Web業界進化論 実践講座#17 〜クライアントワークの推進力を爆上げする!Webディレクターが意識すべき4つのポイント〜 セミナーレポート

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Web業界進化論 17 クライアントワーク Webディレクター 去る5/24(火)、「Web業界進化論 実践講座#17 クライアントワークの推進力を爆上げする!Webディレクターが意識すべき4つのポイント」が開催された。

この「Web業界進化論 実践講座」は、Web業界の最前線で働くロールモデルの方々からキャリアを学ぶものであり、今回は中井美緒氏とがーが氏を講師としてお招きした。

講師プロフィール

中井美緒氏

中井 美緒氏
一般社団法人 日本ディレクション協会 会長

1984年生まれ。DTPデザイナーとして紙媒体のデザインを経て、Webに転身。Webデザイナーを経て、現在ディレクション業務に従事(7年目)。ペルソナ・カスタマージャーニーの設計やアクセス解析を元にしたマーケティング目線でのWebサイトの設計、改修などを得意としている。2019年6月〜フリーランスとなり、常駐をメインに個人でも新サービスの構築のディレクションや、Web制作部の立ち上げ協力などを請け負う。また、プライベートの活動として、2018年より一般社団法人日本ディレクション協会に所属。講師、ミートアップの企画推進、セミナーのスタッフ等を行う。

がーが氏

がーが氏
Webディレクター

1984年生まれ。SESエンジニアから、水商売、クラブイベントのスタッフ、営業会社でのWebディレクター兼営業兼Webチーム責任者を経て、現在はシステム開発会社にてWeb事業部立ち上げを担当している。Webディレクターを始め、法人営業やPM、業者選定、中小企業の社長の相談役など幅広く対応しているが、“本業はWebディレクター”との想いを強く胸に秘めている。「なんでも相談してください」を合言葉に、個人事業主やスタートアップ企業、中小企業、各種団体・機関、大手企業に至るまで幅広い取引先・実績を持ち、Web制作や開発だけでなく、時には営業戦略や採用・教育の相談も依頼される。“何のために何を作るの”を軸に、調査、戦略立案、企画、設計から、納品後のアフターフォローまで、一貫性を持った制作・開発を得意とし、必要であれば例え顧客であろうと、歯に衣着せぬ強気の姿勢で「よりベストなもの」を提案している。

がーが氏のTwitterアカウントはこちら

キックオフ前の「計画」と「合意形成」がプロジェクトの成否を分ける

セミナーの冒頭、中井氏とがーが氏は「本日のセミナーで持って帰ってもらいたいもの」として「自覚と覚悟」を挙げた。ディレクターは「自分が中心になって進めていく」「自分が引っ張っていく」という自覚と覚悟を持って、案件に臨んでほしいという。

そこで、「クライアントワークにおける4つのポイント」として、「企画・提案」「キックオフ前」「設計」「構築」を挙げ、それぞれの過程で意識すべきポイントが語られた。

企画・提案

まず「企画・提案」におけるポイントは「全てにおいて仮説を立てるべし」。企画や提案には顧客からのヒアリングが欠かせないが、要望をうまく引き出せないことも多い。そこで必要となるのが「仮説」だ。

がーが氏:お客様はITのプロではないので、やりたいことを「自分たちの業界の言葉」で話します。つまり、お客様の言葉がそのままWebサイトの要望になるとは限りません。「かっこいいサイトにしたい」と言われたとしても、よく聞いてみると本当の要望は「採用を増やしたい」だったりする。「本当はこうしたいのではないか」と、自分の中で仮説を立ててヒアリングに臨むべきです。

仮説を立てることは、見積にも役立つ。営業から「ざっくり工数を出して」と頼まれても、仮説があれば「こういう場合はこれくらいかかる」と概算を提示できる。

中井氏:ディレクターであれば「これぐらいの予算ならこれぐらいのものができる」という肌感覚は持っておきたいですね。よくディレクターから「営業が安い金額で案件を取ってきてしまう」という愚痴を聞くんですが、ディレクターが予算の肌感覚を持っていれば事前にしっかり会話ができるはず。営業は敵ではなく味方です。受注から納品までワンチームとして取り組むつもりで仕事をしましょう。

