Webディレクターはなくなるのか?実態と転職市場からの視点で分析

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Webディレクター なくなる?Webサイト制作の現場でそれぞれの案件の指揮、進行管理を担う「Webディレクター」。スムーズな制作進行に欠かすことのできないWebディレクターですが、近年「今後なくなる仕事なのではないか」という声も聞こえてきます。

Webディレクターがなくなる理由として、ほかの職種でもWebディレクターの業務ができることや、Webディレクター自身は実制作を行わないケースが多いこと、AIやSaaSの発達などによってWebディレクターの仕事を機械で代用できるようになること、などが言われています。

Webディレクターは本当になくなってしまうのでしょうか。この記事では、現在の転職市場の動向も踏まえて考察していきます。

そもそもWebディレクターとは

Webディレクターとは、Webサイト制作における指揮、進行管理を担う職種です。Webディレクターが担う仕事の範囲や役割は業界や企業によって少しずつ異なりますが、共通するのは、クライアントの目的にかなうWebサイトを制作するために、制作に関わる関係者をまとめ上げ、プロジェクトを円滑に進める舵取り役であるという点です。

Webサイトを制作するためには、クライアントにヒアリングをして意図をくみ取ったうえで明確な目標を立て、Webデザイナーマークアップエンジニア・ライターなどをアサインし、的確な指示を出しながら制作を進行する必要があります。そのためには、Webに関する技術的なノウハウだけでなく、ビジネスやマーケティングの基本的な知識や、制作に必要な予算・人員・時間などのリソースを管理するマネジメント力、チームをまとめるリーダーシップなども求められます。制作するサイトの規模の大小や、制作期間の長短を問わず、さまざまな制約条件の中でクライアントの目的を達成できるように最善を尽くすために、Webディレクターの担う仕事は非常に重要なのです。

もっと詳しく | Webディレクターについての記事

Webディレクターとは - 各業界におけるWebディレクターの役割

Webディレクターがなくなると言われている理由

近年、Webサイト制作にかかわる仕事は多様化や細分化が進み、テクノロジーの発達によってWebサイト制作の環境も大きく変わりつつあります。以前、「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」というレポートを野村総合研究所が発表して日本中に衝撃が走りましたが、Web業界の周辺でもしばしば「Webディレクターは今後なくなる職種ではないか」という声を聴くことがあります。

先述のようにWebディレクターは重要な仕事であるのにもかかわらず、なぜそのようなことが言われているのでしょうか。大きく3つのポイントから考察していきます。

ほかの職種での代用ができると言われている

Webディレクターが担うさまざまな役割の中で、最も大きい割合を占めるのは「制作の進行管理」です。そして、Webディレクターがなくなるといわれている理由の1つ目は「制作進行管理はほかの職種でも代用できるから、ゆくゆくはWebディレクターの仕事がなくなるだろう」という説です。

実際、会社によって、または案件によっては、Web制作の実作業に携わっているエンジニアやデザイナーなどが進行管理を兼任している場合もあります。とくに小さな制作会社や小規模の案件では、専任のWebディレクターを置かずに制作スタッフが実制作と進行管理の両方を担う場合も多いでしょう。

もし、制作進行管理のスキルを持っているデザイナーやディレクターであれば、「Webディレクターはいらない」「自分でやったほうが早い」と思ってしまうのかもしれません。

実際の制作を行わないケースが多い

Webディレクターの仕事はいずれなくなる、と言われる2つ目の理由は「Webディレクターはサイトの実制作を行わないから不要である」という説です。

前述のように制作スタッフがディレクションを兼任するケースもありますが、通常Webディレクターは、Webサイトのデザインパーツを作ったりコードを書いたりという作業にはタッチせず、ディレクション業務に徹します。そのため、最初からWebディレクターとしてキャリアを積んできた人の中には、デザインやコーディングの専門的なスキルを持たず、ゼロから1人でWebサイトを作ることができない人もいます。

Webディレクターが制作面において専門的なスキルや突出した強みを持っていれば、それをディレクションに活かすこともできますし、制作のリソースが足りないときにはディレクターが制作現場に入って自ら手を動かすこともできます。しかし、そういったスキルのないWebディレクターはある意味「つぶしがきかない」ため、今後立場が危ぶまれるとも言われているのです。

AIやSaaSの発達

Webディレクターの仕事がなくなると言われる3つ目の理由に、AIやSaaSの発達が挙げられます。

制作に関わるメンバーがリアルタイムで進捗状況を共有できるグループウェアや、タスクやスケジュールを見える化し、遅延などがあれば自動でアラート出しをしてくれるプロジェクト管理ツールなど、Webサイト制作の現場でさまざまなSaaSが活用されるようになりました。また、使用するツールによっては、AIが自動的にタスクやスケジュールを登録してくれたり、各メンバーにその日やるべき仕事を提案してくれたりするものもあります。

テクノロジーの進化と、それにともなう便利なツールやサービスの登場によって、制作進行管理の仕事はかなり効率化できるようになりました。そのため、Webディレクターのやるべき仕事がSaaSやAIにとって代わられることで、将来的にはWebディレクターという職種がなくなるのではないか、とも言われています。

Webディレクターは本当になくなってしまうのか?

