インフラエンジニアとして活躍するために身に付けておきたい知識とは
IT業界ではもちろん、Webやゲーム業界でもその活躍が注目されるインフラエンジニア。エンジニアとひと口に言ってもその仕事のスタイルは多種多様です。作成するシステムの種類や、開発チーム内での役割に応じて実際に行うことになる業務や取り扱うプログラミング言語にも差があり、キャリア形成を行ううえではその違いを把握していくことがとても重要になります。その中でインフラエンジニアは、開発するシステムが動作する環境の設計や構築を行うポジションであり、クラウド化が進む中でアプリケーションの実行基盤を構築するなど、開発において欠かすことのできない存在です。
この記事では、そんなインフラエンジニアにフォーカスし、転職やキャリアアップに役立つ知識について紹介していきます。将来、インフラエンジニアとしてキャリアアップを考えている方は、是非参考にしてください。
インフラエンジニアが実践で求められる4つの基礎知識
インフラエンジニアとして開発現場に立った際に求められる基礎知識は、サーバー上で動作するアプリケーションの仕組みや、LinuxをはじめとするCUIの操作方法、PHPやJavaなどのプログラミング言語の理解など、広範な仕事領域について枚挙にいとまがありません。
ここではインフラエンジニアが現場で欠かすことのできない4つの基礎知識に焦点を絞り、インフラエンジニアとして活躍するためにはそれらをどう生かしたらよいかも併せて解説します。設計からトラブル発生時の対応方法まで、ひと通り学んでおくことで、インフラエンジニア初心者でも安心して現場で業務にあたることができ、キャリアアップにも繋げることができるでしょう。
インフラ設計に必要な基礎知識
インフラエンジニアの業務の最初の段階として、インフラ設計があります。インフラ設計とは、社内システムやWebサービスなどが安定して動くよう、パソコンなどのIT機器を用いて基盤を設計することです。そのためにはまず、インフラエンジニアはクライアントとの間で要件定義を行います。クライアントからの「こんなサービスにしたい」という要望を汲み取るのです。設計すべき項目に漏れがある場合、後から追加項目が発生しトラブルにもなりかねないため、ここではクライアントとの円滑なコミュニケーションが必要です。
続いて、要件定義がされたら、それに従って必要十分なミドルウェアやハードウェアを割り出し、仕様書や設計書に落とし込んでいきます。クライアントからの要望を満たすWebサービスにするために、機能性だけでなくコスト面の配慮もしながら、最適な手段を選定することがインフラエンジニアには求められます。OSやネットワークに関連する知識、ハードウェアのスペックに対する知識などITインフラを設計するには幅広い知識と豊富な経験が不可欠です。
また、通常プロジェクトは1人で行うものではありません。仕様書や設計書を作成するときは、自分以外の誰が読んでもわかりやすいようにまとめられるのが望ましいです。
インフラ構築とログ分析に関する基礎知識
インフラ構築とは、必要な機器を調達・設置し、仕様書や設計書に基づいてソフトウェアのインストールをしたり、各種必要なミドルウェアを導入・設定してシステムが稼働するための基盤を構築することです。LinuxやApache、MySQL、PHPなどの知識は、サーバーを構築するうえで必要になります。また、インフラエンジニアが扱う環境の名称で「LAMP」というものがあり、上記4つ(Linux、Apache、MySQL、PHP)の頭文字をとったものであり、それだけインフラ構築には欠かせない環境だということがわかるかと思います。
LAMP環境については、「インフラエンジニアとは - 業務内容や人材市場価値まで詳細解説」の記事でも紹介されています。
1つのシステムが動作するためには、複数のミドルウェアやサーバー、バッチ処理などが連携する必要があり、それぞれが問題なく期待された通りに動作することをインフラエンジニアは保証できなくてはなりません。そのため構築の際には、要件定義に基づいて作成された仕様書や設計書に従って、環境変数や設定ファイルの編集を行いつつ、取り扱う複数のミドルウェアを理解し使いこなせる知識が必要になります。
またインフラエンジニアは、環境構築を行う際にトラブルの発生にも備えるため、ログの出力を行います。当然ながら、インフラエンジニアはログ分析の知識がなければなりません。ログは、インフラエンジニアにとって有事の際にエラーの原因を特定するための手がかりになるため、いつ、どの部分で、何のエラーが起きたのかがはっきりとわかるようにログ出力の設定をしておくことが必要です。もし仮に障害が起きシステムが停止してしまっては、重大な機会損失を招く可能性があるからです。インフラエンジニアはいち早くそういった事態を収拾させなくてはなりません。そのためにも、機能の構築や実装のみならず、背負っている責任の重さやログ分析の重要性を認識することが大事です。
