レスポンスの早いWebメディアの編集者はやりがいのある仕事 ―― ファミ通.com 豊田恵吾氏インタビュー

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Web・ゲーム業界のキーパーソンを特集する「Creator's File」Vol.13

第一線で活躍しているクリエイター達のリアルな声をお届けしています。自分とは異なった環境で働くクリエイター達の熱意や考え方を、ぜひ、あなたらしいキャリア形成のためにお役立てください。

ゲームメディアの最高峰ブランド「ファミ通」のWeb版「ファミ通.com」で編集長を務める豊田恵吾氏。紙媒体とは異なるメディアをどのように育てたのか?そして、これからWebメディアが進むべき方向を踏まえ、氏の求めるWeb編集者像を語っていただいた。

ゲーム情報総合メディア「ファミ通.com」とは

ファミ通.com ロゴ ── まず、ファミ通.comはどのように作られているのでしょうか?

豊田氏:ゲームメーカーからいただいたプレスリリースや、新作の発表会、イベントなどを取材した情報を元に記事を書き、Webサイトにアップします。また、編集者が興味を持ったゲームや出来事に対しては自主的に取材を行い、掘り下げた記事を書きます。ほかには、個別タイトルのタイアップ記事などもありますね。雑誌の『週刊ファミ通』の進行は1週間単位となりますが、ファミ通.comはWebなので、24時間365日、記事を書いて配信することができます。海外のニュースなどは、朝方や夜中に対応することが多いですね。

参照:ファミ通.com Webサイト

── 掲載内容はゲームがメインでしょうか?

豊田氏:はい。柱となるのは家庭でプレイされるような、コンシューマーゲームです。ですが、私が編集長になってからは、ゲームと親和性が高い「アニメ」や「声優」「おもちゃ」などの情報を多く取り入れています。また、ゲームのプラットフォームとしては「PCゲーム」や「アナログゲーム」も扱います。ただし、スマートフォンのゲームだけは「ファミ通App」というゲームアプリ専門の別媒体にお任せしています。

ファミ通ブランドとTwitterで集めた読者に情報拡散へ

── ファミ通.comの強みは何でしょうか?

豊田氏:『週刊ファミ通』が30年を超えた歴史あるメディアですから、ファミ通ブランド自体が、ゲームメーカーだけでなく、読者にも信頼感があると思います。そして、ゲーム以外の情報を提供することで読者を拡大し、コンシューマーゲームの情報をより多くの方に拡散できるサイトとなっています。これがゲームメーカーのオウンドメディアですと、特定のゲームタイトルに興味がある方しか訪れませんが、ファミ通.comにはゲームやアニメが好きな人が集まりますので、そのゲームタイトルを知らない人にもアピールできるチャンスがあるのです。

── ほかにも何か、Webならではの仕掛けはありますか?

豊田氏:Twitterでのファンづくりですね。私が編集長になったとき、ファミ通.comのTwitterフォロワー数は約18万でしたが、今では50万以上まで増えています。増やすためにしたことは、ゲーム以外の情報を扱うようにしたことで「フォローしていればいろいろな情報が入ってくる」と思わせたことです。また、新ハードの発表や海外イベントのときに現地から速報ツイートを行って、それに画像を付けたことも影響がありました。

ファミ通豆知識 おなじみのペンネームはどうやってつけられる?

ファミ通では、基本的に誌面に出る際、本名ではなく「浜村通信」、「ブンブン丸」といったペンネームで登場する。このペンネームは、自分でつけられる場合もあるが、大半は編集長や上司などが「思い付き」でつけているとのことだ。

ちなみに、豊田氏のペンネームは「時計じかけ豊田」で、少数派である自分で命名したパターン。本名の「とよだけいご」と、「時計」の「と」と「けい」をかけているそうだ。

── ライバル視しているメディアはありますか?

豊田氏:今はメディアよりも、個人がライバルだと思っています。SNSの浸透という状況もありますが、Webはおもしろいコンテンツが求められますので、仕込みに時間をかけて作った記事より、リアルタイムで盛り上がっている情報や、拡散したくなるような情報を記事にしたほうがPVを稼げたり、話題になったりします。これを「メディアじゃないよね」と、一言で片付けるのは違うと思います。

── ゲームメディアの、今後の方向性はどうなるのでしょうか?

