データサイエンティストとは?年収や資格、転職事例も紹介

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データサイエンティスト近年、データサイエンティストという職業が注目されています。しかし、比較的新しい職業なので、名前は聞いたことがあっても具体的にどんな仕事をしているのかイメージがつかないという方も多いのではないでしょうか。

この記事では、データサイエンティストについて詳しく知りたい方に向けて、データサイエンティストという言葉の意味や具体的な仕事内容、データサイエンティストになるために必要なスキルや資格、実際の年収や将来性などについて解説していきます。また、データサイエンティストに向いている人の特徴や、データサイエンティストに転職した人の事例もご紹介します。

データサイエンティストとは?

データサイエンティストとは、さまざまな分析・解析データを活用して、経営課題や社会課題の解決、ビジネスのグロースなどに繋げる業務を担う人です。統計学や数学、情報科学やデータ解析など、幅広い知識と業務が求められる専門性の高い職種でもあります。

一般社団法人データサイエンティスト協会の定義によると、データサイエンティストとは「データサイエンス力、データエンジニアリング力をベースにデータから価値を創出し、ビジネス課題に答えを出すプロフェッショナル」となっています。

現代では、企業活動や日常のさまざまな場面で、スマートフォンや各種センサーを通じて膨大な量のデータの取得・蓄積が行われています。また、コンピューターのハード・ソフト両面が進化したことで、ビッグデータの集計や分析を迅速に行い、ビジネスに生かすことも可能になりました。「データは21世紀の石油」「データは産業のコメ」などとも言われており、企業は、データを積極的に活用して競争力に繋げることを期待されています。

なお、「データサイエンティスト」という言葉は「データサイエンスを行う人」という意味ですが、現状、「データサイエンス」「データサイエンティスト」共に明確な定義が存在するわけではありません。データサイエンティストという肩書きは同じでも、企業によって業務内容が異なる場合もありますし、データサイエンティストの仕事をしている人が別の職種名で呼ばれている場合もあります。

企業内でデータ分析を担当する職種としては、データサイエンティストのほかに「データアナリスト」「マーケティングリサーチャー」などもあります。以下、データサイエンティストとの違いについて解説します。

データアナリストとの違い

データアナリストはデータサイエンティストの中の1タイプであり、両者に厳密な違いはありません。一般的には、データサイエンティストの中でもとくに情報処理やAI(人工知能)、統計学など、数学や情報科学系の知識・スキルに長けた「サイエンス」寄りの人材をデータアナリストと呼ぶことが多いようです。

データアナリストは、企業によっては業務がデータの集計・分析のみに限定されている場合もありますし、データサイエンティストと同様にデータ戦略の立案や経営層への提案まで幅広く担当している場合もあります。データサイエンティストの仕事を探す際には「データアナリスト」でも検索をかけてみると選択肢が増えるでしょう。ただし、応募する際には、募集要項をよく確認して、企業が求めている人材と自分のやりたいことがマッチしているか、しっかり見極めましょう。

マーケティングリサーチャーとの違い

データサイエンティストとマーケティングリサーチャーとの違いは、解決する課題や扱うデータの範囲にあります。データサイエンティストはあらゆるデータを分析の対象としますが、マーケティングリサーチャーはマーケティング戦略の立案や商品・サービスの育成に必要な、市場や消費者の動向に関するデータを専門に扱います。

扱うデータの範囲は異なりますが、マーケティングリサーチャーの業務内容は、課題の抽出や仮説立案、収集するデータの決定、データの収集と集計・分析、レポーティングなど、データサイエンティストと共通しています。従来はマーケティングリサーチャーに求められるものとして調査スキルが重視されていましたが、今日ではビッグデータの分析に必要な数学やプログラミングの知識・スキルを身に付けた人材が求められるようになったため、データサイエンティストに近い職種になりつつあります。

データサイエンティストの仕事内容

データサイエンティストの仕事内容は、企業やデータサイエンスを担うチームの規模によって異なりますが、一般的にはビジネスにおける課題の把握からデータ戦略の策定、データの収集と集計・分析、レポーティングといった一連の流れを担います。

データサイエンティストの働き方としては、コンサルティングファームなどに所属する、または事業会社に就職するという、大きく分けて2つのパターンがあります。クライアント企業のデータを扱うか、自社のデータを扱うかという違いはありますが、基本的な仕事のプロセスは共通しています。

