転職で空白期間(ブランク)をマイナス評価にしない! 面接での答え方をキャリアアドバイザーが解説
転職における「空白期間」または「ブランク」とは、退職から次の就職までの期間を指します。
空白期間ができる理由は、転職活動をしていた、アルバイトをしていた、休養や療養をしていたなど人によってさまざまですが、期間は2~3ヵ月であることが多いようです。現在転職活動をしている方は、「空白期間が長くなると選考時の評価に悪い影響があるのではないか」と不安に思うことも多いのではないでしょうか。
この記事では、採用面接における空白期間の答え方や、空白期間があっても転職を成功させた人の事例を、キャリアアドバイザーが解説します。
キャリアアドバイザー プロフィール
Y.Yoshimi
ECサイト運営企業やゲーム開発企業、アプリ開発関連企業への転職支援を中心に担当。Web・ゲーム業界に特化した専門性と大手企業人事部との幅広いネットワークを持ち、常に最新の情報をキャッチアップ。スピーディーな対応で最適な求人を提案することを心がけている。
目次
転職において空白期間はマイナス評価になるのか?
転職での空白期間は、その長さや過ごし方によって、採用する側の受ける印象が変わってきます。多くの採用担当者は、前職の退職から長い空白期間のある応募者に対して「転職先が決まる前に転職するということは、何か特別な事情があったのだろうか?」という疑問を持つでしょう。ただし、2020年以降は新型コロナウイルス感染症の影響による事業縮小などで急な退職も増えてきたため、応募者の状況に配慮してくれる企業も増えてきた印象があります。
特定の職種に限ったことではありませんが、一般的に企業は中途採用者に対して即戦力を期待します。その人材がこれまでに培ってきたスキルや、さまざまな状況・問題に対応できる知識と経験、人脈といった知的資産を活用して、採用後すぐに責任ある仕事を任せたい。これが企業側のニーズでしょう。だからこそ、空白期間の長さや過ごし方が、採用する側の評価に影響するのです。
空白期間はどのくらいなら許される?
では、どの程度の空白期間であれば問題ないのでしょうか。基本的には2~3ヵ月程度であれば、面接時に深く追求されることはありません。なぜなら、転職活動には概ね2~3ヵ月程度の期間が必要であることを、企業も認識しているためです。ただし、空白期間が4ヵ月を越えると「何をしていたのか?」と聞かれてしまう場合もあるため、注意が必要です。
中途採用者に即戦力として活躍してほしいと考えている企業側は、応募者の履歴書に前職退職後の長い空白期間が見られた際に、以下のような疑問を持たざるを得ません。
- 仕事に対するモチベーションは維持できているか?
- 最新の市場動向や技術に関する情報に対してキャッチアップできているか?
- 人材としての魅力が乏しいからなかなか採用されないのではないか?
- 転職という非常に重要な事柄について、計画性が足りないのではないか?
- 自分を過大評価しているために採用条件とミスマッチが生じているのではないか?(正しい自己評価ができていないのではないか?)
しかし、これらはあくまで、応募者の具体的な事情を知らない段階における、一般的な「懸念事項」です。そして、企業側はこれらが的中しているのか否かを、面接の場で見極めようとします。そのため、企業側が心配するような事情がないことを応募者がきちんと説明し、面接担当者の懸念を払拭することができれば、空白期間の長さにかかわらず、マイナス評価を避けることができるのです。
空白期間が長くなってしまったら?理由別・面接での受け答えのポイントを紹介
ここまで、一般的に許容される空白期間の目安と、長い空白期間がなぜダメなのかという理由について解説してきました。しかし、空白期間は自分自身の意図にかかわらず生じてしまう可能性もあります。
ここからは、中途採用の選考過程において、とくに空白期間について聞かれやすい「面接」の場にフォーカスし、空白期間に関する質問への答え方のポイントを、理由別にご紹介します。もしご自身の状況に当てはまるものがあれば、ぜひ参考にしてみてください。
資格取得の勉強のための空白期間
資格を取得するためにスクールに通っていたことや、自主的に勉強していたことがブランクの理由であれば、ほとんどの面接担当者は「前向きな理由」ととらえてくれるでしょう。スクールに通ったり資格を取得したりといった事実は「勉強する意欲があり、それを形にする行動力もある証」という評価に繋がります。
