30代のWebディレクターがキャリアアップを目指して今すぐに実践すべきこと
30代のWebディレクターといっても、就いているポジションやバックボーン、スキル、実績はさまざまです。そこでこの記事では、30代のWebディレクターの、キャリアの現状から年収、抱えがちな悩み、具体的なキャリアアップの方法まで、全方位で解説していきます。「社内に最適なメンターがいない」「自分の働き方、スキルアップの方向性が正しいかわからない」と悩んでいる人は、ぜひチェックしてください。
目次
経歴や実績によって、スタッフ層から経営層まで - あらゆるポジションに存在する30代のWebディレクター
一口に30代のWebディレクターといっても、就いているポジションは多岐にわたります。なぜなら、20代からWebディレクターとしてキャリアや実績を重ねた人ばかりではなく、キャリアチェンジ組や転職組も多数存在するからです。
例えば20代から同一の企業、もしくは同一の事業形態(制作会社、事業会社など)の企業でWebディレクターとして活躍していた場合、30代前半でチームを率いるリーダー層に昇進していることが多いでしょう。また、優れた実績を残している場合や30代後半になると、部署のマネージャーや事業責任者になっている可能性も高いはずです。この場合、Webディレクターとは呼ばれず、WebプロデューサーやWebプランナーといった呼称になっていることもあります。企業の規模によりますが、中には経営者・役員として手腕を振るっている人も少なくありません。
一方で、20代のWebディレクターと同様に、スタッフ層で働いている30代のWebディレクターも珍しくありません。Webデザイナーやシステムエンジニアからのキャリアチェンジ組がその代表例です。20代後半から30代前半でキャリアチェンジを試みることが多いため、30代でもスタッフ層で働いていることが多いのです。また、20代からWebディレクターとして働いていたとしても、制作会社から事業会社、事業会社から制作会社など、異なる事業形態間での転職をすると、それぞれの事業形態に合わせたスキルや知識を学びなおす必要があるため、スタッフ層にとどまっているケースもあります。
そのほか、20代で得たスキルや経験を活かして、フリーランスとして独立していたり、起業をしていたりするWebディレクターも少なからず存在します。
30代Webディレクターが就いているポジション
年収は、スタッフ層であれば300〜400万円台、リーダー層は500万円前後が一般的です。部署のマネージャーや事業責任者になると、600〜800万円台も難しくありません。経営陣になっていれば、業績や規模によっては1,000万円以上の年収になっていくでしょう。
ちなみに転職サービスDODAの調査によると、30代のWebプロデューサー/Webディレクターの平均年収は467万円となっています。30代のWebディレクターは、スタッフ層からリーダー層にいるケースが多いと考えるのが妥当といえそうです。
Webプロデューサー/Webディレクターの平均年収
スキルと意思次第でどんなキャリアを歩むこともできる - 30代Webディレクターのキャリアパス
それでは、多数を占めると考えられるスタッフ層、リーダー層の30代のWebディレクターは、今後どのようなキャリアを歩んでいくことになるのでしょうか。想定されるキャリアパスを下の図にまとめました。
30代Webディレクターのキャリアパス
企業に所属していることを想定すると、スタッフ層にいる30代のWebディレクターは、基本的にリーダー層を目指して職務を遂行することになります。20代からその会社でWebディレクターとして活躍してきた同僚に追いつくべく、スキルアップや実績の積み上げを急ぐことになるでしょう。
Webデザイナーやエンジニアからのキャリアチェンジ組や、異業態からの転職組であれば、Webサイトの制作・運用に関する基本的なスキル・知識は備わっているはずです。足りないスキルや知識の補完で済みますので、それまでの職歴で培った経験を活かせば、実績の積み上げも容易です。リーダー層への昇進は、さほど難しいことではないでしょう。
一方、異業種からの転職組は、Web制作・運用に関するスキルや知識をスピーディに身に付けなければいけません。自分は新卒や20代前半のメンバーと横一線にあるということを自覚して、貪欲に勉強していきましょう。Webディレクターが20代のうちにすべきことは、「Webディレクターとして成功するために20代で実践すべきこと 」にまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
自分がリーダー層にいるなら、次のステップとしてマネージャー層や事業責任者を目指していくのが一般的です。30代前半でリーダーとして働いているのであれば、Webディレクター人生は順調に進んでいるといってもいいかもしれません。人材マネジメントのスキルを磨きつつ、数値実績にコミットし、キャリアアップを図っていくのが基本です。
ただし、ここまで紹介したキャリアプランは、あくまで一般的なもの。Webディレクターのキャリアには、抜擢人事の可能性が高いという特徴があります。スタッフ層で働いている異業種からの転職組が、一気にマネージャー層や事業責任者へ昇進することも珍しくありません。
また、人材の流動性が高いのもWebディレクターの大きな特徴です。スキル・実績次第では30代後半になっても転職は容易です。規模の大きな会社に転職して、年収アップを図ったり、異なる事業形態の企業に転職してスキルアップを図ったりする例も多く見られます。そのほか、独立・起業にチャレンジする人も多く、逆にフリーランスや経営者になってから、再度、企業に就職するというケースも珍しくありません。
他の職種では、30代になると徐々に自身のキャリアの先行きが見えてくるほか、転職も難しくなっていきます。しかし、Webディレクターはまったく別。30代になってもスキルと実績、そして自分の意思次第でさまざまなキャリアを構築することができるのです。
次のステップは何?スキル・実績をもっと強化したい!30代のWebディレクターがキャリアに対して抱える悩みとは?
