退職において在籍企業との人間関係を良好に保つ方法
退職において誰もが悩むのが、在籍していた会社を中心とした人間関係についてです。転職はステップアップなど、ポジティブな理由ばかりとは限りません。現状の不満が原因で転職を考えている場合なら、「もう今の会社の人間関係などどうでもいい」と考えてしまう人も中にはいるでしょう。しかしあなたがこれまで築いてきた人間関係は、今後の人生においても、かけがえのないあなた自身の財産でもあります。転職を期にそれらを諦めてしまうのではなく、むしろ活用する方向へもっていけることのほうが理想です。
人間関係を良好にする方法はやはり、相手の立場に立って考え、相手の思いにどんなふうに寄り添っていくかが重要です。あなたの退職を快く受け入れてもらうために、努力を惜しまないことがあなたの将来にわたっての強固な人間関係につながるのです。ここではそんな退職における人間関係の保ち方を様々なシチュエーションに合わせてまとめてみました。
目次
退職時に人間関係を維持する理由とは?
その職場をどんな状況で離れるのか。退職する会社との関係性は人によって全く異なっているはずです。しかしあなたに退職の意志がある場合、会社の対応はあくまで2つに1つ。あなたの退職を認め協力するか、拒み慰留するかのいずれかです。
まずあなたが退職をおこなうためには、あなたに関わる会社の人々との人間関係を維持し、協力を求めていくほうが、退職前から訣別してしまうよりもはるかにスムーズにいくことはいうまでもありません。そして退職後、また新たな仕事に就いた後でも、前職で築いた人間関係はあなたの予想を超えて有用なはずです。特にWeb業界、ゲーム業界などのクリエイターが活躍する業界は、ビジネスの中で生まれた人間関係を有効に機能させることでプロジェクトを成功へと導く可能性をアップさせることができます。必要な時に必要なスキルや経験を持った人物にアプローチできる力は、あなたのキャリアにとって重要な部分を占めているのです。
また仕事に対するミスマッチや何らかのトラブルにより会社との関係性が破綻して、やむを得ず退職するという人もいます。しかしそんな場合であっても退職時の人間関係は特に留意しておく必要があります。人は感情で行動する生き物です。もしあなたが在職する会社の人間関係をないがしろにして退職したとすると、あなたの転職に思わぬところで支障を生む可能性もゼロではありません。そこはむしろ、退職によって社内の人々と関係性が変わることに着目し、それをチャンスにして既存の人間関係を解消するのではなく、改善していくことを目標にしていきましょう。それまでの環境では上手くいかなかった人間関係が、新たな状況では修復される場合もあることを心得ておきましょう。
転職を目の前にするとそこに新たな道が拓けて、それまでの人間関係の価値が小さく見えてしまいがちです。しかし今のあなたがあるのは、それまで在職した会社や人間関係がなければありえません。退職後の会社との関係性を保っているという事実は、その人物の人間性について客観的な評価を大きく上げるポイントでもあります。メリット、デメリットだけでなく、あなたの人生をより豊かにする方法として人間関係の維持を図っていきましょう。
退職における人間関係を良好に保つ6つのパターン
退職に伴う人間関係を考える場合、通常の人間関係とは違いビジネスに関する視点を欠かすことはできません。相手の個性に配慮するだけでなく、社内でのポジションやあなたとの関係性に留意していきましょう。ここでは相手の考え方や立場を6つのパターンに分け、傾向と対策を考えていきます。
経営者との人間関係の傾向と対策
傾向
あなたの退職に際して経営者が最も気にするのは第一にビジネスへの支障、第二に社内のモチベーションの低下につながるかということです。退職者が出るということはどちらにおいてもなかなかプラスにはつながりません。あなたの将来性に期待する部分や、スキルやポジションが高ければ高いほど、慰留は強くなると考えなければなりません。経営者とあなた自身との関係性はその会社の規模や、入社時の状況に応じて大きく違うはずですが、経営者との関係性が密接な場合はより強い慰留に合う可能性も覚悟しなければなりません。