データサイエンティストの仕事内容

  • 課題抽出と目標設定
  • データ収集・分析環境準備と仮説構築
  • データ前処理(分類、抽出、加工、集計)と分析の実施
  • 仮説検証とモデル評価
  • 経営層への提言(レポート作成)

データサイエンティストに求められる役割として、とくに重要なのは1と5です、2から4のみを中心に手がける職種はデータアナリストと呼ばれる場合が多いです。以下、各項目について詳しく見ていきましょう。

1課題抽出と目標設定

データを集めて分析する前にはまず、解決すべき課題を見極め、目標を明確にする必要があります。

企業が抱える課題には、たとえば「新商品の売り上げ予測」「自社サイトのコンバージョン向上」「商品やサービス認知度向上」「プロダクトの改善」「社員の生産性向上」などがあり、それぞれの課題の背景にはさまざまな要因があります。

そのため、データ収集に着手する前に、まず課題の細分化と優先順位付けを行い、データ分析によって何を達成したいのかを明確にします。このフェーズでは、経営陣や関連部署に対するヒアリングや提案を行う場合もあり、データに対する知識だけでなく自社の事業や市場環境に対する深い理解が求められます。

2データ収集・分析環境準備と仮説構築

課題に関係するデータは無数にあるため、むやみにデータを集めて分析しても課題解決に役立つ結果が出るとは限りません。また、目標達成に必要なデータが必ず入手できるとも限りませんし、入手できたとしても法令や契約、社内ルールなどの制約で使用できない場合もあります。

そのため、まずは目標達成に必要なデータはどこにあるのか、利用可能なのか、どのように入手するのかといった情報を集め、収集・分析すべきデータを決定します。そのうえで、データの収集方法や分析方法を検討し、分析の計画を立てます。また、データ収集のためのシステムやネットワークの構築、分析ツールの導入やデータベースの構築など、分析環境の準備を主導するのもデータサイエンティストの役割です。

そして、データ分析の要となるのが、仮説構築です。入手可能なデータを吟味して、「このデータをこのような手法で解析すれば、このようなことがわかるはずだ」という仮説を複数立てていきます。仮説構築はデータサイエンティストの知識や経験、発想やセンスが最も生きるポイントです。

3データ前処理(分類、抽出、加工、集計)と分析の実施

データ収集ができても、そのまますぐに分析ツールにかけられるケースはめったになく、通常は何らかの前処理が必要です。前処理は分析結果の精度を左右する重要な要素であり、分析作業の大半を前処理が占めることも珍しくありません。

具体的には、分析に必要な要素とそれ以外を分類して必要なもののみを抽出する、データの書式や数字の単位を統一する、欠損しているデータを埋める、複数のデータを結合・集計する、データの共有に適したファイル形式に変換する、などの作業が発生します。これらの作業には多くの場合、PythonやR、SQLなどのプログラミング言語を使用します。

データを分析に適した形に整えることができたら、分析ツールに読み込ませます。分析ツールを使えば、大量のデータから平均値や標準偏差など、「基本統計量」と呼ばれる数値をスピーディーに手に入れることができます。

4仮説検証とモデル評価

分析結果が得られたら、最初に立てた仮説の検証を行います。

仮説が正しいと証明できるような分析結果が得られれば、次のステップに進むことができます。もし、望ましい結果が得られなかった場合には、仮説の立案からやりなおす必要があります。

いずれの場合も、分析結果を関係者に報告し、分析結果や分析モデル、結果を出すまでのプロセスの評価を行います。望ましい結果が出た場合には、分析結果や分析モデルをビジネスに適用できるかどうかを検討すると共に、分析精度の向上や新たな課題発見に向けた議論を行います。また、望ましい結果が出なかった場合には、プロセスのどこに問題があったのかを検証し、次に生かします。

5経営層への提言(レポート作成)

一連の仕事が完了したら、経営層への報告と提言を行います。

有効な分析結果が得られた場合には、当初設定した課題の解決に資する数値をKPI(重要指標)として設定し、その推移や今後の予測などをレポートにまとめます。また、分析結果や分析モデルがビジネスの場で活用されるように具体的な施策や計画を提案したり、分析の過程で見えてきた新たな課題の解決に向けたモデル構築の提案を行ったりする場合もあります。

