デモリールとは?作り方のコツからポートフォリオとの違いまで解説
デモリールは、映像制作に関わる職種で転職活動をする際、これまでの実績をアピールするために提出する映像資料です。ゲームやアニメーションの制作に関わるクリエイターの転職活動にとっては、履歴書や職務経歴書に加え、自身の表現力やスキルを伝えるツールとして重要な役割を果たします。
ここでは、企業がデモリールの提出を求める理由やポートフォリオとの違いのほか、主にゲーム業界において、デモリールを作るうえで気をつけるべきポイントを詳しく解説します。
目次
デモリールは、これまでの実績を収めたダイジェスト版の映像資料
デモリールとは、これまでに携わった映像やアニメーションを動画にまとめた作品集のようなものです。
作品集といっても、企業に伝えたい部分だけを、ダイジェスト版のように短く編集したもの。転職活動では、候補者の実績やスキル、表現力を見るために提出を求められることがあります。
デモリールとポートフォリオの違い
クリエイターの転職活動において、履歴書や職務経歴書以外に必要な提出物といえばポートフォリオが挙げられます。デモリールもポートフォリオも、提出する目的は、応募する企業に対し、自身のスキルや表現力、これまで携わった作品の実績をわかりやすく提示し、評価してもらうことです。
クリエイティブ関連の職種での転職活動では、携わったプロジェクトの規模や内容以上に、スキルや発想力、そして、どのように作品に携わったかというプロセスが重要視される傾向にあります。そして、そのような数値化しにくい能力や実績は、デモリールやポートフォリオを提出することによって、応募先の企業にわかりやすく、客観的に伝えることができるのです。
では、デモリールとポートフォリオは、具体的に何が違うのでしょうか。それぞれの特徴から違いを見ていきましょう。
デモリール
デモリールは映像で、人や動物のほか、ものの動きに関する理解力、再現力などを伝えるための資料です。映像制作に関わる職種に応募する人は、立体的な形状や動き、視覚効果といった平面のPDFデータなどでは伝えにくいスキルを動画で見せる必要があります。デモリールは、立体的な表現や動的な表現において、自身の技術力や表現力を正確に伝えられる重要なツールなのです。
デモリールを提出する対象となる職種は、主にモーションデザイナー、アニメーター、モデラー、シネマティックアーティスト、エフェクトデザイナー、コンポジターなどです。
ポートフォリオ
ポートフォリオは静止画で、これまでに携わったデザインなどの作品のほか、クリエイターとしてのポリシーやビジョンをA4、またはA3サイズ程度の用紙にまとめたものです。以前はプリントアウトしてクリアファイルやバインダーで束ねた形式が一般的でしたが、最近ではPDFデータでの提出を求められることも増えています。
WebデザイナーやUIデザイナーなど、制作した実際のWebサイトを画面で見せたほうが実力を伝えやすい場合は、Web上に自身の作品をまとめて、そのURLを職務経歴書にも記載します。
ポートフォリオを提出する対象となる職種は、主にグラフィックデザイナー、イラストレーター、Webデザイナー、UIデザイナーなどです。
ポートフォリオについてより詳しく知りたい方は、「ポートフォリオとは - Portfolioの意味と3つの業界での使い方」も合わせてご確認ください。
デモリールはなぜ必要?採用担当者がデモリールに期待していること
モーションデザイナーやエフェクトデザイナーなど、動的な表現を生み出すクリエイターにとって、デモリールは自分のスキルをアピールする重要なツールであることは前項でご説明しました。では、人材を募集している企業にとって、デモリールはどのような意味を持っているのでしょうか。
企業側は、デモリールに以下2つの役割を期待しています。それぞれ詳しく見ていきましょう。
応募者のスキルや将来性を正しく理解するため
クリエイティブな職種の場合、デモリール以外の履歴書や職務経歴書、面接での受け答えだけでは、応募者にどのような表現力やスキルがあるのかを正確に把握することは難しいものです。企業にとってデモリールは、応募者のクリエイターとしてのスキルのほか、過去のものづくりを通して何を学んできたのか、さらにはその力を生かして入社後に何ができるのかを見極めるための材料の1つとして考えています。ゲームやアニメーションなどの映像制作に関わる職種では、デモリールが評価のほとんどを占める場合も少なくありません。
応募者の人柄や意欲を確認するため
ひと口にデモリールといっても、その形式や表現はさまざまです。正解があるわけではありませんが、自身のスキルや表現をデモリールとしてどう伝えるかで「応募者の人柄や意欲」が見えてきます。