ここまで見てきたように、30代のWebディレクターはそのポジションもバックボーンもさまざまです。そんな環境の中で、30代のWebディレクターはどのような悩みを抱えているのでしょうか。マイナビクリエイターの転職支援サービスを利用した人が挙げることの多い、代表的な悩みを紹介しましょう。大きく、「キャリア全般に関する悩み」と「スキルや実績・経験に関する悩み」に分類されます。
身近に参考になる先輩が少ないため正しいキャリアパスがつかめない
「キャリアアップのイメージができない」「キャリアのことを相談できる相手がいない」「自分の市場価値がわからない」という悩みは、30代のWebディレクターなら誰もが共感できるものではないでしょうか。
そもそも、Webディレクターという職種自体が、ここ20年ぐらいの新しいものであるため、Webディレクターとしてキャリアをスタートし、40代、50代になったという人は現状皆無です。しかも、前述したようにキャリア形成は個人の能力や意思に強く依存しています。スキルや実績が高い人は、若くしてマネージャー層や事業責任者になっていたり、転職・独立をして会社の外に出ていたりするため、自分と似た状況の人に今後のキャリアを相談するのが難しいのです。
キャリアアップに必要なスキル・実績が強化できない
Webディレクターとしてキャリアアップしていくには、制作・デザインといったクリエイティブ面のスキルのほか、PDCA、数値管理といった運用面のスキル、さらにはチーム、プロジェクトなどのマネジメントスキルなど、多彩なスキルが求められます。そこで多くの人が悩むのが「スキルアップのための時間が取れない」「細分化された領域のスキルしかない」「わかりやすくアピールできる実績がない」といったスキル・実績に関する悩みです。
30代になるとチームのマネジメントを任されることも多く、自身のスキルアップはおろそかになりがちです。また、企業の規模、形態によっては、狭い領域の業務しか担当できないことも多いため、ひとつの企業に長く勤めていると、「他社のWebディレクターに比べて、スキル・実績不足なのでは」と危機感を抱いてしまいがちです。
マネジメント・事業感覚を徹底的に強化すべし - 30代のWebディレクターが今すぐに考え、実践すべきこと
スキルと実績、自分の意思次第で、30代になってもさまざまな可能性を秘めているWebディレクターのキャリア。すべては個人の腕次第という表現がぴったりでしょう。そんな中で、30代のWebディレクターは、何に重点的に取り組んでいけばいいのでしょうか。
ここでは、リーダー層にいる30代のWebディレクターを対象に、全Webディレクターに共通する実践項目と、キャリアの方向性に合わせた重点項目を徹底的に紹介していきます。スタッフ層で取り組むべきことは、先にもご紹介した「Webディレクターとして成功するために20代で実践すべきこと」とほぼ同様なので、併せて取り組んでください。
30代の全Webディレクターがキャリアアップのためにすべきこと
まずは、リーダー層で働いている30代のWebディレクター全員が、キャリアアップの方向性にかかわらず、共通して取り組むべき注力ポイントを紹介していきます。
今しかできないこと
- 人材マネジメントに関するスキル・知識の獲得
- 担当した施策、プロジェクトの実績に対するコミット
- 各種最新技術の情報収集と積極的活用
リーダー層として働いている30代のWebディレクターが絶対におろそかにしてはいけないのが、「今しかできないこと」に分類した項目です。特に重要なのは「人材マネジメントに関するスキル・知識の獲得」です。リーダーの仕事は、部下の成果目標の達成やスキルアップを促し、チームとしてのパフォーマンスを上げることです。しかし、それまで成果物のクオリティや個人プレイで実績を上げてきたWebディレクターには、このことがハードルになるケースが少なくありません。
ポイントになるのは、自分流に固執しないこと。能力や仕事に対する向き合い方は人によってさまざまです。自分の考えを押し付けたり、自分の経験則を教えたりしても、部下が成果を出し、成長できるとは限りません。本を読んだり、先輩に相談したりしながら、リーダーとはなんなのか、上司とはなんなのかを貪欲に学んでいきましょう。また、セミナーや研修などに参加するという手もあります。突然、仕事の仕方や部下に対するコミュニケーション法が変わることに抵抗を感じる人も少なくないようですが、学んだことを積極的に試していく姿勢が大切です。
