キャリアアップに役立つ!ゲームプロデューサーが読むべき本18冊
ゲームプロデューサーは、ゲームクリエイターにとってキャリアの到達点です。プランナー、プログラマー、サウンドなど、会社に入った時点の職種はさまざまですが、ひとたびゲームプロデューサーになったからには、総合的な知識と視点が求められます。かつて自分がその1人であった「クリエイティブ職の人々」を束ね、制作資金を確保し、時には対外的な広告塔の役目もこなしつつ、作品を売って会社に利益をもたらさなければなりません。高い地位には、それ相応の責任が課せられるのがゲームプロデューサーなのです。
そこで今回、ゲームプロデューサーとしてキャリアを築くうえで、おすすめの本を18冊紹介します。ゲームプロデューサーになったばかりのときは、これまでの仕事との違いに戸惑いを覚えることも少なくないでしょう。社内の状況と、作品のクオリティを上げる手法を理解するだけでなく、エンターテインメント業界のすべてを把握し、自分の作品と相対化しなければなりません。ぜひこの記事を通じて、自分にピッタリの本を探してみてください。
目次
ゲームプロデューサーとしての基本を押さえる本
01.安藤・岩野の「これからこうなる!」ゲームプロデューサーの仕事術
大手スクウェア・エニックスで『拡散性ミリオンアーサー』『CHAOS RINGS』などのゲームアプリを手がけた2人が、ゲームプロデューサーとして仕事をするには何を心がけていくべきかを語る本です。家庭用ゲーム機からスマートフォンへトレンドが移り変わる中、早い時期からスマートフォンアプリを手がけた同社で経験を積んできた著者たちだけに、貴重な言葉が並びます。
競争の激しい世界で生き残る心構えやプレゼンの手法、モチベーションを失った際に自分を見つめ直すポイント、ターゲット設定の大切さや世間の流行を取り込むやり方など、ゲームプロデューサーやゲーム業界の人間でなくても参考にできるところの多い本でしょう。
▼ 著者
安藤武博、岩野弘明▼ 発行
集英社クリエイティブ▼ 発売日
2017年5月
02.ゲームクリエイターが知るべき97のこと
『ゼビウス』の遠藤雅伸氏や『龍が如く』の名越稔洋氏、そして『Fate/Grand Order』の塩川洋介氏など、多数のゲームクリエイターたちがゲーム作りをテーマに多角的な視点で持論を語ります。
発想術から他職種とのコミュニケーションに役立つ会話術、求められるリーダー像までテーマは多岐に渡っており、ゲームプロデューサーのみならず、ゲームクリエイターとしての初心を見つめ直すのに効果的な1冊です。続編(ゲームクリエイターが知るべき97のこと2)も出ているので合わせて読んでみるのもいいでしょう。
▼ 編集者
吉岡直人▼ 発行
オライリージャパン▼ 発売日
2012年11月
予算や人員確保を行うために役立つ本
03.人が集まる、定着する!会社の採用
ゲームプロデューサーが直接社員を採用するわけではないにしろ、強力なチームを作るためには人材を見極める目が不可欠です。
この本は採用担当や中小企業の経営者に向けた本ですが、就職希望者が何を考えて企業を選ぶのか、彼らを育成し、定着させるにはどうすればいいのか……という人材確保に関する考え方や、メリットとデメリット、解決策を共に伝えて信頼を得る「両面提示」の手法など、本に記された大小さまざまな部分がゲームプロデューサーの参考になるはず。特に、小規模メーカーのゲームプロデューサーとして人材採用に影響力を持つのであれば読んで損はない本です。
▼ 著者
原正紀▼ 発行
すばる舎▼ 発売日
2015年1月
04.必ず結果を出す人の社内突破力 理不尽な12のカベの攻略法
ゲームプロデューサーになるまでの道程において、優れた企画やアイデアはもれなく採用される訳ではない……という現実に気づいているはず。時には、社内政治やその理不尽さと向き合うこともあるかもしれません。