つまり面接担当者は資格そのものより、応募者が空白期間にどのように過ごしていて、それが今後の仕事にどう繋がるかという点に注目しているのです。ですから単に「資格を取りました」「スクールで勉強していました」という事実を伝えるだけでは弱く、むしろ、そもそもなぜ勉強をしようと思ったのか、勉強する中で何を考えたのか、という点が重要です。取得した資格やスキルが今後の仕事にどのように活かせるのか、将来のビジョンまで具体的に語れるようにしておいてください。
ケガ・病気の療養のための空白期間
ケガや病気は本人の責任だけではありませんから、「体調管理がずさん」などと意地悪な見方をする面接担当者はほとんどいないと思います。ただ、長めの空白期間があることによって、クリエイティブのセンスや仕事の勘が鈍っていないかどうか、入社後の業務に支障がないかどうかという点は懸念されるところでしょう。
どのようなケガや病気だったのかによってできることは変わってくると思いますが、もし、療養中に仕事に関する情報収集をしたり、新たなスキルについて勉強するなど、何らかの努力をしていた場合は、そのことをアピールしましょう。そして、現在は回復し、仕事への復帰に何の問題もないのであれば、必ずそのことを明確に伝えましょう。
もし、採用後も定期的な通院や検査があったり、体調に関して配慮の必要なことがあれば、あらかじめ正直に申告しておくべきです。そのほうが企業もサポートの準備ができますし、あなた自身も安心して働くことができます。いずれにせよ、企業が確認したいのは入社後に業務への支障があるかどうかなので、業務上で何らかのデメリットが生じる可能性があるなら、具体的なリカバリー方法についても提示できるようにしておくとよいでしょう。
家族の介護・看病のための空白期間
家族の介護や看病をしなくてはならないといった事情で空白期間が長くなり、現在転職先を探しているのであれば、その家族がすでに回復した、もしくはほかに介護を引き受けてくれる人や施設が見つかったなど、仕事に復帰する環境が整ったことを意味すると思います。面接担当者にも、しっかりとその旨を伝えましょう。出産・子育てでのブランクの場合も、子どもに手がかからなくなった、預け先が見つかったなどの事実と、これからの意気込みを語りましょう。
なお、そうはいっても家族の急病で施設に預けられないなど、どうしても一時的に自分がケアをしなければならなくなる場合もあるでしょう。そういった場合に備えて、病児保育やヘルパーの利用登録をしている、在宅勤務ができる環境があるなど、対策ができている場合にはそれもしっかり伝えましょう。
そのうえで、「これからは全力で仕事に打ち込みたい」という意欲と熱意を示すことです。また、空白期間に、自分がスキルを維持するためにどのような努力をしていたのか、証拠(成果物や研究資料など)を添えてアピールすることで、ブランクによるスキル低下の疑念を払拭できるでしょう。
キャリアチェンジの準備(留学など)のための空白期間
空白期間と言っても「従来のキャリアに疑問を感じ、今後の人生への時間的投資をした」というような理由なら納得感があるものです。クリエイター職なら、たとえば「アメリカのWebマーケティング事情を研究するためニューヨークに留学していた」「世界的に通用するデザインを学ぶためフランスに留学していた」「クリエイティブの付加価値を高める統計学を勉強するため、ビジネススクールに通っていた」など、キャリアチェンジの準備にまとまった時間を費やしたという説明であれば、面接担当者の評価にも繋がるでしょう。
ただし、こういった説明を裏付けるためには、留学や勉強によって得られた成果を目に見える形で提示できることが必要です。たとえば、「この貴重な経験によってWebデザインがこのように進化した」と作品を見せたり、留学先でネットワークができた現地のクリエイターや企業について紹介したり、「統計学を学んだことにより、KPI分析においてこのような手法を身に付けた」といった資料を提示したりなど、応募している仕事の内容に関連付けながら具体的にアピールできるとよいでしょう。
空白期間に何もしてない場合でも印象を悪くしない答え方
上記のような理由がなく空白期間ができてしまった場合は、「転職活動に集中していた」ことを堂々と伝えましょう。自信がないと何を言っても言い訳やごまかしのように感じてしまうかもしれませんが、萎縮したり悲観したりしていても転職活動で得になることは何もありません。実際に、ブランクの長さに引け目を感じていた応募者が、そんな自分を受け入れ、ブランクができた理由を自信に満ちた態度で話せるようになった途端、転職が決まったというケースもあります。
ここでは、転職活動の空白期間について面接の場で質問された際にどう伝えたらいいのか、具体的な答え方を紹介します。
マッチングを理由とした答え方
