採用担当者に納得してもらうための退職理由の伝え方
多くの転職者が応募の際に自分自身を表現する上で一番難しいと考えているのが、前職における退職理由の伝え方です。企業が組織としてシステマティックに動いていくとしても、それを構成しているのはすべて人間であり、応募する側も人間であるならば、採用を行う側も人間です。そう考えれば考えるほど、どんなふうに自分の退職理由を伝えればいいのか、人は迷ってしまうものです。
転職活動で失敗しない為には、この退職理由の表明について十分に考えておく必要があります。あなたの退職理由をいくつかのタイプに分けて分析し、それぞれの表明方法を考えていきましょう。
目次
あなたに合致した退職理由と、表明における改善ポイントとは
自分の退職理由をどう表明するかを考える前に、まずは退職する人がどんな理由で退職しているかを見ていきましょう。あなたにとって他の退職者の理由は納得できるものでしょうか?是非あなた自身の退職理由の客観視にも役立ててください。
様々なタイプ別の退職理由を紹介
退職理由はもちろん人それぞれです。その人の個性や会社の状況、周囲の人間関係など、一人として同じ人は存在しないでしょう。しかし採用を行う人にとって、一人ひとりの事情をすべて汲んで採用を行うのは不可能なことです。
ここでは、以下のYes、No形式の質問群に答えてあなたに一番近いタイプを見つけてみてください。あなたの退職理由に対応した答えを導き出すために、AからEの5つのタイプを想定していきます。
ライフステージ変化による退職理由
結婚・出産などで家族構成が変わった | Yes | No |
親の介護が必要になった | Yes | No |
現職(あるいは前職)の転勤命令に対応できない | Yes | No |
家庭の事情で転居をせざるを得なくなった | Yes | No |
待遇改善希望による退職理由
給与に不満があった | Yes | No |
勤務時間・拘束時間が長い、残業が多い | Yes | No |
休みが取れない | Yes | No |
実力に見合ったポジション、権限が与えられない | Yes | No |
キャリアアップによる退職理由
新たなスキルを身に付けたい | Yes | No |
ステップアップするポジションがない | Yes | No |
他にやりたい仕事がある | Yes | No |
現職(前職)では一通りの仕事を経験できたと感じている | Yes | No |
人間関係による退職理由
上司との関係に悩んでいる | Yes | No |
会社での人間関係が上手くいっていない | Yes | No |
取引先との関係で悩んでいる | Yes | No |
新しい人間関係で仕事をしたいと考えている | Yes | No |
個人的理由または特定不能な退職理由
前職への明確な不満はない | Yes | No |
応募企業への魅力が転職理由 | Yes | No |
個人的な問題で退職した | Yes | No |
病気・ケガの療養などで前職を一旦退職した | Yes | No |
自分の退職理由がA〜Eまでのいずれかのタイプに入っている場合、いくつかのタイプに重複して現れる場合もあるはずです。もしどれにも当てはまらない場合は、近いタイプを選んでそのタイプへの解説やアドバイスを参考にしてください。重複する場合に限らず、他のタイプへのアドバイスもきっと参考になるはずです。
採用担当者の立場で考える5つのタイプ別解説とアドバイス
前項の質問から、あなたの退職理由のタイプが一つ、あるいは複数選択されたはずです。それぞれのタイプに対して「採用担当者はどう思うか?」を重点として解説&アドバイスを行っていきます。
企業は多彩な人材を受け入れることによって成立しています。多くの中途採用の現場を見ていると、実は応募者が退職理由としてネガティブに考える部分と企業側、採用担当者側が神経質になる部分は微妙にずれていたりします。「もし自分が採用を任される担当者だったとしたら」この言葉をどう捉えるかをシミュレーションしながら考えてみましょう。
ライフステージ変化による退職理由の解説とアドバイス
退職理由の解説
長い人生を歩んでいると、人は思いもよらない分かれ道に立たされる時があります。ライフステージの変化はそういった人生の岐路に立った場合、あなたがどんな判断を下すかを問われるシーンでもあります。結婚、出産、子どもの進学、配偶者の転勤、親の介護など、ライフステージの変化に対応するために退職するということはどんな人にも起こりうるのです。
採用担当者としてのアドバイス
ライフステージの変化による退職は、家族との関係性やその人の負う責任と密接に関連していて、その人の考え方や裁量だけで決められるものではありません。事情を明確にできれば、採用担当者によって退職理由を理解しやすく、人物評価に与える影響は少ないといえます。つまり採用において次の段階へ上げやすい人物だと判断することができるのです。
しかしそれだけに他の理由で退職を行う人でも、当たり障りのない理由としてライフステージの変化を上げる人は多く、不明瞭な説明ではかえって他の理由を疑われてしまう場合もあります。応募書類でプライベートにどこまで触れるかというのは難しい問題ですが、あなたの状況を書類で伝え、詳細を面接で表明するのが一番良い方法といえるでしょう。書類上では、「親の介護のため」、「配偶者の転勤のため」などできればひと言でわかりやすく伝え、面接の前に事前に知っておいて欲しいところまでを書いておくと、面接でこちらからも問いかけやすくなります。
