KGIとKPIを設定するとWebディレクター人生はうまくいく
Webサイトのディレクション業務に、少しでも携わったことがある人なら、「KGI」と「KPI」という言葉は聞いたことがあるでしょう。今回は、このKGIとKPIとはそもそも何なのか、またWebディレクターにとってどんな意味を持つのか、どのように活用すべきなのかを解説していきます。
目次
KGIとKPIの意味を確認しよう
KGIとKPIは、ビジネス全般において使われる用語ですが、Webサイトを運用する上でも、それらの正しい理解と適切な設定は欠かせない要素です。特に事業会社のWebディレクターにおいては、その傾向が顕著と言えます。Webディレクターの転職・求人情報の職務内容に「●●をKPIとし、PDCAを回しながら改善を行っていただきます」などの記載が多いことからも、その大切さがうかがえます。事実、業界内におけるWebディレクターの正確なKGIとKPIの設定は、事業やWebサイトを成長させるための有効な手段とされており、難解なところもあるものの、Webディレクター冥利に尽きると言ってもいいでしょう。ではまずは、KGIとKPIの意味から確認していきましょう。
KGIとは - 事業やWebサイトの目標と達成度合いが一目でわかるもの
KGIとは、「Key Goal Indicator」の略で、日本語では「重要目標達成指標」と訳されることが一般的です。事業やWebサイトが最終的に達成すべき目標(ゴール)を、誰にでも理解可能な数値で表現したものを意味します。
ECサイトを運営しているなら売上金額が、リード獲得サイトを運営しているなら成約件数などが、これにあたります。また、その数値がどのような状況になれば目標達成なのかを定義する意味で用いられることも多々あります。この場合はKGIを単なる指標と設定するのではなく、「1年以内に売上金額10%増」などと、期間と目標値を明示する形で表現されます。そして、経営者やWebディレクターは、そのKGIを達成できたか否かを確認することで、戦略や施策の有効性を客観的に判断していきます。
KPIとは - 目標達成プロセスの進捗や達成度合いを数値で示すもの
KPIとは、「Key Performance Indicator」の略で、日本語では「重要業績評価指標」と訳されることが一般的です。KGIが最終的に達成すべき目標そのものを数値化したものであったのに対し、KPIはその目標を達成するために必要な各プロセスの進捗や達成度合いを計測するための数値指標を意味します。
例えば、ECサイトで「1年以内に売上金額10%増」というKGIが設定されていたとします。しかし、これだけではサイト運営の現場にとっては曖昧な数値で、KGIの達成に向けて何をすればいいのかが明確ではありません。Webディレクターは、KGIを構成する要素を具体的な施策レベルにまで分解し、様々な方法を組み合わせてKGIを達成しようとするのことが大切です。この分解された構成要素がまさにKPIです。
また、KPIもKGIと同様に、「3ヵ月以内に訪問者数を20%増」といった形で表現されることもあります。つまり、KGIを達成するために、各施策でどれだけの結果を出せばいいのかを定義する、ということです。KGI達成のための中間目標と言い換えてもいいでしょう。
参考例:ECサイトにおけるKGI、KPIの関係性と考え方
ただし、KGIの分解された構成要素全てが、KPIとして当てはまるとは限りません。これはある程度の経験があるWebディレクターでないと理解が難しいかもしれませんが、KPIを設定する際にチェックすべきポイントを下に挙げたので、ぜひ確認してみてください。KPI設定時の5大チェックポイントです。
- KGIとの関連性を証明できるか
- 効果検証が可能な数値目標となっているか
- 施策によって直接改善できるか
- KPIの数が管理できる範囲か(多すぎないか)
- KGIに対する貢献度が高いものを選んでいるか
WebディレクターにとってKGIとKPIを設定する2つのメリット
続いて、KGIとKPIを設定する理由について考えてみましょう。KGIとKPIの設定が、Webディレクターの業務にもたらすメリットは多々ありますが、ここでは大きく2つのポイントに絞って紹介します。
[Merit 01]
課題が「見える化」され、具体的な施策が立案しやすくなる