業界別データサイエンティストの仕事例

データサイエンティストの役割は、先に紹介した一連のプロセスを通じてビジネスの課題を解決することです。企業の課題には、セールスやマーケティングに関すること、プロダクトやサービスに関すること、社内システムや業務プロセスに関することなど、さまざまな種類がありますが、ここでは、クリエイティブ業界を例に、データサイエンティストの具体的な仕事例をご紹介します。

Web業界

Web業界では、サイトの改善やグロースを目的にしたアクセスログ解析や広告データの解析など、データの活用が以前から一般的に行われてきました。そして、現在データサイエンティストの需要がとくに高まっているのは、自社でECサイトやSaaS、ASPといったWebサービスやソリューションを提供している企業です。

自社のWebサービスを通じて蓄積されたユーザーの行動履歴のほか、流入データやSNS上の口コミなど、さまざまなデータを掛け合わせて分析することで、ユーザー体験(UX)やUIの改善などを通じた既存サービスのグロースや、新規サービスの開発などに繋げます。

ゲーム業界

オンラインゲームを展開している企業には、世界中のユーザーのデータが蓄積されます。サイトへの流入経路やサイト上での行動、ゲームプレイ中のユーザーの動向などを、地域や時間帯、ユーザー属性など異なる切り口から分析することで、さまざまな知見を得ることができます。

分析結果をもとに既存のゲームの課題やユーザーのニーズを探り、サイトやゲームの改善に生かしたり、地域やターゲット別のマーケティング戦略に繋げたり、新たなゲーム開発に生かしたりします。

データサイエンティストの年収

データサイエンティストの 年収

ここまで見てきたように、データサイエンティストは企業がデータを活用して成長するために欠かすことのできない人材です。データサイエンティストの年収は全産業の平均よりもかなり高く、また、年代が上がるほど年収も上がる傾向にあります。

厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査によると、データサイエンティストの平均年収は約558万円。年代別では、20代:384万円、30代:531万円、40代:605万円となっています。まだ新しい職業で需要に対して人材が不足していることや、業務に高い専門性が必要とされることから、高いスキルや豊富な経験を持った人材は、好待遇が期待できます。

データサイエンティストに必要とされるスキル

では、データサイエンティストになるためには、どのようなスキルが必要なのでしょうか。

データサイエンティスト協会は、データサイエンティストに求められるスキルセットを以下のように定義しています。

データサイエンティストに
必要とされるスキル

  • ビジネス力(business problem solving)
    ...課題背景を理解したうえ、ビジネス課題を整理し、解決する力
  • データサイエンス力(data science)
    ...情報処理、人工知能、統計学などの情報科学系の知恵を理解し、使う力
  • データエンジニアリング力(data engineering)
    ...データサイエンスを意味のある形に使えるようにし、実装、運用できるようにする力
ビジネス力 データサイエンス力 データエンジニアリング力

また同協会は、これら3つのスキルは、課題解決のフェーズによって中心となるスキルが変化し、どの1つが欠けてもならないとしています。ここからは、3つのスキルを1つずつ解説します。

1ビジネス力

ビジネス力とは、世の中やビジネスの状況を理解して本質的な問題を見抜き、目的や範囲を明確にしてプロジェクトを遂行し、成果をアウトプットする力です。集めた情報を構造化する力や仮説を立てる力、データを理解し、分析結果を評価して事業に実装する力、分析結果をドキュメントにまとめてプレゼンテーションする力、データを適切に扱うためのデータ・AI倫理やコンプライアンスなどもここに含まれます。

データサイエンティストという名称からは「理系の専門職」というイメージを持たれがちですが、データサイエンティストの役割はあくまでビジネス課題を解決することにあるため、ビジネス力が重視されます。データ分析のプロジェクトを遂行するためには、コミュニケーションスキルやプロジェクトマネジメントスキル、リーダーシップなど、一般ビジネスパーソンに必要とされる基本的なスキルは当然求められます。また、データサイエンティストの仕事ではとくに、ビジネスにおけるデータの重要性を理解してデータドリブンで考え、行動できる能力が重要になります。

