正解がないものを追い求めるために、良好なパートナーシップを ―― 事業側・支援側から考えるマーケティング

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Webサイトの運営に欠かせない広告運用では、事業側のマーケティング担当と、広告運用支援を行う広告代理店がタッグを組むことが広く知られています。そして、そこで行われているのは「マーケティング」という華やかなイメージとは裏腹に、広告の効果について仮説と検証を繰り返す、粘り強さが求められる仕事と言えるでしょう。

事業側と支援側は、それぞれどのような思いを抱えて仕事にあたっているのでしょうか。マーケターとしての醍醐味や、お互いの良好な関係構築について、株式会社オーリーズの後藤慧大氏と、株式会社マイナビワークスでマーケティングを担当する池田道哉に話を聞きました。

プロフィール紹介

株式会社オーリーズ
アドオペレーションズ・ストラテジスト
後藤 慧大氏
(写真左)
大手インターネット広告代理店に入社。営業組織の課長職として、メディアプランニング、サイト制作ディレクション、MAツールのディレクション等、顧客の課題解決に必要なデジタル施策を幅広く提案・実行するディレクション業務を担当。その後、オーリーズに入社し、ストラテジスト職として窓口対応から広告運用まで一貫して担当。

株式会社マイナビワークス
マイナビクリエイター担当 マーケター
池田 道哉
(写真右)
Webアナリティクス事業の立ち上げメンバーとして参画し、大規模サイトに向けたサイト分析ツールの導入・活用の支援、サイト分析業務に従事。その後、マイナビワークスに入社し、「マイナビクリエイター」の集客最大化をミッションに置き、広告運用や集客企画の立案、サイト分析、マーケティングツールの導入など、デジタルマーケティングに関わる業務を幅広く担当。

正解のパターンが見えない、「クリエイター」の心に届くモノを提供する難しさ

―― まずは自己紹介を兼ねて、現在のお2人の業務について聞かせてください。

池田:マイナビクリエイターというWeb・ゲーム・IT業界を専門に扱う転職エージェントサービスの利用者を増やすことを目的としたマーケティングに幅広く携わっています。たとえば、サイト分析や改善、マーケティングツールの導入など、デジタルマーケティングの施策を考え、集客を最大化するのがミッション。その中でもオーリーズさんには広告運用支援をお願いしていて、私はそのディレクションも担当しています。

後藤氏:私は「ストラテジスト職」というオーリーズ独自の職種でお客様の広告運用をサポートしています。当社の特徴として、1社1社のクライアントに対し、より深くお付き合いができることを大事にしています。そのため、営業や各プラットフォーム担当、運用担当者といった分業体制をとっておらず、プロジェクトごとにクライアント対応の窓口業務から広告運用まで一貫して担当します。一人ひとりが担当する企業は多くて3社ほどになっています。

池田:実は、オーリーズさんとは初めてお会いしてからちょうど1年くらいなんですよね。とあるイベントでオーリーズさんの代表が登壇されたのを見て、仕事に対するスタンスに共感しました。そこから実際にパートナーとしてお取り組みを始めていったんです。

―― マイナビクリエイターが提供するサービスはいわゆる「人材領域」になりますが、この分野のマーケティングにおいて、難しさを感じることはありますか?

後藤氏:複数職種のターゲットとの接点をいかに持つか、という点ですね。たとえば「クリエイター」という言葉ひとつとっても、デザイナーやディレクター、エンジニアなどの職種が内包されています。さらに「デザイナー」といっても、Webデザイナー、アパレルデザイナー、インダストリアルデザイナーなど、さまざまな業種がある。職種や業種が異なれば、当然転職に対する要望も変わります。複数職種にまたがるビジネスで、広告を訴求していくとなれば、ターゲティングやプラットフォームなどの選定がとても難しいと感じます。

池田:Aという職種はTwitterでの訴求が効くのに、Bという職種では効かない、ということもありますしね。

後藤氏:そうなんです。職種や業種の違いをしっかり意識したうえで、それらに適した施策を打たないと期待通りの効果が得られないな、と。あと、クリエイターを志す方や、すでに活躍されている方が見るものなので、広告クリエイティブの品質にも一層気を使います。いわばその道のプロの方の目に留まるものなので「こんな広告を出す転職エージェントは期待できない」と思われては、支援の意味がありませんので。

