3DCGデザイナーなら知っておきたい3DCGゲームの歴史

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3DCGゲームのこれまでの歴史を紹介します。現在では、日常的に3DCGがゲームやアニメーションなど様々な媒体に用いられ、見かけない日は無いくらい、ごく当たり前のものとなっています。しかし、ここまで3DCGが普及するまでに、どのような歴史を歩んできたかを詳しく知っている人はそう多くないのではないでしょうか。

ここでは、テレビゲームにおける3DCG、また2DCGで行われた3D表現の歴史を、主要と思われる部分にフォーカスしながら、当時のアイデアや技術などと一緒に紹介していきます。

疑似的に3D表現されたゲームのこれまで

ポリゴンなど本来の3DCGが、まだ技術的に難しかった時代に、2DCGの技術で疑似的に3DCGっぽく表現したゲームが多くありました。様々な方法や手段が考案され、いかにして「2D画面表現に奥行きがあるかのように見せれるか」が探求されてきました。ここでは本当の立体表現「3DCG」に対して、2DCGを使った擬似的な立体表現「擬似的な3D」を試みてきた歴史を紹介していきます。

様々な擬似3Dの方法

擬似3Dの方法には以下のようなものがありました。あくまで立体視させるということが最優先だったため、対象物を回り込むなどのプレイヤー任意の行動には対応できないのが難点でした。

キャラクターや物を大小で分け、3Dのように見せる

奥のものを小さく、手前のものを大きく描かれた画像を使い、3D表現を試みていました。FPSや奥行き表現を意識したレースゲーム、またPC(プレイヤーキャラクター)主観のダンジョンものなどがそれに当たります。しかし、画面奥から手前側へ近づいてくるような動きのある表現(または、逆に遠ざかるような表現)をさせたい場合、画像の拡大縮小機能がないゲーム機では、その動きの行程の絵を用意しておく必要があります。

奥行表現

背景画面を多重スクロールさせ、3Dのように見せる

横スクロールのシューティングゲームやアクションゲームの場合、遠くの景色はゆっくり、近い景色は速く動いているように演出して、あたかも画面に奥行きがあるような見せ方をさせる方法です。仕組みは背景画像を幾つか横(X軸)に分断し、それぞれのスクロール速度(横に流す速度)を遠くほどゆっくり、近くほど速くさせます。俗に「ラスター切り」などと呼ばれていました。

多重スクロール

俯瞰で表現し、3Dのように見せる

斜め上からゲームエリアを見下ろした状態のゲーム画面です。例えばコナミの日本発売版『Qバート』(1983年)などがあります。「見た目で立体っぽく描かれてある」というシンプルなものですが、登場当時はその斬新な発想のゲーム画面に未来を感じました。セガの『ティップタップ』(1983年)やサミー工業の『Viewpoint』(1992年)など、同様の表現ゲームもかなり多いです。

俯瞰

3Dメガネを使い、3Dのように見せる

ハードウェアを導入した例です。液晶シャッター式ゴーグルなどを通してゲーム画面を見ることで3D画面を楽しめます。タイトーの業務用レースゲーム『コンチネンタルサーカス』(1988年)や、ナムコの業務用シューティング『3DサンダーセプターII』(1986年)などがありました。家庭用ゲーム機では、『ファミコン3Dシステム』という周辺機器などを使った3Dゲームがありました。他にも、家庭用ゲーム機のファミコン・ディスクシステムで、赤青メガネを使う「アナグリフ式」をモードで採用したスクウェアの『とびだせ大作戦』(1987年)があります。

アナグリフ式

その他の方法

裸眼で3DCGゲームが楽しめる任天堂の『ニンテンドー3DS』(2011年)の登場も画期的でしたが、その15年ほど前に、ゲーム機をのぞき込むようにしてプレイする任天堂の『バーチャルボーイ』(1995年)の存在があります。また、ゲームの歴史的にも珍しい「ホログラフィ」を使ったセガの業務用ゲーム『Hologram Time Traveler』(1991年)などもありました。ポリゴンが実装される前、どうしたら3Dに見えるかといった試行錯誤がとても多く行われてたことがお分かり頂けたと思います。ここまで、いかに3Dに見せることができるか、というゲーム開発の歴史を紹介してきました。

