Web業界進化論 実践講座#03 〜転職で得られたWebディレクターが成長するための2つのキーワード〜 セミナーレポート

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去る2月16日、マイナビクリエイターによるオンラインセミナー「Web業界進化論 実践講座#03 転職で得られたWebディレクターが成長するための2つのキーワード」が開催された。

Web業界の最前線で働くロールモデルの方々からキャリアを学ぶ「Web業界進化論 実践講座」。その第3弾となる今回は佐野昌義氏をゲストに招き、転職で得られる経験や、求められる人材像について語られた。

講師プロフィール

佐野昌義氏

佐野 昌義氏
株式会社SRI 代表取締役 / 一般社団法人 日本ディレクション協会 キャリアセンター長

埼玉県さいたま市出身の1978年5月生まれ。武蔵工業大学(現:東京都市大学)工学部を卒業後、建設業界を1年経験した後、IT業界に転身。EC(小売業)にてBtoCビジネスを経験した後、システム開発会社に従事。Web、スマホAPP、FacebookAPP、企業の社内システムなど、さまざまな開発系プロジェクトを担当。
その後、O2O(OMO)を事業の軸とするWebマーケティング事業を推進し、小売・流通(イオンリテール、サークルKサンクス(現ファミリーマート))・外食(ロッテリア)などのナショナルクライアントを中心に、キャンペーンや新規サービス開発を経験。2019年5月に株式会社SRIを設立し、大手外資系外食企業やニフティライフスタイル、エクスコムグローバルなどのマーケティング、CRM、キャンペーン、新規サービス開発など、Web・ITを中心に事業を展開。

現場で求められている人材の「共通点」とは

今、現場で求められているスキル

前半は、佐野氏が自身のキャリアを振り返るところから始まった。新卒で建築業に就職した佐野氏は、その後未経験ながらWeb/IT業界に飛び込み、eコマース、システム開発、Webマーケティングへと転職によって自身の領域を広げている(詳細は「Webディレクターの成長に欠かせない2つの意識と本質を捉える力」をご覧ください)。

2019年に株式会社SRIを設立し、現在は大手クライアント案件を手がけるなかで、話題は「今、現場で求められている人材」に移った。佐野氏によれば、案件ごとに業務内容は異なるものの、求められる“価値観”はどの案件でも「ほぼ同じ」だという。

佐野氏:共通して「いかにチームに貢献できるか」が大前提としてあります。周囲と協力しながら、ひとつのものを推進できる力が求められていますね。その力を発揮する源として「積極的なコミュニケーション」や「ロジカルな思考」も必要とされている印象です。

さらに「今、現場で求められているスキル」として、「3年から5年のディレクション経験が必須」としたうえで、「求められる“ディレクション経験”とは?」と、その中身を掘り下げた。

※実際の求人票でも以下のように記載されている。

実際の求人票 求めるスキルと実績

佐野氏:「ディレクション」という言葉を辞書で引くと、「指導」「監督」「方角」「目的」といったフレーズが出てきます。ディレクターとは方向を指し示す存在であるということ。自分で論理的に仮説検証を立てて、社内外のメンバーと協力しながら成功に導く。そうして得た経験を「ディレクション経験」というのではないでしょうか。

裏を返せば「クライアントに言われたことをそのまま下に伝えているだけ」というやりかたは、上記の「ディレクション経験」には当てはまらないのでは、と佐野氏は続ける。

佐野氏:チームを導くということは、チームに貢献することでもあり、先ほどの価値観とも重複します。プロジェクトの成功といえるようなKPIを立て、しっかりコミュニケーションを図りながら、物事を推進する。それを3年5年と積み重ねて初めて「ディレクション経験」と言えるのではないでしょうか。

プロフェッショナルに求められる「数字」と「コミット」

プロフェッショナルなディレクターについて

後半の冒頭、佐野氏はWebディレクターが意識すべきキーワードとして「数字」と「コミット」の2つを示した。その説明のためには、まず「プロフェッショナルなWebディレクターとはなにか」を考える必要があるという。

一般的な制作会社において、案件が成立するまでには、およそ7つのステップが必要となる。

提案受注詳細な要件定義仕様変更に対応サービスローンチ運用サポート改善提案

このうち、Webディレクターが担当するのは中央の4つ、「詳細な要件定義→仕様変更に対応→サービスローンチ→運用サポート」が一般的だ。ここで佐野氏は「中央の4つ以外の、前半部分や後半部分に対応できるディレクターが非常に増えてきている」という。

佐野氏の分類によれば、提案や受注といった前半部分にも対応するのは、「ビジネスプロデュース型ディレクター」。営業的な視点を持ち合わせ、成果のためにどんなサービスが必要なのかを提案する能力を持つ。逆に、運用サポートや改善提案といった後半部分にも対応するのは、「グロースハック型ディレクター」。既存サービスを分析し、必要な改善事項を提案してサービス拡大に取り組む。

案件成立までの7ステップ

佐野氏:前半を担うか、後半を担うかの違いはありますが、どちらも「現状を把握して定量化する」「計画を作り提案する」「成果を約束する」という共通点があります。どちらも定量化によって数値を示し、将来についてコミットメントする。つまり、「数字」と「コミット」こそ、これからのWebディレクターに求められるキーワードなのです。