キックオフ前

受注と制作の狭間である「キックオフ前」は、ディレクターにとってチーム作りやWBS作成など、今後の見通しを立てるフェーズだ。両氏は「ここで失敗すると、この後も失敗してしまう」と警鐘を鳴らす。「キックオフ前」におけるポイントは「自身が責任者だと自覚すべし」

中井氏:キックオフ前には、プロジェクトの計画書などで今後やるべきことや決めごとをすべてまとめるべきでしょう。「何をもって納品とするのか」「どれくらいの工数を見越しているのか」という前提はもちろん、プロジェクトの体制図や、定例会の頻度、チーム間の連絡手段など、細かなことまでディレクターが決めておく。ここで決めきれないと、その先のプロジェクト進行がつかみどころのないものになってしまいます。

がーが氏:顧客はもちろん、アサインするメンバーとの合意形成も大事です。デザイナーやエンジニアに「こういう感じですけど大丈夫ですか」と合意を取り付けておかないと、トラブルの元になります。合意に至らない場合は、合意を取り付けるまで動きましょう。チームをまとめていくこともディレクターの仕事ですから、責任者であることを自覚して、「決めること」「合意を取ること」を意識してほしいですね。

どんなに準備をしても不測の事態は必ず起こる

3つめのキーワード「設計」のポイントは「設計の意図を全員で共有し合意を取るべし」。画面設計やシステム設計、ワイヤーフレームなどには、「なぜこの設計にするのか」という意図がある。設計の意図については、「顧客はもちろん、チーム全体に対しても合意を取って進めるべき」と両氏は話す。

設計

がーが氏:「デザイナーにはワイヤーフレームを見せるけど、エンジニアには見せない」というディレクターが結構いるんですね。でも私は、最初の段階で設計の意図を全員に共有すべきだと思っています。「このサイトは集客を目的にしているから、こういう設計になっている」といった意図が伝われば、「それならこうすれば効率がよい」などの意見も生まれます。チーム全員が同じ方向を向くことで、設計がスムーズに進むはずです。

設計の意図をメンバーに共有せず、自分だけで進めてしまうのはよくない。しかし、だからといって「こうしようと思いますが、どうですか?」とメンバーにすべての判断を委ねるのもNGだ。

がーが氏:デザイナーやエンジニアに決定権を丸投げしてしまうのは、全員にとってストレスになります。決定権があるのはあくまでディレクター。設計の意図を共有して、各自の意見に耳を傾け、それを踏まえて最終的な決断をくだすのが責任者の仕事だと思っています。

構築

最後のキーワード「構築」のポイントは「不測の事態に備えるべし」。これまで話した「提案・企画」「キックオフ前」「設計」のポイントを守っておけば、ほとんどの案件はうまくいくと両氏は語る。ただし、プロジェクトには不測の事態がつきもの。どんなに頑張っても、徹底的に準備しても必ずなんらかのトラブルは起こると思ったほうがいい。

中井氏:真面目な人ほど、予期せぬトラブルが起こったときに落ち込んだり、あたふたしたりしてしまいます。これが逆にプロジェクトを炎上させてしまう原因になる。不測の事態をネガティブに捉えずに、「起きて当たり前」と構えたほうがいいですね。

では、不測の事態にどうやって対処すればよいのだろうか。がーが氏によれば「顧客に対してどうするか」と「内部に対してどうするか」の、2つのポイントがあるという。

がーが氏:顧客に対しては、まずは契約の時点で前提条件に「不測の事態も起こりえる」ということを明記しておくこと。ただ、明記していてもお客さんの怒りが収まらないこともあるので、そのときは慌てず冷静に状況を説明する。顧客都合によるトラブルの場合は、納期の延長などの交渉も臆せずすべきです。

また、内部に対しては「解決することを一番に目指す」ことを挙げた。

がーが氏:原因究明はもちろん大事なんですが、まずは解決させることが最優先です。一次対応でとりあえず解決に導き、二次対応で根本解決を図ってもいい。ディレクターがあたふたしてしまうと冷静な判断ができないので、慌てずにドンと構えることを心がけましょう。

セミナーは両氏による「自分が『推進していく』という自覚を持って、懐の深いディレクターになっていきましょう」というメッセージで幕を下ろした。

未経験からディレクターになった場合、合意形成はどうしたらいい?