インフラ監視・運用の進め方に関する基礎知識
環境構築が完了するとインフラエンジニアにはインフラの監視・運用という役割がはじまります。一度動き出したアプリケーションは絶えず外部からのアクセスを処理しているため、容量不足やメモリ、CPUのリソース不足に陥ってしまう場合があります。そして最悪のケースは、システムそのものがダウンし動作しなくなってしまうこと。インフラエンジニアはそうなる前に対処できるよう早期予防策を行う知識があると望ましいです。
通常は設計時に設定したログを確認したり、専用のツールを利用したりし、システムに異常がないか確認を行っていきます。最近ではインターネット小売大手のAmazonが提供するクラウドコンピューティングAWS(Amazon Web Service)を使用したシステムも多く、Amazon CloudWatchというモニタリング専用のサービスを利用するのが主流です。Amazon CloudWatchはAWSのリソース状態を常に監視することを目的に使われるものであり、インフラエンジニアが基礎知識として持ち合わせておくべきサービスの1つです。
監視・運用の担当となったインフラエンジニアは、メモリやCPUが圧迫されていないか監視し、リソース不足が懸念される場合には、サーバーの性能のグレードアップや複数台での運用を検討します。その際、的確な判断ができるようハードウェアに関するスペックなどの知識をアップデートし比較検討できるようにしておく必要があります。
障害発生時の対応法と連携業務の基礎知識
障害が発生したとき、インフラエンジアが対応できる方法は数多くあります。また問題を解決するだけでなく、記録表への記入、関係者への説明、再発防止策の立案などさまざまな作業があり、インフラエンジニアは冷静かつ効率的に行動することが求められます。障害が発生した場合、インフラエンジニアはまずクライアントに障害の報告をした後ログを確認し、不具合が生じたプログラムがどんなエラーを起こしているのか確認します。そしてエラーメッセージと発生個所を把握し、仕様書や設計図と照らし合わせ、発生している問題の原因を特定していきます。原因がわかれば解決策の立案を始め、復旧作業を開始。クライアントにはどんな不具合が起きたかのか、その内容よりも、システムが止まったことによるサービスの影響を報告することが大事です。
復旧作業をはじめるにあたり必要なメンバーのアサイン、リソースの確保を行います。インフラエンジニアだけでは解決できなことも多いため、チームやポジションを横断してのコミュニケーションが必要とされます。予期せぬ障害はどうしても起こりうるもの。大事なのは、その障害が発生したとき、いかに迅速に対処できるかです。経験と知識が大いに役立つでしょう。
障害発生時インフラエンジニアは、その原因についてわかりやすくかつ的確に、異なる立場のエンジニアたちに説明をしなくてはなりません。場合によっては、ITリテラシーの豊富でない他部署のメンバーやクライアントへの説明も求められるため、専門用語に頼らずに話すスキルがインフラエンジニアには求められます。障害発生時に備え、前項でも触れたインフラエンジニアとしての基礎知識はもちろんのこと、チーム間で円滑なコミュニケーションを図ること、またクライアントにわかりやすい報告をするなどのコミュニケーションスキルも習得しておく必要があります。
インフラエンジニアとして市場価値を高めるための知識
ここでは、インフラエンジニアの持つべき知識とそれに付随する関連知識の重要性について紹介します。
インフラエンジニアにとって、核となるスキルはもちろん最重要ですが、実際の業務に関わる知識や関連知識もそれと同じくらい重要です。たとえば開発の現場や顧客との打ち合わせの際にはスキルとして身に付けていない内容でも対応できる用意が必要で、その際にインフラに関する専門領域だけでなく、それに付随する関連知識がとても役に立ちます。
トラブルや難しい問題に直面した際に解決策を考えるためにも、冷静な判断と豊富な知識は必要不可欠です。AWSやGoogle Cloudなど各種クラウドサービスや仮想化に関する知識に対する需要も年々高まっています。これらインフラエンジニアの業務に必要な知識と、さらに幅広く活躍するための関連知識を持っていることが、インフラエンジニアの市場価値を高める要素となっています。
トラブル対応のために必要な、ITに関する広範な知識
