Webディレクターが事業会社で働きたいと思う5つの理由
Webディレクターといっても、所属する会社によって業務内容は大きく異なります。今回は、事業会社で働くWebディレクターの仕事の魅力とキャリアパスについて書きたいと思います。これから事業会社のWebディレクター(Web担当者、Webマスター)を目指している人、転職を検討している人はぜひチェックしてみてください。
事業会社へ転職したいと考えるWebディレクターはさらに急増中
── 事業会社とは事業会社とは、「他企業の依頼を受託しWeb制作物を納品することで収益を得ている制作会社」とは違い、「自社でWebサービス、Webメディアを運営し収益を得ている会社」を意味します。ECサイトを運営している企業がわかりやすいと思いますが、『ZOZOTOWN』を運営している株式会社スタートトゥデイや『BUYMA』を運営している株式会社エニグモなどが、代表的でしょう。Webメディア運営企業で言えば、当社マイナビも就職サイト『マイナビ2018』や転職サイト『マイナビ転職』などの自社メディアを運営していますので、自社メディアを持つ事業会社です。
事業会社のWebディレクターは、Webサイトを利用して、いかにビジネスを成功させるかが勝負です。会社の業績は、Webディレクターのサイト運用、改善の手腕にかかっているといっても過言ではありません。数字に責任を持つというプレッシャーは非常に大きなものではありますが、「なぜ世の中にWebサイトが必要なのか」という本質的な部分にまで踏み込める、非常にやりがいのある仕事と言えます。
それでは早速、なぜWebディレクターは事業会社で働きたいと思うのか、その理由を5つ、具体的にご紹介したいと思います。
1. ユーザーの評価を明確な数値で知ることができる
事業会社のWebディレクターは、日々「数値の改善」というミッションと戦っています。サイトの種類によって異なりますが、ECサイトであれば「CVR(コンバージョンレート)」「カート完了率」、メディアサイトであれば、「PV(ページビュー)」「セッション(訪問)数」といった「KPI(Key Performance Indicator・重要業績評価指標)」が、業務目標として設定されるのが一般的です。Webディレクターは、数値目標をクリアするために施策を行っていきます。
数値の改善という言葉だけを聞くと、「地味な仕事」「クリエイティブではない」と感じる人も多いかもしれません。しかし、それは大きな誤りです。むしろ、非常にダイナミック、かつクリエイティブな毎日が待っていると言えます。なぜなら、数値はWebサイトに対するユーザーやマーケットの客観的な評価だからです。事業会社のWebディレクターは、毎日の数値チェックを通してユーザーの気持ちやマーケットの動向を知り、Webサイトに反映させていくのです。
しかも、施策の結果は、さらにその数値にダイレクトに表れます。数値が改善されたならば、それは自分が立案した施策がユーザーやマーケットに評価された証です。「ユーザーと直接向き合って、みずからが施策を立案し、効果を検証できる」、事業会社で働くWebディレクターならではの、大きな魅力と言えるでしょう。
事実、マイナビクリエイターにご登録いただく中で、制作会社から事業会社に転職するWebディレクターの多くが、「数値を追いかけたい」「成果を知りたい」という志望動機を口にします。制作会社の場合、Webディレクターとユーザーとのあいだにクライアントが存在するため、ユーザーの反応を直接確認することは困難です。「数値(=ユーザーの評価)」と直に接することは、Webディレクターにとって一つの憧れでもあるのです。
2. 一つのWebサイトに継続的に関わることができる
事業会社のWebディレクターは、Webサイトの運営会社に所属するため、継続的に一つのWebサイトに関わることができます。長期間、同じWebサイトに携わることで得られるメリットはいくつかありますが、代表的なものを紹介していきましょう。
第一にあげられるのは、「中長期的な戦略を立てられる」ことです。1年後、5年後の担当サイトのあるべき姿を想定して、アクションプランを設計したり、先行投資を行ったりすることができます。
例えば、ローンチ直後のECサイトのWebディレクターをしていたとしましょう。サービス開始直後は、新規顧客の獲得が必須課題となっているはずです。1〜2年は新規顧客を増やすためのプロモーションやCVRの向上に奔走することでしょう。しかし、サービスがある程度市場に浸透した段階に至ると、重視する要素は変化するはずです。リピート顧客を増やすための、コミュニケーション手段を立案しなければならないかもしれません。信頼度を増すためのブランディング戦略も必要になるでしょう。このように、将来に向けて戦略を練り、Webサイトの成長を図ることができるのは大きな魅力です。
