What’s editor? 〜編集者・Webディレクターのキャリア イマとコレカラ vol.1〜 セミナーレポート

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去る2/26(火)、新宿エルタワー27階のマイナビクリエイターセミナールームにおいて、「What's editor? 〜編集者・Webディレクターのキャリア イマとコレカラ vol.1〜」と題したセミナーが開催されました。

講師としてお迎えしたのは株式会社インフォバーンのプロデューサー/クリエイティブディレクターとして活躍中の中村圭氏。紙媒体からWeb媒体の編集者へと転身し、豊富なキャリアを持つ同氏の考える「編集」とは一体どんなものなのか。「編集者」の視点の持ち方からコミュニケーションの本質に迫る考察までテンポよく語られ、参加者からの大きな反響を得ました。

講師プロフィール

中村 圭氏
株式会社インフォバーン
プロデューサー/クリエイティブディレクター

出版社での雑誌および書籍の編集業務を経て、2007年インフォバーン入社。雑誌『MYLOHAS』にてデスク業務を担当。その後、ソリューション事業部へ異動し、コスメ、ヘアケア、健康食品などを中心に、女性のライフスタイル提案を行う企業、およびブランドのブランディングサイトやオウンドメディア、プロモーション活動の支援を担当。2017年からは、女性に特化したコミュニケーションプランニングを行うチーム“WOMEN’S HEART LAB.”を立ち上げ活動中。

Women's Heart Lab. https://www.infobahn.co.jp/whl

紙媒体とWeb媒体の違い

会場に集まったのは、現役のWebディレクターやWeb編集者を含む、「編集者」という職種に興味や関心を持ち、転身・転職意欲のある人たち。中村氏のWeb編集キャリアのスタートに自分の今を重ね合わせて共感する参加者も多く、身近なところから課題の核心へと切り込んでいく中村氏のトークに会場はどんどん引き込まれていきました。

まず中村氏が触れたのは、紙媒体とWeb媒体の違いについて。たとえば雑誌の場合、読者は世界観や内容に共感し主体的に購入して読むのに対し、Web媒体は一部の有料コンテンツをのぞけば、ほぼ無料で読み飛ばされて当然という位置づけ。記事の内容に面白い、役に立つといった価値を見出さなければ読んでもらうことができません。ただその一方で、どんな記事がどれくらい読まれたかなど、読者の反応が手に取るようにわかり、それを次の企画に活かす、つまりPDCAを回せるのはWeb媒体の大きな強み。そしてそれが面白みでもあり、編集者冥利につきる編集の醍醐味なのです。

中村氏から紙媒体とWeb媒体、それぞれの特徴の違いが語られたところで、話はいよいよ「編集者とは?」「そもそも編集って?」というセミナーの核心に迫っていきました。

そもそも編集って何?編集の本質はコミュニケーションをカタチにすること

紙媒体からWeb媒体の編集者へと転身する中で、「そもそも編集とは何か」という本質的な問いを深めていった中村氏。たどり着いた答えは「編集とはコミュニケーションの設計である」ということでした。

中村氏:編集というのは、誰に、何を伝えて、どうなってもらいたいかを明確にし、それを叶えるためのストーリーテリングをすること。つまりそれは、コミュニケーションそのものをカタチにすることだと思うんです。

雑誌編集でもWeb編集でも、まず考えるのは読者のインサイト。媒体によって制作プロセスは違えど、コミュニケーションの神髄は変わらない。そんな考え方に改めて編集という仕事の役割に気づかされたのか、参加者の中には大きくうなずいている人も見受けられました。紙媒体、Web媒体という分け方ではなく、「本質的なコミュニケーション」を叶えていくのが編集。そしてそれをできるのが編集者です。では具体的に、どんなスキル、マインドが編集者には求められるのでしょうか。中村氏流の「編集者としてのスキルとマインドの磨き方」が紹介されました。