なお、リーダーになったとしても制作実務や施策の立案・実施からは離れられないのが一般的です。ただし、30代、リーダー層となったからには、より高いクオリティと精度が求められていると考えましょう。クライアントの意図を正確に汲んで、クリエイティブに反映する技術、重要度や効果を検討した上で施策を立案し、PDCAを回しながら確実に実績を上げる技術を磨いていくことが大切です。
年齢を重ねたり、リーダーになったりすると、会社内での発言力が高まるため、新たな技術やツールの導入が容易になるケースもあるようです。部下のスキルアップや実績の飛躍的な向上につながることもありますので、Webサイト制作やマーケティングに関する最新情報は積極的に収集し、活用していきましょう。
次のステップに向けた準備
- マーケット、事業内容に対する理解を深める
- 外部折衝、人脈作り
- 組織マネジメントに対するスキル・知識の獲得
「次のステップに向けた準備」に分類されているのは、おもに組織運営や事業運営に関するものです。リーダー層では、目の前の人間と数字の成長を促すことがおもな業務ですが、マネージャー層や事業責任者になると、人ではなく組織を動かす、自社の事業を成長させるといった、より上流工程の能力を求められるようになります。
また、大きなプロジェクトを担当する可能性も高くなっていきますので、外部折衝に関するスキルの向上や人脈づくりも進めておいたほうがいいでしょう。転職をしてスキルアップを図る場合にも、独立・起業をする場合にも、これらのスキルは非常に役に立ちます。
体験しておきたいチャレンジ
- 大規模プロジェクトのマネジメントと数値へのコミット
- 新規事業の提案と立ち上げ
「体験しておきたいチャレンジ」に分類されるのは、より上位のレイヤーに昇進したときや独立・起業するときに役立ち、転職時の評価もグンと高まるものです。チャンスがあれば、自分から手を上げて挑戦してください。特に「新規事業の提案と立ち上げ」には、機会がなくとも積極的にチャレンジしたいところです。マーケットや事業運営に対する理解度が飛躍的に高まるほか、新規事業が立ち上がれば、そのまま事業責任者への道が開けます。成功すれば経営者や役員にもなれるでしょう。たとえ失敗したとしても、独立・起業する際の大きな糧になりますし、転職時の評価も確実に高まります。
業種・志向別キャリアップのための注力ポイント
続いて、「制作会社・広告代理店」「事業会社」「企業・独立」の3種類に分けて、業種や志向別に、30代のWebディレクターが注力したいポイントとその理由を紹介していきます。
制作会社・広告代理店でのキャリアアップを目指すなら
注力ポイント
制作会社・広告代理店でのキャリアアップを目指すなら、Web制作・マーケティングに関する最新技術の情報収集・活用に力を入れたいところです。ニュースだけではなく外部のセミナーなどにも積極的に参加し、その技術がどのようなもので、どのような効果が期待できるのかをクライアントに説明できるレベルで、日々情報収集を行いましょう。そのほか、クライアントへのプレゼンテーションスキルの向上や実績へのコミットは必須といえるでしょう。
また、Web制作・マーケティングだけではなく、幅広い領域の人脈を構築することをおすすめします。
理由
制作会社・広告代理店のWebディレクターの仕事は、クライアントの課題を、Webサイトを用いて解決することです。クライアントに対して、最新の情報を提供し、最適な提案で成果を上げることができなければ、他社に仕事を奪われてしまいます。また、最新技術に対する知見が深く、活用できることは、クライアントからの信頼向上、自社の付加価値向上にもつながります。
人脈づくりが必要なのは、大規模プロジェクトをクライアントから依頼された場合に備えるためです。プロジェクトの規模が大きくなると、自社のスタッフだけでは賄い切れないケースもあります。そんなときに、すぐに有能なスタッフやパートナー企業を集められれば、社内からもクライアントからも、大きな評価を得ることができるでしょう。
事業会社でのキャリアアップを目指すなら
注力ポイント