次に挙げておきたいのは、甘い考えといわれるかもしれませんが、「失敗を経験できる」ということです。よほど大きな失敗をしない限り、自分が立案した施策がもしマイナスに働いたとしても、その要因を明確にしておけば、それは次の施策にとって成功の種となります。失敗は、会社と自分にとっての財産だと考えることが大切です。
最後に、情緒的な面にも触れておきましょう。一つのWebサイトに継続的に関わることで、ほとんどの人がそのサイトに対して深い愛着を持つことができます。「あなたにとって担当サイトはどんな存在ですか?」と聞いた時に、「我が子のようなもの」と答えるWebディレクターも少なくありません。それだけ愛情を傾けられる仕事に出会えるのは、非常に幸福なことだといえるのではないでしょうか。
3. ビジネススキル、マーケティングスキルが身に付く
事業会社に就業するWebディレクターにとって、担当サイトは収益を上げるためのツールです。Webディレクターとしての業務は、すべて増収を目的にしています。しかし、これをマイナスととらえる必要はありません。クリエイティブスキルとビジネススキルを結び付けるための、大きなチャンスなのです。
KPIやKGIを連呼され、嫌気がさしてしまっているクリエイター気質のWebディレクターも多いかもしれませんが、一度どっぷりとビジネスの世界に浸かってみることをおすすめします。「自分が担当するWebサイトやサービスに、なぜ人はお金を支払うのか」「世の中にとってより有用なWebサービスはないのか」といった、本質的な部分にまで踏み込めるようになり、皆さんのクリエイティブスキルに磨きがかかるはずです。
また、収益を上げるという目的を持っている以上、Webマーケティングに関する知識やスキルも猛スピードで習得することができます。SEO、SEM、SNS、メール、IoT(モノのインターネット)など、Webマーケティングの手法にはさまざまな種類がありますが、幅広く身に付けたいと考えるなら、事業会社のWebディレクターほど、最適な職業はないでしょう。
4. 事業領域に専門性を持つことができる
会社が属する事業領域に関して、深い知識が得られることも、事業会社で働くメリットの一つと言えます。例えば、保険の比較サイトのWebディレクターになったとしましょう。すると、日々の業務を遂行する中で、自然と保険法や保険業法、金融マーケットに関する知識が身に付いていきます。そのほか、様々な保険会社の担当者と接することになりますので、保険業界に幅広い人脈が構築されていくはずです。
例として保険の比較サイトを挙げましたが、あらゆるサイトで同じことが言えます。不動産検索サイトのWebディレクターには不動産価格の動向や建物賃貸借契約に関する法的な知識が、転職サイトのWebディレクターには人材の動向などが、好むと好まざるとにかかわらず飛び込んでくるのです。本人の学習意欲にもよりますが、2年も同じ事業領域でWebディレクターをしていれば、専門家といわれるレベルに達することも不可能ではありません。
また、Webサイトがマーケティング媒体であるという特性上、どのようなサイトのWebディレクターをしていたとしても、景品表示法や広告ガイドライン、知的財産権(著作権)に対する知見が手に入ります。これは非常に有益でしょう。
5. キャリアプラン・人生設計を描きやすい
会社の規模にもよりますが、事業会社のWebサービス部門は組織体制がしっかりとしています。Webサービス事業全体の責任者がトップにおり、その下に個別のサイトを取り仕切るマネージャー層、さらに下にはチームリーダーやスタッフが属するという形が一般的かもしれません。
組織体制が整備されていると、キャリアプランを描きやすくなるというメリットがあります。自分が将来、どのような役職に就く可能性があり、どのような仕事をするのかを把握できるからです。マイナビクリエイターで取引をさせていただいてる企業の中でも、管理職研修などを充実させ、上位レイヤーへのステップアップを後押ししてくれる会社が多いのもそれを物語っています。
その他、女性が活躍している会社が多いのも、事業会社の特徴の一つと言えるかもしれません。これは、出産・育児休暇の制度が整備して、女性が働きやすい環境を積極的に作り上げている会社が、事実多いためでしょう。
── どうして事業会社を選んだの?
