一流Webディレクターが知る5つのコミュニケーションレイヤーとコミュニケーション能力向上のための3ヶ条
コミュニケーション能力は、プロジェクトの管理責任者であるWebディレクターの最重要必須スキルです。「コミュニケーション能力=Webディレクターの力量」と言っても過言ではないでしょう。Webデザイナーやマークアップエンジニア、Webプログラマーなど、一緒に現場にいるクリエイターならその重要性をご存知だと思います。
もちろんWebディレクターに限らず、どの職種においてもコミュニケーション能力は重要です。しかしなぜ、Webディレクターは「特に」重要だとされているのでしょうか。
今回は、Webディレクターにコミュニケーション能力が重要視される理由をご紹介すると共に、コミュニケーションを5つの段階に表した「コミュニケーションレイヤー」について、また、仕事する上でコミュニケーション能力を高めるためにはどうすればいいか、その心がけについてお話できればと思います。
コミュニケーションが苦手だと感じる人も、「そんなのわかってるよ!」という人も、今一度、感覚ではなく論理的に作り上げるコミュニケーションについて考える機会になれば幸いです。
Webディレクターにコミュニケーション能力が「特に」重要な理由
Webディレクターに、コミュニケーション能力が重要だと言われる理由は、以下に尽きると思います。
求められたクオリティ、もしくはそれ以上のWebサイトを構築するため。それにはチームの団結が必要なため
これは、制作の「現場」を知っている人であればすぐにピンとくるはず。
Webディレクターのコミュニケーション能力が低い現場では、Webディレクターと制作メンバーの会話が、互いに一方通行になっていることが、多々見受けられます。メンバーへの制作指示も、極端に言えば「説明しなくてもわかるでしょ!」的な指示が乱発していることでしょう。このような状態が最初から続けば、競合他社より優れたサイト、ユーザーにフレンドリーなクオリティの高いサイトが生まれるわけがありません。
一方で、コミュニケーション能力の高いWebディレクターが管理する現場は、まさにその逆。どんなに細かいことでもチームメンバーと確認、共有を怠らず、議論も建設的に行い、プロジェクトを予定通りに進行させ、最終的には求められた品質以上のWebサイトを完成させることでしょう。
つまり、現場のチームワークも成果物の質も、Webディレクターのコミュニケーションレベルによって、全て決定してしまうのです。
転職活動の場面でも、コミュニケーション能力は、人材としての市場価値を高める
転職活動において、Webディレクターのコミュニケーション能力の高さは、人材としての市場価値の高さに通じます。コミュニケーション能力の高いWebディレクターは、社の内外を問わず企業から必要とされることを、採用担当者は熟知しているからです。
5つのコミュニケーションレイヤーを学び、チームを牽引しよう
Webディレクターは、制作メンバーに高品質な成果物を作ってもらう責任があります。ただし、初めから高品質な成果物がアウトプットされてくることは少なく、Webディレクターが制作メンバーと一緒になってブラッシュアップすることが多々発生します。
しかし、実際のプロジェクト現場は忙しく、Webディレクターは制作メンバーと満足な会話をする余裕がないのが現実です。朝から晩までパソコンでのドキュメント作業に没頭し、大半のコミュニケーションをメールやチャットなどの社内共有ツールに頼りがちです。
結果、Webディレクター歴の長いベテランになってくると、メンバーとの対面コミュニケーションに使う時間を「コミュニケーションコスト」として削る傾向が強まってきます。しかし、それではメンバーとの意思疎通が弱まり、細かい認識のズレを生み、トラブル発生要因が蓄積されることにもなりえます。
Webディレクターであれば知っとくべき!5つのコミュニケーションレイヤー
では、忙しい中でどうすればメンバーとの意思疎通を強められるのでしょうか。それには「コミュニケーションの効率化」が重要になってきます。そしてその効率化のために「5つのコミュニケーションレイヤー」という考え方があります。これは下位レイヤーから上位レイヤーへ遡ってゆくことで、より濃密で質の高いコミュニケーションができるというものです。あくまで大枠の考え方ですが、これを頭の中で理解しているだけでも違うでしょう。
第1レイヤー:挨拶
挨拶は、人間関係の入り口であり、コミュニケーションの基本。互いの存在を人として尊重していることの意思表示でもあります。作業が立て込み、忙しいメンバーに話しかけていいかと迷いが出たり、簡単な指示をするにもストレスを感じてしまう場合、実は、この簡単と思いがちな挨拶ができていない可能性があります。
コミュニケーションは、常に積極性を根本にします。「相手から挨拶される前に自分から挨拶する」ことを心がけてはいかがでしょうか。
第2レイヤー:雑談
本格的なコミュニケーションをとるための準備段階と言えるでしょう。決しておろそかにできない重要な段階です。ここでは、「聞き上手」になることが求められます。
もちろん雑談と言っても、業務に通じる雑談か、プライベートな雑談かによって変わってきますが、相手が「ポロッと口にすること」、つまりグチなどもそれに含まれると思いますが、今の仕事への向き合い方が表面化することも多々あり、大切なメンバーの本音を把握することにもつながるでしょう。
第3レイヤー:意見交換
