ゲーム業界の現状は?今後の課題や将来性、求められる人材を解説
コロナ禍では飲食業界をはじめ、さまざまな業界がダメージを受ける中、ゲーム業界は好調を維持しています。また、ゲーム業界の働き方は変わりつつあり、以前よりも働きやすい環境が整ってきました。
ここでは、これからゲーム業界を目指す人に向けて、業界の現状や将来性のほか、今後求められる人材像について解説します。
ゲーム業界の市場規模と働き方
昨今、従来の家庭用ゲーム機に加えて、パソコン、スマートフォンなど、ゲームのプラットフォームが多様化したことや、コンピューターゲームをスポーツ競技として捉えたeスポーツが世界規模で普及したこともあり、ゲーム業界の人気は一段と高まっています。
さらに、コロナ禍でステイホームや外出自粛を余儀なくされたことにより、いわゆる「巣ごもり需要」が高まった結果、これまでゲームに興味がなかった層の取り込みにも成功し、ゲーム業界の市場はますます活性化していると言えます。また、かつてはブラックと揶揄された働き方は、時代とともに随分と変わってきました。
このようなゲーム業界の現状について、より詳しく把握するために、まずはゲーム業界の市場規模と働き方の変化について具体的に見ていきましょう。
市場規模で見るゲーム業界の現状
ゲーム業界の市場規模は、年々拡大傾向にあります。株式会社角川アスキー総合研究所が発表した、世界のゲーム市場の調査レポート「グローバルゲームマーケットレポート2020」によると、2020年、世界のゲーム市場規模は、前年比19.6パーセント増の約18兆3,758億円まで成長。前年比25.6パーセント増の約9兆664億円となったモバイルゲームを筆頭に、ゲーム機、およびゲームソフトの売上が大きく伸びました。
同調査による各ハードの2020年時点の市場規模は、以下のとおりです。
2020年時点のハード面の世界市場規模
- モバイルゲーム:約9兆664億円(前年比25.6パーセント増)
- 家庭用ゲーム:約5兆3,785億円(前年比21.0パーセント増)
- パソコンゲーム:約3兆9,270億円(前年比6.2パーセント増)
また、ゲーム総合情報メディア『ファミ通』が発表した「2020年上半期の国内家庭用ゲームソフトとハードの売上速報」によると、国内でもハードとソフト共に前年比プラスとなり、国内海外問わず、業界全体の好調を強く印象づける結果となっています。
2020年上半期のゲームの国内市場規模
- ハード:約793.4億円(前年比20.0パーセント増)
- ソフト:約954.7億円(前年比29.0パーセント増)
ゲーム市場全体で前年比を上回った理由としては、スマートフォンが幅広い世代に普及し、隙間時間を活用してできるモバイルゲームをプレイする人が増加したほか、特に2020年は、コロナ禍の外出自粛時の娯楽として、ゲームの人気が高まったことが挙げられます。
国内では、ダウンロードして家庭内で遊べるモバイルゲームをはじめ、「Nintendo Switch」や「PlayStation 5」などのハードや家庭用ゲームソフトの売れ行きも好調でした。
ステイホーム中は、娯楽の選択肢が少なくなり、コアなゲームユーザーはもちろん、コロナ禍でゲームを始めたライトユーザーへ裾野が広がったこと、オンラインゲームをコミュニケーションツールとして使う人が増えたことも市場規模の増加に繋がったと言えるでしょう。
働き方で見るゲーム業界の現状
かつて、ゲーム業界はいいものづくりをしたいというクリエイターの思いが労働時間に反映され、労働環境が過酷という見方が強くありました。
ただし、現在では、残業時間の抑制に取り組み、決められた時間の中で生産性の高い働き方を考えている企業が増えています。
ほかの業界と同様に、現在もすべての企業の労働環境が改善されているわけではありません。しかし、ひと昔前に比べると、リモートワーク制度の導入など、働き方を見直すゲーム企業が増え、ゲーム業界は以前より、働きやすい業界へと変化しつつあります。
こうした働き方が改善されていく背景には、以下の3つの要素があると考えられます。
ワークライフバランスを見直す企業の増加
近年では、ゲームクリエイターのワークライフバランスを見直す企業が増えています。
ゲームソフトでヒット作を生み出すには、独特の世界観やプレイヤーを引き込むストーリー性のほか、美しいキャラクターデザインなど、クリエイティブの力が欠かせません。多くの企業がしのぎを削る中、より優れたゲームクリエイターを獲得するためにも、ワークライフバランスを重視する取り組みが広がってきたと言えます。