次では、実際に3D表現を試みた3DCGゲーム初期からポリゴンが実装された時代、現在までを解説します。

[第1章]3D表現のゲーム登場と3DCG黎明期

3D表現されたテレビゲームは、意外と古くから存在しています。

1980年:ATARI『BATTLE ZONE』

画像出典:Battlezone (1980 video game)

多くのゲームファンに3DCGゲームとして認識された最初のゲームは『BATTLE ZONE』(1980年)ではないでしょうか。これは今から40年ほど前にゲームセンターでヒットしたSF戦車戦の3DCGシューティングです。実際はこれよりも前に『Maze War』(1973年)や『Spasim』(1973年)など3Dで演出されたゲームは存在していたのですが、ほぼ研究目的で大学にて開発されたものだった為、一般の人が手軽に遊べる物ではありませんでした。よって、プレイヤーが気軽にゲームセンターで遊べたということはゲームの歴史的に意義深いことだったと思います。

Maze War(メイズウォー)

『迷路戦争』のタイトルのままに、3D表示の迷路内で行う2人対戦ゲーム。ファーストパーソン・シューティングゲーム(俗に「FPS」と略称されます)の始祖とも云われています。操作はキーボードによるもの。なお文中では1973年発表としていますが正確な公開時期は不明。ですが後述の『Spasim』よりも古いとされる説があり、ここではそれに準じています。

Spasim(スパズム)

キーボード入力によるシューティングゲーム。PLATO(Programmed Logic for Automated Teaching Operations)ネットワーク上で最大8人プレイが可能だったらしく、マルチプレイヤー型としても黎明期のゲームのひとつといえるでしょう。

また、『BATTLE ZONE』は後述する「ベクタースキャン」という技術を使い、ワイヤーフレームで表現された3DCGのゲーム画面はプレイヤーの想像力を刺激し、とてもリアルな操作感覚を楽しむことができました。これは自分の戦車の左右履帯をレバー2本でコントロールするという分かりやすい操作性もあってこそでしょう。

1983年:ATARI『STAR WARS』

画像出典:Star Wars: A history in video games

そして1983年、同ATARI社から『STAR WARS』が発売されます。これもベクタースキャンによる3DCGのFPSゲームで、プレイヤーはXウイングのコックピットからの視点でデススターを攻略していきます。画面から少しだけ見えている機首や翼の端の4つのビーム砲が操縦桿を動かした方向に傾くのがとてもリアルで、それだけで『STAR WARS』の世界に没入できるでしょう。ステージ2以降、デススターに到達してからは左右方向が無限ループになっているステージもあり、「行きたい方向に無限に行くことができる」ような気にさせてくれました。このプレイ感覚は3DCGゲームならではの醍醐味でしょう。

また、『BATTLE ZONE』と大きく異なる点は、なんといっても『STAR WARS』の版権物ゲーム(キャラクターゲーム)であるということです。これは単純にマーチャンダイジング・ビジネスの面を超えて、そのゲームの世界観の拡張が図れます。しかも『STAR WARS』には攻略法の異なる3つのステージ構成(難易度により多少異なり、3ステージで1セット)があり、他にもゲーム中のBGM、さらにはルークやオビワン、R2-D2の音声まで入っているというファンにはたまらない仕様。否が応にもエンタメ性を高めてくれます。

版権物ゲームについて

3DCGではなくとも、他に版権物ゲームは1980年にタイトー社から業務用(アーケード)ゲーム『ルパン三世』発売されていますが、版権物ゲームの歴史からみても『STAR WARS』も古い部類でしょう。

3DCGに用いられたベクタースキャンとは

前述しました3DCGで用いたベクタースキャンという描画方法ですが、描画を座標点で行う表示方法なので見た目はワイヤーフレームで構成された画面になります。現在でもよく使われる「ワイヤーフレーム」という言葉は、3DCGを輪郭線のみで表現したレンダリング描画方法の一つであり、ワイヤーフレーム表現された3DCGがすべてベクタースキャンによるものというわけではありません。

そもそも本来のベクタースキャン表示には専用のモニターが必要となります。後に技術進歩したCRT(ブラウン管のコンピュータモニター)などのラスタースキャン用の画面でも、ソフトウェアによってエミュレート表示することもできるようになりましたが、残念ながらベクタースキャン独特のギラリとした高輝度の画面とは別物と言わざるを得ません。

