3DCGデザイナーの職場環境を知ろう - 各業界の違いやゲーム業界で働くメリットを解説
現在の3DCGデザイナーをとりまく職場環境について皆さんはどのように意識されているでしょうか。ゲーム業界、映画やテレビ、アニメーションを含む映像業界、建設や工業製品といった技術系業界など、活躍の場が広い3DCGデザイナーは、絶えず人手不足と言われています。
そして、この慢性的な人手不足は3DCGデザイナーの市場価値を高めることにも繋がっており、近年では業界を隔てず、よりよい就業条件を求めて転職する3DCGデザイナーが増えている傾向にあります。その中で、今最も勢いがあるのがゲーム業界への転職です。その背景には、各業界の3DCGデザイナーの職場環境が大きく影響しているようです。
今回は、各業界の職場環境の現状に触れつつ、3DCGデザイナーの転職先としてゲーム業界が選ばれる理由を解説していきます。
各業界における3DCGデザイナーの職場環境はどう違う?
身に付けたスキルから、さらに自分に合った活躍できる業界へ転職したいと考えるのは、3DCGデザイナーに限らず転職者の誰もが考える転職理由の1つです。しかし出身業界から他業界への転職を考える場合に、どんな職場環境なのかということは気になるところでしょう。労働時間や福利厚生など、気にし始めると次から次へわからないこと、知りたいことが出てくると思います。
同じ業界であってもそれぞれの会社によって違いはありますが、おおむね「基本事項」として括れるところもあります。各業界の職場環境の特徴を、ここで把握しておきましょう。
映像業界における職場環境は?
3DCGデザイナーの活躍の場としてまず思いつくのが映像業界です。ハリウッド映画に代表されるような実写さながらの3DCGをはじめ、テレビ番組やCM、Web動画など、幅広い映像表現において3DCGデザイナーが活躍しています。また日本の代表的なコンテンツであるアニメーションにも3DCGは多用され、手描きだけではできないリアルな表現を実現しています。多くの人の目に触れ、作品性の高いエンターテインメントやコマーシャルの映像制作は3DCGデザイナーのやりがいに繋がるでしょう。専門学校などで基本スキルを身に付ける際にも「映像がやりたい」と考えて学んでいる人が多くいます。
しかし、他業界と比べるとマーケットの規模や収益の方法が違い、映像系の3DCGの制作予算は潤沢とは言えないのが現状です。短い納期と低予算の中でクリエイティブを発揮することが求められる厳しい業界でもあるのです。また3DCGの制作における大きな負担となっていたのがコンピューターによるレンダリングの行程ですが、これは近年のPCスペックの向上もあり、かなり改善されてきました。以前は長時間勤務が当たり前のように言われる3DCGデザイナーの職場環境でしたが、他業界の環境向上に追随する形で徐々に改善されています。
建築や自動車などの技術業界における職場環境は?
建築・建設、自動車や各種工業製品の開発など、技術系の業界でも多くの3DCGデザイナーが活躍しています。この業界では3DCGエンジニアと呼ばれることも多いです。3DCGは誕生当初より、学術や技術開発のシーンで活用され、そのための機能も年々進化しています。これら技術系の業界で働く3DCGデザイナーは、映像業界やゲーム業界におけるクリエイター職よりも、設計などを行うエンジニアに近い場合がほとんど。工期や納期が厳密に決まっているので、確実な成果を求められます。
それだけに仕事内容・勤務時間・待遇などの職場環境の整備が比較的進んでいる業界でもあり、大手建設会社や自動車メーカーなどでは、安定した職場とやりがいを獲得している3DCGデザイナーも数多くいます。しかし、大手企業と中小企業との間で職場環境に開きがある場合が多く、より好条件の職場を目指して、人材流動も活発です。スキル的にはCADとの連携が容易なことから開発ツールは「3ds Max」が主流で、他業界での応用も可能です。よりクリエイティブな仕事にチャレンジしたいと考えて映像業界やゲーム業界に転職する3DCGデザイナーもいます。
ゲーム業界における職場環境は?