リモートワークの浸透
2020年に初めて緊急事態宣言が発出された直後から、ゲーム業界でもリモートワークが浸透していきました。当時マイナビクリエイターでお取引のあるゲーム企業のほとんどが、早々にリモートワークを導入するなど、他業界と比較しても、導入までのスピードは早かったと感じます。
ゲーム業界は負荷のかかるデータのやりとりが多いため、リモートワークの導入が難しいと思われていましたが、もともと新しいテクノロジーの導入に前向きな業界ということもあり、各社、開発プロセスにおいても柔軟に対応する姿勢が見られ、迅速に移行への調整を図ることができた印象です。
また、やむなくリモートワークへと舵を切ったことが、結果的に、社員のワークライフバランスを見直すきっかけになったという企業も少なくありません。
制作プロセスの効率化
開発エンジンの内製化に取り組んだ企業では、ゲームの制作プロセスが大幅に効率化されました。これは、内製のエンジンなら、たとえば、自社ゲームに登場するキャラクターが何千種類もある場合でも、その動作をほかのキャラクターに転用するなど、自社のゲームに合わせて開発プロセスをカスタマイズできるからです。
アイデアを具現化するまでのスピードと、品質の向上を両立できるようになったことは、ゲームクリエイターの働き方を変える大きな要因になっています。
今後のゲーム業界のトレンドや注目のジャンルを紹介
ゲームジャンルの多様化、コロナ禍による巣ごもり需要、ライトユーザーの取り込みなど、勢いを増すゲーム業界。最近では、無料で楽しめるパズルゲームのように、シンプルな操作で年齢問わず誰もが遊べる「ハイパーカジュアルゲーム」と呼ばれるものも登場し、裾野はさらに広がっています。
続いては、そんなゲーム業界の今後の動向を理解するためにも、直近のゲームのトレンドや、これから人気が高まりそうなゲームジャンルについて見ていきましょう。
eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)
eスポーツとは、電子機器を用いて、個人またはチームで対戦するゲームを、スポーツ競技として扱ったものです。現在、eスポーツ先進国であるアメリカを筆頭に、世界中で広がっており、プロのeスポーツプレーヤーを目指す子どもたちもいます。コロナ禍でリアルなスポーツの大会が軒並み中止になった際には、テニスやバスケなどのプロ選手たちが、eスポーツの大会に出場したことも話題になりました。
また、国際オリンピック委員会(IOC)は、2021年5月13日から6月23日にかけて各国際競技連盟と主催し、eスポーツの競技大会「Olympic Virtual Series(OVS)」を開催。こうしたことからもeスポーツは、スポーツ競技として国内でも認知されてきていると言えるでしょう。
日本野球機構(NPB)やJリーグの参入もあり、eスポーツは今後も注目が集まりそうです。
VR(Virtual Reality)
VR元年といわれた2016年以降、仮想現実を指すVRに期待を寄せる企業は、依然として多くあります。
2020年1月時点では、PlayStation 4専用のVRヘッドセット「PlayStation VR」(2016年10月発売)の世界販売台数が500万台を突破したほか、同年10月には、Facebook傘下のOculus(オキュラス)が、VRヘッドセットの新製品「Oculus Quest 2」を発売しました。加えて、大手企業がVRゲーム会社を買収したり、VRゲーム事業に大きな予算を投入したりする動きも強まっています。
VRによるゲームの世界への没入感は、ゲームのエンターテインメント性を大きく飛躍させる可能性があり、引き続き注目すべきゲームジャンルだと言えるでしょう。
PlayStation 5などの次世代ゲーム機
ゲームソフトを購入して遊ぶ家庭用ゲーム機も、飛躍的な発展を遂げています。
たとえば、2020年11月に発売されたPlayStation 5は、最大8K解像度出力という圧倒的な映像美をはじめとする高スペックが話題です。データの読み込みが速くなる超高速SSDによって、ストレスのないプレイ環境を実現し、以前にも増してゲームに没入できる環境を提供しています。
同じ頃に発売された「Xbox Series X」も含め、次世代ゲーム機は、現場の開発メンバーでも驚くほど映像が美しく、処理速度が速いので、これまでとは段違いの新しい体験ができるのです。