キャリアの「軸」は経験と共に築き上げるもの

Webディレクターとしてのキャリアでブラさない「軸」

プロフェッショナルを目指すといっても、前述の前半部分(提案/受注)や後半部分(サポート/改善提案)の経験をどうやって積めばよいのだろうか。

佐野氏:いろいろなやり方がありますし、自社内で新しい領域に挑戦できるのであれば、それでも全然構いません。ただ僕の場合は、転職によって新たな経験や知見を手に入れる、という道を選びました。

佐野氏のキャリアをもう一度振り返ろう。1社目である建築業界から、2社目でWeb/IT業界に飛び込む際、佐野氏は「お金は二の次で、とにかく経験が積めること」を意識したという。ディレクターとして経験を積んだあと、「よりスケールしたシステム開発の経験を積みたい」と、システム開発会社である3社目に転職した。

さらに、3社目では「すべて自分で責任を持ちたい」と営業へジョブチェンジ。ディレクター兼営業として受託開発の経験を積んだあと、年収や生活時間を鑑みて4社目に転職し、WebマーケティングやO2Oの知見を蓄積した。

佐野氏:4社目では4年ほど大手クライアント先への常駐も経験しました。長い期間でしたが、周囲のレベルの高い仕事ぶりに影響を受けましたし、4年かけて培った人脈は今でも仕事に活きています。常駐にネガティブなイメージを持つ方も多いですが、悪いことばかりではないと伝えたいですね。

社内異動、転職、フリーランス転向など、経験の積み方はいくらでもあり、どんなキャリアであれ、そこでの経験は必ず強みになる。そんな中、佐野氏は転職することを選び、新しい領域での経験や知見を得てきたのだ。

最後に佐野氏は、Webディレクターのキャリアの「軸」について語った。

佐野氏:将来こうなりたい、という「軸」は持つべきですが、将来像は経験と共に変わっていくもの。もちろん初志貫徹できることは素晴らしいですが、キャリアを重ねるなかで「軸」が変わっても僕はアリだと思います。僕のキャリア自体、その都度次のステップを考えながら歩んできましたから。キャリアを重ねながら、自分の領域を見つけてもらえればと思います。

世の中にインパクトを与えるために、環境を整えていく

セミナーの最後は質疑応答の時間が設けられた。寄せられた質問からいくつかピックアップして掲載する。 

4社目で長期に渡って常駐をされていたとお話しされていましたが、モチベーションはどのように保たれていましたか?

会社とフェアな条件を結びました。

僕の場合は「お金」でした。当時はちょうど結婚したタイミングで、さらに常駐先が今の勤務先よりものすごく遠く、最初は嫌で仕方なかったんです(笑) 。

そこで、これだけ環境が変わるのだからと、「年間これだけ数字を上げるから、達成した場合のインセンティブをつけてほしい」と会社に提案しました。それだけ結果を出すなら、と会社も送り出してくれたんです。お互いフェアな条件をしっかり結ぶことで、モチベーションを保つことができました。

「グロースハック型」ディレクターとして、案件に携わっています。サイトの仕様書ばかり書き続けてきたせいか、責任をもって進められる業務範囲が狭まってきたように感じます。このまま強みを尖らせた方がいいのでしょうか。それとも業務範囲を広げたほうがいいのでしょうか?

なぜその機能が必要か、もう一歩踏み込んでみよう。

サイトの仕様書を書いているということは、追加の機能開発における仕様を任されているのではと思います。グロースハック型ディレクターは、機会点を見極めることも重要な仕事。なぜその追加機能が必要になったのかを提案サイドと一緒に検討できる領域まで、もう一歩踏み込んだコミュニケーションを図れば、業務範囲も広がるのではと思います。

Web業界で働くうえで、佐野さんが成長した、ステップアップできたと感じるのはどんなときですか?

世の中にインパクトを与えるような仕事をして達成感が得られたとき。

制作や開発に携わっていると、リリースしてもなかなか日の目を見ないサービスというのもたくさんありますよね。だからこそ、世の中にインパクトを与えられるような案件を経験したときは、やはり非常に達成感がありました。

今の環境でできること、できないことがあるとは思います。より世の中に大きなインパクトを与える仕事ができるよう、必要であれば社内で転籍したり、転職したりして、環境を整えていくことが重要なのだろうと思っています。

セミナーを終えて

「数字」と「コミット」をキーワードに、プロフェッショナルなWebディレクターのあり方について語られた、今回の「Web業界進化論」。

自身の仕事の向き合い方について、考えさせられたWebディレクターも多いのではないだろうか。自分の領域を広げるために「転職」という手段を選んだ佐野氏の歩みは、さらに上を目指したいWebディレクターにとってひとつのモデルケースとなると感じた。

「Web業界進化論 実践講座」はこれからもさまざまなゲストを招いてお送りする。ぜひ今後の講座内容にも期待してほしい。

この記事を書いた人

マイナビクリエイター編集部

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