Webディレクターがなくなってしまうと言われている3つの理由について解説してきましたが、本当にWebディレクターはなくなってしまう職種なのでしょうか?

実は、そんなことはありません。49%の仕事がAIに代替されると予想した野村総合研究所のレポートによると「創造性、協調性が必要な業務や、非定型な業務は、将来においても人が担う」とあり、「人工知能やロボット等による代替可能性が低い100種の職業」リストの中にはWebディレクターと比較的近い「広告ディレクター」が含まれています。

ここからは、「Webディレクターが専任である必要性」「高度な進行管理スキルの必要性」「高いコミュニケーション能力の必要性」という3つの観点から、Webディレクターという仕事がなくならない理由について考察していきます。

スムーズな進行は兼任だと難しい

進行 兼任 難しい

Webディレクターの主な業務である制作進行管理は、かなりの時間と集中力、精神力が求められます。そのため、ある程度の規模の案件において、制作とディレクションを兼任の体制にするのは危険です。

Webディレクターの仕事は、制作のスケジュール管理、成果物のクオリティチェックのみならず、クライアントへのヒアリングや報告、時には、無茶なリクエストを出すクライアントに対する納期や費用の交渉や、品質に関する制作スタッフへのフィードバックなど、非常に多岐にわたります。これらの業務をデザインやコーディングなどの制作業務と兼任で進めようとすると、時間や体力の問題で一方がおろそかになり、プロジェクトが破綻してしまう恐れがあります。

また、Web制作に関する技術やトレンドは移り変わりのスピードが速く、クリエイターやエンジニアに求められるスキルも年々上がってきているため、ディレクション業務を兼任しながらそれらにキャッチアップするのはかなり大変です。そういった面でも、Web制作の現場には専任のWebディレクターが必要とされています。

進行管理自体が重要なタスク

進行管理 重要タスク

コロナ禍の影響もあってWebメディアの需要は一層高まり、ECサイトやWeb広告などWeb関連の市場は拡大を続けています。そして、制作会社や企業内の制作部門、個々の制作スタッフも多忙な状況においては、的確な制作進行管理が成功のカギとなります。

案件数の増加や、一つひとつの案件の規模拡大により、一般企業のみならずWeb制作を専門とする企業においても、制作の領域をアウトソースする機会が増えています。1つの部署内で複数の案件が同時並行で進み、制作に携わるクリエイターやエンジニアもそれぞれ複数の異なる案件に携わっている状況においては、1つの案件の遅延や急な仕様変更、1人のスタッフのミスや機器のトラブルなどが全体に影響を及ぼしてしまうリスクが大きくなります。

そのため、状況が複雑になればなるほど、全体の進捗状況を把握し、クライアントと制作スタッフとの間で諸々の調整を行う専任のWebディレクターの重要性が増していくのです。そしてその重要性は今後さらに高まっていくと考えられます。

AIではできないコミュニケーションが必須

コミュニケーション

今後もAIで代替するのが難しいと考えられている「創造性、協調性が必要な業務や、非定型な業務」の最たるものが、その時々の状況を読み取って臨機応変に行うコミュニケーションです。Webディレクターの重要な役割の1つがクライアントや制作スタッフなどさまざまな関係者とのコミュニケーションであることも、Webディレクターの仕事が今後もなくならないと考えられる理由の1つです。

クライアントの目的にかなうWebサイトを作成するためには、先方の要望をヒアリングし、制作のリソースを考えながら最適解を導き出します。そしてそれを単に伝えるだけでなく、そのときの相手の状況や感情を読み取って、的確な伝え方をする必要があります。また、クライアントからの要望は、その意図や背景をわかりやすくかみ砕きながら、社内の制作メンバーそれぞれの業務量やこだわりを踏まえてしっかりと伝達し、方向性やスケジュールに関する共通認識を形成する必要があります。

定形的な情報共有はAIでもできるかもしれませんが、やんわりとお願いするのか、強く主張するのか等、相手と状況に合わせて言葉を選ぶコミュニケーションは人間にしかできないことです。そのため、Webディレクターという職業が完全にAIに代替されるとは考えにくいのです。

転職市場からみたWebディレクターの将来性

Webディレクターの求人数は近年増加傾向にあり、企業によるWebディレクターの需要も増えてきていると言えます。

とくに転職市場においてはWebディレクター経験者に対する需要が高く、事業会社や大手代理店からWeb制作を受託する中小の代理店や制作会社などを中心に、採用難が続いています。

コロナ禍におけるステイホームをきっかけに、その勢いを増したWeb制作の需要が伸び続けている状況に対して、必要とされるWebディレクター人材の供給が足りていない状況なのです。つまり、よりよい条件や経験を求めて転職を考えている現役のWebディレクターや、転職で新たにWebディレクターを目指したいと考えている人にはチャンスです。

Webディレクターとして転職するときのポイント

転職活動時に企業へのアピールポイントとなるのは、Webディレクター経験者であれば、小規模から大規模までさまざまなサイト制作経験があることや、デザインやコーディングなど自ら手を動かせるスキルがあること。また、サイト制作のみでなくコンテンツの企画制作経験がある、サイト分析等の分析業務から改善・企画提案までカバーできる、なども高評価につながるポイントです。