豊田氏:正しいソースを基に情報を発信することが、私たちメディアの強みになると思います。ですが、そのソースをそのまま伝えるのではなく、オリジナルの企画をプラスしたり、別の視点で紹介したりすることで、より訴求力のあるコンテンツに仕上げることが大事ですね。

ファミ通ブランドだからこそ学べた経験とは

── 豊田さんの経歴を教えてください。

豊田氏:学校を卒業してからプログラマーになったのですが、そのあとアルバイトで週刊ファミ通編集部に編集補助で入り、1年後、ニュース班に配属されました。当時の『週刊ファミ通』は60万部販売している時代でしたので、物怖じせずに取材などをすることができましたね。

例えばプレイステーション2の発表会場で、生みの親である久夛良木さんに、ほかのメディアがなかなか声を掛けられない中、「ファミ通ですが、一言コメントいただけませんか」と取材をすることができました。この経験ができたのは、ファミ通ならではだと思っています。それからさまざまな部署を経験しつつ、現在のポストに就いています。

── なぜ、ゲーム情報誌を選んだのでしょうか?

豊田氏:元々ゲームが好きで、PCの記録媒体がカセットテープの時代から遊んでいました。当時はPCゲームを知らない人が多くて、紹介すると「楽しかったよ」ってよく言ってもらえたんです。そのときのうれしかった記憶が、編集者として仕事の原動力になっていると思います。

── ファミ通というと個性的な方が多いですが、尊敬している方はいますか?

豊田氏:現在「ほぼ日刊イトイ新聞」にいる「風のように永田(永田泰大)」さんです。レイアウトや原稿の表現など、すごく独特の考え方を持っていて、「どういう形が求められ」て「どう見せているか」を、常にイメージして編集をされていました。メンバーの得意・不得意という個性を活かしたチーム編成も参考にしています。

── 編集長クラスの方ではどなたかいらっしゃいますか?

豊田氏:ファミ通.comの先代編集長、酒井K太さんですね。webがそれほど普及していない時代でしたが、ゲームメーカーに対して「こういう見せ方でゲームの魅力を紹介しますよ」と、読者とメーカーの目線を持って提案されていました。

ゲームメディアという立場からの意見だけではなく、ゲームメーカーに嫌われるかもしれない意見を含めて、「発表されるゲームタイトルがどう見えるか?どう見せるのがベストなのか?」をきちんと伝えていました。だからこそ、ゲームメーカー、読者との信頼関係が構築できていたのだと思います。

編集長というポストを制限せず、みずからも取材から編集・執筆まで

── 編集長としての仕事の概要を教えてください。

豊田氏:編集長という肩書きは、ただの飾りだと思っていて、自分で取材をして記事も書くようにしています。編集長は、売上も含めてマネジメントやプロデュースをするべきなのですが、現場感覚を失ってはダメだと思っています。特に、私が担当したほうがスムーズに進むとか、より掘り下げられる記事は自分でやるようにしています。

あとは、発表された情報を旬のうちに届けたいので、常にネットの情報は見ていますね。ゲームメーカーがリリースを出さないこともありますので、なるべく多くの情報を集め、伝えるべきネタを見逃さずに拾い上げて記事にしていくことを意識しています。

── 編集職に必要なスキルは?

豊田氏:編集の定義にもよりますが、読者に伝えようとするコンテンツに強く愛情を持ってほしいと思っています。編集者が「どう伝えるか」によって伝わり方は違ってきますから、根底に愛がないと読者に正しく伝わらないと思います。あとは、いろいろなことに興味を持ち、広い視野があるといいですね。

── いっしょに働きたいと思う部下や同僚の人物像は?

豊田氏:個性がある人を求めています。少しぐらい不器用でも「私はこれが大好きで、この知識だったら負けません」という武器になるものがあったほうがいいと思います。

── 最後に、現在Webの編集職を検討している方へメッセージをお願いします。

豊田氏:Webの編集者は、365日24時間なかなか休む暇がありませんが、とてもやりがいがあります。例えば、Webは自分が発信した情報に対して読者のリアクションがわかりますので、反省を次に活かすことができます。もし、きちんと伝わらなければ、もう一回書くこともできます。紙媒体だとなかなかできませんが、Webメディアならできるのです。

その反面、炎上を含めて「これを書いたらどういうリアクションがあるのかな」という恐さもあります。そういった楽しさやつらさはありますが、とてもやりがいのある職種だと思いますので、興味がある方は飛び込んでみてください。編集の楽しさは体験しないとわかりませんから。

インタビューを終えて

豊田様にお話を伺って、Webならではの特異性を活かし、編集長という枠ではなく、読者に情報を届ける「編集」という仕事を心から楽しんでいることを感じた。これも、ファミ通という一大ブランドで、多くの伝説的編集者を見て学んできたことが背景にあるのであろう。

しかし、その背景はあくまで背景であり、「豊田恵吾」としてWebメディアの最前線で戦う“漢”の姿を見た気がする。氏をそこまで熱くする「Web編集者」とは何か?興味を持った方はその門を叩いてみてはいかがだろう。

この記事を書いた人

マイナビクリエイター編集部

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