待遇改善希望による退職理由の解説とアドバイス
退職理由の解説
社会人として仕事をしている以上、待遇に関して要望があるのは当然です。ライフワークバランスの考え方が広まり、社会全体で労働環境の改善を目指す方向にはありますが、それぞれの企業の状況は必ずしも足並みが揃っているとはいえない状況です。あなた自身が現職や前職に対して給与や勤務時間、休日休暇などの待遇面で不満があり、転職を考えるのはごく自然な流れといえるでしょう。
しかし難しいのは、これを転職の際に表明しなければならないということです。割合として転職理由でも上位を占める理由でありながら、表明のしかたが難しいのがこのタイプです。
採用担当者としてのアドバイス
転職の理由を表明していただく際、ほとんどのタイプで事実をストレートに語っていただくのが採用担当者側としても対処がしやすいです。しかし対応に苦慮してしまうのが、在職企業や前職への待遇に関する激しい不満を打ち明けられた場合です。例えばその人の経験年数や能力から考えて、給与が非常に低かったとします。あるいは、残業が多く休みがほとんど取れない状態が続く実情を知らされたとします。
しかし私たちは応募者の方の話を聞くことはできますが、その人の在職や前職の企業に状況を確認することはできません。どちらか一方の話だけで判断できないのです。待遇への不満というよりは「転職してどんな環境を得たいか」に着目して表明してもらえば、私たちも察して面接で尋ねることもできます。退職する決心にはもちろん感情的な部分もあったかも知れませんが、転職の際にはその要素をポジティブな未来志向に変えて表明していくのが良いでしょう。
キャリアアップによる退職理由の解説とアドバイス
退職理由の解説
キャリアアップを考えての転職は今や一般的なものとなりました。以前から人材の流動性の高いクリエイティブ業界では、かなり頻繁に行われている転職だといえるでしょう。しかし仕事において個人の可能性を追求していくことは重要ではありますが、企業とは人と人との調和によって初めて成立するものでもあります。個人主義を振りかざすことにならないように退職理由の表明は慎重に行っていきましょう。
採用担当者としてのアドバイス
キャリアアップを理由に退職された場合は、次の職場でどのようなポジションを得てどんな仕事をしていきたいか、明確なビジョンを語っていただきたいと思います。
採用担当者からみると、自社の募集内容とかなりの一致を見ないと、その人のキャリアアップの方向性、計画性自体が怪しく感じられるのです。タイプ Aのライフステージの変化のための退職と同様に、当たり障りのない退職理由として上げられやすいので、「何か他の理由があるのでは?」と、こちらが勘ぐってしまう場合もあります。現職や前職ですべて上手くいっているのに、「キャリアアップのための退職です」といわれてしまうと、そもそも一つの企業に長く勤めるつもりがない人とも取られる可能性があります。
人間関係による退職理由の解説とアドバイス
退職理由の解説
会社も人と人とのつながりで成り立っている以上人間関係の問題は重要です。あなたが伸び伸びと働く上でどうしても支障が出てしまうようなら、退職という形で解決することも決してネガティブな選択ではありません。
しかしタイプCと同様、自分を正当化するためには相手の悪い部分をいわざるを得ないのがこのタイプでもあります。相性が悪い、気が合わないといった理由の場合は特に触れる必要はありません。パワハラの被害があったなど、伏せることのできない事情がある場合のみ応募書類で触れ、詳細は面接で話しましょう。
採用担当者としてのアドバイス
応募の際、退職理由に前職や在職企業の人間関係を上げる人は少数派です。もしその表明を受けたとしても、採用する企業によって対応はまちまちでしょう。パワハラやセクハラなど人間関係に起因する問題に積極的に取り組む企業も増えていますが、応募者への対応という意味で具体的な方策はまだ少ないのが現状でしょう。私たちが注意して拝見しているのはあなた自身の人間性の部分です。あなたが当社で良好な人間関係を築けるかは採用における最重要部分でもあります。その意味で、退職理由が人間関係であってもなくても我々はあなたの人となりに注目しています。
個人的理由または特定不能な退職理由の解説とアドバイス
退職理由の解説
タイプA〜Dまでのどれにも一致しない病気やケガなど健康上の理由や、前職に不満はなく応募する企業に魅力を感じての退職、また自分でも理由を特定できずに「なんとなく」退職してしまったという人も中にはいます。これらの退職理由の表明では、採用担当者を納得させる理由が必要です。
採用担当者としてのアドバイス
退職した理由が不明瞭な場合、面接などでその理由を確かめる場合があります。応募する企業に魅力を感じて転職を考えた場合は、書類上でも面接でもその理由をしっかりと語っていただければ大丈夫です。しかしこれといった理由無く退職されている場合は、当社でもそれが繰り返されてしまうのでは?と、採用に対する疑問点として残るのは間違いありません。自分自身の気持ちをよく整理して、転職につながる退職理由を表明してください。
健康上の理由で退職されている場合、表明いただけるものなら、病気やケガの種類、療養期間、退職までの経緯を応募書類に記入いただくと大変助かります。もし個人情報の観点でセンシティブな内容になる場合は会社側の受け入れ体制も重要となりますので、面接でお話しいただければと思います。
応募書類別の退職理由の表明方法とは?