たとえば、過去の作品をzipファイルなどに大量に入れただけのものが送られてきた場合、それを受け取った企業の担当者はどのように思うでしょうか。自己PRする気がない、意欲が低い、といったネガティブな印象を抱くかもしれません。スキルや実績を重視する傾向はあるものの、どんな人と一緒に働きたいかと考えたとき、人柄や物事に取り組む真摯な姿勢が重視されるのは当然のこと。デモリールの作成においても、受け手を意識して見やすく作られているか、自身のスキルを正確に伝えるための工夫はあるか、といった点も見ています。
以上のことから、提出するデモリールは実績やスキルがしっかり伝わる内容になっていること、採用担当者にとって見やすいものであることが大前提です。転職活動の際に、PDFデータやプリントアウトしたポートフォリオだけで応募することも可能ですが、より自分のスキルや意欲を伝えるためにも、動的な表現ができるデモリールを用意しておくことをおすすめします。
採用担当者に響くデモリールの作り方
デモリールは一種の作品集ですが、その目的は作品の魅力を伝えることではなく、制作に関わった自分の力量を伝えることです。したがって、デモリールを作るときは、企業の採用担当者の立場に立ってデモリールの見せ方を工夫することが大切です。
デモリールの最適な長さやサイズは?
デモリールの長さは、5分が目安です。応募者はできるだけ多くの作品を見てもらいたいと思うかもしれませんが、採用担当者は限られた時間の中で、応募者全員のデモリールを見なければなりません。あまりに長尺のデモリールだと早送りされ、肝心のところを見落とされてしまう可能性があるため、5分以内に収まるようにしましょう。
デモリールを見る採用担当者側にとって負担のない長さで、かつ見せたいもの、見せたい部分が明確に伝わる洗練されたデモリールであることが大切です。
デモリールに載せる作品の選び方は?
余計なものを削ぎ落として、採用担当者の目にとまるデモリールを作成するうえで意識したいのは、量より質です。これまで携わった作品数が多く、デモリールに入りきらない場合は、下記の点を重視して掲載する作品を厳選しましょう。
優先度の高い作品
- 自分の実力が存分に発揮されている作品
- 応募先の企業の傾向にマッチする作風の作品
デモリールを作成するうえで、作品の掲載順序も重要です。デモリールを最後まで見てもらえない可能性がありますので、最も見てほしい作品やインパクトのある作品のほか、応募した企業の作風に合っていて採用後のポテンシャルを感じさせる作品を映像の最初にもっていくといいでしょう。
デモリールにBGMは必要?
デモリールは映像だからといって、BGMのような音楽を入れる必要はありません。映像に合った曲を選ぶのは、意外と時間がかかるものです。また、デモリールにおいて、採用担当者が見ているのはアニメーションや映像そのもののため、曲を選ぶより動画のブラッシュアップに力を注いだほうがいいでしょう。
職種別・デモリールで押さえるべきポイント
デモリールの作成にあたって心がけたいポイントは、職種ごとに異なります。続いては、ゲーム業界における職種ごとのデモリール作成のポイントをご紹介します。
アニメーター・モーションデザイナーの場合
ゲームのシーンに効果的なエフェクトをつけたり、背景などを追加して演出したりするアニメーターや、ゲームのキャラクターにいきいきとした動きをつけるモーションデザイナーに求められるのは、キャラクターデザインに沿った正確な動きの表現です。
デモリールには、デフォルメされたキャッチーなキャラクターからリアルなキャラクターのほか、犬や猫といった動物まで、さまざまなキャラクターのモーションを載せて、細かい動きを描き出す力をアピールしましょう。
コンポジター・シネマティックアーティストの場合
コンポジターは、2Dや3Dの原画、実写素材などをコンポジット(合成)し、最終的にユーザーに届く画を作る職種、シネマティックアーティストは、ゲームのストーリーに挿入される、映画的で印象的な演出シーンを作る職種です。
どちらの職種も、ジャンルにとらわれない多種多様な映像表現ができる能力が問われるため、デモリールにはできるだけテイストの違う作品を盛り込み、幅の広さを見せることがポイントです。
エフェクトデザイナーの場合
エフェクトデザイナーは、ゲーム業界において爆発や炎のほか、煙、光といった特殊効果をデザインして、ゲームの世界を盛り上げるグラフィック演出を担う職種です。
特殊効果によって、華やかな映像になっているか、グラフィック表現が効果的に見せられているかが求められます。デモリールに、さまざまなグラフィック演出を盛り込んで、グラフィックソフトのスキルや演出力、表現の幅を伝えるようにしましょう。
モデラーの場合
モデラーは、3DCGの制作において、デザイナーが描いた2Dのキャラクターや背景、アイテムなどのイメージを立体に起こしていく「形状の作成(モデリング)」を担う職種です。モデラーは、動的な表現でなくてもスキルを伝えられるため、必ずしもデモリールの提出を求められるわけではありません。
成果物のポイントやこだわりを静的な表現だけで伝えにくいと感じる場合には、制作した形状を3Dで回転させた様子をデモリールとして動画にまとめて表現してもよいでしょう。
転職活動で一目置かれるデモリールを作成するには?
