15年以上現場で活躍するプレイヤーたちが、キャリアに悩む若手に伝えたいこと ―― 「Web業界進化論#14」開催直前インタビュー

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来たる1/25(火)、マイナビクリエイターではオンラインセミナーWeb業界進化論 実践講座#14「Web制作現場のプロから『Webデザイナー3年目』に贈る次のキャリア視点」を開催する。

「Web業界進化論 実践講座」の第14弾は、キャリアの方向性に悩むWebデザイナーに向けたもの。Web/IT業界で15年以上にわたり現役プレイヤーでありながら、勉強会やセミナーなどの講師としても活躍する濱野将氏、小泉誠氏、高田哲男氏の3名を迎え、それぞれの視点からキャリアについての多面的なアドバイスが語られる予定だ。

今回はイベント直前インタビューとして、3名それぞれのキャリアや、デザイナーを育成したい思いについて、話を伺った。

プロフィール紹介

濱野将氏

濱野 将氏
株式会社IMAKE 代表取締役

フリーランスを経て、2015年にDTP・Webに特化したデザイン関連会社「株式会社IMAKE」を創業。DTP制作、ロゴデザイン、キャラクターデザイン、画像レタッチ、UI設計、Webデザイン〜コーディング、動画など幅広く経験。現在はその経験を活かし、多角的な視点でディレクター・UI設計・デザイン・コーディングとプレイヤーとして自身でも活動中。大学や専門学校、オンラインコンテンツなどでAdobe XDを中心とした講師活動もしており、これまでの受講者は延べ4,500人以上。また、IMAKE社が発信している動画で学べるデザイン系チャンネル「イメトレ!」をYouTubeで配信中。

小泉誠氏

小泉 誠氏
個人事業主 Studio FireColor

Studio FireColorの屋号でフリーランス歴10年。Web制作会社、SEO関連会社、システム開発会社などを経て独立。Webデザイナー、UI/UXデザイナー、フロントエンド、SEO、マーケティング、システム開発、動画制作、社内のIT化のコンサルティングなど。現在は「本人も職種がわからない…」といった感じで、ゼネラリスト道を邁進中。基本的にものづくりが好きで調理師免許を持ち、飲食店経営の経歴もあり。近年は自分で勉強会を主催したり、Web技術の講師などにも従事。

高田哲男氏

高田 哲男氏
個人事業主 Webディレクター

大学を卒業し、プログラマーを3年経験後、15年間インフラ系ネットワークエンジニアとして、銀行、証券などの基幹系ネットワークの提案、設計、構築に従事。2016年12月にWebディレクターとして独立し、2018年6月からSEO対策会社のサポート担当として、2年間で200社以上のSEO対策を担当。現在は、Webディレクター兼SEO対策担当として、さまざまなプロジェクトに関わっている。最近では、何かと難しくなりがちな「SEO対策」をわかりやすく伝えようと、日々奮闘中。

長らくWeb/IT業に携わるプレイヤーの、三者三様のキャリア

―― まずは、自己紹介も兼ねて、みなさんのこれまでの経歴を教えてください。

濱野氏:デザインの専門学校を卒業後、アルバイトでDTPの仕事を始めたのがデザイナーとしてのキャリアのスタートです。その後Webの仕事をするようになり、制作会社の正社員としてバナー制作やサイト構築、企画までひと通り経験しました。独立後は1年半ほどフリーランスを経験し、2015年に起業して今に至ります。

現在は制作業と講師業の2つを両立しています。内容はデザインを始め、Adobe XDやUI/UXの考え方などさまざまです。大学や専門学校で教鞭を執らせていただいているほか、Udemyなどのオンラインコンテンツや、企業研修なども請け負っています。

小泉氏:最初はシステム開発会社でオープン系のアプリケーションを開発していました。ただ、もともとはインターネットに可能性を感じてITの世界に入ったので、しばらく働くうちに「これじゃないな」となったんですね。働きながら独学でWebデザインを勉強して、アルバイトや契約社員からWebの仕事を始めました。

その後、SEO関連の企業でフロントエンドやシステム構築に携わったのちに独立し、現在フリーランス10年目です。WebデザインやUI/UXデザイン、フロントエンドを請け負うほか、SEOを含めた集客のコンサルティングも行っており、大手企業や地方の中小企業からご相談をいただいています。自分でも職業が今ひとつつかめなくて、「ゼネラリスト」と名乗っていますね(笑)。