2データサイエンス力

データサイエンス力は主に数学や情報科学系の知識・スキルのことを指します。とりわけ重要なのは統計学の知識です。データサイエンティストには工学や理学、情報学系の学部や研究科の出身者が多く、高度な数学の知識が求められるイメージがあるかもしれません。しかし実際は、理系・文系ともに高校で習う「基礎数学」に含まれている、統計数理や線形代数、微分積分、集合などの基礎的な知識があれば、ビジネスにおけるデータ分析の大半に対応可能です。

分析前にデータを加工する力や、データから意味や変化を読み取って洞察に繋げ、事実を導き出す力、分析結果をグラフなどに表現する力、機械学習への理解などもデータサイエンス力に含まれます。

3データエンジニアリング力

データエンジニアリング力は、大量のデータをコンピューター上で分析するために必要な知識や技術のことを指します。具体的には、分析に必要なデータを収集・蓄積するためのデータベースを構築する、データ操作言語を使ってデータを加工する、分析結果を関係者に共有するための環境を整える、などのために必要な知識や技術です。分析ツールを操作するための基礎的なプログラミングスキルや、クラウドサービスやネットワークに関する知識、データ暗号化などセキュリティに関する知識・技術も含まれます。

なお、データサイエンティストに求められるプログラミングスキルは、データベースを操作するためのSQLや、データを加工・共有するためのXML、データ分析用のプログラミング言語として業界標準となっているPythonやRなどです。大規模システム構築のための高度なプログラミングスキルは必要ありませんが、たとえばシステムエンジニアの経験者など、すでに身に付けている技術があれば強みに繋がるでしょう。

データサイエンティストに向いている人の特徴3選

これまで見てきたように、データサイエンティストにはさまざまな知識やスキルが求められます。そして、世の中の状況に合わせて知識やスキルは常にアップデートしていく必要があるため、データサイエンティストを目指すには継続的な努力が必要です。

もし未経験からデータサイエンティストを目指すのであればそれなりの覚悟が必要です。しかし、もしそれが自分の好きな分野の勉強、自分に向いている仕事であれば、継続的な努力もそれほど苦にはならないでしょう。ここでは、データサイエンティストに向いている人の特徴をご紹介します。

ロジカルシンキングが得意な人

仕事で何かの問題解決に取り組む際、普段から論点を明確にし、客観的な根拠をもとに論理的に結論を出す習慣ができている人はデータサイエンティストに向いています。データサイエンティストの仕事では、設定した課題の解決に繋がる事実をデータから導き出し、その事実をもとに経営陣が納得できる提言をする必要があるためです。

実際の仕事では複雑なビジネス課題と泥臭く向き合い、関係者との調整や交渉を粘り強く行わなければなりません。ロジカルに考えるだけでなく、結果をわかりやすく言語化したり、ビジュアル化したりして、ロジカルにプレゼンテーションできる技術も、データサイエンティストを目指すうえで強みになるでしょう。

地道な作業が苦にならない人

データサイエンティストという名称からは最先端のスマートな仕事というイメージが浮かぶかもしれませんが、常に大量のデータと地道に向き合うことが求められます。そのため、細かい作業を長時間続けても苦にならない人が向いています。

データの分析は分析ツールを使えばスピーディーにできますが、その前段階として大量のデータに目を通し、そのデータが使えるかどうかを判断したり、分析に適した形に整えたりする必要があります。また、多数の仮説を立て、一つひとつの仮説について分析モデルを設計、データの分析と評価を繰り返すのも非常に地道な作業です。

大量の仕事をさばける能力は必要ですが、手あたり次第に根性で仕事を片付けようとする人は向いていません。データの細部を見る目と全体を俯瞰する目を持ち、複雑な問題を細かく切り分け、単純作業は自動化し、できる限り近道をして効率的にアウトプットを出そうという姿勢の人が向いているでしょう。

大きな意思決定に向けた提案など、攻めのコミュニケーションができる人

ビジネスの変革に向けて経営層や関係部署に積極的な提言ができる人もデータサイエンティストに向いています。なぜなら、データサイエンティストの主要な役割はデータを分析することではなく、データでビジネスの課題解決をすることだからです。データサイエンティストが作成した分析モデルや分析結果は、最終的にビジネスに生かされなければ意味がありません。