最後に、参加者による質疑応答からいくつかピックアップして掲載する。

サイトの目標や情報の優先順位を決められないクライアントに悩まされています。クライアントコントロールのポイントについて教えてください。

選択肢を用意して、クライアントが決めやすいようにしてあげましょう。

中井氏:「A案とB案、どちらがいいですか」と二択で聞くのはよくやりますね。「どうしますか」と広く聞くより、選択肢を狭めたほうがお客さんも選びやすいと思うんです。

がーが氏:そもそも、プロでもサイトの目標や優先順位を決められない人がいっぱいいるのに、お客さんが決められるわけがないんですよ。だからこそ仮説を立てる能力が大切。「こういう感じはどうですか」と選択肢を用意して、お客さんが決めやすいようにしてあげるのも私たちの役目です。

中井氏:で、こっちがいいなら、これはどうですか……と、「私が思う最強のWebサイト」に導いたりして。お客さんと一緒に考えて決めていけるのも、受託の醍醐味ですからね。

未経験からディレクターに挑戦する場合、会社選びのポイントがあれば教えてください。

とりあえず入れるところから。できれば受託会社がベスト。

がーが氏:Web業界は未経験の志望者が増えて、今とても就職しづらい状況なんです。なので正直に言うと、入れるところがあるならどこでも入ったほうがいい。もし就職先を選べるのであれば、受託会社の方がいいでしょうね。同じディレクターでも、受託会社でクライアントワークをやるのと、事業会社で自社サービスを手掛けるディレクターのでは、仕事の内容がまったく違うので。

中井氏:受託会社で働くと、Webサイト制作の一連の流れをつかめるので、未経験からスタートラインに立つにはおすすめです。そのうえでどんな会社がいいかとなると……尊敬する人、一緒に働きたい人がいる会社に行くのが一番ではないでしょうか。

未経験からディレクターになった場合は経験値もなく、「キックオフ前」の段階では何をすべきか自分で判断ができないのではと思います。そうした場合、デザイナー・エンジニアの合意を得るにはどうすればよいでしょうか。

未経験は迷惑をかけて当たり前。怒られながら前に進もう。

中井氏:聞いちゃえばいいんじゃないですか?「すいません教えてください」と。

がーが氏:未経験の人って、「未経験だから迷惑をかけないように」と思いがちなんです。でも未経験なんて迷惑をかけて当たり前。教えてくださいと頭を下げればいいし、「そんなことも知らないのか!」って怒られたっていいんですよ。

中井氏:私たちも怒られながらここまで来ましたからね。これでどうですか?と出して怒られて、一生懸命考えて調べて、でもやっぱり怒られたりして。

がーが氏:そうすると、やがて腹を割って話せるようになる。「未経験で迷惑かけると思うので先に謝っておきます!」というマインドで、一生懸命さを見せていけばいいと思います。

セミナーを終えて

プライベートでも親交が深い中井氏とがーが氏。セミナーでは歯に衣着せぬ発言も飛び出し、リラックスした雰囲気で進められた。その一方で、両氏は「自覚」「責任」「覚悟」といったフレーズでWebディレクターの仕事を説明する。仮説を立て、合意を形成し、不測の事態に備える。その一連の流れに責任を持って取り組んできた両氏のアドバイスは、明日からすぐ実践できるものばかりだと感じた。

これからも「Web業界進化論 実践講座」はさまざまなゲストを招いてお送りする。ぜひ今後の講座内容にも期待してほしい。

この記事を書いた人

マイナビクリエイター編集部

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