従来のECサイトではなく、オウンドメディアのようにユーザーとのコミュニケーションを通じてLTV(顧客生涯価値)を最大化するようなECサイトを作りたいと思っていましたが、なかなか思いが通じず、ご縁がないまま転職活動が長期化していました。
御社が提供しておられるサービスは私の理想とする形態に近く、私のスキルがきっとお役に立てるものと思います。
ポイント
自分と企業とのマッチングが難しかったことを説明したうえで、この会社なら自分のスキルが発揮できるという点をアピール。
人材的価値を高める期間とした答え方
結局のところ、次の仕事に対して迷いがあったために採用に至らずブランクが長くなってしまったのだと思います。思い切って自分のスキルの棚卸しに時間をかけ、仕事に対する思いを整理することで、この仕事にかける自分の情熱を再確認することができました。
ブランクのおかげで精神的に強くなったと思いますし、自分にとっては必要な時間だったのではないかと前向きに考えています。
ポイント
「自分にはこのブランクが必要だった」ことを面接担当者に説明。そのブランクにより、人材的価値をより高められたことをアピール。
空白期間を思考転換期間とした答え方
正直な話、転職活動を始めた頃は、「自分を活かす」ことばかりを考えていたように思います。そのため意欲が空回りしてしまっていたのかもしれません。
しかし、業界研究や企業研究を重ねるうち、「自分を活かすとは、その会社で必要とされる人材になることだ」と気付いてから、どうすれば必要とされる人材になれるかを真剣に考えるようになりました。
御社は〇〇のような人材を求めていますから、私の〇〇の経験を活かして、貢献ができるのではないでしょうか。御社に必要とされる人材になれればと思います。
ポイント
ブランクを経たことによって、自分が大きく成長したことをアピール。面接では「会社に貢献したい」という意欲と、貢献できると考える根拠にアピールの主軸を置く。
空白期間を学習期間とした答え方
かねてから〇〇に関する専門的な勉強をしたいと思っていました。将来、〇〇をやっていくうえで、絶対に必要になると思ったからです。
しかし、働きながら勉強時間を捻出することには限界があると判断し、思い切って前職を離れました。
ある程度の勉強の成果を得るまでは転職すべきでないと考え、その結果、転職活動もあまり本格的には行いませんでしたが、勉強にもひと通りの区切りがつき、成果を発揮できる職場を探し始めました。
ポイント
「空白期間にまとまった勉強をしていたため、本気で就活していなかった」ことをアピール。
ただし、この主張を通すためには、面接担当者を納得させるだけの勉強の成果を提示することが必要です。
企業を探していたことを理由とした答え方
転職にあたって、〇〇の企業文化を持つ会社にしかエントリーしないと決めていました。いろいろな会社の企業研究をしましたが、御社のような会社はほかにありませんでした。
御社のような会社を探していたため、結果としてブランクが長くなってしまいました。面接の機会をいただいて心から感謝しております。
ポイント
「本当に転職したい会社を探していたためブランクが長くなった」という文脈で語ります。ただし、こだわっていた理由がありきたりのものではいかにも嘘くさくなってしまうので、オンリーワンのマインドや製品・サービスを持つ会社にだけ通用するテクニックです。
空白期間についてよくある質問にキャリアアドバイザーが解説
空白期間について面接で質問された際の答え方について、具体的にイメージできたでしょうか。ここからは、実際に転職希望者からキャリアアドバイザーに寄せられた転職の空白期間についての質問と、その回答をご紹介します。
Q.空白期間がある場合、履歴書や職務経歴書にもその間の過ごし方を書いた方がいいの?
空白期間の過ごし方について、履歴書や職務経歴書に必ず書かなければならないという決まりは特にありません。しかし、面接で質問されるであろうことを考えると、履歴書や職務経歴書にあらかじめ書いておくに越したことはないでしょう。たとえばアルバイトをしていたのであれば、何の仕事をしていたのかも具体的に記載します。また、職業訓練校やスクールに通っていた場合も同様に、どこでどのような勉強をしていたのかを明記しましょう。
履歴書や職務経歴書に経歴の空白期間があって、それに対して何の説明もなければ、相手にとっては不親切です。空白期間に行っていたアルバイトや勉強していた内容が、応募している仕事に直接結びつかない場合にも、どのように過ごしていたのかをしっかり記載することをおすすめします。
Q.空白期間にアルバイトやフリーランスで活動していた場合、それを面接で伝えるのはマイナスになるでしょうか?