未経験者であっても、セールスや広報、マーケティングなどでの企画の経験や、施策のPDCAを回すための効果測定・分析・改善の経験があるなどの経験は、転職活動をするうえでの強みとなるでしょう。

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必要とされるWebディレクターになるための3つのポイント

Webディレクターは本当になくなるのか、なくならないのであればその理由は何なのか、Webディレクターという仕事の今後についてさまざまな角度から解説してきました。「Web制作の現場において専任のWebディレクターは必要とされており、Webディレクターの仕事は今後もなくならない」というのが結論ですが、そうはいっても時代の変化は速く、Web制作の技術やトレンドがどんどん移り変わっていくのも事実です。その流れに乗り遅れてしまうと、現場で機能しない、使えないWebディレクターと言われてしまうこともあるかもしれません。

そのような状況を避けるために、ここからは、今後必要とされるWebディレクターになるための3つのポイントをご紹介していきます。

マーケティング知見を身に付ける

マーケティング

1つ目は、サイトの分析や集客のための施策提案など、マーケティングに関する知見を身に付けることです。

クライアントがWebサイトを作る目的は、自社の広報や商品やサービスの宣伝・販促、Web上での製品・サービス販売(ECサイト)、顧客とのコミュニケーションを行うコミュニティなどさまざまですが、ターゲットユーザーにアクセスしてもらわなければ意味がないという点はすべてのWebサイトに共通しています。そのため、単にクライアントの要求通りのWebサイトを実現するだけでなく、数字に基づいてサイトの要件をまとめたり、集客のための施策を提案できたりするWebディレクターは非常に重宝されます。

Webサイトの制作を担う人材は増えていますが、KPIの設計やアクセス解析、改善提案といった、サイトのPDCAを一手に担える人材が足りているわけではありません。マーケティングについて学び、実際にサイトの改善や集客のための施策提案を通してアクセス向上の実績を作ることができれば、転職においても大きな強みになるでしょう。

現場の業務を経験してみる

デザイン コーディング

もしあなたがWeb制作の現場においてディレクター以外の業務を経験したことがないのであれば、デザインやコーディングなど制作に関わるスキルを学び、現場の業務も経験してみることをお勧めします

前段の「Webディレクターがなくなると言われている理由」でも触れたとおり、制作のスキルを持っていることはWebディレクターにとって1つの強みになります。人手が足りないときに現場の業務を手伝うことができるだけでなく、現場の業務を体験することで「どの段階までにどのような情報をクライアントからもらっておくべきか」「どの作業にどの程度時間を要するのか」「この段階での仕様変更が可能か否か」などの判断をより的確に下せるようになるのです。それによって、クリエイターやエンジニアとの調整がスムーズになり、制作プロセスや工数の管理も徹底できるようになります。

職場の中でWebディレクターと制作業務の2足のわらじを履き続けることは難しいかもしれませんが、可能な環境であれば社内で一時的な配置転換を希望する、業務外で個人のWebサイトを自力で作成してみるなどによって、現場感を身に付ける体験をしておくとよいでしょう。

情報に敏感になり、できる領域を拡大する

情報 アンテナ 領域 拡大

もうひとつのポイントは、世の中の動向に対してアンテナを張り、その中でWebのトレンドがどう変化していくのかを見極めながら、知識やスキルの幅を広げていくことです。Web制作の専門知識・スキルを磨くことはもちろん大切ですが、ニュースなどで経済や市場の動きをしっかりチェックし、それがWeb業界にどう影響するのかを先読みしながら、活躍できる領域を拡大していきましょう。

たとえば、コロナ禍によってECの需要が拡大し、動画広告の市場も伸びています。企業サイトへの動画コンテンツ掲載、企業SNSの運用などの需要も衰えません。そのため、ECサイト構築の経験がある、動画制作のディレクションができる、SNSマーケティングに詳しい、などはWebディレクターとして大きな強みになります。

興味の幅を広げ、Webメディアや書籍、セミナー等を活用して自主的に学ぶと共に、職場で新しい領域の仕事にチャレンジできる機会があれば、積極的に手を挙げて飛び込んでみてください

Webディレクターの肩書きにとらわれず、いろいろな経験にチャレンジしていくことが鍵

Webの発達は留まるところを知らず、今後もWeb制作に関連する新しい職種やスキルが次々と生まれ続けるでしょう。SaaSやAIも急速に進化していますが、人にしかできない複雑なコミュニケーションで関係者をまとめ上げ、スムーズにプロジェクトを進行しながらクライアントの求めるWebサイトを実現するWebディレクターという役割は、まだまだ世の中から必要とされています。

しかし、どれだけ需要が高いといっても、Webディレクターに必要とされるスキルや資質が今後もずっと変わらないとは言い切れません。

今後も必要とされ続けるWebディレクターになるには、「自分の業務範囲はここまでだから」と決めつけずに、視野を広げていろいろなことにチャンレンジしていくことが大切なのです。

この記事を書いた人

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