応募書類での退職理由は、履歴書の場合どんな理由であっても「都合により退職」または「一身上の都合により退職」とするのが一般的とされています。一方で職務経歴書の場合は、もう少し文もボリュームを持って退職理由を表すことが可能です。応募書類にどこまで踏み込んで退職理由を表明していくかを、タイプ別に具体例を用いて紹介していきます。
ライフステージ変化が理由の応募書類上での表明のしかた
履歴書での表明例
職務経歴書での表明例
例1「この仕事への熱意はありましたが、父の介護の必要性からやむを得ず地元に戻るために退職しました。」
例2「プロジェクトもクライアントの好評を得て終了し、会社から次期プロジェクトにも強く参加を望まれていたのですが、夫の転勤が決まり家族での生活を優先して退職しました。」
例3「海外への転勤命令が下っていたのですが、妻が出産まであとわずかとなっていたので、苦慮致しましたが、退職を選択しました。」
など
アドバイス
ライフステージの変化による退職の場合、その時の仕事に意欲があったか、労働環境に不満が無かったかなどが気になるところです。上記の例のように職務経歴書でもわかりやすく触れてください。
待遇改善希望が理由の応募書類上での表明のしかた
履歴書での表明例
職務経歴書での良くない表明例
例1「プロジェクトを複数、並行して担当していたことから業務過多となり、残業と休日出勤を余儀なくされる状況でした。会社に改善を求めましたが口約束に留まり改善されることはありませんでした。」
例2「仕事量に対して給与が少ないと感じて退職しました。」
例3「入社から7年間勤務していましたが、待遇、ポジションは変わらないままだったので将来性を感じることができませんでした。」
など
アドバイス
前職でのネガディブ要素を前提とした理由が中心となるため、伝え方の難しいタイプと言えます。上記例は、ストレートで一見状況がわかりやすいですが、事実であっても前職を非難するかたちは避けるべきなので、良くない表明例としています。「将来性を感じられない」ではなく「ポジションアップを目指して退職しました」と書いていただくなど、採用側としても受け入れやすいような表現にすると良いでしょう。
キャリアアップが理由の応募書類上での表明のしかた
履歴書での表明例
職務経歴書での表明例
例1「上記のプロジェクトを経験したことで、もっと広い視野を持てる仕事がしたいと考えディレクターへのキャリアアップを目指して退職しました。」
例2「6年間広告代理店で勤務してきましたが、これまでのデザイナーとしての経験を活かし、よりクリエイティブに没頭したいと考え、制作プロダクションへの転職を目指して退職しました。」
例3「前職では企業規模からポジションアップが望めない状況でした。実力次第で年齢にかかわらず重要ポジションへの抜擢もある貴社の社風に憧れて応募しました。」
など
アドバイス
職務経歴の中や自己PRでキャリアアップに関する退職理由を入れる場合、職種や業種、前職でキャリアアップが望めない理由など、あなたの転職へのビジョンを明確に伝えていただく必要があります。環境が変わると変化するものもあるのは確かですが、キャリアアップをいいながら行き当たりばったりだと、採用側は計画性のない人と判断してしまいます。
人間関係が理由の応募書類上での表明のしかた
履歴書での表明例
職務経歴書での表明例
例1「前職でも仕事のやりがいは感じていたのですが、直属の上司と温度感や思考にズレがあり、仕事上のトラブルの原因となりかねない場面があったので、同じ温度感や思考で仕事ができる会社で働く方が自身のポテンシャルを活かせると思い退職を選びました。」
例2「プロジェクト中に起こったトラブルからチーム全体の人間関係が上手くいかなくなってしまいました。プロジェクト完了には至りましたが、心機一転新たな環境で仕事をしたいと考え、退職することにしました。」
例3「上司からパワハラを受けており、そのことを人事にも相談しましたが解決に至らず退職を余儀なくされました。人の和を重んじる社風と社内に対策部署を置かれている貴社にハラスメントに対する高い意識を感じたのが応募しようと決意したきっかけです。」
アドバイス