池田:クリエイターの心に届くメッセージを提供したい、というのは、我々も模索しているところです。冒頭にお話しした「集客」という言葉を使うと距離を感じますが、それはつまり当社を選ぶ理由を見出してもらってはじめて達成できるものなのかなと。そのためには受け手側に有益なモノを提供することは大前提ですが、我々が打ち出すメッセージに共感してもらえないと、届けることはできないと思います。

ほかにも事業側として感じる難しさは、ユーザーの検討期間が長いことでしょうか。キャンペーンを打って応募を促すような商材と違い、特に人材業界はユーザーが複数の情報を比較、検討して、利用するサービスを決めていると感じます。ユーザーにとって、どんな情報が決め手になるのか、どの部分が当社を選んでくれるきっかけに繋がるのか......。「これが正解」というパターンが見えないだけに難しいですね。

支援側が「翻訳」した結果を、事業側が「正解」に導いていく

―― 運用型広告のマーケティングにおいて、マイナビワークスが「事業側」、オーリーズが「支援側」という立ち位置になりますが、それぞれどのような役割を果たすものと考えていますか?

後藤氏:支援側というのは、事業側の「翻訳家」だと思っています。事業側がプロダクトやサービスに込めた思いが、本当にそのサービスを必要としているユーザーへきちんと届くよう、アイデアやコミュニケーションを通じて「翻訳」をする。それが支援側と言いますか、代理店の役割だと考えています。

池田:そうして支援側の「翻訳」に対して、事業側はきちんと意志決定をする必要があります。社内事情などで実現が難しいこともありますが、支援側からのアウトプットに対して真摯に向き合わないといけない。そのアウトプットによってユーザーの困りごとを解決できるかもしれないですし、それを発信することによって潜在的なニーズにも応えられるかもしれないですから。やはり私たち事業側の役割は、支援側からのアウトプットをヒントに、サービスを通じてお客様の課題を解決していくことではないでしょうか。

後藤氏:そうですね。加えて、アウトプットしたその先も提案できるのが支援側のあるべき姿だと思っています。仮説と検証を繰り返して得た気づきや成果を、きちんと事業側に還元できるように。

―― マーケターとして、支援側だからこその面白さというのは、どの辺りに感じますか?

後藤氏:支援側だからこそという見方では、やはり複数のプロジェクトに関与できる点は大きいと感じますね。先ほどの「翻訳家」としてのスキルを、業種業態や規模を問わず届けることができます。現在、私が担当している案件を見ても、人材領域とは、まったく異なる領域のものばかりです。

そういった「まったくバラバラ」の領域に関わることができるところに魅力を感じますね。同じ「広告」というジャンルなのに、異なる課題があり、異なる切り口を考えて、異なるアイデアを提供する。毎回発見の連続で、そこに楽しさを感じるんです。

―― 一方で事業側としては、仕事の醍醐味をどういったところに感じますか?

池田:一つひとつの意思決定が自分たちの提供する商品やサービスに直接反映されることだと考えています。その意思決定のためにマーケターとしてどのように関わっていくのか、何を価値提供できるのかを考え、実行できるところに難しさを感じつつも、大きなやりがいを感じますね。たとえば、マイナビクリエイターではポートフォリオ作成サービス「MATCHBOX」を提供していますが、私はこのサービスの立ち上げ間もない頃から、現状のデータ分析、改善施策の提案など、かなり広い範囲で関わることができています。1つの領域に留まらず、いろいろなスキルが身に付くので、自身のキャリア形成や自己成長に繋がっていると思います。

それから、先ほどの意思決定の話にも繋がりますが、さまざまな制約の中で施策をいかに実現させるか、というのも事業側のポイントではないでしょうか。前職の上司から「コンサルタントは仮説を導き出す存在、マネージャーはそれらの仮説を正解にする存在」と言われたことがあり、まさに支援側と事業側はその関係性に似ているな、と。

何が正解かなんてわからない中で、支援側にさまざまな仮説・提案をいただき、それに基づいた施策を事業側が実施し、仮説を「正解」に導いていく。これはまさに事業側の醍醐味だと感じています。

事業側と支援側が良好なパートナーシップを結ぶために

―― 事業側と支援側が連携して最大の成果を生むには、良好なパートナーシップが欠かせないと思います。関係構築のために意識されていることはありますか?