こうした次世代ゲーム機の技術の進化は、グラフィックやデータ処理の速度だけでなく、ゲームをしている人と、ゲーム以外のソーシャルネットワーク上にいる人をシームレスで繋げ、ゲーム環境をさらに拡張するのではないかと期待されています。たとえば、YouTube上に流れているゲームのプロモーションビデオを見ている人が、即時にそのゲームに遷移することができたり、視聴中の実況プレイ動画で紹介されているゲームに気軽に参加できたりといったことです。こうした進化は、ゲーム業界の盛り上がりに貢献すると言えるでしょう。
サブスクリプションモデルのクラウドゲーム
ゲーム業界の中でも、GoogleやAmazon、Facebookといった巨大IT企業の参入によって、動きが活発化しているのがクラウドゲーム市場です。
クラウドゲームでは、ゲーム自体はクラウド上に保存されており、サーバー上ですべての処理や実行が行われます。ユーザー側のスマートフォンやタブレットなどのデバイスには、処理されたハイクオリティな動画データのみが送られてくるため、ハイスペックなゲーム機などがなくても、ネット環境とデバイスさえあれば、ゲームをプレイできるのが特徴です。
スマートフォンやパソコン、テレビなど、デバイスを切り替えてのプレイも手軽にでき、ちょっとした空き時間を有効に使って遊びたい人や、ハードウェアを購入するほどゲームをしないライト層にも人気のサービスです。
さらに、クラウドゲームの多くは、サブスクリプションモデルを採用しています。従来のゲームがハードやソフトを売るのに対して、サブスクリプションモデルは、製品やサービスを使用する権利を提供するビジネスモデルです。使用した分だけ支払う従量制、一定期間決まった金額を支払う定額制などがあり、物を手元に置くことなく気軽に利用できるため、顧客層の拡大に一役買っています。
今後のゲーム業界が抱える課題とは?
活況が続くゲーム業界ですが、気になる点がないわけではありません。続いては、ゲーム業界へ転職を考えるなら知っておきたい、ゲーム業界が抱えている課題を見ていきましょう。
若年層のゲーム人口の減少
ハイパーカジュアルゲームやクラウドゲームの台頭で、性別や年齢を問わず、ゲームに親しむ人が増えている一方、1つのゲームをやり込み、欲しいゲームに合わせてハードウェアを買い替えていくようなコアユーザーは減少傾向にあります。
80〜90年代のように、子どもの室内の娯楽といえばゲームだった時代とは異なり、近年では動画サービスやSNSをはじめ、娯楽の多様化が進んでいます。また、少子高齢化でメインユーザーとなる若年層が減少しつつあることもあって、国内のマーケットは縮小傾向になると予想されます。
今後は、若年層をいかに取り込むかといった点において、企業の手腕が問われるでしょう。
海外へのゲーム輸出強化
前述したように、国内でのマーケットが縮小傾向にある中、新たなゲームユーザーを獲得するためにはどうしたらいいでしょうか。その課題を解決する手がかりとなるのが、海外へのゲーム輸出の強化です。大手から中堅規模で資本力のある会社、または海外販路があるゲーム会社などでは、すでにグローバル展開に活路を求める流れが顕著です。
実際、世界のゲーム市場調査レポート「グローバルゲームマーケットレポート2020」によると、世界のゲーム市場の中で、約半分の54パーセントをアジア圏が占めています。特に、モバイルゲームで急成長した中国が急速に市場を拡大する中、日本もトップクラスの規模に名を連ねています。根強い人気を誇る日本のゲームタイトルも多く、グローバル化が進む中で、独自の存在感を維持していると言えるでしょう。
ただ、今後さらなるマーケットシェアの拡大を目指すなら、より海外を意識した戦略が必要です。これまでのように日本で人気を博したタイトルをそのまま持ち出すだけでなく、日本のゲームのよさを残しながらも海外市場の人気を見据えたゲームの制作が求められるようになるでしょう。
実力のある人材の不足
日進月歩のゲーム業界では、求められる技術も日々進化しています。たとえば、モバイルゲームに求める、ユーザーの基準が上がっており、3Dの高度なグラフィック表現を使用するタイトルが増加傾向です。
モバイルゲームの各社の採用ニーズに対して、3DCGデザイナーの人材の確保が追いついておらず、人材不足が課題となっています。そのため、3DCGデザイナーについては、映像プロダクションや遊技機業界出身など、ゲーム業界での経験有無を問わずに採用するケースも増えています。
日常の業務のかたわら、最新の技術を学び続けるのは至難の業。結果として、時代にマッチしたゲームを作れる人材が限られ、ゲーム業界全体において、人材不足が懸念されます。
今後のゲーム業界で求められる人材とは?