また、会社経営者は業界におけるネットワークも大きく、あなたの転職に影響を与える可能性が最も高い相手でもあります。あなたが同じ業界で今後も活躍していくなら、転職後、関係性を維持するメリットも大きいでしょう
対策
退職の意思表示をおこなう際、あなたはまず一番に、引き継ぎによってビジネスの進行に極力支障を来さないようにすること、社内のモチベーションを下げないようにメンバーとコミュニケーションを取っていくことを表明していきましょう。また、これまでその会社で働く機会を与えられてきたことに対して明瞭に感謝の意を表し、不満やトラブルによる退職ではないことをアピールして経営者の立場に配慮した対応を心がけましょう。
また、これは社内の人全員にいえることですが、転職先が決まっている場合でも無事に転職が完了するまで尋ねられても転職先の情報を明かすのは避けましょう。あくまで退職後に転職活動をおこなう予定とするのが無難です。「不満がないのなら勤務を継続して欲しい」「転職先が決まるまで働けば?」というような慰留を受ける場合も当然考えられます。そんな時は不満ではなく次のステップに進むためのポジティブな転職であること、会社での勤務に真剣に取り組んでいるからこそ転職活動を併行することができないという考えを丁寧に伝え、経営者の理解を得ていきます。
上司・先輩との人間関係の傾向と対策
傾向
あなたの直属の上司、あるいは指導する立場にある先輩社員などは、あなたの退職に対して、社内的な責任が生じることがあります。それは上司や先輩にとって少なくないダメージとなります。そしてそれはあなたの好むと好まざるとに関わらず決して避けられないものでもあります。あなたはそんな形で迷惑をかけることになってしまう上司・先輩に対してできるだけの配慮をおこなう必要があります。そんな配慮をしないばかりに、退職によって仕事上の支障だけでなく、感情的なもつれによってトラブルとなるのも、上司・先輩との間に起こることが多いです。
対策
退職後の会社のビジネスの進行に支障を来さないようにすること、部署、メンバーのモチベーションを損なわないようにすることは、経営者と同じです。さらにあなたは、よりスムーズな引き継ぎをおこなうために、現状の細かな報告と引き継ぎ方法や対応策の積極的な提案をおこなっていきましょう。具体的な方針が出てくれば、上司・先輩の思考も、あなたの退職に向けてのフローと退職後の体制に向かい、協力が得やすいはずです。
管理職、先輩として、あなたの退職に対して冷静に対処すべきなのが彼らの役割ですが、進行中の業務の中であなたの退職に対応するのは決して簡単なことではありません。管理職といえども動揺したり、パニックを起こすこともあります。そんな時こそあなたは相手の立場に配慮し、退職に際して協力関係を結んでもらえるよう説得していく必要があるのです。
同期・同僚との人間関係の傾向と対策
傾向
もしあなたより先に同期・同僚が退職すると聞いたら、あなた自身も働くモチベーションに何らかの影響を受けるのではないでしょうか。個人のスキルや実績も評価に大きく影響するクリエイター職種においては、ライバル関係ともなる同期・同僚の動向は気になるところです。
社内であなたの退職が認められる前に同期・同僚に退職を告げてしまうと、「自分も転職活動中だったので退職したい」などということになり、同時に2名が退職を希望する事態となって、会社から退職が認められないという事態も起こりえます。
対策
退職の意思表明はまず第一に直属の上司におこない、上司が経営陣に報告して初めて具体化します。同期・同僚への退職の表明は個人的におこなうのは避け、上司からや社内通達に任せるのが基本です。あなたがどうしても個人的に社内通達より先に退職を表明したい場合は、同期・同僚が先走りした行動をしたり、仕事へのモチベーションを落としたりしないように十分な注意が必要です。
同期・同僚はそのスキルや経験の度合いによって、あなたの退職によってできた穴を埋めるポジションになる可能性も高くなります。つまり、あなたの退職後その人物の仕事に大きな影響を与えることも考えられます。あなたの希望と同僚・同期の希望が合致すれば、強力な味方となる可能性もあります。それだけに同期・同僚への退職の表明はセンシティブに行っていかなければなりません。相手のスキルや経験をよく知る同期・同僚は、転職後のビジネスパートナーとなる可能性も高いです。