ゲームプロデューサーとして自分のやりたいことをやるためには、企画そのもののブラッシュアップはもちろん、社内の人々にどう対処すべきかを知ったうえでプレゼンすることが大事。この考え方はチーム内にも応用することができ、部下のモチベーションをいかに上げていくか、社内政治に長けた人間をどうすべきかなど、ゲームプロデューサーが人員を上手く扱ってチームを引っ張っていくのに役立つ本です。
▼ 著者
小倉克夫▼ 発行
翔泳社▼ 発売日
2009年6月
ゲームプロジェクトの進行管理に役立つ本
05.世界一やさしい問題解決の授業
およそすべてのプロジェクトはスムーズには運ばず、時間が経つにつれて問題が噴出してきます。ゲームプロデューサーになる以前から、そんな実例に関して身をもって経験しているはずです。こうした問題を解決するための力を、わかりやすい例を通して学んでいくことが可能なのがこの本です。
「分解の木」「はい・いいえの木」(ロジックツリー)といった手法により、問題を見つけ出し、自分で考える力を身に付けられるため、ビジネスのみならず日常生活にも役立てることができます。問題解決の基本的なところについて語られているため、ゲームプロデューサーだけでなく、開発チーム全体でこの本を読むのもよいのではないでしょうか。
▼ 書名
『世界一やさしい問題解決の授業』▼ 著者
渡辺健介▼ 発行
ダイヤモンド社▼ 発売日
2007年6月
06.プロジェクト・コストマネジメント―PM必須知識 見積もりモデル・進捗管理手法
もともとゲームが好きでゲームプロデューサーを志した人なら、一度は、楽しみにしていたゲームが発売延期になってガッカリした経験を持っているはず。そんな思いを自分の顧客にさせないためにも、ゲームプロデューサーは進捗管理についての正しい知識を持っておかなければなりません。
この本では、プロジェクトにおいてコストを算出するために機能単位で工数を見積もる「ボトムアップ見積もり」や、プロジェクトの進行状況をコストの観点でチェックすることでプロジェクトの問題兆候をチェックできる「EVM」など、進捗・コスト管理の手法について知ることができます。こうした技能はよいゲームプロデューサーとして活躍するには必須のものなので、労を厭わず学んでおきたいところでしょう。
▼ 著者/翻訳者
パービッツ・F.ラッド/伊藤衡、福田裕一、増田博人▼ 発行
生産性出版▼ 発売日
2004年7月
07.アジャイルなゲーム開発 スクラムによる柔軟なプロジェクト管理
この本のタイトルにもなっているアジャイル開発とは、ソフトを小さな単位に分割し、実装とテストを繰り返していく開発手法。厳密な仕様を決めずに開発を進めていくため、機能の追加や変更が多いプロジェクトに向いているとされています。
そんなアジャイル手法をゲーム開発現場で用いた実例に加え、アートやデザイン、QAといった専門分野での活用法も書かれているため、ゲームプロデューサーとしては一読しておくべき本と言えるでしょう。また、ゲーム以外のソフトウェア開発関係者が読んでも役に立てられる本です。
▼ 著者/翻訳者
クリントン・キース/江端一将▼ 発行
SBクリエイティブ▼ 発売日
2012年8月
08.SCRUM BOOT CAMP THE BOOK
前掲の『アジャイルなゲーム開発 スクラムによる柔軟なプロジェクト管理』と一緒に読みたい本です。アジャイル開発の一種であるスクラムという手法について解説されています。スクラムとは、ラグビーで選手同士がスクラムを組むように、チームが一丸となって行動するやり方。優先順位が付けられた顧客の要望を、同じ場所にいるメンバーたちが開発し、毎日同じ時間に行われる会議で進捗を報告するのです。
この本では漫画が多く取り入れられているうえ、失敗例や解決法も書かれているため、スクラム入門に持ってこい。ゲームプロデューサーとしてはぜひ知っておきたい手法と言えるでしょう。
▼ 著者
西村直人/永瀬美穂/吉羽龍太郎▼ 発行
翔泳社▼ 発売日
2013年2月
09.クリティカルチェーン なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?