ゲーム業界が抱える課題を踏まえて、今後はどのような人材が求められていくのでしょうか。ゲーム業界が今後求める人材像について見ていきましょう。
最新技術やトレンドへの興味・関心を持ち、それをゲーム開発に応用できる人材
ゲーム業界は、新しい技術を取り入れたものづくりが求められる業界です。これまでも、スマートフォン、VR、AI、クラウドなど、他ジャンルで発生した最先端のテクノロジーを次々と取り込み、さまざまなゲームを開発してきました。
そのため、今後も常に最新テクノロジーに目を向け、どのようにゲームへ応用できるかを考える力や実際に応用する技術力、自分の持っている知見やスキルがどうゲーム開発に生かせるかを考えられる人材が求められるでしょう。
また、あっという間に流行が移り変わり、新たなゲームのジャンルが続々と登場するゲーム業界で求められるのは、世代や性別、国を超えた幅広い視野と創造性です。ものづくりに対し柔軟な姿勢で、あらゆる興味・関心から多角的に自身をアップロードできる人材は、これからのゲーム業界において重宝されるでしょう。
IP(知的財産)活用やイベントプロデュースなど、ほかの業界の知見を持つ人材
ゲームのあり方が多様化する今、ほかの業界で培った知見が役立つシーンは増えてきました。実際に、クラウドサービスやサーバーサイドでのWeb開発に携わっていたWeb業界出身者やIT業界出身者などが、ゲーム業界への転職に成功するケースも見受けられます。
昨今のゲーム業界では、アミューズメントパークにゲームキャラクターの新エリアを出したり、ゲームタイトルの映画化を決めたり、eスポーツのイベントを開催したりと、従来の「ゲーム」から派生した領域での事業展開が目立ちます。すでに多くのファンが存在するゲームタイトルやキャラクターといったIP(知的財産)を活用する動きは今後も活発化していくと考えられ、権利関連に関わる仕事やイベントプロデューサーなどゲーム業界以外で培った経験やノウハウを持つ人材の、活躍の場が広がりそうです。
「ゲーム業界の新しい事業の種を育てる一助になりたい」と考えている人にとって現在のゲーム業界は、さまざまな可能性が広がっていると言えるでしょう。
ゲームの全体設計を考え、ビジネス視点を持つ人材
クリエイターにとってものづくりは、自分の興味の延長線上にあることも多く、好きが高じてテクノロジーやデザインについて強く語ってしまいがちです。しかし、ゲームの制作は当然ながらビジネスであり、情熱だけでは利益を得ることはできません。
ゲームクリエイターとしての技術や情熱はもちろん大切です。しかし、ゲーム開発においてより重要なのは、ゲームを単体で捉えるのではなく、エンターテインメントとしての全体設計を捉える視点です。たとえば、現在の時流で言えば、ゲームを中核として、ゲーム実況、SNS、eスポーツなどでユーザー同士の繋がりを含めた「アソビ場」となるための全体設計を考えることです。
どうすればユーザーに受け入れられるか、どこを変えればユーザーに長く楽しんでもらえるか、どんなコミュニケーションがあればより多くのユーザーに届くのか。そういったことまで考えながらゲーム作りに取り組める人材が求められるでしょう。
まとめ
新型コロナウイルス感染症の拡大防止に伴う、新しい生活様式の定着もあって、自宅で過ごす時間を充実させ、隙間時間に気分転換を図ることができるゲームの需要は、今後も伸びていくと考えられます。ゲーム好きで、いずれはゲーム業界に転職したいと考えている人や、この好況をきっかけにゲーム業界への転職を目指す人には、大きなチャンスが到来していると言えるでしょう。
自分の現在のキャリアでゲーム業界に転職できるのか、これまでのキャリアをどのように活かしていけるのかといったお悩みがある方は、ぜひゲーム業界への多くの転職支援実績があるマイナビクリエイターにご相談ください。経験豊富なアドバイザーが、一人ひとりに合ったアドバイスをさせていただきます。
この記事を書いた人
マイナビクリエイター編集部は、運営元であるマイナビクリエイターのキャリアアドバイザーやアナリスト、プロモーションチームメンバーで構成されています。「人材」という視点から、Web職・ゲーム業界の未来に向けて日々奮闘中です。