スキルや技術だけでなく「考えるクリエイター」としてのあなた自身を表現できるポートフォリオを ―― 株式会社コンセント インタビュー
クリエイターの採用において大きな比重を占めるといわれているポートフォリオ。実際に企業で採用を担当する人々はどのような視点でポートフォリオを評価しているのだろうか。MATCHBOX REVIEWでは1つの企画として、クリエイターからの注目度が高く、採用が活発な企業を対象に、採用に携わる人々へインタビューを行う。
今回は、「伴走するデザイン」をコンセプトに、印刷物やWebをはじめ媒体を問わないアウトプットでクライアントの事業開発支援、コーポレートコミュニケーション支援、クリエイティブ開発等を行う株式会社コンセントに取材を依頼した。インタビューには同社コミュニケーションデザイン(CD)部門よりエディトリアルとWebの各領域のマネージャーが登場。コンセントがいま求めているパーソナリティと採用の実態を聞いた。
プロフィール紹介
國分 結香氏(写真左)
CD2 div.(エディトリアル領域)マネージャー アートディレクター
2002年入社
中村 朋子氏(写真右)
CD1 div.(Web領域)マネージャー ディレクター
2006年入社
Web、エディトリアルからブランディングまで、企業と「伴走する」コンセント
―― 今回はインタビューにご協力いただき、誠にありがとうございます。まずは中村さん、國分さん、お2人の現在のポジションとお仕事の内容について教えてください。
中村氏:株式会社コンセントはデザイン会社としていくつかの制作部門を持っていて、私は主にWeb領域を担当するコミュニケーションデザイン部門(CD1)でマネージャーを務めています。Web領域の部門にはほかに3名のマネージャーがいて、それぞれ20名ぐらいのグループを受け持っており、部門全体では現在70名ほどのメンバーが活躍しています。職種はディレクター、デザイナー、プログラマーなど、Webのクリエイティブに必要なメンバーがそろっています。私自身はマネージャーとしてグループのマネジメントを行いながら、Webディレクターとして運用フェーズのプロジェクトを中心に仕事を行っています。
國分氏:私はエディトリアルを主とした部門(CD2)のマネージャーです。メンバーの構成はWeb領域とほぼ同じで4名のマネージャーと約70名のメンバーで活動しています。メンバーの職種はデザイナー、ディレクター、アートディレクター、プロデューサーなどです。コンセントは印刷メディアのデザインからスタートしていて、私たちの部門もエディトリアルと呼んだりしますが、お客様と一緒に「そもそもの問題や目的は何か」「その課題を解決するためには何をデザインするべきか」という部分から関わり、アウトプットは紙に限りません。その中でWeb部門との協働も増えていて、さまざまなクリエイティブにチャレンジできる部門です。私自身はマネジメントのほかにアートディレクターとして仕事をしています。
―― お2人の採用への関わり方について教えてください。
中村氏:新卒採用は新卒採用のチームを作っているので、私が年間を通して担当しているのはおもに中途採用です。私たちから人事担当に「こんな応募者の方がいたら紹介してほしい」というように、自分の部署にいま必要なパーソナリティやキャリア経験について伝えています。そうすると人事からそれに沿った応募者の応募書類を見せてもらえるので、その中から会ってみたいと思う人を選んでいます。面接ではその方たちとお話しすることで、実際の人物を見ていきます。私はディレクターなのでデザイナーやエンジニアの採用に関しては各職種のリーダーにも応募書類のチェックや面接に立ち会ってもらっています。
國分氏:私はエディトリアル部門内のデザイナーとアートディレクターの採用に関わっています。私と数名のリーダー(アートディレクター)で書類選考と一次面接を行い意見を出し合います。その人のどんなところに魅力を感じたかはそれぞれ違いますので、1人の意見で採用に繋がるということはありません。ただその中でも共通認識としてもっているのは、単に何かを指示通りに作れる人ではなく、自ら考えてデザインができる人を採用しようということです。コンセントでは専門に応じたスキルや技術があるだけではなく、課題や状況に応じて何をするべきか、そもそも課題は何かというところから考えられるクリエイターを求めています。
与えられたモノをそのまま作るのではない、「考えられるクリエイター」とは
――「考えられるクリエイター」とは具体的にどんな人を指すのでしょうか?またお2人はそれをどういったところで判断されているのでしょうか?