3DCGデザイナーの活躍の場として、今、最も拡大傾向にあるのがゲーム業界と言えるでしょう。中でも注目すべきは、スマートフォンなどで展開されるソーシャルゲームや、オンラインで他のユーザーとコミュニケーションができるタイプのコンシューマーゲームです。これまでゲーム業界で3DCGと言えば、専用のゲーム機で楽しむコンシューマーゲームが主流でした。しかし、現在ではモバイル端末の高性能化により、スマートフォンなどでも高度な3DCG表現が可能になりソーシャルゲームを楽しめるようになってきました。そういった背景もありコンシューマーゲームでゲーム業界をけん引してきた大手ゲームメーカーの多くが、上でも述べたようにオンライン分野に参入しています。
企画から開発、販売までを行うパブリッシャ―や、ゲーム開発を請け負うデベロッパーでは、3DCGデザイナーの熾烈な獲得競争が行われているのです。ゲーム業界はこのソーシャルゲーム隆盛による市場拡大を契機に、大手企業から職場環境の改善が急速に進むにつれ、3DCGデザイナーの他業界からの流入も激化しています。今後も拡大が予想されるゲーム業界の職場環境を次でも詳しく見ていきましょう。
ゲーム会社は1種類だけではない!分岐するゲーム業界の事業形態
国内でも開発費が数億円から数十億円に達するハイエンドゲーム機によるコンシューマーゲーム開発は、ゲーム業界のいわば花形。それだけに、大手ゲームメーカーで開発メンバーとして採用されるのは、転職において難関と言えます。
しかし、事業形態がさまざまに分岐している昨今のゲーム業界では開発と運用の両面でクリエイターを必要としており、必要スキルの間口も広く、他業界出身や比較的経験の浅い3DCGデザイナーにも活躍の場が広がっているのも事実です。ここでは、事業形態の異なるゲーム会社をそれぞれ紹介していきます。
自社開発から外部委託まで。ゲーム会社が展開するさまざまな事業形態
ゲームの開発はテレビCMや雑誌広告、Web広告でよく見かけるメジャーなゲームメーカーだけで行っているわけではありません。コンシューマーゲーム機やゲームセンターなどにあるアーケードゲーム機などのハード開発からソフトウェア開発まですべてに関わっている会社、ゲームのソフトウェア開発のみを行っている会社、逆にゲームソフトの自社IPは持っているけれどゲームソフトの開発は外部委託していて、社内での開発は行っていない会社など、ひと口に「ゲーム会社」と言ってもその事業形態はさまざまなのです。
さらに踏み込むと、社内ではプログラム開発のみで画像素材などのCG関係のほとんどを外部委託している会社、逆に3DCGのみを請け負う会社、ゲーム本編とは直接関係のないデモ・ムービーなどを受け持つ会社など、3DCGの部分だけを取り上げてもビジネスの形はさらに広がっていきます。
3DCGデザイナーが転職先として「ゲーム会社」を選択する場合、多くは「ゲームの作り手として」関わりたいという気持ちが強いのではないかと思います。しかし、前述の通り「ゲーム会社」だからといって、ゲームづくりのどの部分に携われるかは、就業する会社によって変わるのです。転職の際は、企業の事業形態をしっかり見極め、自分自身が何に対して携わりたいのかを認識したうえで、応募しましょう。
パブリッシャーとデベロッパーの職場の違いを知っておこう
ゲーム会社に限りませんが、様々な事業形態が存在しつつも、大きく分類すると2種類に分ける事ができます。パブリッシャ―、デベロッパーの違いについて理解しておきましょう。
パブリッシャー - 企画・開発から販売まで一連のゲーム作りを自社で行う企業
1つ目はゲームを販売・配信しているパブリッシャーと呼ばれる企業です。たとえば自社IPのゲームタイトルを作っている「スクウェア・エニックス」や「セガゲームス」、「コナミデジタルエンタテインメント」などもパブリッシャーに分類されます。一般に「ゲームメーカー」と聞いて即座に連想されるような会社のことだと思ってもいいかもしれません。
このパブリッシャーは基本的にゲームの企画から手がけて、開発、その後のPR、販売といった一連の流れを自社で行っています。現在は内部開発部門を持っているところがほとんどですが、プログラムやCGなどの開発業務を部分的に外部委託することも、また完全に外部で開発させて自社IPとして発表する場合もあります。
パブリッシャーのメリットは?