高田氏:私も最初の会社ではシステム開発に携わっていました。プログラマーを3年ほど経験したあと、ネットワークエンジニアに興味を持ち、会社を辞めてITスクールで学び直したんです。スクールで必要な資格を取得したあとは、15年ほどインフラ系ネットワークエンジニアとして、基幹系ネットワークの設計・構築に従事していました。

Webの世界に入ったきっかけは妻です。2008年頃に妻がWebデザイナーとして独立して、私が手伝うようになったんですね。やがて妻の仕事が増えてきて、私も正式に独立して一緒にやろうと。ただWebの経験は浅かったので、そこから2年ほどSEO対策会社のサポート担当を務めてノウハウを蓄積しました。現在はWebディレクションとSEOをメインに活動をしています。

―― みなさんそれぞれ得意分野が分かれていますが、知り合われたきっかけはなんだったのでしょうか?

濱野氏:私と小泉さんが知り合ったのは5年ほど前ですね。小泉さんがデザイナーを探していて、コワーキングスペースのスタッフが僕と繋いでくれたんです。高田さんとは3〜4年前にイベントで一緒になったのがきっかけ。もともと奥さんとは知り合いで、そこから繋がった形です。

高田さんと小泉さんの繋がりは、つい最近ですね。私がWebデザインスクールの設立を進めていまして、お2人に講師をお願いしたんです。小泉さんにはコーディングなどエンジニアリング寄りの内容を、高田さんにはディレクションについて講義をしてもらえたらと考えています。

現場で求められる「提案型デザイナー」を育成したい

―― 濱野さんは講師業をされていますが、なぜ新たにWebデザインスクールを設立しようと考えたのでしょうか?

濱野氏:原点には、自分がデザインの仕事を始めたときに苦労した経験があります。お金と時間をかけて専門学校を卒業したにもかかわらず、学んだことが現場でほとんど役に立たなかったんです。

多くのデザイン系専門学校では、アートデザインや空間デザインなど、さまざまなカリキュラムを用意しています。それは悪いことではないのですが、裏を返すと「広く浅く」学ぶことになり、現場で求められる専門性が身につかないことも多い。特に若い世代を見ていると、Webデザインの現場で必要な「相手と会話を重ねながら改善していく」という、提案型のコミュニケーションができていない人も多いと感じます。

小泉氏:以前、Webデザイナーの採用面接を担当していたことがあるのですが、Webデザインをアート作品のような「自己表現の場」と捉えている人も多かったですね。

濱野氏:講師業においても、実際の現場と乖離した内容を目にすることもあり、もどかしい思いを抱えていました。それなら、現場で活躍する人が直接教える、実践的なスクールを作ろうと。自分たちのホームで、即戦力となれる提案型のデザイナーを育てたいと思ったんです。

またスクールの創設は、私の地元である八王子への地域貢献の意味もあります。八王子は20代〜30代の若者世代が定着しにくいという問題を抱えおり、スクールを通じて地域創生に繋がればと考えています。

―― スクールで育てたい「提案型のデザイナー」について、お3方それぞれから具体的なデザイナー像を伺えますでしょうか。

濱野氏:手を動かすだけの「オペレーター」ではなく、自ら提案し、形に残せるデザイナーですね。なぜそのデザインにしたのか、その意図をきちんと言語化して伝えられるデザイナーであってほしいと思います。

弊社のスタッフにも「なぜこのレイアウト配置なのか」「なぜこの写真なのか」と、しつこく聞くようにしていますね。デザインの意図を説明できれば、それに対するフィードバックも生まれやすい。実際、それができるデザイナーは重宝されてますし、本人の自信や成長にも繋がっています。

小泉氏:「提案型」であるためには、デザイン以外のことも知る必要があるでしょうね。コーディング周りのことを知っていれば、「こういう技術があるから、こういうことができます」という提案もできますから。

デザイン以外の部分にまで視野を広げれば、お客様に提案できる幅が広がります。今回のスクールでエンジニアリング寄りの部分を担当するのは、そうした意味もあると思っています。

高田氏:むしろデザインだけでは食べていけないですよね。「絵だけ作りました、あとはコーディングもディレクションもすべてお任せします」という姿勢では、よほどデザイン力が優れていない限り、仕事の幅がものすごく狭まってしまう。

ディレクションにおいても、デザイナーあがりのディレクターや、コーダーあがりのディレクターは結構いますし、そうしたスキルも求められています。言われたことをそのままこなすのではなく、なんらかのスキルを絡ませて提案することは、もはや必須ではないでしょうか。

キャリアに悩むWebデザイナー3年目に、アドバイスをするなら?