空白期間にアルバイトやフリーランスでの活動、家業の手伝い等をしていた場合、転職活動でそこまでネガティブに捉えられることはないでしょう。しかし、その期間が数年など長期間にわたるようであれば、「なぜこれまで就職しなかったのか」「なぜ今になって就職したいと思ったのか」など、具体的な理由を聞かれる可能性もあります。
その際に具体的な理由が話せないと、「何となく」「消極的に」就職していなかったという印象を相手に与えてしまい、マイナス評価に繋がってしまう恐れがあります。就職していない期間が長期にわたる場合は、「仕事のペースを抑えることで、スキルアップのために時間を使っていた」「自分が本当にやりたいことを探していた」など、単に遊んでいたわけではなく自分にとって必要な期間であったことが相手に伝わるように、具体的な理由を説明しましょう。
空白期間があっても転職を成功させた方の事例
ここまでお伝えしてきたように、前職を退職してから空白期間があったとしても、採用する企業側にとって納得できる理由を伝えることができれば、転職活動でマイナス評価に繋がる心配はないでしょう。たとえ長めのブランクがあっても、そこに引け目を持たず面接時にも堂々と説明したことで、転職に成功した例は珍しくありません。
ここからは、実際にブランクがあっても転職を成功させた方の事例をいくつか紹介します。
アルバイト活動と並行して職業訓練校に通学していた場合(30代女性、空白期間8ヵ月)
Aさんは、小さい広告代理店で紙媒体を中心に手がけるグラフィックデザイナーから、8ヵ月のブランクを経て、クリエイティブ系ベンチャー企業のWebデザイナーへとキャリアチェンジを成功させました。前職の退職から転職までに空白期間が生じた主な理由は、Webデザインのスキルを身に付けるために職業訓練校に通っていたためです。
Aさんは前職を退職した直後から3ヵ月ほどアルバイトとしてグラフィックデザインの仕事に携わり、その後、アルバイト活動を続けながら職業訓練校に3ヵ月間通いました。職業訓練校在学中からマイナビクリエイターに登録しWebデザイナーとして転職するために必要なスキルを意識しながら転職活動を開始。希望にマッチした転職先をじっくり探した結果、登録から4ヵ月後に現在の勤務先への就職が決定しました。
採用面接では空白期間の理由を「職業訓練での勉強のため」と率直に伝えました。さらに、提出したポートフォリオで勉強の成果を示したことで、成長への熱意と学びの成果を評価され、採用の決め手となりました。
フリーランスとして活動していた場合(20代男性、空白期間1年3ヵ月)
前職のデザイン制作会社から独立してフリーランスのデザイナーとして活動していたBさんは、1年以上のブランクとコロナ禍という不利な状況において、転職を成功させました。Bさんは独立後1年ほど個人でデザインの案件を受託していましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で案件が激減。企業の後ろ盾があることの重要性を再確認し、転職活動を開始しました。
Bさんは最低限度譲れない条件を設定したうえで、多くの企業にエントリー。内定を獲得した中から転職先を選ぶという戦略を立てました。また、1年間のフリーランス活動によって生じた空白期間に関しては、企業側が下記のような懸念を持つであろうことを予測し、カウンタートークを用意しておくなどの対策を立てました。
Bさんは最低限度譲れない条件を設定したうえで、多くの企業にエントリー。内定を獲得した中から転職先を選ぶという戦略を立てました。また、1年間のフリーランス活動によって生じた空白期間に関しては、企業側が抱くであろう懸念に対して、実績をもとにしたカウンタートークを準備しました。
企業の懸念 | カウンタートーク |
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集団行動ができるか (組織に順応できるかどうか) |
フリーランスに転向したのはあくまで自身のスキルアップと仕事の幅を広げるためであり、集団行動が苦手だったからではありません。 前職でも社内のデザイナーやエンジニアと連携していましたし、フリーランス転向後もディレクション業務に取り組んでいました。 コミュニケーションをはじめ、集団行動における心配は特にありません。 |
最新のトレンドを キャッチアップできているかどうか |
コロナ禍であったことから自身が求められる人材になるため、ただ作るだけではなく、ユーザーが求めているものは何かなど、マーケティング視点をもって、最新のデザイントレンドをSNSや情報媒体から勉強していました。 |
これらの対策の結果、無事3ヵ月後に3社の内定を獲得し、その中から仕事内容・待遇ともに最も希望にマッチした会社に転職を決めました。
転職活動をスムーズに進めるためにプロのパートナーを活用
転職活動において、前職を退職してからの空白期間は2~3ヵ月程度が一般的であり、短いに越したことはありません。しかし、空白期間が長くなってしまったとしても、企業側の懸念を払拭できるような、納得感のある理由を伝えることができれば決して転職活動に不利にはならないでしょう。
もし、空白期間が長引いてしまっている、何となく空白期間が長くなってしまったという場合は、いまからでも遅くありません。自分自身が空白期間をどのように過ごしてきたのか、その期間が次の仕事にどのように活きてくるのか、これまでを振り返って意味付けを考えてみてください。そして、1つでも次の仕事に繋がるような勉強や情報収集などのアクションを起こしてください。
転職先が決まるまでのプレッシャーは精神的な負荷が大きく、空白期間が長引く中で転職活動へのモチベーションを保つのは誰にとっても難しいものです。もし1人の転職活動に行き詰りを感じているのであれば、豊富な求人を持ち、転職活動に対して的確なアドバイスをくれる転職エージェントを活用してみてはいかがでしょうか。きっとあなたの力になれると思います。