編集者に求められるスキルとマインドの磨き方

編集の意義や本質的なコミュニケーションの理解が深まったところで、中村氏から挙げられた編集者のスキルは3つ。

  • インサイトを見抜き読者のまだ見ぬ課題を見つけられる「洞察力」
  • 課題を解決するためのストーリーテリングを生み出す「発想力」
  • ストーリーをコンテンツとしてカタチにする「戦略設計力」

中でも重要なのは「洞察力」。すべてのコミュニケーションの起点はターゲットの本音をひも解くところから始まるからです。そしてその「洞察力」を支えるのが「好奇心旺盛」というマインドでしょう。日常の当たり前を疑う「Why視点」、モノや心がどのように動いたのかを考察する「How視点」を持ち、何でも面白がれるマインドを持つことは編集者にとって不可欠とのこと。

たとえば、中村氏の場合、スタッフ同士の会話の中でも「どうしてそう思ったのか?」「なんでそれを選んだのか?」「どうすれば心が動くのか?」といった視点を持って、情報をインプット・アウトプットすることを習慣化しているそう。日常的にそうすることで「洞察力」「発想力」を鍛えることができ、編集者としてのマインドも活性化するからです。

また、情報のインプットについては、必要なときアイデアとしてすぐ取り出せるように、あらかじめ情報をインプットする段階で「どういうジャンルで何のためのインプットなのか」をはっきりさせておく訓練が重要というアドバイスがありました。中村氏自身はInstagramを活用しており、メイク、インテリア、プロップスタイリングなど細かくフォローしアイデアの引き出しとしてフル活用。実際にそこからインプットした情報をもとに資料作成(アウトプット)もしているそうです。

中村氏:日常的に何でも面白がって、概念を疑ってみる。情報のインプットとアウトプットを繰り返す。そういったことが編集者のスキルとマインドを磨いていくと思います。

HOW TO EDIT!「インサイトの掴み方」から「共感されるストーリーテリング」まで

次に語られたのは、編集の基礎であり最も重要な「インサイトの掴み方」について。中村氏とそのチームメンバーが日頃から実践している編集ノウハウについてシェアされました。

中でも面白かったのは中村氏が発案した「みかん理論」。これはターゲットのインサイトは“ひと皮むかなければわからない”というところから命名されたそう。ターゲットが、どんな課題を抱えていて、どんなきっかけで興味を持って、どんな基準で購入を決意するのか。ひと皮むいて、この3つを掘り下げることで、ターゲットの正しいインサイトを掴むことができます。そして、正しいインサイトを掴むことができれば、共感されるストーリーテリングの具体的なイメージが作れるとのこと。

中村氏:「わかるわかる」「私にもできそう」といった手に届きそうな文脈、これを「手の届く幸せ文脈」と呼んでいます。この文脈を作るには、正しいインサイトを掴んでいなければいけません。「みかん理論」是非覚えて帰ってくださいね。

心を動かす、刺さるコミュニケーションを叶えるためには、インサイトをどうひも解き、ストーリーテリングをするときにはどういったことに気を付けているのか。編集やコミュニケーションをカタチにしていくときに、どんなスキルセット、マインドセットを大事にしていているかという話は、セミナー参加者のインサイトに刺さるものとなりました。

ここからは、セミナーの後半で取り上げた具体的な質問回答について、いくつかピックアップしてご紹介します。

―― 編集にマーケティング視点は必要でしょうか。

中村氏:コミュニケーション視点で本質的に編集ができている方は、もはや意識しなくてもマーケティング思考はできていると思います。そもそもマーケティングとは、「どんな課題を持った人」の「どんな課題」を「商品、ブランド」で解決していくのかを考え、市場を創出していくことです。つまりそれは、編集者に求められるスキルセットとニアリーイコールだと思います。新しい考え方をしなければいけないわけではなく、編集とマーケティングは、実は本質的な思考が変わらないのです。

―― 5G時代のメディアのあり方とは?