[第2章]3DCGゲームはポリゴンの時代へ

家庭用ゲーム機の能力の事情もあり、一般的にポリゴンの3DCGゲームを楽しめるようになったのは業務用ゲーム機からでした。ポリゴンを用いた3DCGレースゲームにナムコの『ウイニングラン』(1988年)があります。当時のF1ブームも手伝い、多くのレースゲームが発売されましたが、この『ウイニングラン』が日本初の3DCGレースゲームのようです。操作感にもリアルさが追求されていたので、ただ直進するのにも慣れが必要でした。

家庭用ゲーム機へ進出し始める3DCG

有名どころでは任天堂の『スターフォックス』(1993年)があります。スーパーファミコン初の3DCGシューティングゲームでしたが、これはスーパーFXチップという演算処理を高めるためのパーツがカセット内に入っており、純粋にスーパーファミコン本体だけの処理で3DCGが表現できていたわけではありませんでした。(このスーパーFXチップは将棋ゲームなどのCOMプレイヤーのための思考演算処理の高速化という用途もありました。)

一方、ゲームボーイでは任天堂の『X(エックス)』(1992年)というシューティングゲームがあり、ゲームボーイ本体のみの処理能力で3DCGでの表現が行われている稀有な例もあります。

[第3章]家庭用ゲーム機で広く浸透する3DCG

1994年に次世代機と呼ばれたソニー・コンピュータエンタテインメントの『PlayStation』と、セガの『セガサターン』が発売されます。この頃から3DCGゲームの中心は、業務用機から家庭用ゲーム機の場に移行していくことになります。例えば、この前年に世界初の3DCG格闘ゲームであるセガの『バーチャファイター』が業務用機で登場していますが、『セガサターン』に移植されローンチタイトルの一つになっています。また『PlayStation』にもローンチタイトルに業務用機で好評だったナムコの3DCGレースゲーム『リッジレーサー』がありました。

このように従来の家庭用機では困難だった3DCGゲームが次世代機では次々に発売されるようになりました。そして、この頃から家庭用ゲームの開発にも3DCGデザイナーの需要が増え始めたのですが、従来の2DCGデザイナーの存在もありましたのでゲームのCGデザイナー部署は一気に大所帯になりました。そもそもこれまでゲーム開発では「2DCGデザイナー」という概念はなく、「グラフィッカー」と総称されていましたが、3DCGデザイナーが新たに加わったので従来の平面画像担当のことを2DCGデザイナーと呼ぶに至ったという経緯があります。

現在の3DCGタイトル中心のゲーム機と比べると、当時の「次世代機」で高精度な3DCGゲームを動かすにはまだまだ非力です。なのでゲーム機の負担軽減のためにモデリング時のポリゴン数(面や頂点の数)は最小限まで切り詰めてのモデリングを旨に作業を進めていくことになります。つまり「ローポリ・モデリング」ということですが、できるだけ少ないポリゴン数で目的の形状を表現するには高度な技術とセンスが必要でした。家庭用機に移植された業務用の3DCGゲームも多いですが、それらのほとんどは家庭用機のスペックに合わせて3DCG部分は少ないポリゴン数で作り直されています。また、現在のゲーム開発でも(当時と程度の差はありますが)ローポリ・モデリングは3DCGデザイナー必須の技術です。

ゲーム開発における業務担当の総称について

ゲームに3DCGが導入される前は、OBJ(オブジェクト:ここでは主にキャラクター画像のこと)と、BG(バックグラウンド:ここでは主に背景画像のこと)の区分程度しかありませんでした。キャラクターと背景(あと現在はUI関連も作業分担します)はデザイナー各々の得手不得手がありますので、この区分の仕方は現在にもあります。当時は、これらのデザイナーをまとめて「グラフィッカー」と総称することが多かったのですが、現在は「3DCGデザイナー」、「2DCGデザイナー」などと業務担当が明確に分けられたせいか、「3DCGの人」「2DCGの人」などとそれぞれの担当部署で呼称し、総称することはあまりなくなりました。

まとめ

ゲームでの3DCG、または3D表現の歴史の主要な部分を追ってみました。30年ほど昔は(業務用機を中心に)比較的海外産ゲームの方が3D表現されたゲームは多かったですが、ポリゴン3DCGゲームも海外タイトルの方が今でも奇抜な物が多いように思います。最近の家庭用ゲーム機ならアーカイブタイトルとしてオンライン販売で入手できるものも多いので、実際にプレイしてみてはいかがでしょうか。

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マイナビクリエイター編集部

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