一方、仕事に対して受け身の姿勢の人は、データサイエンティストに向いていないでしょう。ビジネスの課題を解決するためには、自席でデータに向き合うだけでなく、積極的に現場へ出向いて情報収集したり、関係者と話をしてニーズを汲み取ったり、キーパーソンに働きかけて交渉するなど、攻めのコミュニケーションもできる力が必要です。また、ビジネスの状況や新しい技術に対する好奇心、さまざまな角度から仮説を立てられる柔軟な発想力も強みになるでしょう。

データサイエンティストになるには

データサイエンティストは、弁護士や社労士のような国家資格があるわけではありません。とくに資格を持っていなくても、データサイエンティストという肩書きで仕事をしている人はいます。

ただし、データサイエンティストとして企業に採用されるには、情報処理や統計学といったデータサイエンス系の知識・スキル、ビッグデータに関する知見が必須です。そして、先述の「ビジネス力」「データサイエンス力」「データエンジニアリング力」をバランスよく身に付けていく必要があります。

データサイエンティストを目指したい方は、まずデータサイエンティスト協会の公開している「スキルチェックリスト」で、自分の持っているスキルをチェックしてみることをおすすめします。もし3つの力のうちいずれかに強みがあればそれを生かしながら、以下に紹介する方法を参考に、足りないスキルを身に付けていきましょう。

資格を習得する

データサイエンティストになるために必要な知識やスキルを身に付けるなら、その知識やスキルを客観的に証明してくれる資格の取得を目指すとよいでしょう。それぞれの資格の公式テキストで勉強したり、オンラインコースを受講したりすれば、出題範囲を効率よく学べます。

  • データサイエンティスト検定

    データサイエンティスト検定™リテラシーレベル(DS検定™)は、データサイエンティストを目指す人やデータサイエンス初学者向けの検定です。データサイエンティストに必要な3つの力について、同協会が定義する「見習いレベル」の実務能力や知識があり、数理・データサイエンス・AI教育については「リテラシーレベル」の実力があることを証明できます。

    データサイエンティスト検定

  • 統計検定

    一般財団法人 統計質保証推進協会が実施する統計検定は、データサイエンス力の中でもとくに重要な、統計の知識レベルを測ることができる検定です。1級から4級までのレベルがありますが、データサイエンティストを目指すなら「大学基礎統計学の知識と問題解決力」が求められる2級の合格を目標にするとよいでしょう。

    また、2021年からは新たにデータサイエンス科目の検定も開始され、「データサイエンス基礎」「データサイエンス発展」「データサイエンスエキスパート」の3種類が実施されています。これらの検定では、実際にデータセットを使ってデータの前処理から解析の実施、分析結果の読み取りまで行い、データを扱う実践的な能力を問われます。

    統計検定

実務の中で一定量のデータを精査して、次のアクションに結び付けた経験をする

基礎的な知識やスキルを習得すると共に、身に付けた知識を業務の中でも生かすのもおすすめです。あなたが今担当している業務の中で取得できるデータを使い、さまざまな仮説を立てて分析し、そこから導き出した事実を業務の改善などのアクションに結び付けてみましょう。

その際に使うデータは、数千件、数百件程度のアンケートデータなど、非ビッグデータでも構いません。専門の分析ツールがない場合は、Excel(エクセル)など表計算ソフトで関数を使って分析したり、VBAを組んで自動処理できるようにしたりするとよいでしょう。

1つのサービスをグロースしてみる

もし可能であれば、サービスのグロースなど目標を決めて、データの収集や分析、ビジネスへの反映まで実践できるとなおよいでしょう。目標達成のために、関連するさまざまなデータを集め、それぞれの数字の関係性を探ります。データ相互の因果関係をつかんだら、今後の予想を立て、その結果をもとに、ビジネスの成長に繋がる提案をしてみましょう。

データドリブンで課題の抽出から課題解決までワンストップで行い、実際に数字を改善することができれば、転職の際にもアピールできる実績になるはずです。

データサイエンティストのコミュニティに参加してみる

オンライン上にはデータサイエンティストが集まって情報交換をしたり技術を競ったりするコミュニティが多数あります。基礎的な知識やスキルを身に付けたら、そういった場に参加してみるのもよいでしょう。