前職での人間関係の問題を応募書類で簡単に触れるのはとても難しいことだと思います。前職と応募する企業の関係性などから、表明せざるを得ない場合だけ応募書類で触れましょう。上記の例は事実に対して正確にコメントされたものばかりですが、それでも採用に対してプラスに働くわけではありません。例1のようにトラブルの内容を具体的に書きすぎず、面接で質問しやすいようにするのが一番です。採用担当者を味方にできるよう面接でしっかりと質問に答えていきましょう。
個人的理由または特定不能な理由の応募書類上での表明のしかた
履歴書での表明例
一身上の都合により退職
健康上の理由により退職
職務経歴書での表明例
例1「交通事故に遭い、腰の骨を骨折して約1年間の休業を余儀なくされました。前職ではプロジェクトの佳境に入っており、会社に迷惑をかけられないと考えて退職を決断しました。現在は療養の甲斐あって完治しており業務に支障ありません。また、休業中に〇〇の資格をオンラインで取得したので、活用していきたいと思います。」
例2「業務多忙や人間関係の悩みからうつを発症。3ヵ月間休業しましたが快復せず退職しました。心療内科での治療を受け、現在は業務を行えるようになりました。また、自分のキャパシティを知ることができたので、今後はセルフケアにもしっかり取り組もうと思います。」
例3「前職に特に不満はありませんでしたが、昔から〇〇に関心があり、その分野で自身の可能性を試したいと思い退職しました。これまで〇〇について培った知識を活かして、貢献していきたいです。」
アドバイス
健康上の理由による退職も様々で、採用担当者が注目しているのは、今後継続的にその会社で業務が可能かということです。病気やケガで退職している場合は、完治していればその旨まで含めて経過をできるだけ詳細に応募書類にも書いていただくとわかりやすいです。
また療養中の場合は完治までの期間や、もしその間業務において支障が起こる場合は知らせていただくと判断しやすいです。うつなどの心の問題は、やはりセンシティブな内容となりますので、応募書類では触れず、面接で表明していただければこちらでも対応を検討していくことになります。また、退職理由に具体性を欠く場合も採用担当者は判断に困り、決してプラスとは取れません。あなたにとって退職と転職が必要だった理由をよく自分を掘り下げて表明してください。
応募書類から面接に繋げる退職理由の表明方法
様々な退職理由の分析ができたら次は実際の表明方法に入っていきましょう。退職理由は応募書類で触れ、面接で詳細を語るのがベストな方法です。しかし応募書類では誤解され、面接の対象に上れない可能性も出てきます。また一方で面接時に突然問題の多い退職理由を述べられても採用側が困惑する場合もあります。特に退職理由を表明しないというのも一つの方法です。あなたの状況に応じて慎重に方針を決めて転職に臨んでください。ここでは面接での退職理由の表明方法と、クリエイターが退職理由を表明した場合の具体例を示していきます。
応募書類での退職理由を面接にどう繋げていくか
面接において企業側から前職の退職理由を聞かれる可能性はかなり高いです。特に一次面接では、検討をするまでもなく既に採否が決まるような何かがあった場合などを除いてほとんどの場合聞かれるはずです。むしろ採用担当者から見ればあなたを採用対象として評価するためには絶対必要な質問で、この質問が投げかけられる時は、採用に前向きであるという一つのシグナルといえるでしょう。基本的は以下のように面接官から質問されるのが一般的です。
面接官の質問例 | 「前職の退職理由について教えてください。」 「職務経歴書の退職理由をもう少し詳しく教えてください。」 |
このような形で質問を投げかけられた場合の退職理由の表明は、応募書類と面接で全体を語るか、面接で語るかのいずれかです。どんな形でどんな理由を表明するかは自身でしっかり用意しておくのが転職活動においてマストです。
退職理由を問われないという可能性は低いですが、採用担当者の関心があなたのパーソナリティーの別の部分に集中した場合など、まれに退職理由を聞かれないまま面接が進む場合もあります。退職理由は基本的に減点法ですので、そんな場合は臨機応変に対応し、無理に自分から退職理由を語る必要はありません。退職理由に「問題ナシ」となってもあなたのプラスの評価につながることは少ないのです。