充分に余裕があったはずのプロジェクトがなぜか遅れていく。大規模開発に関わった人なら誰もが味わった苦渋の経験がなぜ起こるのか、そしていかにして解決すべきか。TOC(制約条件の理論)によるプロジェクトマネジメントを小説形式で学べる本です。
ギリギリにならないと取りかからない「学生症候群」や、仕事が確実に終わるように余裕を持たせたバッファがかえって期間を増大させる「パーキンソンの法則」がプロジェクトを遅らせていく。そんな中、プロジェクトリーダーと教授が開発プロジェクトを短縮すべく奮闘する様子は、ビジネス本でありながら読み物としても楽しむことができます。部下の動向を把握するだけでなく、ゲームプロデューサー自身もこの本で自分を戒めるといいでしょう。
▼ 著者/翻訳
エリヤフ・ゴールドラット/三本木亮▼ 発行
ダイヤモンド社▼ 発売日
2003年10月
スケジュール調整に役立つ本
10.問題プロジェクトの火消し術
プロジェクトが遅れた際の火消し(回復)について触れられた珍しい本。ゲームプロデューサーとして、社内だけで問題を解決できるよう、火消しのやり方を学んでおきましょう。
問題兆候の察知からリカバリープランの策定、顧客やプロジェクトメンバーを巻き込んでの解決といった具体的な手法に加え、火消しを行う際の精神論など、実際に問題が起きたときの指南書としても読めますし、この本で予習しておくのも1つの手でしょう。また、外注を使う際のコスト交渉についても触れられており、完全内製が珍しくなった現在の開発シーンでは役に立つところも多い本と言えます。
▼ 書名
『問題プロジェクトの火消し術』▼ 著者
長尾清一▼ 発行
日経BP社▼ 発売日
2007年7月
11.全面改訂版 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術
プロジェクトを円滑に進めるためには、ゲームプロデューサー自身のスケジュールも整理されていることが大事。ゲームプロデューサーがルーチンワークにかかりきりになっていたのでは、チームの動向や急なトラブルを把握することが難しくなるからです。
そんなときにこの本で個人用のスケジュール管理法「GTD(Getting Things Done)」を学びましょう。タスクが山積みになっている中、やるべきこととやりたいことを書き出し、系統立てて整理していくという考え方は、仕事以外のフィールドでも役立てることができます。本書ではGTDの基本中の基本から解説されているため、こうした手法に初めてトライする人でも安心。
▼ 著者/監訳者
デビッド・アレン/田口元▼ 発行
二見書房▼ 発売日
2015年11月
12.統合型プロジェクト管理のススメ
日本製ERP「ProActive E2」の開発に携わった著者が「脱Excel」を掲げてプロジェクト管理のやり方を説く本。生産性を上げ、空き要員を発生させないため、プロジェクト管理の国際標準である「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド」(PMBOK)の考え方をベースに書かれています。
ERPツールをほかのツールと連携させるなど、現場レベルで活用できるわかりやすいやり方が載っており、平易な語り口と相まってプロジェクト管理について学ぶには使いやすい本と言えるでしょう。著者はIT業界に長く身を置いている人物で、それだけにゲームプロデューサーとしては応用しやすい本です。
▼ 著者
梅田弘之▼ 発行
翔泳社▼ 発売日
2010年8月
ゲームをより面白くするのに役立つ本
13.「レベルアップ」のゲームデザイン 実戦で使えるゲーム作りのテクニック
ゲームプロデューサーになったなら、ゲームを面白くする工夫と無縁ではいられません。企画のプレゼンからUI、ゲームメカニクスの作り方といった基本を見直すことによって、ゲーム開発に対する考え方を改めて整理してみましょう。
「3つのC」と銘打ってキャラクター、カメラ、コントロール(操作)の大切さを説き、ディズニーランドにレベルデザインの極意を見るというように、読み物としても面白く、ゲームプロデューサーや開発チームが日々の業務に役立てられる実践的ノウハウも詰め込まれています。
▼ 著者/監修者/翻訳者
スコット・ロジャース/塩川洋介/佐藤理絵子▼ 発行
オライリージャパン▼ 発売日
2012年8月
14.ゲームテスト&QA
ゲームソフトの数が増える中、家庭用、スマートフォンアプリを問わずQAの役割は重要になっていくばかり。事前登録キャンペーンで多くの数を集めたものの、大量のバグが出たおかげで評判を地の底まで落としてしまった……となれば、ゲームプロデューサーの責任問題となります。