後藤氏:当社は、お客様とお付き合いする際にそのお客様と私たちが相互に「尊敬できるか」「信頼できるか」「成長できるか」を常に意識しています。これは、お客様に求めるというより私たち自身がそう思っていただける存在であってこそ言えることだと理解していますが、たとえば、過度なコミットメントを求める、成長意欲を感じないなど、このポリシーにそぐわないお客様はお断りするくらいなんです。尊敬・信頼・成長を意識しながら仕事をしていると、余計な不安や不満、憶測を感じずに済みます。結果として、正直なコミュニケーションから良好なパートナーシップが生まれるのではと思っています。

あと、ご質問の回答から少し広がりますが、個人的には、この業界で10年以上仕事をしてきましたが、いよいよ事業者側、支援側という垣根もなくなっていくのを感じますね。代理店は媒体機能だけではなく、顧客のより深いデータを見にいく必要があったり、その逆に、事業者側のみなさんも媒体やテクノロジーの理解がないと成果が出しづらい。

池田:それは私も同感です。あと、事業側として意識しているのは、支援側と伴走するために、「情報格差」をできる限り少なくするということです。たとえば、過去に実施済みの施策はその成果と合わせて共有しておくとか、あらかじめ施策の規模や予算感は伝えておくとか。せっかく提案していただいたのに、そういった前提条件を伝えていなかったせいで提案自体がなかったことになる、というケースもあると思うんです。同じ目線で会話ができれば、こんな悲劇は起きませんから。

後藤氏:確かに「それ言ってよ......」みたいなことはありますね。でも、これは事業側が一方的に悪いのではなく、支援側に責任があるケースも多いと感じますね。

―― お2人は「同じ目線で会話をする」ために、どのようなことを気にかけていますか?

池田:事業側と支援側の間には、一定の信頼関係が必要だと思っています。そこで大事なのは、お互いスピード感をもって取り組めることかなと。なんでも「今すぐやってほしい」というわけではなくて、同じ歩幅で伴走するイメージでしょうか。その点、オーリーズさんはスピード感があり、いつも助かっています。

後藤氏:ありがとうございます。スピードは常に意識していますね。こちらの判断が1時間2時間遅れれば、池田さんの判断もどんどん後ろに倒れてしまいます。そうなれば我々にもメリットはありません。

池田:マーケティングは正解がないものなので、試行回数を増やすしかない。だからこそ回数を重ね、反応を観察していくことが重要で、スピード感や同じ目的意識を持つことが効いてくると思っています。

後藤氏:「マーケティング」という言葉に華やかなものを感じる人も多いと思うんですが、本来は地味なものなのかもしれないですね。月次、週次、日次の仮説と検証にひたむきに向き合えるかが、成果を左右しますよね。

―― 最後に、今後のお2人の目標や叶えたいことを教えてください。

後藤氏:マイナビクリエイターさんの目標は「一人でも多くの方にサービスを利用していただく」だと思いますが、我々がやるべきことはもっと手前の話なんです。地道に事実を積み上げて、出た答えをしっかりお届けすること。それが支援側の価値だと思っています。あとは池田さんに決断していただいて、最終的にユーザーに届いたらいいなと。それが私たちの叶えたいことですね。

池田:今後もオーリーズさんとは、良好なパートナーシップを築きつつ、地道に足元の課題を解決してサービスの成長に繋げていきたいと思います。そして、社内的には「マーケティングって意味があるものなんだ」と感じてもらえるよう実績を残していきたいですね。広告運用を含めたさまざまな領域の意思決定においても、マーケティングが確固とした裏付けとなり、事業に貢献しているという認識が深まれば、マーケターという職種に対する考え方も変わってくるのではないでしょうか。最終的には、マーケティングの重要性を通じて、今後のキャリアに迷うクリエイターやマーケターを目指している方に、気付きや選択肢を少しでも提供できれば嬉しいです。

―― 日々ユーザーが何気なく目にしているものは、お2人が地道に繰り返した仮説と検証のたまものなんですね。そう思うと広告1つとってもこれまでとは見方が変わってきそうです。本日はありがとうございました!

株式会社オーリーズ

Google AdsやFacebook広告などの広告運用支援と、それに付随するアクセス解析、広告効果計測ツールなどのマーケティングテクノロジーツールの導入/運用支援を行う広告代理店。広告運用を起点としながら、その枠を超えて多彩にソリューションを届ける「マーケティング・エージェンシー」を目指す。

この記事を書いた人

マイナビクリエイター編集部

マイナビクリエイター編集部は、運営元であるマイナビクリエイターのキャリアアドバイザーやアナリスト、プロモーションチームメンバーで構成されています。「人材」という視点から、Web職・ゲーム業界の未来に向けて日々奮闘中です。

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