部下・後輩との人間関係の傾向と対策
傾向
あなたが退職に際して本当に心配なのは部下・後輩に関してかも知れません。あなたの退職によって、間違いなく直接的な影響を受けるメンバーだからです。だからこそ管理職以上の人が退職を思いとどまる理由として、「部下・後輩のことが心配」と上げるのもうなずけます。人材の流動性が高まった現在においても、部下・後輩の成育に最後まで責任を持ちたいと考えるのが一般的な日本人の仕事に対する考え方です。
たしかに部下・後輩にとって直属の上司や先輩に退職されることは大きな不安を呼びます。モチベーションの低下につながることもあるでしょう。しかし、それも個人の資質のよる部分も大きく、あなたの退職を上のポジションへチャレンジするチャンスとポジティブに捉える人もいるでしょう。あなたは部下や後輩が、自分の退職によっていかにスキルアップ、ポジションアップにつなげられるかを指し示していくことが求められます。
対策
退職の表明をタイミング含め、センシティブにおこなうのは同期・同僚と同じです。但し退職を伝えたあとの引き継ぎ期間のフォローアップは、部下・後輩に主眼をおいておこなっていきましょう。退職までの短い期間でいかに部下・後輩のスキルアップに貢献できるかが、あなたの退職後のその会社が順調にビジネスを進めていけるかどうかのカギになります。部下の評価が上がればあなた自身の評価も上がり、その会社との関係性を維持するにも大いに役立ちます。
ビジネスにおける人的ネットワークという意味では、部下・後輩との人間関係は、経営者や上司と比べると重要でないように感じるかもしれません。しかし、ビジネスは未来に向かって変化していくものです。もしあなたが部下・後輩との人間関係を将来にわたってつなぐことができれば、その成長によってどんな結果をもたらすかは予想できません。あなたの親派を社内に残すという意味でも、退職までのフォローアップを万全におこなっていきましょう。
取引先との人間関係の傾向と対策
傾向
クライアント、協力会社、外注先など、あなたが仕事上で直接関わる取引先がある場合、退職に関しては上司とよく相談した上、合意したタイミングで知らせましょう。退職日の前週や前日など、時間をおかない場合も多いです。社外に対する退職者の報告は、会社にとってギリギリまでできるだけ明かしたくないというのが本音です。担当者が変わることによって受注が減ったり、会社同士の関係性が変わることを避けるためです。しかしクリエイター職の中でもクライアント先など対外的な動きが多い人には後任の紹介なども必要な場合もあるはず。社内で十分な情報共有をおこない、スムーズな担当の交替をおこなえるようにしていきましょう。
対策
付き合いが長く、関係性が深くなった取引先は、あなたの退職に際して転職先などを尋ねられる場合もあるでしょう。しかし取引先にも転職先の情報をあかしてはいけません。特に、転職先が在職中の会社のビジネス上の競合にあたる場合は、転職後であっても在職中の人間関係を利用したアプローチは慎むことが社会通念上のルールです。
とは言え、取引先担当者との人間関係が個人的なレベルまで及んでいた場合、転職を隠し続けることもできない場合もあるでしょう。在職していた会社へのダメージやデメリットとならないかを十分に考慮し、社会的に非難されることのないかたちであれば人間関係を維持できる場合もあります。前職で関わった取引先と転職先で新たなビジネス関係を持つことは、基本的にはNGで、可能な場合でも相当慎重な判断が求められると考えましょう。
家族との人間関係の傾向と対策
傾向
退職、転職をおこなう際に真っ先に理解を得なければならないのが配偶者や両親といったあなたの家族です。勤務時間や住む場所、得られる収入などが大きく変わるなら、家族全員に退職と転職について理解を求めておく必要があります。