KGIとKPIが、「目標を数値化したもの」であるということが最大のポイントです。KGI、KPIを定点観測することで、目標と現状のギャップが「見える化」されるのです。目標と現状のギャップは、Webサイトが抱えている課題と言い換えることもできます。サイト改善が命題のWebディレクターが、これらの課題を明確に認識できれば、解決に向けて具体的、かつ集中的に施策を行うことが可能になるでしょう。つまり、効率的にWebサイトの成長を図ることができるのです。
また、競合サイトとKPIを比較することができれば、自社サイトが競合サイトに比べて優れている点、劣っている点も把握できるようになります。これもサイト運用の責任者であるWebディレクターにとって非常に重要なことと言えます。
[Merit 02]
KGI、KPIが施策の軸となり、PDCAが自然に回る
KGIとKPIを設定すると、PDCAサイクルを回しやすいというのも大きなメリットです。PDCAを回す中で、Webディレクターにとって最も難しいのが、正しい目標を選択し、施策を立案する「Plan(計画)」の部分です。しかし、KPIがしっかり設定してあれば、正しい目標として常にKPIを使用することができます。後は、このKPIを軸として、Webディレクターは施策を考えるだけでよくなります。
また、「Check(検証)」を行う際も、基本KPIとの関係について効果測定をするだけで問題ありません。PDCAサイクルがうまく機能しない例として、「Check(検証)」を怠ってしまうというケースが挙げられますが、KPIの設定はこの点も改善してくれるでしょう。
実績に結びつくKGIとKPIの設定方法(サイトタイプ別一覧)
KGIとKPIは、Webサイトの目的に合わせて設定しないと意味がありません。ベテランのWebディレクターでも、この部分を見落としている場合が多々あります。では、サイトのタイプ別に、KGIとKPI設定例を、簡単でありますが紹介していきましょう。ご自身がディレクションする担当サイトに照らし合わせて確認してみると良いと思います。
ECサイトのKGI、KPI設定
上図の参考例でも示しましたが、ECサイトの目的は、商品を販売し、売上を伸ばすことです。KGIには売上金額を設定するのが一般的ですが、そのためKPIには、売上を増大させるために必要な要素である、「カート完了率」や「訪問者数」「1人あたりの平均購入金額(購入単価)」などを設定するのが基本となります。また、訪問者数に関しては、流入経路や新規・リピートで分類し、より効果的なものに注力していくのがおすすめです。
多くのWebディレクターは、「CVR(コンバージョンレート)」をECサイトのKPIとして設定する例も多いと思いますが、ここではあえて除外しています。確かにCVRの改善は売上アップに対して大きな影響を与えます。しかし、CVRは様々な要因に左右されるため、具体的な施策に落とし込みづらく、効果検証の難易度も高い部分です。CVRを直接KPIとするのではなく、「カート完了率」「直帰率」など、CVRを構成する要素をKPIに据えた方が、よりわかりやすく、施策につなげやすいと思われます。
メディアサイトのKGI、KPI設定
メディアサイトの主な目的は、広告を見せる(クリックさせる)ことで、KGIは「広告収入」とするのが基本です。純広告にしろ、クリック単価のアドネットワークにしろ、広告収入を増やすには、より多くのユーザーにアクセスしてもらうことが絶対条件となります。KPIの第一候補は「PV(ページビュー)」や「訪問者数」になるでしょう。
ただし、これらの指標をKPIにすると、Webディレクターは「おもしろい記事を作る」「コンテンツをもっと有益な内容に見直す」といった施策に走り勝ちです。もちろんこれも大切なことですが、サイト設計に関する施策に活かすためには、もう何段階か、要素を分解したいところです。例えばPVを「1セッションあたりの平均PV」まで落とし込んでみることです。すると、訪問したユーザーの離脱を防ぐための「類似記事のレコメンドを挿入する」「レコメンドの位置を調整する」といった、具体的な施策が立案できるようになるでしょう。
コーポレート・ブランディングサイトのKGI、KPI設定
