納得しながら進めれば自信につながりますし、別プロジェクトでも発想の幅が広がる。現職に就くにあたって、ディレクターへ完全に転向するのではなく、いちデザイナーであり続けることができて、よかったなと感じます。
―― 数字を意識したデザインを行ううえで、心がけていることはありますか?
木村氏:今でも「周りの意見を聞く」ことは意識していますね。デザインに取りかかる前に案件の目的や目標をヒアリングすることはもちろん、チームメンバーの意見に助けられることも多いです。世代間で前提となる知識や価値観が異なることもありますから、一緒に働くメンバーからの客観的な意見をもらえるのは、とてもありがたいと思っています。
ほかにも「引き出しをたくさん持つ」ことも大切です。デザイナーとしてクリエイティブで数字を改善するには、CVRの高いデザインといった「引き出し」の数が物を言います。新しい技術や業界情報、トレンドには、常にアンテナを張っていますね。
コロナ禍の今は「もうひとつのスキル」を磨くチャンス
―― コロナ禍の今において、Webデザイナーのキャリア形成にはどんなことが重要だとお考えですか?
木村氏:リモートワークによって「できることの見える化」が進み、会社への貢献度が可視化されている今、Webデザイナーが制作のアウトプットだけで戦うのは厳しいのではないかと思っています。
以前であれば、顔を合わせたコミュニケーションを通じて、組織の中でキャリアアップする実感がありました。一方、リモートワークでそれぞれが自宅で作業を進めると、1日の成果がその日のアウトプット以外にない。内容次第では「外注に頼むのと大差がない」と判断されるかもしれません。
そのような環境の中でWebデザイナーとしてどのようにキャリアを形成していけばいいのか。解決策は2つあると考えています。1つはWebデザイナーとしてさらに上位を目指すこと。デザインスキルはもちろん、Web全般の知識やUIデザインやユーザー体験(UX)デザインなども押さえる。そして集客や売上の仕組みについても考えられることができれば、「尖った」人材として求められる存在になるのではと思います。
もうひとつは、Webデザインと何かをかけ合わせることです。
―― 木村さんの「数字×デザイン」もまさにそれですね。
木村氏:そうですね。デザインスキルだけに頼るのではなく、なにか別のスキルをかけ合わせ、それを磨いていくのが鍵になるのではと思います。かけ合わせるスキルは、マーケティング、営業、マネジメントなど、その人によって変わるでしょう。家にいることが多い今だからこそ、勉強する時間もあります。コロナ禍をむしろチャンスと捉えて、自分の武器を磨いてみてはいかがでしょうか。
―― 改めて、セミナー当日はどんなことについてお話いただけるのでしょうか。
木村氏:私のキャリアから「デザイン✕数字」といった言葉から考える仕事への立ち向かい方と、経験値の積み方についてお話させていただく予定です。
明日からの仕事の取り組み方に多少なりとも活かせるような内容になればと考えていますので、Webデザイナーとしての次のキャリアに迷っている方は「こういう考え方もあるんだな」と参考にしていただけたら幸いです。
3/25(木)のイベント情報
インタビューを終えて
デザイナーとして納得できる道を突き詰めた結果、ディレクション業務とWebデザイナーを兼任する「数字×デザイン」にたどり着いた木村氏。スキルをかけ合わせるという考え方は、図らずもコロナ禍でキャリアを歩む道標になっていると感じた。
3/25(木)に開催される「Web業界進化論 実践講座#04 Webデザイナーのキャリアを進化させる、数字とデザインのかけ算とは?」では、オンリーワンの人材になるヒントを聞くことができるだろう。興味のある方は、ぜひこの講座に参加してみてほしい。
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この記事を書いた人
マイナビクリエイター編集部は、運営元であるマイナビクリエイターのキャリアアドバイザーやアナリスト、プロモーションチームメンバーで構成されています。「人材」という視点から、Web職・ゲーム業界の未来に向けて日々奮闘中です。