ゲームビジネスに関するほぼすべてをまかなっている関係から、開発だけでなく営業や宣伝など他の業務とも連携するトータルなゲーム作りを体感できます。また、ソージャルゲームなら開発の担当であっても運用からの情報でユーザーの評価をダイレクトに聞くことができます。
コンシューマーゲームならパッケージ販売されているゲームのアンケートハガキによるユーザーの反応、SNSへ書き込まれる評価など、貴重なフィードバックとして社内で共有されます。「3DCGの制作だけ」、「ゲームの一部分の開発だけ」ではなく、ゲーム作りを他部門も含めた広い範囲で仕事を行えるのがパブリッシャーの大きな魅力と言えるでしょう。
デベロッパー - ゲーム開発業務を専門的に請け負う企業
そしてもう1つ、前述したパブリッシャーからゲーム開発業務を請け負う会社があります。これをデベロッパーと呼びます。デベロッパーが自社IPでゲームを発売することは基本的にないため、一般にはあまり知られていないところが多いです。デベロッパーはゲーム開発の全体を請け負うこともあれば、一部分だけを担うこともあり、その会社や開発タイトルによってゲーム開発への関わり方は大きく違います。ゲーム業界全体を見渡せば、比率的にはデベロッパーの方が多数です。
デベロッパーのメリットは?
基本的には、会社が受け持っている案件に対して集中的に開発に取り組みます。会社によっては複数のパブリッシャーと契約をしているところもありますが、守秘義務があるため、同じ社内で開発しているタイトルであっても、他の開発の内容を見たりすることはできません。
しかし、デベロッパーはゲームだけでなく、映像や遊技機、イベント関連の3DCGなど、さまざまな業務を手がけるところもあります。担当業務は本人の希望を入れてくれる場合もあり、ゲーム以外の経験をするチャンスもあります。3DCGデザイナーにとって将来的にどんなスキルが市場価値を高めることになるかはわかりません。キャリアアップを考えると、さまざまなテーマでクリエイティブを行える職場環境がデベロッパーで働く大きな魅力と言えるでしょう。
ゲーム業界で働くメリットは?勤務時間や休日・休暇の現状を知ろう
業務以外で気になるのが、勤務時間や休日・休暇といった待遇でしょう。たとえ業務内容が魅力的な会社にジョインできたとしても、残業時間が多かったり、休日出勤が多かったりと、リフレッシュを適度に行える風土がなければ、パフォーマンスを発揮することは難しいと言えます。
求人票や募集要項には勤務時間と休日休暇や残業の目安が明記されていますが、ゲーム業界全体の残業平均がどれくらいで、有給休暇がどの程度利用されているかは、転職を考える方にとって気になるところではないでしょうか。ゲーム業界でも他業界と同様、企業によって差はあります。しかし、ゲーム業界というマーケットの急拡大によって3DCGデザイナーの市場価値が高まり、業界全体でよりよいものづくりのための勤務体制の再検討が行われています。
勤務時間は前よりも大きく改善されつつある
長時間労働のイメージが強いゲーム業界の3DCGデザイナーですが、それも今や昔のこと。現在ではパブリッシャー、デベロッパー問わず基本的に「1日8時間労働」で、「完全週休2日制、祝日休み」というところが大勢を占めています。「裁量労働制」や「フレックスタイム制」を導入して、3DCGデザイナー自身が最も効率的な働き方を選択できるよう配慮する企業が業界の主流です。また最近は勤務時間がかなり厳格に設定されており、むやみに残業をすることができない企業も増えています。
働きやすさを重視し、休日・休暇をしっかりとらせるゲーム企業が増えている