マイナビクリエイターを通して事業会社へ転職したWebディレクターの声
- 30代・制作会社からの転職
以前は制作系の会社でWebディレクターをしていましたが、「作って納品して終了」という感覚が強かったんです。納品後の運用を任せてもらえる会社もありましたが、数値レポートの提出のみで終わることがほとんどでした。受託系では鍛えられない「Webサイトを運用し育てる」というスキルが自分にとって必要だと考え、事業会社への転職を決意しました。 - 20代・未経験からの転職
Webをビジネスとしてとらえることができるイメージがありました。制作会社は作ったものを販売するというのが基本だと思います。今後、WebやアプリといったIT分野はますます発展していくはずで、その中で、クリエイティブとビジネスの視点を両方持つことが重要だと考えました。であればやはり、Web技術をどうサービスに活かしていくかを常に考えられる事業会社が自分にとってよいと考えました。 - 20代・制作会社からの転職
事業会社のWebディレクターの方が、ワークライフバランスを重視できると考えました。また、キャリアパスが明確な印象があります。より企業的というか。制作会社はクリエイティブで、職人的なイメージがあります。もちろん、全てのパターンにあてはまるわけではありませんが、家庭を持ちながら会社員として長く勤めるには、事業会社の方が自分には合ってると思いました。
事業会社のWebディレクターの本業は、マーケティングとサイトの改善
ここからは、事業会社のWebディレクターが日常的に行っている仕事について見ていきましょう。事業会社のWebディレクターが重視するのは、「マーケティング」と「サイトの改善」です。より多くの人を自社サイトに集め、訪れた人に喜んでサービスを利用してもらえるよう、日々業務に邁進していくのです。
アクセス解析・課題抽出
『Google アナリティクス』や『Adobe Analytics』といったツールを利用して、担当サイトのアクセス解析を行います。目的は大きく分けて2つ。1つは、PV、訪問者数といった、主要指標の定点観測です。アクセス解析ツールの機能を使って、日次レポートを配信しているWebディレクターも多いでしょう。
もう1つの目的は、「Webサイトが抱える課題の抽出」です。アクセス解析という意味では、こちらがメインの業務といえるでしょう。課題を探すときは、KPIに設定されている指標をいかに改善するかという視点で見ていくのが基本です。KPIがCVRなら、「直帰率が高くないか」「フォームへの流入数が少なくないか」「フォーム離脱率が高くないか」といった視点で、さまざまな指標を細かくチェックしていきます。
担当サイトの改善
アクセス解析によって課題が抽出されたら、改善するための施策を立案・実施します。「フォームへの流入数が少ない」という課題を発見したのであれば、「フォームへのリンクボタンの色を変えてみる」「キャッチコピーを変更してみる」といった施策が考えられるでしょう。
施策を立案するときに重要なのが、効果検証が可能な数値を設定し、「なぜ効果が見込めるのか」の仮説を立てておくことです。また、施策実施後は必ず効果検証を行い、成功・失敗要因を明確化して、次の施策に活かします。事業会社のWebディレクターはPDCAを回しながら、より多くのユーザーに利用されるWebサイトを作り上げているのです。
マーケティング施策の実施
サイトを訪れる人の数を増やすことも、事業会社のWebディレクターの重要な仕事です。そのために、さまざまなマーケティング・プロモーション施策を立案・実施していきます。Webディレクターが携わるおもなWebマーケティングの手法は、「SEO」「リスティング広告」「ディスプレイ広告」「SNS」「メルマガ」などがあげられます。