なお、別記事で紹介しています、「転職の面接で退職理由をポジティブに伝える方法」では、退職理由の面接でのポジティブな表明方法が具体的に述べられています。面接対策ではこちらも参考にしてみてください。
Web・ゲーム業界ならではの特殊性を考えておこう
Web・ゲーム業界ではキャリアアップのため、待遇アップのための転職は日常的に行われており、採用担当者の退職理由への関心は他業界よりさらに低くなっています。しかしそれは、ライフステージの変化やキャリアアップなどの退職理由を採用する企業が、問題視しない場合に限られます。退職理由の表明にいて実際にクリエイターと転職先企業との間で行われたやりとりをいくつか見ていきましょう。
ゲームディレクターA氏の場合
「ゲーム業界は退職理由を重視しない?」
ゲームディレクターのAさんはプロジェクトの進行中に人間関係のトラブルから退職を決意。別のゲームメーカーの募集に応募しました。特に尋ねられなかったので退職理由を表明せずに採用プロセスをクリアしていきましたが、最終面接でその会社の役員が前職の会社出身であったことが分かり、退職理由が前職の会社から漏れて内定に至りませんでした。 採用担当者の意見 採用の当初に退職理由が分かっていて、本人から事情を予め聞けていれば結果は違っていた可能性があります。ゲーム業界では退職理由を問題視しない分、一旦問題化してしまうと採用を難しくしてしまう傾向があります。 |
WebディレクターB氏の場合
「なんでもキャリアアップ一言で理解が得られるわけではない?」
Web制作プロダクションから事業会社のコンテンツマーケティング部門への転職を希望したWebディレクターのBさん。退職理由を「キャリアアップ」と表明していたが、働くスタイルが変わる同社でどんなキャリアアップをするつもりかを十分に表明できずに2次面接で不採用に。 採用担当者の意見 クリエイターのキャリアアップには具体的な志向性が不可欠です。特に手を動かすクリエイティブからディレクション、マネジメントの方向に進みたいのか、専門スキルを極めたいのかはしっかりとした意思表示が必要です。年齢や経験を重ねることで、より大量生産をするよりももっと落ち着いてクリエイティブに取り組みたいという声はよくあります。それを採用担当者に伝えると同時にその思いを実現できる環境かどうかを応募者の目からもしっかり判断してください。 |
WebデザイナーC氏の場合
「前職がブラック企業だといっても問題ない?」
残業代が支払われない、月に4日の休日が確保できないなど、問題のある企業に勤めていたWebデザイナーのCさん。応募書類と面接で聞かれるままに「前職がいかにブラックであったか」をつい感情的に語ってしまい、採用担当者から同情は受けながらも、二次面接に進むことができませんでした。 採用担当者の意見 応募書類や面接で企業が注目したいのはその人のスキルや経験、そして人間性です。前職の労働環境が悪かったこと自体が主題になってしまうと、限られた時間の中であなたの魅力を十分にアピールする事ができなくなっていまいます。不十分な労働環境にあってもあなたがどんな努力をおこなったか、解決に至らなくとも、前職の企業のブラックさではなくあなた自身が主役となるようコメントしてください。 |
まとめ
この記事では中途採用の現場で実際に応募者に対応している採用担当者の声を集めてみました。さまざまなシチュエーションにおける物事の判断のしかた、応募者と採用担当者との目線の違いを感じていただけたと思います。
実際の退職理由の大半はネガティブなものです。しかし実際の応募書類や面接では、それをライフステージの変化やキャリアアップといったポジティブなものとして表明される場合がほとんどです。採用担当者はまずその背景に何か別の理由があるのではと考え、その確認を面接で行っています。しかし、そこで大事なのは退職理由がネガティブなものかどうかではなく、今後のあなたが企業で働く人材としてどう行動していくかを予想できることです。どうしてもネガティブな印象を与えてしまう状況なら退職理由を表明しないのも一つの方法です。しかしそのことであなたが採用担当者にとって「よくわからない人」になってしまわないよう応募書類から面接まで、自分の一つ一つの言葉や行動に注意して転職活動に臨みましょう。