國分氏:たとえばお客様からパンフレットを作りたいという依頼をいただいたとします。私たちはお客様である企業と伴走し、その活動を支えるデザインを行っています。だからこそ、なぜお客様がパンフレットを作りたいのか、お客様がどんな目的を持っていらっしゃるのかを考えて仕事を進めていきます。お客様の目的を達成するために本当にパンフレットが有効なのか、エンドユーザーにもっと効果的にアプローチする方法はないか。そこまで視野を広げて最終的なアウトプットを提案していきます。職種に限らず、従業員の誰もが自ら考えて業務を行うことが私たちの基本的な仕事のスタイルで、それが現在のコンセントを形作っていると思っています。
中村氏:採用の第一段階としては応募書類で見ています。ポートフォリオにはやはりその人の持つ素養がよく表れていると思います。「自分を伝える」ということにその人がどう取り組んでいるかが大切なのではないでしょうか。いくら作品やコンテンツをたくさん載せていただいても、その人がどう関わったのかがわからなければ意味がありません。「職種デザイナー、経験●年、以上」としか書かれていなかったら、いくら作品が素晴らしくても私たちは評価のしようがないのです。ポートフォリオを見る採用担当者がどんな情報を求めているかを、応募者の方は考えることができているかどうか。私たちはポートフォリオを作る人がそうした視点を持てているかも大切にしています。
大切なのは「自分を表現する」ための一歩踏み込んだアピール。"どう関与したか"を伝える工夫を
見本としてお持ちした『MATCHBOX』の制作過程が記載されたポートフォリオを見て、率直な印象を語る國分氏と中村氏
―― 今回は『MATCHBOX』で作ったポートフォリオの見本を持ってきました。ざっくばらんな感想をお聞かせください。
中村氏:私はディレクターなので、自分がポートフォリオを作るということを考えると、デザインフォーマットがある程度できあがっていることはとても助かります。ただ、しいて言えば、お見せいただいたポートフォリオだと、プロフィールの部分と作品の部分とで、ビジュアル的にあまり差別化されていない印象がありますね。例えば、プロフィールと1作品目ではそれぞれ異なるテイストの画像を選択するなど、緩急をつけられるように工夫してもよいかもしれません。
國分氏:デザイナーといっても、グラフィックだったり、プログラミングに近い部分だったり、得意とする分野はそれぞれです。ポートフォリオで自分のデザイン力を是非見せたいという人でなければ、デザイナーにとってもフォーマットに沿ってポートフォリオを作れるのは魅力です。なぜならどの作品をどう見せるかに集中することができますので。結果として仕上がったポートフォリオに採用側の欲しい情報がしっかり網羅されていれば、見やすいというプラスの効果もあるはずです。もしコンセントへの応募で『MATCHBOX』を使うなら、『MATCHBOX』の項目に答えていく形でもかなり採用側の疑問に答えられることになると思いますが、そこでさらにもう一歩踏み込んだアピールを短いテキストの中でしてほしいです。
中村氏:確かにそうですね。たとえば『MATCHBOX』では、掲載した作品に対してどのフェーズから参加したかを記載できると思いますが、そこに「企画フェーズ」と書くだけでは不十分なんですよね。たとえばその作品の企画には何名が参加したのか、どのような役割を担ったのか等、応募者の方がその作品にどのようにどれだけ関与したのかが、採用担当者に伝わるように書くことをおすすめします。
國分氏:『MATCHBOX』を活用した場合、ポートフォリオの制作時間をかなり短縮できるはずです。たとえばこの見本のように、リリースされた作品を完全版として見せるだけでなく、候補となったデザインも並べて、それが絞り込まれる過程を見せるというのも見る側としては大きな関心となります。応募者が自分のスキルや本当にやりたいことを上手く表現できる方法であればどんな形でも構わないと思います。『MATCHBOX』で全体を省力できるのであれば、是非「自分を表現する」というところに力を入れてほしいです。
コンセントの幅広いビジネスフィールドにより、クリエイターとしてのキャリアアップ・キャリアチェンジを可能に
―― エディトリアルからWeb、ブランディング、さらには事業や組織開発の支援まで、広い領域でビジネスを展開するコンセントで働く魅力を教えてください。