有給の確実な消化や「リフレッシュ休暇」、「出産・育児休暇」、「時短ワーク・リモートワーク制度」などを導入する企業もかなり増えてきました。休日出勤も厳しくチェックされていて、特別な理由がない限りできない場合が多いです。残業や休日出勤が必要な場合は事前に上司にその旨を申請することになりますが、開発室がインテリジェントビル内にあり、防犯上、時間外や休日には入室できないなど、そもそも残業や休日出勤が認められていない会社も存在します。
ゲームタイトルリリース時やイベント、ゲームショーへの参加など業界的な繁忙期はありますが、余裕を持ったリソース配分を行う努力もあり、業界全体で勤務時間の健全化が図られています。
プロジェクトマネージャーのいる会社では、よりスケジュールの厳密さが求められる
勤務時間はそのスタッフが関わる開発プロジェクトのスケジュールに大きく影響される部分がありますが、近年では大手企業を中心にプロジェクトマネージャーといったスケジュールの進行・管理を行うポジションが設けられ、全体のスケジュール管理や各パートにおけるタスク配分などが管理されるため、3DCGデザイナー個人の作業負担は軽減される傾向にあります。
ただし、作業者個人の判断で残業、休日出勤ができないため、全体スケジュールを守るためにも、よりしっかり自分自身のスケジュールを管理する必要があるでしょう。
3DCGデザイナーへのスキルアップ支援
3DCGデザイナーのスキルアップ支援として、大手企業では「Maya」、「3ds Max」などCG制作ツール、「Unity」や「Unreal Engine」などのゲームエンジン(インハウスツールも含む)のセミナーや講習会などが社内でひんぱんに開催されています。
規模がそれほど大きくない会社で社内開催が難しい場合でも、会社負担で社外の有料セミナーへの参加の機会を作るなど、3DCGデザイナーのスキルアップ支援には業界全体で積極的です。また個人のキャリアアップやプロジェクトの円滑化を図るために、リーダー職向けマネジメント講習会なども行われています。
ゲーム会社でも広がりつつある健康管理への意識
「スケジュール厳守」や「クオリティ保持」といった責任感をいつも念頭にもって働く3DCGデザイナーも、時には体調やメンタル的にバランスを崩してしまうこともあるでしょう。昨今のゲーム業界では社会保険の整備、定期的な健康診断の実施はもちろん、メンタル面での専門のカウンセラーを置く会社も大手企業を中心に増えてきました。
また、宿泊可能な社員用の保養施設や特別料金によるスポーツジムの利用、社員用レストランやリラックスできる休憩室の完備といった福利厚生面でも充実を図っており、モチベーションアップとなるよう社員の健康維持・増進に力を入れています。
まとめ
近年のゲーム業界における3DCGデザイナーの職場環境は、PC環境や勤務時間、健康管理の問題を含めて改善が大きく進んでいます。3DCGによるゲームが当たり前となり、オンライン機能の実装がほぼ前提になったことで、開発作業は昔より増えたにも関わらず、今の方が快適に業務を進められています。これは業界全体が長年のゲーム開発において少しずつ環境改善に取り組んだ結果なのです。
今後はさらに「4K解像度」や「VR分野」の導入など、ゲームも進化を続けていきます。3DCGデザイナーの活躍の場が広がると同時に、企業は職場環境の改善も継続していかなければなりません。是非この記事を参考に、3DCGデザイナーとして転職する際にゲーム業界を候補に入れてみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
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