代表的なものは世界中から1380万人を超えるデータサイエンティストが参加している「Kaggle」です。企業や公共団体が出題する賞金付きのコンペが多数開催されているほか、無料で利用できるトレーニングもあり、さまざまなデータセットや分析モデルも公開されています。

Kaggleは英語なのでハードルが高い、という方には日本版Kaggleともいえる「SIGNATE」がおすすめです。国内の企業や公共団体によるコンペが多数行われているほか、日本語で受講できるオンラインコースも豊富です。

データサイエンティストへの転職事例

ここからは、前職での経験を活かしながら、クリエイティブ業界でデータサイエンティストに転職した2名の事例をご紹介します。

広告代理店のマーケター
Web業界のデータサイエンティスト

20代後半のAさんは、メーカーのハウスエージェンシ―でマーケティングの部門に所属していました。業務の中でマーケティングに関するさまざまなデータ分析を行っていましたが、当時の部署では解決すべき経営課題の抽出や、分析結果をもとにした提言などに関わることができず、分析作業とレポーティングのみに限定されていました。

業務でかかわる領域をもっと広げたいと考えたAさんは、データサイエンティストを目指して転職活動を開始。あらためて自分の強みを整理し、これまでの実績や身に付けてきた分析スキルに加えて、コミュニケーション能力や、社内・社外に対する折衝のスキルをアピールしました。

その結果、年齢に対して高い分析スキルと的確なアウトプットが評価され、Webメディアを手がける企業にデータサイエンティストとして採用され、希望通りに活躍の場を広げることができました。

求人広告媒体のデータアナリスト
ゲーム業界のデータサイエンティスト

30代前半のBさんは、求人広告媒体を手がける企業のデータアナリストとして働いていましたが、子どもの頃から大のゲーム好きで、いつかはゲーム業界で働きたいと考えていました。転職のチャンスをうかがっていたところ、普段から好んでプレイしているゲームを作っている会社がデータサイエンティストを募集しているのを発見し、応募を決めました。

応募書類では、データ分析の実績やスキルと合わせて、ゲーム愛好家としてのユーザー目線をアピール。面接の際には、その企業の主要なゲームについて、ユーザーの立場から建設的な改善案を展開しました。その結果、ゲームへの深い理解と提案力が評価されて採用となりました。

憧れのゲーム業界への転職が叶って、現在は持ち前のユーザー目線を生かしながら、データ分析から経営層への提言まで担当しています。

データサイエンティストの将来性

2022年にデータサイエンティスト協会が現役データサイエンティスト540名に対して行ったアンケート調査によると、データサイエンティストという仕事に「将来性がある」「どちらかというと将来性がある」と答えた割合が82%にのぼります。さまざまな業種でデータ分析のニーズが高まり、データを扱うスキルの重要性についての世の中の理解も徐々に高まることで、当事者が現在の仕事に将来性を感じていることがうかがえます。

AIの進歩によってデータサイエンティストの仕事がなくなる、という声を耳にすることもあるかもしれませんが、経営や市場の状況を的確に把握して課題を抽出したり、柔軟な発想力で仮説を立てたり、データの分析結果と実際のビジネスの現場の両方を見て洞察を得たりといった複雑なタスクは人間にしかできません。一方、分析作業やドキュメント作成など、作業のプロセスやアウトプットが明確な作業にはAIが役立ちます。AIをうまく活用すれば、データサイエンティストはより本質的な課題解決に時間を使うことができるようになるでしょう。AIの発達は、決してデータサイエンティストにとって脅威ではなく、むしろ歓迎すべきことではないでしょうか。

技術の進歩にあわせて知識・スキルをアップデートし続けることは容易ではありませんが、データサイエンティストは大きな将来性のある仕事と言えるでしょう。

まとめ

データサイエンティストとは、決してデータを分析するだけの仕事ではありません。高い視座を持って経営や市場の状況を把握し、データドリブンで課題を解決し、あらたな価値創造に繋げる仕事です。データサイエンティストの提言は、時に経営を動かすほどの影響力を持ち、期待される役割が大きい分やりがいも感じられます。

2021年にデジタル庁が発足し、政府も日本のデジタル化に本腰を入れ始めました。経済産業省の調査によると、データサイエンティストも含まれる先端IT人材は2030年に54.5万人も不足することが予測されています。この記事を読んで、自分のスキルや経験が生かせそうだと感じた方は、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

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