インフラエンジニアにとって最も重要なのは、トラブルが発生した際の選択決定の場面で、判断が的確であることはもちろん、迅速であることがとても重要です。通常、アプリケーションはサーバーで動作するため、サーバーの環境構築を行うインフラエンジアは、問題が起きた際にすぐに対応を求められます。
そのため、原因の特定や解決策を実施するための知識が必要です。この知識がない状態では、サーバー上に残っているログや仕様書をもとに論理的な思考で原因をつきとめていくことはできません。またトラブルの原因はサーバーだけでなく、クライアント側や、プログラム内など多岐にわたる可能性があるため、インフラについての基礎知識だけでは問題解決に至ることはできません。そのためインフラエンジニアはシステムの仕組み全体を網羅する知識が求められます。常に新しい技術に関心を持ち、インフラの専門領域だけでなく、IT分野に関する広義な知識を有していることがいま求められているインフラエンジニアの素養と言えるのです。
マーケティング・クリエイティブの知識
ITの進化と共にWeb業界、ゲーム業界も成長・拡大を続けています。昨今はリッチで多機能なWebサイトや、業務促進ツールや、日常生活に役立つアプリ、ソーシャルゲームなど、サーバーあるいはクラウドにおける新しい技術が活用され、インフラエンジアが活躍できる場が急速に拡大しています。
クラウド化が爆発的な勢いで進んでいる現在、多くの場合オンライン通信が必須となり、スマートフォンやタブレット端末、IOT機器などさまざまな種類の機械との通信を前提としたシステムの開発では、インフラエンジニアの活躍が期待されています。ほとんどの開発環境で、インフラエンジニア同士だけではなく、プランナー、マーケター、ディレクター、デザイナーや、クライアントと折衝する機会も増えてきています。異なる立場でそれぞれ違う役目を果たしているチームメンバーがコミュニケーションを取る必要性が高まっている今だからこそ、他分野の知識もある程度備えておくことが必要になります。
今後インフラエンジニアが持っておくべき知識とは
これからインフラエンジニアを目指そうとする人にとって、その職種の将来性は最も気になる部分の1つではないでしょうか。IT化が加速を続ける今の社会の中でのインフラエンジニアが今後どう変わっていくのか、どんなスキルや知識、関連知識を追加していくべきなのか。インフラエンジニアとしてキャリア形成していく方法と、他のIT分野との関わりを考えていきましょう。
バックエンド側でだけでなくフロントエンド側と分野以外の知識もあると良し
インフラ環境に関する知識だけではなく、ネットワークやプログラミング言語の基礎知識があると、インフラエンジニアの活躍の場は広がります。開発するシステムの種類にもよりますが、最近需要が増えつつあるWebシステムの場合はPython(パイソン)、Java、Ruby、PHPなどバッグエンド側で使用される言語に関する知識はもちろんのこと、フロントエンド側の知識も持ち合わせていると鬼に金棒です。
クライアント上で動作する言語には、HTML、CSS、JavaScriptなどがありますが、インフラエンジニアもこれらについてひと通り知っておくことが望ましいでしょう。インフラエンジニアが取り扱うことになるバッグエンド側では、クライアント側からデータを受信し処理することが必ずと言ってよいほどあるからです。自分が直接触れるわけではありませんが、関連する言語の知識を持ったインフラエンジニアは、多くのメンバーが連携する大規模プロジェクトでは有力と見なされます。
Webシステムに限らず、そのほかのシステムでも、インフラの知識だけで事足りるといったケースはほとんどありません。インフラエンジアとしてのキャリア形成を行うためにも、専門分野以外の基礎知識に触れる習慣を身に付けましょう。
まとめ
インフラエンジニアは動作環境を構築するポジションであるがゆえに、必要とされるスキルや知識も幅広く難しいポジションです。トラブル発生時には速やかに問題解決することが求められ、他の開発メンバーが利用しやすい環境の構築も考えなくてはなりません。しかし、インフラエンジアとして一度経験を積めば、幅広い業界やビジネス領域のプロジェクトで活躍することができ、何より、非常に重要な役割を担っているからこそのやりがいを感じることができるでしょう。
プロジェクトの下支え的なポジションとして語られることも多いインフラエンジニアですが、その世界はとても奥が深いです。本記事で紹介したような知識を身に付けたうえで、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
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