3/15(金)地方というワークスペースの魅力とは ゲームのしごと いまを知る、これからを語る イベントレポート

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去る3/15(金)、新宿エルタワー27階のマイナビクリエイターセミナールームにおいて、「地方というワークスペースの魅力とは ゲームのしごと いまを知る、これからを語る」と題したトークセッション&座談会が開催されました。

パネラーとしてお迎えしたのはKLab株式会社 KLabGames事業本部 プロデューサー 北牧涼輔氏と、株式会社オルトプラス高知 代表取締役 石川哲大氏。それぞれ岡山県と高知県でソーシャルゲームの開発・運営を行う事業所、企業を率いるキーパーソンです。ここにゲーム専門メディア『インサイド』編集長の山崎浩司氏がモデレーターとして参加。ゲーム業界の動きに精通する山崎氏から多面的な質問が投げかけられ、地方というワークスペースで展開される“ゲームのしごと”の実際が浮き彫りとなっていきました。

会場に集まったのは、ゲーム業界経験者を含む地方でのゲームのしごとに関心を持つ在職者と転職希望者。それぞれの立場は違えど、岡山県、高知県というワーキングスペースに熱い視線が向けられていました。

未経験から挑むゲームのしごと。東京VS地方では

まず初めに、マイナビクリエイターの営業担当から、地方の状況と比較するために、東京でのゲーム会社への転職状況が解説されました。そして参加者に投げかけられたのはその厳しい現実でした。

営業担当:東京に集中するゲーム会社はどこも人手不足で活発な採用を行っていながら、ターゲットは主に経験者。それもスキルが高ければ高いほどもてはやされる状況で、大きなプロジェクトの参加実績などが評価されています。その一方で、未経験者にとっては、ゲーム会社の採用は狭き門。他業種に比べ給与も低めで、アルバイト、契約社員からのスタートも珍しくありません。

この話に石川氏、北牧氏が共に反応。高知県、岡山県のそれぞれの拠点についてと採用状況が語られました。

石川氏:オルトプラス高知は現在40人ほどの社員がおり、そのうちの7〜8割が県内出身者で、そのほとんどが業界未経験者です。まだ設立から1年の会社ですが、未経験からリーダーに成長し、マネージャーを目指せるところまで来ている人もいるので、未経験だからキャリアパスが描けないということはありません。

北牧氏:KLab岡山事業所のメンバーは60人ほど。仕事としては東京と同様にソーシャルゲームの開発・運用をやっていて、地方だからといって何ら変わりはありません。ただ、応募者から見た採用というハードルを考えると岡山の方が少し低い。同じ未経験の人が応募したとして東京では無理だけど、地方ならOKは十分ありうる。これはチャンスだと思ってもらっていいのではないでしょうか。ウチのメンバーの県内出身者は半数程度。ほかには近県の人も多くて、もちろん未経験からスタートの人もたくさんいます。

石川氏、北牧氏が写真を交えて紹介したのは、高知県、岡山県のゆとりを持った職場環境。ネットワークが発達した今では、ゲームの開発環境に東京との差はありません。むしろ中心部にコンパクトにまとまった都市は仕事と生活に便利で、車や自転車を使う通勤スタイルもストレスが少ないとのこと。未経験者にもチャンスがあるという高知県、岡山県のワーキングスペースに参加者の関心は高まっていきました。

今なぜ地方?オルトプラス×高知、KLab×岡山その理由

株式会社オルトプラス高知 代表取締役 石川哲大氏(左)とKLab株式会社 KLabGames事業本部 プロデューサー 北牧涼輔氏(右)

地方でのゲームのしごとを推し進めているオルトプラス高知とKLab。しかしその流儀は両者で大きく異なるようです。ソーシャルゲームの大手として共通する両者は、なぜ高知県と岡山県に拠点を置いたのか。山崎氏の質問から両者が地方に進出した狙いが明らかになっていきました。

山崎氏:KLabもオルトプラスもゲーム会社としてすでに大きな会社で、東京でのゲーム開発に何の支障もないはず。それなのに今あえて地方に拠点を構えてゲーム作りを行うことにどんな意味があるのですか?