事業会社でのキャリアアップを図りたい人は、第一に人材マネジメントに注力することをおすすめします。チームメンバーの能力を最大限に発揮させ、チームとしての成果を出すことに最大限の力を注いでください。
また、上位レイヤーとのコミュニケーションも重要な要素です。といっても、マネージャー層や経営層に媚びを売れということではありません。新規事業や業務改善の提案などを積極的に行い、自分が事業全体に関わる意思を持っていること、そのスキルを高めようとしていることを示すのです。最初はアイディアレベルの企画書や立ち話レベルでもいいかもしれませんが、最終的には事業計画書を作成できるようになること。また、上位レイヤーに対する最新情報の共有も大切な仕事のひとつです。
理由
事業会社のWebディレクターは、マネージャーや事業責任者へのキャリアアップを目指すことになります。これらの職種のおもな業務は、組織マネジメントと事業運営です。そのためにまずは、チームという小さな組織がどのように運営されていて、どのように成果を上げるべきなのかをしっかりと理解し、コントロールできるようになっている必要があるといえます。
新規事業や業務改善の提案などを通して、上位レイヤーとのコミュニケーションを取るのは、事業運営に関するスキルを高めるのが目的です。新規事業の提案をすれば、マーケットの状況や将来予測、収益とコストに対する考え方、事業計画書の作成方法といった知見を手に入れられます。また、業務改善の提案をすることで、会社全体の業務のしくみを幅広く学ぶことが可能です。
独立・起業を目指すなら
注力ポイント
独立・起業を目指すなら、外部とのコミュニケーションに徹底して力を注いだほうがいいでしょう。セミナーや異業種交流会に出席して、幅広く人脈を広げるのはもちろん、普段の業務でも外部との接触を多く設け、自分の名前や能力を知ってもらえる機会を作ることが重要です。
また、Webマーケティングやテクノロジーの分野で、何がトレンドになっているのか、どのようなプレイヤーが存在するのかは必ずチェックしておくこと。起業をするなら、該当するマーケットや競合プレイヤーの動向、さらにはパートナーになってくれそうな企業も調査しておきましょう。
理由
独立、起業と言葉は異なりますが、どちらにも共通するのは自分が経営者になるということ。会社を経営するために必要なのは売上です。そして、売上を立てるために必要なのがクライアント、つまり人脈なのです。フリーランスになったとしても会社を興したとしても、開業当初は身近な相手から営業をしたり、仕事を受注したりすることになるでしょう。そのためには、企業に属しているうちに、しっかりとした人脈と信頼関係を築いておく必要があるのです。
最新トレンドやマーケット環境を熟知しておくべき理由はいうまでもなく、独立や起業が成功するか否かを見極めるためです。
転職市場で求められている30代のWebディレクターとは?
最後に、転職市場で採用側の企業が30代のWebディレクターに求めることが多い、スキルや経験を簡単に紹介していきましょう。
転職市場において30代のWebディレクターに求められるスキル・資質
- Word、Excel、PowerPointが使いこなせること
- コミュニケーション能力が高いこと
- 自分の考えを客観的且つ論理的に表現できる能力
- 予算・数値管理、PDCAを回していた経験
- 最新の技術トレンド、市場トレンドの把握
- マネジメントの経験
「Officeソフトの使用スキル」や「コミュニケーション能力」に関しては、他の業種でも同様に求められるものなので、このページでは説明しませんでしたが、そのほかの項目は、このページで紹介してきた内容とぴったりと一致することがわかります。例えば、「自分の考えを客観的且つ論理的に表現できる能力」は、クライアントや社内、あるいは部下に対して、自分の考えをロジカルに伝え、納得させることができるかを問われているわけです。
つまり、ここで紹介した内容を確実に実践していれば、どのような企業でもWebディレクターとして高い評価を得られるということです。もちろん、独立・起業をした際にもメリットは大きいはずです。Webディレクターとして理想のキャリアを自分の手でつかみ取るために、このページで紹介した内容は頭に刻んでおいてください。
この記事を書いた人
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