どちらかが一方的に話し、片人が聞いているだけの段階です。情報共有とまではいきませんが、情報のやり取りは何とかできているので、「コミュニケーションがとれている」と錯覚しがちな段階です。これには気を付けなくてはなりません。
先述したように、一方的なやり取りをメールで済ませてしまったり、共有ツールを使って無言で会議召集したりと、相手の納得状況を確認せずにものごとを進行してしまうのも、この段階かもしれません。ただ、この段階が良くないというわけではありません。あくまで効率化のために一つの手段として活用することをおすすめします。
第4レイヤー:検討
「言いっぱなし」「聞きっぱなし」ではなく、相手の意見を互いに評価し合えるコミュニケーションの段階です。意見交換より意思疎通は図れていますが、そこから新しい発想や提案が生まれる一歩手前の段階と言えるでしょう。
ここからは、この状況を重ねることで自然発生的に議論が行われるのを待つのではなく、Webディレクターが意識的に何かしらの視点や論点を与え、建設的な議論へと発展させることが可能です。メンバーの意志や意向にアンテナを張り、向かうべき方向性を見える形に見出すことが重要となってくるでしょう。
第5レイヤー:議論
ゴールに向かっての意見をまとめ、目的達成の具体策を生み出せるコミュニケーションの段階です。Webディレクターの指示の意図を的確に受け止め、制作メンバーが自立的に問題解決を図るような状態です。一番建設的で、良いコミュニケーション状態と言えるでしょう。
もちろんこの段階が、常に続けば良いのかもしれませんが、そうとは限りません。Webディレクターが、第1レイヤーから第4レイヤーまで、丁寧に導くことでこの段階へたどり着くことができるでしょう。
この考え方では、下位から上位へ段階を上がるごとにコミュニケーションの濃密さが増していきます。
挨拶や雑談(第1、2レイヤー)のできない人間関係で、いきなり実のある検討や議論(第4、5レイヤー)はできません。下位レイヤーを飛ばして上位レイヤーで検討や議論をしても、それは制作メンバーから「意見の押しつけ」と受け取られ、「議論したつもり」「問題解決したつもり」になってしまうでしょう。つまり、挨拶や雑談もできない現場では、実のあるコミュニケーションには発展しないというわけです。
制作メンバーは、Webディレクターが期待している以上に、多様な問題解決能力を持っています。その能力を制作メンバーから引き出し、全員で共有し、能動的に成果に結び付けてゆくのがWebディレクターの仕事であり、使命(ミッション)です。メンバーの連携が空回りしている場合は、一度立ち止まって、コミュニケーションの下位レイヤーを飛ばしているのではないかと疑ってみてはいかがでしょうか。
コミュニケーション能力向上のための3ヶ条とは?
では、Webディレクター自身のコミュニケーション能力を高めるためには、どのようなことを心掛ければよいのでしょうか。ここでは、「コミュニケーション能力向上のための3ヶ条」をご紹介したいと思います。
第1条:Speed - 迅速なレスポンス
デキるWebディレクターは、メールでも口頭でも、メンバーからの問い合わせには迅速に応えます。すぐに応えられない原因は、「ドキュメント作成が優先だ、後で回答しよう」もしくは、「こんな重要なことを自分一人で決定できない」という「ためらい」が大きいでしょう。レスポンスが遅いと、制作メンバーは、待ちの状態が続いたり、自分への評価に不信感を抱き、最後には「このディレクターとは合わないかもしれない」ということになってしまいかねません。
決定は必ずしもWebディレクターだけでする必要はありませんが、結論はすぐに出すことが重要です。例えば、「決定材料が今は少ないので少し時間が欲しい。3日後にフィードバックします」とのレスポンスも立派な結論です。制作メンバーはそれで安心して仕事に励めます。
第2条:Simple – 丁寧なドキュメント作成
例えば、クライアントの修正要求を資料にして制作メンバーに渡す場合は、よりシンプルに分かりやすくする工夫が大切です。クライアントが送って来る修正資料は脈絡がなく、難解なケースが少なくありません。熟読すれば脈絡の前後を整理して理解できますが、それには時間がかかります。そんな資料をメンバーに丸投げすると、メンバーのフラストレーションが高まるのは必然です。
そこで、ディレクターが資料を整理・補足し、メンバーが「一読で理解できる」ように加工する必要があります。これはメンバーへの思いやりでもあり、その気持ちは自然と相手に伝わるので、ディレクターのコミュニケーション能力を高める訓練にもなります。
第3条:Care – 直接声をかける心配り
繰り返しになりますが、メール、チャットなどのコミュニケーションツールが発達した現在も、コミュニケーションの基本が対面会話にある事実に変わりはありません。指示をメールなどで出した後は、声かけも重要です。声かけをすれば、指示内容をメンバーが理解しているかの「さりげない確認」もできるでしょう。
まとめ
饒舌に話す、冗談を飛ばすなどの表面上だけのコミュニケーション能力はWebディレクターに必要はありません。重要なのは「チームメンバーへの思いやり」「仲間意識」です。それがコミュニケーション能力を高める最大のポイントになると言えるのではないでしょうか。
この記事を書いた人
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