モデラーとは - 3DCGデザイナーのモデラーが担う役割を詳細解説

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3DCGデザイナーの重要ポジション、モデラーについて解説します。

モデラーとは、3DCGデザイナーの中で、形状の作成業務「モデリング」を中心に行っていくポジションのことを指します。そして動かす必要のある形状(3Dモデル)は、その部分にボーン(骨)を入れたり、リギング設定をするなど、アニメーション作業のための下準備となるセットアップ(いつでもアニメ作業に入れる状態)を行います。作成するのは人物や小物などのキャラクター(OBJ / オブジェクト)だけでなく、背景(BG / バックグラウンド)の3Dモデルも含まれます。

近年のゲーム開発では「Unity」や「Unreal Engine」などのゲームエンジン環境でおこなわれることも多くなったため、これらとの連携も考慮しながら3DCGデザイナーのモデラー担当は作業を進めていくことになります。しかし、こうは言っても、具体的にモデラーというポジションの役割について深く知る人はそう多くないでしょう。そこで本記事では、モデラーが担う役割を工程別に解説していきたいと思います。

3DCGデザイナーとしてモデラーポジションを考えている方は、知っておくべき重要な工程ばかりです。ぜひ参考にしてみてください。

3DCGデザイナーのモデラーが担う様々な業務

モデラーが行う基本的な作業を大まかに分けると下記の通りです。

形状を作成する「モデリング」

作られた形状(3Dモデル)の表面に貼り付ける画像を作成する「テクスチャ作成」

質感などを表現するための「マッピング」

キャラクターの関節などを動かすための「ボーン設定」

回転や開閉の動きなどのための「リギング」

昨今の大手企業のゲーム開発では作業工程が非常に多岐に渡り、これらの業務は3DCGデザイナー部内で各々に作業分担されたモデラー担当によって行うことが一般的になってきました。

とくに、コンシューマーの開発になると、関わる3DCGデザイナーのモデラーも100人、200人レベルの大所帯です。当然、作業の分担・作業の専任性が必要になってきます。そこで重要になってくるのがビジネス研修用語でお馴染みの「ほう・れん・そう」、つまり報告・連絡・相談です。

3DCGデザイナーのモデラー担当の作業ひとつとっても、ゲームプランナーやゲームプログラマーなど他の部署に影響する場合があります。例えば、キャラクターの腕を太くしたら、そこに付ける防具のデザインも、それに合わせて大きくしないといけません。ゲーム開発は連携作業で進行しますので、モデラー担当も例外なく、自分本位で作業を進めるのは御法度とされています。なお、小規模の開発の場合ではこれらすべてを3DCGデザイナーのモデラー担当が作業することもあります。

次に、モデラーが担う各工程について詳しく解説していきましょう。

01. モデリング

現在、3DCGデザイナーのモデラーがモデリングして表現するための技術として「ポリゴン」や「メタボール」など、幾つかありますが、ゲーム開発では「ポリゴン」による表現が一般的で、おそらくこれは今後も変わることはないと思われます。最近はかなり高精度ハイメッシュな3Dモデルから、比較的簡単、かつ、高品位にローモデルを作ることができるようになったため、作業の効率化が向上してきました。三角や四角の板の集合体で形状を作っていく「ポリゴン」ですが、当然、板の数が多いほど緻密な形状を作ることができるわけです。モデラーによるモデリング作業では、よく「何ポリ?(ポリゴンを幾つ使った?)」という表現が使われます。ゲーム機の性能が上がったとはいえ、やはり基本はできるだけ少ないポリゴン数で、見栄えのいい3Dモデルを作ることが3DCGデザイナーのモデラー担当のスキルとして求められるでしょう。

ポリゴンの扱いについて

業界で1ポリゴン(1ポリ)という呼び方をする場合があります。これは三角、もしくは、四角のポリゴン板が一枚だけある状態ですが、重要なのはカメラから視認できるのはその平面に対して片側だけです。つまり、反対側からは見ることができません。よって、面の両側から視認できるようにするためには、両面ポリゴンを使ったり(その開発で両面ポリゴンを使うことが許可されている場合)、もう一つポリゴンの板を用意して、反対側に貼り込んだりすることで対応します。

通常ポリゴン 両面ポリゴン 違い

モデリング作業では、ついついポリゴンの数が多くなりがちですが、現行のゲーム機では使えるポリゴン数も飛躍的に増えたので、3DCGデザイナーのモデラーは以前に比べるとポリゴンの枚数を気にしなくてもよくなりました。ただ、ゲーム機のスペックが向上すれば、すぐに従来のそれを上回るゲーム内容が求められてくるのはこれまでと同様です。

3DCGデザイナーのモデラーによる細かな気配りの積み重ねによる作業がゲームそのものの質を向上させるといっても過言ではないでしょう。なので優れた3DCGデザイナーのモデラーは、必要最小限のポリゴン数でも目標になるイメージに近づけた形状を作るスキルを持っているわけです。また最近の「Unity」や「Unreal Engine」などのゲームエンジン環境での開発の恩恵により、モデラーは幾分の作業軽減できるところもあります。LOD(Level of Detail)という、カメラ(プレイヤー視点)からの距離に応じて、ポリゴンの密度を多くして作ったハイポリ3Dモデルと、ポリゴンをできるだけ節約して作ったローポリの3Dモデルを自動切替する機能がありますが、この機能のおかげでひと昔前のダイエット(使用ポリゴン軽減)指向の3Dモデル作業とは一線を画する時代になったといえます。