國分氏:自分のいろいろな可能性にチャレンジでき、考えて仕事ができる会社だと思います。たとえば私たちの部門ではエディトリアルデザインのスキルを持った人がWebデザインのスキルをプラスして、デザイン領域を広げるということがあります。先にもお話ししましたがWeb部門との協働も活発になっていますので、本人の希望を考慮してデザイナーがさまざまな経験ができるのも、多様なアウトプットを手がけるコンセントの魅力なのではないでしょうか。これはもちろん、ディレクターやエンジニアなど多くの職種で共通して言えることです。
中村氏:このことはこれからコンセントに応募しようと考えてくださっている方にも当てはまります。エディトリアルのスキルを持っているがWebにチャレンジしたい、あるいはその逆も当然OKです。ただ、応募の際に伝えてほしいのは「なぜそう希望するのか」と「そのために自分はどんな強みを持っていてどんな用意をしているのか」ということです。コンセントは責任と覚悟、そして探究心があればさまざまなプロジェクトに臨める環境だと思いますので、一緒にキャリアプランを描いていけたらと思います。
―― 最後にこれから転職を考えているクリエイターにメッセージをお願いします。
國分氏:コンセントは印刷メディアのデザインからスタートしたとお話ししましたが、その1971年の創業時から今も変わらず大切にしていることは「読者やユーザーが体験すること」を考えて「きちんと伝わる」デザインを行うこと、つまり、お客様や読者・ユーザーに寄り添う「考えるクリエイティブ」です。やりがいあるこの仕事にチャレンジしたいと考える多くのクリエイターの方のご応募をお待ちしています。
中村氏:応募書類、中でもポートフォリオを作るときには自分の強みをしっかりアピールできているかを必ず考えてみてください。それが見る側に伝わると採用までのスピード感が変わってきます。その会社でいまどんな人物が求められているのかを考えて、その答えをしっかりとポートフォリオで表現していくことが採用への最短コースだと思います。ただ作品が並べられただけのポートフォリオではなく、あなたの本当の実力と人間性を表したポートフォリオであれば、きっと転職も成功するのではないでしょうか。
経営・人事からひと言
ヒューマンリソースからヒューマン&カルチャーへ
大岡 旨成氏 取締役 Human & Culture div.担当役員 ディレクター
コンセントは従業員数約200名の規模で、企業のコミュニケーションデザインとビジネスそのもののデザインを行う会社です。中途採用では専門スキルを軸足としながら問題提起や課題解決に主体的に取り組んでいける人を求めています。
私たちがいま人事で取り組んでいる考え方は、ヒューマンリソースではなくコンセントならではのヒューマン&カルチャーを作っていこうというものです。必要なのはリソースではなく、人のためのカルチャー(仕組みや制度を含めた企業文化)だと考えています。個人が考える力をビジネスに活かしていくためには、それを支援できる仕組みや体制を作っていかなければなりません。私たちはこれからも従業員全員が個性を活かして能力を思う存分発揮できる環境を整えていきます。
成長できる環境が整っている会社
日高 絵理氏 Human & Culture div.
コンセントでは、Webディレクター、UIデザイナー、エディトリアルデザイナー、サービスデザイナー、コンテンツディレクター、エンジニアと多くの職種を募集しています。採用フローは、応募書類(履歴書・職務経歴書・ポートフォリオ)をお送りいただいた後、書類選考をさせていただき、通過者には最大3次までの面接と適性検査を行います。現場マネージャーからも話があったとおり、クリエイター職はポートフォリオの審査も重視しています。
国内外カンファレンスへの参加サポートや、デザイン会社の特徴を活かした研修制度「コンセントデザインスクール」をはじめ、スキルアップ支援に注力しているのもコンセントの特徴です。新たな環境で成長していきたい方から即戦力でご活躍いただける経験者まで、多くの方にお会いしたいと思っています。ぜひ積極的なご応募をお待ちしております。
この記事を書いた人
マイナビクリエイター編集部は、運営元であるマイナビクリエイターのキャリアアドバイザーやアナリスト、プロモーションチームメンバーで構成されています。「人材」という視点から、Web職・ゲーム業界の未来に向けて日々奮闘中です。