中村氏:時代が変わり、どんなにテクノロジーが進化しても、普遍的な人のインサイトがひも解けるか、そこに刺さるコミュニケーションができるかというのがカギだと思います。何となくテクノロジーに応じた編集を理解しているというだけでは、編集作業はすべてAIが取って代わるのではないでしょうか。そんな時代において編集者が生き残っていくために必要なのは、人の心を動かすインサイトが掴めるかどうか。変化していく環境やテクノロジーは柔軟に受け止めて活用すればいいだけです。コミュニケーションの神髄は変わりません。

―― 編集の仕事と子育てを両立することはできますか

中村氏:両立してますね。試行錯誤してきて今思うのは、編集の仕事は、働いた時間の「量」ではなく「質」で勝負できるということです。要は、限られた稼働時間で「質」を誇れる自分になればいい。そのために、インプットとアウトプットのサイクルを早め、集中力を上げていくこと。PCの前にいると情報に触れている気になれてしまうので、私の場合、外に出るとか、子どもと遊びながらとか、いつでもどこでも考察しています。子どもからアイデアをもらうこともありますしね。

続いて、インフォバーンが求める人材についても、中村氏の視点で回答していただきました。

―― インフォバーンでは、どんな人が活躍していますか?

中村氏:たとえば紙媒体の編集はこうだったとか、編集するのが仕事だからとか、職種や肩書きで業務の範囲を限定するのではなく、自分は何をしたいのかという大きな目的をもって臨めている人。つまりその目的のためなら職種の視座を柔軟に変えていける人でしょうか。目的意識をしっかり持っていれば、キャリアを考えるときも漠然としないと思います。

―― 中途採用で求める人材とは?

中村氏:CMS操作などの編集スキルというのは、場数をこなせば誰でもできるようになります。ですから、それよりももっと重要視しているのは「何が好きか」「どうして好きなのか」がしっかり語れる人かどうか。Web編集というキャリアがなかったとしても、1つのテーマを掘り下げる探求心がある人なら、エッジの効いた面白いコンテンツ設計ができるんじゃないかと期待しちゃいます。職務経歴書には書き表すことができない自分の編集視点やパフォーマンスができる人には興味がわきますね。

―― どんなキャリアパスが描けますか?

中村氏:コンテンツディレクター(Web編集)から始まり、コンテンツのプランニングができるようになるとコンテンツストラテジストというポジションがあります。そこから視座を広げ、コミュニケーション全体のプランニングができるようになれば、プロデューサー、クリエイティブディレクター、プランナーという道もひらけます。

編集部員として入ったからずっとそこに留まるかというとそうでもありません。やりたいことを提案していけば柔軟に受け止める社風でもあるので、職種という枠にとらわれることなく、さまざまなジャンルに挑戦できると思います。

―― 最後に、Web編集者を志す皆さんに、メッセージをお願いします。

中村氏:型にはまったり「これが普通」という概念を取り払って、自分はどうしたいのか、どんな表現ができるのかを自由に発想してください。そうすれば編集者でいることが楽しいし、これからの時代にも即した編集者になれるんじゃないかなと思います。

編集者とインフォバーンの求める人材に関する一問一答を終えると会場には大きな拍手が響きわたり、第一回となるこのセミナーは大盛況のうちに幕を閉じました。

セミナーを終えて

1時間半にわたるセミナーは中村氏からWeb編集者を志す参加者への熱いメッセージであふれていました。自ら1歩ずつ積み重ねてきたからこそ話せる中村氏の講義の内容に、参加者のメモを取るペンの動きも止まず、編集という仕事への高い関心と意欲が感じられました。

編集とは単なる作業ではなく「コミュニケーションを設計すること」であり、「誰かを幸せにする手段」と捉えれば、編集者のモチベーションは無限に上がり続ける。そして人の心を動かすというコミュニケーションの神髄をつかさどるのは、私たち編集者である。編集という作業がAIに取って代わられるのではないかと不安に思う編集志望者にとって、中村氏の言葉は大きな希望になったことでしょう。

今後もさまざまなテーマでセミナーを開講する予定のシリーズ。是非、次回のセミナーもお見逃しなく。

この記事を書いた人

マイナビクリエイター編集部

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