QAという仕事が生まれた歴史や、開発ステップ毎に異なるテーマを持ったデバッグの大切さ、シューティングやRPGといったジャンル毎のポイント、見つけたバグに優先度を付けて管理する手法といった話題を通して、QAについて知ることができます。QAについて専門的に触れられた数少ない本であり、ゲームプロデューサーとしてもQAに関して学んでおくことは無駄にはならないでしょう。
▼ 書名
『ゲームテスト&QA』▼ 著者/編集者/翻訳者
ルイス・レビー、ジェーン・ノバック/加藤諒/株式会社Bスプラウト▼ 発行
ボーンデジタル▼ 発売日
2012年4月
15.フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略
ゲームプロデューサーとして無視できないのがF2P(Free to Play、基本無料)という戦略。これからゲームプロデューサーとして活躍していくためには、フリー戦略について復習しておくのは意義のあることでしょう。
新たなビジネスと目されていたフリー戦略がこれまでにも使われていたことや、情報類がフリーになっていく宿命、そうした中でいかにして利益を上げていくかという不可避のテーマについて示唆を与えてくれます。ゲームプロデューサーがネイティブのフリーミアム世代でない場合、こうした本で知識を得ておくことが必要になります。
▼ 著者/監修者/翻訳者
クリス・アンダーソン/小林弘人/高橋則明▼ 発行
NHK出版▼ 発売日
2009年11月
ゲームプロデュースで役立つ本
16.ゲームの今 ゲーム業界を見通す18のキーワード
激動するゲーム業界を「ビジネス」「カルチャー」「テクノロジー」という3つの視点から俯瞰する本。流通のありようやクラウドファンディング、東南アジアのゲーム市場、シリアスゲームにe-Sports、VRなど、現代のゲーム業界でゲームプロデューサーが持っておくべき知識について、スペシャリストたちが解説を加えている珍しい本です。
ゲームプロデューサーとしては、改めて知識や業界認識を整理したり、畑違いでこれまで関わってこなかった分野について概観するような使い方ができるでしょう。
▼ 著者
徳岡正肇▼ 発行
SBクリエイティブ▼ 発売日
2015年2月
17.プロデュース能力 ビジョンを形にする問題解決の思考と行動
ゲームプロデューサーとは、単にスケジュールを管理する人ではありません。あるビジョンを掲げ、それを実現していくためにさまざまなことを考え行動できる人です。
とはいえ、闇雲に突っ走っているだけでは何も実現しません。この本を読んで「自分が抱いたビジョンは何か」「なぜ、そのビジョンなのか」「コアとなるテーマ、鍵となるアイデアは何か」「自分に何ができるか」「他の人には何をやってもらうか」といった自問自答をし、問題解決のためのロジックを組み立てていきましょう。そして人と出会いながら化学反応を起こし、ゲームプロデューサーとして周囲の人々を巻き込んでいくことも大切です。
▼ 著者
佐々木直彦▼ 発行
日本能率協会マネジメントセンター▼ 発売日
2008年12月
18.交渉は創造である ハーバードビジネススクール特別講義
ゲームプロデューサーが自分のビジョンを社内で通すためには、上司や役員などいろいろな相手との交渉が必要になります。ハーバードビジネススクールで交渉術を研究し続けてきた著者が提唱するのは、変化し続ける状況の中で、アドリブを効かせつつよりよい条件を引き出すこと。あらかじめ、いろいろな合意条件を考えておき、交渉の場では主導権を握り、承服できないときはノーと言いつつ代替案を提示する。ゲームプロデューサーは、ゲーム業界のゼネラリストであると同時に、交渉の達人でなければならないのです。
▼ 著者/翻訳者
マイケル・ウィーラー/土方奈美▼ 発行
文藝春秋▼ 発売日
2014年11月
まとめ
ゲームプロデューサーはクリエイターであると同時に管理職です。ゲーム関連の豊富な知識だけでなく、工程管理や組織運営など、ゲーム作りにおけるさまざまなスキルが求められます。単なる工程管理に留まることなく、内に秘めた情熱をもって周囲の人々を動かしていかなければならないでしょう。ゲームプロデューサーは、ゲームクリエイターとしてのキャリアの終着点にあるのも納得できる、難しい職種なのです。
だからこそ、本を読んだり人と関わったり、折に触れて自分の知識や仕事の進め方をアップデートしていくこともゲームプロデューサーには欠かせません。責任のある立場に就いたからこそ初心を忘れてはならないのです。今回紹介した18冊の本が、ゲームプロデューサーの情熱をかき立てるうえで助けになると幸いです。
この記事を書いた人
マイナビクリエイター編集部は、運営元であるマイナビクリエイターのキャリアアドバイザーやアナリスト、プロモーションチームメンバーで構成されています。「人材」という視点から、Web職・ゲーム業界の未来に向けて日々奮闘中です。