SEO、リスティング広告、ディスプレイ広告に関しては、施策立案、運用に高度な知識とスキルが必要になりますので、社内の担当者や外部業者、広告代理店などに発注するケースが多いでしょう。Webディレクターは、費用対効果の管理に徹するのが基本です。SNS運用とメルマガの配信は社内で行うのが一般的で、専任の担当者を置かず、Webディレクター自身が運用を任されることも多いようです。
制作ディレクション・進行管理
Webサイトに改善を加える際には、ワイヤーフレームや要件定義書の作成、制作スタッフへの指示など、いわゆる制作ディレクション業務も必要になります。Webサイトの改善に終わりはなく、同時に複数の改善施策を行うケースもありますので、常に制作ディレクション業務が発生していると考えていいでしょう。また、スケジュールの遅延は、数値進捗に悪影響を及ぼします。自分が発注者であるからこそ、しっかりとした進行管理が必要です。
その他(キャンペーン、商品開発、仕入れなど)
事業会社のWebディレクターの仕事は、上にあげたものだけにとどまりません。ECサイトであれば商品の入替え、商品開発、仕入れなどを担当することもあるでしょう。また、自社サイトを運用している以上、トラブルやユーザーからのクレームに対応するのもWebディレクターの重要な仕事の一つです。
事業会社で働くWebディレクターのキャリアパス
最後に、事業会社のWebディレクターにどのようなキャリアパスが想定されるのかを考えてみましょう。転職をする際は、直近の業務内容だけでなく、10年後、20年後にその会社に在籍していられるのか、もし在籍していたとしたら、どのような地位についているべきなのかといった要素を検討することも大切です。
社内の上位職へ
事業会社のWebディレクターにとって、最も一般的なキャリアパスが上位レイヤーへの出世です。スタッフで入社したなら、チームリーダーへ、現在、リーダー層にいるならマネジメント層へとステップアップしていきます。また、Web業界の通例として、人事評価を実績重視にしている会社がほとんどです。昨日までスタッフとして働いていた人が、翌日には事業責任者になっているという抜擢人事も珍しくはありません。
社内の他職種・他部署へ
事業会社は比較的規模が大きいため、営業、経理、人事、総務、広報といった、さまざまな部署が存在します。また、Webサービスの部門にも、デザイナー、ライター、フロントエンドエンジニア、システムエンジニアといった、自分とは異なる職種の人が存在します。畑違いの仕事をするには強い意志が必要ですが、自分が望めば、大幅なキャリアチェンジも不可能ではありません。
ビジネススキル、マーケティング知識を活かして独立へ
事業会社のWebディレクターが、会社で培ったビジネススキルやマーケティング知識を活かして、新たな事業を起こしたり、会社を立ち上げたりする例は少なくありません。事業会社では、ユーザーとの向き合い方、数値達成に対するコミットメント、Webサイトの収益構造などを幅広く学ぶことができます。経営者を目指す人にとっては、絶好の学習の場といえるでしょう。
まとめ
今回は、事業会社のWebディレクターの仕事とその魅力について、現場目線たっぷりで紹介してきました。繰り返し書いてきましたが、事業会社のWebディレクターにとって、最も重要なミッションは、担当サイトを運用して収益を上げること、それに尽きます。つまり「ビジネスとして」Webサイト作りに携われるのが最大の魅力でしょう。
「作って終わりでは物足りない」「Webサイトの成長していく姿を見てみたい」と考えているWebディレクターの皆さまは、ぜひ積極的に事業会社への転職を検討してみてもいいかもしれません。
この記事を書いた人
マイナビクリエイター編集部は、運営元であるマイナビクリエイターのキャリアアドバイザーやアナリスト、プロモーションチームメンバーで構成されています。「人材」という視点から、Web職・ゲーム業界の未来に向けて日々奮闘中です。