3DCGデザイナーのモデラーの使用ソフトについて

なお、3DCGデザイナーのモデラー担当の作業では、主に「Maya」「3DS MAX」などのソフトウェアがよく使われています。しかし、モデラー担当が勝手にソフトウェアを選ぶことは通常できません。デモ・ムービーなどのインタラクティブ性があり、ゲームの部分から切り離して作業できる部署以外は、通常、同じ種類の3Dモデリングソフトを使います。ただ、数十年と同じ作業環境で開発が行われるわけではないため、別のソフトウェアが定番になることは十分に考えられます。

02. テクスチャ作成

ここでの3DCGデザイナーの作業は、3Dモデルの表面に張り付ける画像を作成します。立方体の3Dモデルに石のテクスチャを貼り付けると、切り出した石ブロックの表現ができ、金属のようなテクスチャにすると金属製ブロックの表現ができます。(実際そのように雰囲気よく表現するには、「マッピング」による表面質感の表現や、照明による「ライティング」の設定が必要)

基本は「Adobe Photoshop」などを使って作っていきますが、最近では3Dモデルに直接描き込んでいくモデラーにも直感的に使いやすい「3Dペイント」ソフトを使うケースも多くなってきました。3Dモデルに対してそのまま着色していけるため作業能率の向上が望めます。また、これも近年のゲーム機の高機能化によって変わってきたところですが、従来からあるミップマップの技術も、以前はダイエット(V-RAM容量削減)のための手法でしたが、最近はモアレさせないための技術になっていることもあります。

ゲーム機に搭載されているグラフィックエンジンが、3DCGデザイナーの作業を少しは楽にさせている、つまりはこれまで難しかった表現を実現しやすくしているのです。

03. マッピング

ここでの3DCGデザイナーの作業は、テクスチャ画像を3Dモデルに貼り付けて色や質感を出すといったことを行います。マッピングには色や模様、質感を表現する「テクスチャマッピング」、ポリゴン表現だけで行うとポリゴン数が多すぎて大変なことになってしまうような細かな凹凸表現などを行う「バンプマッピング」、研磨された金属などに写り込んだ表現のための「環境マッピング」、惑星の雲の表現などの透かした表現ができる「透過マッピング」などがあります。最近では環境マップの作業も球面状に引き延ばされたものだけでなく、四面体(キューブマップ)でリアルに行われることも増えてきました。

04. ボーン

3Dモデルの関節などに用いる「骨」のことを「ボーン」といいます。人体や生物の骨をイメージすると理屈が分かりやすいのではないでしょうか。3DCGデザイナーのモデラー担当は、ボーンを3Dモデル内部の可動させたいところに設置していきます。当然ですが細かな動きや滑らかな動きをさせたいときはボーンの数も増えていくわけですが、これも増えすぎてしまうと実機動作させたときに処理が重くなってしまうため、3DCGデザイナーのモデラーは必要最低限に抑えながら作業していく必要があります。

05. リギング

モーション付けの作業で3Dモデルを部分的に動かす場合、回転させるための回転軸や曲げるための蝶番(ヒンジ)などを設置する、「リグ」を付ける作業になります。これはボーンを設置した部分にも必要に応じて行う必要があります。この作業を担当する3DCGデザイナーのことを「リガー」と呼びます。

よく、3DCGデザイナーのモデラー担当がモデリングの流れでリギング作業を行う場合がありますが、モーション的な動きに関するセンスが重要になってくるので、3DCGデザイナーで形状作成に長けたモデラーの立場よりも、動きを熟知したアニメーター(モーション)担当、またもしくはリギング(専任)担当の方が適任といえるかもしれません。よって、開発によっては3DCGデザイナーのモーション担当の人がリギングすることをすすめている企業もあります。

ちなみに、ボーン付けに関しては、3DCGデザイナーでもリガー担当よりモデラー担当の方が作業的に段取りが良かったり、優れた結果になることが多いと言われているようです。この辺は各開発によって3DCGデザイナーのスタイルが異なる部分でもありますので、一概に言い切ることは難しいでしょう。

まとめ

近年のゲーム機は昔のものに比べて格段の進歩を遂げています。恐らく、今後発表されるゲーム機もこれまで以上に処理能力や表現力を機能強化していき、今以上のクオリティの高いゲームを開発していくことが可能になります。そのとき一番恩恵をあずかることになるのは3DCGデザイナー、とくにモデラーではないでしょうか。しかしそれは同時に、常に新しい技術を習得するための勉強や情報収集を怠ることができない立場でもあるといえます。前述した「Unity」や「Unreal Engine」などのゲームエンジン環境での開発は、3DCGデザイナーのモデラーにもいろいろと技術習得の必要があるため、勉強量はさらに増えるでしょう。

もちろん、過去の技術を採用し処理負担を減らして表現することもできなくはありません。ただ、表現する質感向上の要求はゲーム機の処理能力強化に比例していくことになり、実際、消費者であるプレイヤーもそれを望んでいくことになります。したがって、ゲーム機が進歩しても3DCGデザイナー、モデラーをはじめ他の開発スタッフの負担はひと口に軽減されるとは言えないのも事実です。

しかし、その分プレイヤーを魅了するクオリティのゲームを作ることができれば、多くのプレイヤーから高い評価を得られ、3DCGデザイナーとしてやりがいを感じることができます。ぜひ、これからゲーム業界でのキャリアアップを考えているクリエイターは、モデラーという魅力ある仕事を視野に入れてみてはいかがでしょうか。

3DCGデザイナーについて包括的に知りたい方は、「3DCGデザイナーとは - 工程ごとに業務内容を詳しく解説」でも詳しく解説しています。こちらも参考にしてみてください。

この記事を書いた人

マイナビクリエイター編集部

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