北牧氏:KLabの場合は岡山を選んで拠点を作ったというわけではなく、元々岡山にあった別のソーシャルゲーム開発会社を事業規模の拡大のために合併したという経緯があります。地方にあることでオフィスの維持そのものにかかる費用などのコストが安い面はメリットとして挙がると思いますが、一方でたとえば地方の異業種で活躍していた方やUターンで岡山に戻ってきた経験者の方など、東京に住むという選択肢がない層を採用できるという面もあります。

石川氏:オルトプラス高知の設立には「高知をゲームで盛り上げたい」という目的がありました。私は2016年にエンジニアとしてオルトプラスに入社したのですが、入社半年でブラウザゲームの運営ディレクターに転身、2017年にネイティブゲームの立ち上げを経験して2018年3月に株式会社オルトプラス高知の代表取締役CEOに就任しました。入社3年目に入ったばかりだったので「代表をやってみないか」と言われたときは驚きましたが、高知県からの誘致だったと知って引き受けようと思いました。高知県は本気でITそしてゲームの企業の誘致を行っています。私は実際に高知県を訪れ、誘致活動の中で多くの人と触れ合いました。その中でこの仕事を成功させようと強く思ったんです。

地方での働くことの魅力と難しさ

地方と東京で仕事的な差はほとんどないと語る石川氏と北牧氏。家賃や生活費の安さ、自然の中で自分の趣味やアウトドアが楽しめる環境は岡山県、高知県共に魅力だとのこと。では、地方での仕事にデメリットはないのでしょうか。地方でのしごとを目指す場合、決して無視できないその部分にも山崎氏は切り込んでいきます。

山崎氏:収入面ではどうなのでしょう。地方と東京は同じとはいかないと思うのですが。

石川氏:現状の給与は東京の7割ぐらいになっています。これは東京と高知の給与水準とほぼ同じです。でもそれがいつまでも続くわけではありません。ITやゲームはビジネス的な成功で大きな利益を生みます。同レベルのインフラで同じ仕事をしている私たちにはむしろチャンスがあります。

北牧氏:KLabでも給与テーブルは地域によって違います。しかしそれは先に言った通り、東京と地方では家賃を含めた諸物価が違いますので、生活水準的には同じです。また、弊社では能力に応じて給与が決まりますので、地方でも能力次第で高い水準の給与を獲得することができます。

山崎氏:そうすると地方で仕事をするデメリットとしては、やはりリモートの弊害ということになりますか。

北牧氏:人には結局、面と向かう以上のコミュニケーションはないのだと思います。テレビ会議では顔が見えていても、体全体から出ている思いは伝わらないものですよね。私の仕事でもそれだけは大きなストレスで、それを解消するために、週の半分くらいは東京に来て必要なコミュニケーションをとっています。リモートによるコミュニケーションで、どれくらいそこにいるのと同じ状態を作れるか。岡山本社では試みとして、本社と常時カメラでコミュニケーションがとれるスペースを作って、そばにいるのと同じ状況を作っています。まだ模索中ですがリモートの欠点の解消法が見つかれば大きなビジネスチャンスに繋がるのではないでしょうか。

石川氏:当社でもリモートでの仕事のネックはコミュニケーションだと思っています。ですから、私たちが東京に出かけたり、本社のメンバーがこっちに来たり、行き来しています。特に大事なのは、プロジェクトのスタート時。チームを作り上げる段階では、出張回数を重ね、密なコミュニケーションを図るようにしています。

地域貢献、面白いものを作ること。もうここまできている「地方でのゲームのしごと」

それぞれ違う特色を持ってゲームビジネスに取り組むオルトプラス高知とKLab岡山事業所。トークセッションの最後は2つの拠点の“今とこれから”について石川氏、北牧氏から語られました。