退職に際して、「家族に心配をかけたくない」「決まってから報告したい」などの理由で家族に告げずに退職したり、転職活動をおこなったりする人が多いのも実情です。しかし、あなたのことを一番よく知っているのはあなたの家族でもあります。あなたの希望と現実を比較し、忌憚のない意見を言ってくれるのは家族の他はありません。あなたの転職の失敗を心配して退職に対してネガティブな意見が出てくる場合もあるでしょう。しかしそれに対して十分な説明をおこない理解を得ることが、あなたの転職を成功する第一段階でもあるのです。手を抜かずあなたにとって最も重要な人間関係を保持していきましょう。
対策
あなたの転職のプランをできるだけ明かし、家族を最も身近な転職の協力者にするのがベストです。あなたが隠し立てしたり、すべて自分だけの判断で転職しようとしているように見えたなら、あなたの家族はあなた以上の不安を感じてしまうことを覚えておきましょう。
退職・転職しようとしていることを明かせば、家族からは反対を受ける可能性もあります。しかしそれはあなた自身と家族全体への思いのために他なりません。あなたの転職への決意があなた自身のためばかりでなく、家族のこともしっかり念頭においたものであることを示し、現在ばかりでなく将来にわたって意義があることを伝えましょう。
家族から退職・転職への理解を得ることは会社関係者の理解を得るより難しいかもしれません。しかし、家族との人間関係こそが、退職や転職によって損なうことのできない最も重要な人間関係でもあります。もし理解が得られない場合は、転職活動の開始と併行して時間をかけて説得に当たりましょう。
会社関係者と人間関係を継続するための3つのポイント
退職時に会社関係者や取引先の人々と人間関係を維持していくのは大変困難なことに思えます。職場の人間関係が良好だったなら、あなたの退職はそれにひびを入れてしまう可能性があり、あまり良い人間関係でなければ更なる状況の悪化を招く可能性もあります。あなたの退職へのストレスは会社関係者との人間関係が原因しています。あなたが取るべき道はただうわべだけの人間関係を維持するのではなく、あなたの退職によって会社関係者との新たな人間関係を構築することにあります。
あなたと会社関係者との関係性は雇用者と労働者、上司と部下といったそれまでの立場から離れたものになるのです。そして退職という行動の主体はあなたです。それまでの発想を転換し、新たな人間関係をつくり出すために動かねばならないのはあなた自身です。これまでの人間関係を壊すことなく、さらに良い人間関係をつくり出せれば、あなたの仕事人生は更に充実したものになります。
経営者・上司に対して
- これまでの感謝を示し、退職後も関係を継続していきたいことを意思表示
- 会社を離れても互いにビジネスの協力者となっていくことを提案していく
同僚・部下に対して
- 退職の際にかける負担に対して率直に感謝の気持ちを告げる
- 転職成功後の再会を提案し、将来的な協力関係を築けるようにする
取引先に対して
- 転職先が在職する会社の競合となる場合は関係性を持続するのは基本NG
- ビジネスを離れた個人的な人間関係があれば、新たな関係性構築の可能性も
まとめ
この記事では、会社関係者から取引先、家族にいたるまで退職を機に変化する人間関係について紹介してきました。転職活動をおこなう場合、転職者の意識はどうしても応募した会社や、転職先にいきがちで、それまで在職してきた会社へのフォローが不十分になってしまう場合があります。そのことによって自分と退職する会社の双方に大きな負担がかかり、人間関係も損なうことになってしまう例が多く見受けられます。
これらのトラブルを起こさないために大切なのは、退職する企業の人々に対してどれだけ丁寧な対応ができるか、敬意を払って行動できるかということです。転職活動の時期はそれだけで大きな負担ですが、退職する企業の人々に協力を得られるようにするには、あなた自身がポジティブに新たな人間関係を構築していくことが良い方法です。そして転職・退職時には家族の理解を得て、最も大切な人間関係を保持していくことも忘れてはいけません。
転職先においてや、長い将来にわたっても、あなたの退職時の姿勢は必ず評価されていきます。将来につながる人間関係を常に構築し、持続していくことが、あなたの仕事人生における大きな財産となるのです。