転職活動で一目置かれるデモリールを作成するには、応募企業の採用担当者に特にこだわった点、見てほしい点が伝わるよう、デモリールにテロップやキャプション(解説文)を挿入するといいでしょう。
たとえば、関わった作品が長尺で、そのうちの一部に自身が関わっている場合なども、デモリールの動画内にテロップやキャプションを加えて構いません。自分が携わった部分は「このモーションの髪の毛の部分」「この作品の開始1分程」といったように、わかりやすく伝える工夫をしましょう。
また、デモリールは、文章にしづらい細かい表現を見せるのに適していますが、デモリールに収めた映像の全体像が把握しづらいという点があります。紙の資料は一覧性が高く全体像を把握するのに適しているため、掲載作品をリストにまとめたような補足資料を添えるのもおすすめです。
補足資料は、単にデモリールのキャプションに入り切らなかった説明の追記としても有用ですが、補足資料に記載したこれまでの経験や能力などで採用担当者の目を引き、デモリールへの興味を高めてもらうことで、他者に差をつける効果が期待できます。
補足資料の形式に決まりはありませんので、Wordに箇条書きにするだけでも構いません。よりアピール効果を高めたい場合は、別途ポートフォリオを作成し、デモリールの画面をキャプチャしてコメントを追記することをおすすめします。
デモリールを送付する際の形式は?
デモリールが完成したからといって、油断するのは禁物です。作成したデモリールを企業に送付する際には、見る人の立場に立ってデモリールの閲覧形式を考えることが大切です。デモリールの代表的な閲覧形式には、以下の3つが挙げられます。
YouTubeに限定公開でデモリールをアップロードする
YouTubeには、指定されたユーザーだけが動画を閲覧できる限定公開設定の機能があります。こちらを活用してYouTubeにデモリールをアップロードし、限定公開のURLを応募先の企業に送付します。
ポートフォリオサイトを作り、Web上にアップロードする
自身が関わった作品をまとめたポートフォリオサイトを作り、その中にデモリールをアップロードする方法もあります。Webサイトを作る手間はかかりますが、後々データや情報の追加がしやすく、サイト自体をきちんと作ることで個性をアピールすることもできるというメリットがあります。
オンラインストレージなどにデータをアップロードする
作成したデモリールが大容量でメールに添付できない場合、オンラインストレージにアップロードすることで、先方と共有することができます。ただし、データが重すぎるとダウンロードに時間がかかって、企業の担当者に手間をかけさせてしまいますので、動画の中でも画質の劣化が少なく、容量が軽いMP4などのデータにしましょう。
まとめ
デモリールは、映像制作に関わるクリエイターの実力を示す、非常に大切なツールです。実際、デモリールの出来が合否のカギを握るといっても過言ではありません。自身のスキルや実績をただまとめるだけでなく、採用担当者が見やすいようにユーザー目線を意識することも大切です。
何を載せるべきかなど、デモリールを作成するうえで悩んだら、転職エージェントに相談してみることもひとつの手です。クリエイターの転職活動で他者との差をつけるには、デモリールでしっかりと自分をアピールするようにしましょう。