コーポレートサイトやブランディングサイトは、企業にとっての情報発信の場です。その目的は企業によって様々で、一概にこれと言い切ることは困難です。伝えたいのは「自社の信頼性」かもしれませんし、「新製品情報」「IR情報」「CSR情報」「採用情報」なのかもしれません。Webディレクターは、なぜWebサイトを運営しているのかをまずはしっかり現状把握し、KGIやKPIを設定する必要があります。一般論として挙げるなら、「ブランド認知度」「製品認知度」をKGIに設定したり、「特定のページ(IR情報を記載したページなど)のPV数」や「電話問い合わせ数(クレーム数)の減少数」をKPIに設定するケースが多いかもしれません。
リード獲得サイトのKGI、KPI設定
リード獲得サイトの目的は、見込み客情報を取得し、成約へと結びつけることです。通常、KGIは「成約件数」に設定します。KPIはECサイトとほぼ同様で、「フォーム完了率」「訪問者数」などになるのが一般的ですが、ECサイトと異なるのは、Webサイト単体で収益化ができないということです。したがって、資料請求や問い合わせで得られた見込み客の「成約率」を高めるという視点が必要となってきます。
フォーム完了率が高いにもかかわらず、成約件数が伸びないのであれば、成約率(成約に至るまでの過程)に問題があることに着目し、改善施策を打つ必要があります。Webディレクターは、運用するサイトの領域を超え、事業全体を把握し、成約率が高いユーザーの特徴を分析してKPIを定めていくのが、KGIを達成するためのポイントとなっていくでしょう。
SNSのKGI、KPI設定
SNSを運用する主な目的は、「ブランディング」や「購入意向の向上」などが挙げられます。KGIを設定するなら、「ブランド認知度」やSNS経由の「商品購入頻度」などになるでしょう。SNSのKGIで注意したいのが、測定をWeb以外で行わなければならないケースが多いということです。ブランド認知度はその最たる例で、SNS上のファンアンケートによって測定することもあります。
Webディレクターが追うべきKPIに関しては、「エンゲージメント率」やFacebookの「いいね!数」、Twitterの「フォロワー数」「投稿頻度」などを設定するのが一般的です。必ずSNS内で完結している数値指標を選択しましょう。
サイトタイプ別KGIとKPIまとめ
タイプ | KGI | KPI |
ECサイト | 売上金額 | 訪問者数、カート完了率、1人あたりの平均購入金額、直帰率 |
メディアサイト | 広告収入 | 新規訪問者数、リピート訪問者数、平均滞在時間、1セッションあたりの平均PV、広告クリック数、直帰率 |
コーポレートサイト | ブランド認知度、製品認知度 | PV、訪問者数、1セッションあたりの平均PV、電話問い合わせ(クレーム数)の減少率 |
リード獲得サイト | 成約件数 | 訪問者数、フォーム完了率、成約率、直帰率 |
SNS | ブランド認知度、商品購入頻度 | エンゲージメント率、いいね!数、フォロワー数、投稿頻度 |
適切なKGI、KPIの設定はWebディレクターのキャリアアップにつながる
最後に覚えておきたいのは、KGIとKPIを適切に設定、管理できる能力(PDCAを回せる能力)は、Webディレクターとしての評価と密接に関係しているということです。KGIがWebサイトそのものの目標であり、KPIがKGIを達成するための中間目標であることを理解できれば、当然の帰結かもしれませんが、KPIを達成すれば社内の評価も上がり、組織からの信頼(出世への一歩や発言権の拡大)にもつながります。
また、KGIとKPIは誰にでも理解できる客観的な数値指標なので、何よりも社外の人に実績をアピールする際にも利用できます。つまりは、いざ転職活動をすることになった場合にも、非常に有効に働くということです。これは営業職の転職における実績(売上予算に対する達成率)などと同様、そのWebディレクターがどれくらい成果にこだわって仕事をしてきたのかが一発で伝えられるものです。
KGIとKPIは、Webサイトの成長だけでなく、ご自身の今後のキャリア形成にも役立ちます。ずばり!「KGIとKPIを設定するとはWebディレクター人生はうまくいく!」と、胸に刻んでおいて間違いないでしょう。
この記事を書いた人
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