―― 当日のセミナーは、「Web制作現場のプロから『Webデザイナー3年目』に贈る次のキャリア視点」と題されています。3年目のWebデザイナーが現状を変えたいと悩んでいるとき、みなさんならどのようなアドバイスを送りますか?

濱野氏:「なにか1つ武器を持ってみたら」と言うかもしれませんね。デザインが得意ならさらに極めてプロフェッショナルを目指してもいいし、コーディングにも興味があるなら独学で始めてもいい。デザイン以外の何かが付加価値となることもあるでしょう。

なので、まずは得意分野を伸ばすことを考えてみたらと思います。たとえ不得意なことがあっても、Web制作の現場は分業になるケースがほとんどですし、“できる人”と組むことは何も恥ずかしいことではありません。やりたいものを伸ばすことが、結果としてキャリアアップに繋がるのではと感じます。

小泉氏:デザイナーという職業は華やかなイメージがあるので、3年くらい経つと現実とのギャップに気がつくと思うんです。悩んだ末に、3年培ってきたものを捨てる人もいるかもしれない。でも、もしデザインをやめるとしても、今まで培ってきたものは必ず役に立ちますし、なにより人と繋がることだけは止めないでほしいですね。

人との繋がりが仕事を作ります。僕はもともと人見知りなんですが、だからこそ自分で勉強会を開いたり、いろいろなところに飛び込んだりして鍛えてきました。今はコロナ禍で難しいかもしれませんが、人と関わることを続けることが、なんらかの道を開くと考えています。

高田氏:自分が3年目ぐらいのときは、プログラマーに向いていないと悩んでいましたね。転職も頭をよぎったんですが、「努力が足りないんじゃないか」「逃げなんじゃないか」と苦しんでいました。

でも今なら、それは「合ってない」だけで、逃げではないとわかります。合っていないなら、場所を変えることで花開くことも往々にしてあると思うんです。それこそWebデザイナーという職業は、会社によって業務の範囲が異なりますから、別の会社なら「合っている」可能性もある。場所を変える、という選択肢を忘れないでほしいですね。

―― 最後に、セミナーに参加される方へメッセージをお願いします。

濱野氏:メンバー全員が10数年活動しているプレイヤーばかりですので、キャリアやスキル、現場のことなど、各方面からアドバイスできることも多いと思います。僕の場合はデザイナー目線と経営者目線からお話しできますので、気軽に質問を投げていただければ。

小泉氏:Webデザイナーとしてステップアップをするのに、ルールみたいなものはありません。この3人も、それぞれいろいろな経験を積んで今があります。「こういう変わった人たちもいるんだ」ぐらいの気持ちで話を聞いていただいて、キャリアアップの手助けになればいいなと思います。

高田氏:3年目の方からすると「すごい人たちがいるぞ」みたいに感じるかもしれません。でも私たちは、こういうルートを辿りたくてこうなったわけではなく、必死に戦ってきただけ。過去の積み重ねが今を作っています。そうしたことをお伝えして、セミナーを受けた方が「自分もキャリアを見直してみようかな」と思ってもらえたら嬉しいです。

インタビューを終えて

現場で10年以上活躍してきた3人の言葉からは、人の数だけキャリアがあることをうかがわせる。決まったルートがないからこそ、これからその道を歩む者には「道しるべ」が必要だ。スクールの創設や今回のセミナー開催に、3人の後進育成にかける思いを感じた。

1/25(火)に開催されるWeb業界進化論 実践講座#14「Web制作現場のプロから『Webデザイナー3年目』に贈る次のキャリア視点」では、現役プレイヤーならではのキャリア視点を伝えると共に、参加者の質問にできる限り答える予定だ。キャリアに悩むWebデザイナーは、ぜひ参加してみてほしい。

この記事を書いた人

マイナビクリエイター編集部

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