石川氏:オルトプラス高知は設立してまだわずか1年ですが、まずはソーシャルゲームの運用に特化し、36人の体制で6つのタイトルの運用を行うという実績を挙げています。メンバーの成長から、開発への着手も視野に入ってきました。未経験者も含め、どんどん採用していきたいと思っています。高知県は、IT、そしてゲーム企業の誘致に本気で取り組んでいて、他県から人を呼び込み、スクールやセミナーでIT人材の育成を行政で行っています。IT企業は17社、ゲーム関連企業は3社と誘致に応じる企業も増えています。私たちの目標は高知からヒットタイトルを誕生させること。ゲーム作りでこの地域を活性化し、地域に貢献していきたいと思っています。

北牧氏:KLabでは世界と自分をワクワクさせろ、というビジョンを掲げてゲーム開発を行っています。岡山でもそれは変わりはありません。世界の人々が夢中になるようなとんでもなく面白いゲームを作る。私たちはそんなことが可能なところで仕事をしているんですから面白くないわけがありません。ゲーム業界に入りたいなとか、転職したいなとか、皆さんの考えていることはいろいろだと思います。KLabの岡山事業所に興味が湧いたら、まずは声をかけてみてください。東京や他の地域の人が岡山に来て就職するというのは大変なことです。もしそれが費用の問題であるなら、私たちはそれを解消するために、たとえば面接にかかる交通費を負担させていただきます。

北牧氏、石川氏、そしてモデレーターの山崎氏によるトークセッションはひとまず終了。続いて北牧氏、石川氏をそれぞれ囲んだ、参加者との座談会が行われました。参加者から両氏に投げかけられた質問とその答えを一部ご紹介します。

石川氏を囲む座談会

―― 県外出身者の比率は?

石川氏:I・U・Yターン含めて全体の2〜3割です。Yターンですか?お嫁さんが高知県ご出身で、ご結婚を機にお嫁さんの地元へ移住される方を嫁の頭文字をとってYターンと呼びます。I・Uターンの一種です。

―― オルトプラス高知が地域貢献としてできることとは?

石川氏:IT人材を増やそうとしている高知で、ゲーム作りができる人を育てていきたいと考えています。高知発のヒットタイトルを出して当社がビジネス的に成功することも、もちろん地域貢献に繋がると思います。

―― スペシャリストとゼネラリストどちらを求めている?

石川氏:スペシャリストの存在はありがたいしもちろん欲しいのですが、ゲーム作り全体を高知で行い、根付かせるためにマネージャーへの成長が望めるゼネラリストがたくさん来てほしいと思っています。

―― リーダーになった未経験者の前職は?

石川氏:元ホテルマンという方がいます。ゲームの運営はユーザーの求めているものを見つけられるという素養が必要。キャリアにはいろんな形がある。ゲーム業界以外の人にもチャンスはあります。

北牧氏を囲む座談会

―― 岡山県に事業所を持つ意義とは?

北牧氏:表立って「地域貢献」を掲げているわけではありませんが、この地域で働く社員のために貢献できる会社でありたいと思っています。何せゲーム会社は岡山県内に数えるほどしかないので、KLab岡山事業所があることでこの地域でゲームに関わりたいと思っている人には、何らかの貢献ができているかもしれません。

―― ポジションではなく能力の評価とは?上司の主観が入らない?

北牧氏:KLabには等級があり、それぞれに必要な能力が定義されています。その等級に応じた目標を設定し、その目標に対してどれだけ達成できる能力があるかを、定量・定性の両面で評価します。またKLabでは複数の評価者が参加する評価会議で、横目線合わせをしながら評価の考え方をすり合わせていきますので、可能な限り客観的な視点を入れて評価しています。

参加者が2組に分かれ、20分ごとに前後半で石川氏と北牧氏が交代する形で行われた座談会も盛況。これで2時間に及んだプログラムもすべて終了しました。

イベントを終えて

予想を超える多くの参加者を迎えて開催された今回のイベント。地方でゲーム作りを行うという共通点を持ちながらも、それぞれの持つ企業風土や拠点を置く地域との関わり方に違いがあるオルトプラス高知とKLab岡山事業所について、参加者は知ることができました。また「地方×グローバル」や高知県、岡山県以外の地域の情報などは参加者にとって貴重な情報源に。次のセミナー・イベントに期待する声が早くも上がっていました。

この記事を書いた人

マイナビクリエイター編集部

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