転職の面接で人事担当者に高く評価される自己紹介の仕方
転職の面接では、ほとんどのケースで一次面接に人事担当者が参加、もしくは人事担当者のみで対応します。人事担当者は、実務経験のある中途採用であっても、クリエイター職という職種を特別視せず、あくまで「当社という組織の一員にふさわしいか?」という基準で人材を評価します。
自分の職種や業務内容を理解している部門長であれば、あなたの力量はポートフォリオなどを見れば、ある程度読み取ってもらえます。しかし、人事担当者の見るポイントはそれとは異なり、人物・意欲・組織内での協調性・当社への関心の高さなどを中心に評価するため、アピールポイントを間違えると誤った印象を与えてしまいかねません。
そこで、クリエイター職が人事担当者の面接を受ける際に、特に注意したい「自己紹介」の面接対策を3つのポイントに絞って解説していきましょう。
目次
[Point1]
基本的なコミュニケーションを大切にする
冒頭で触れたとおり、人事担当者にとってクリエイター職は、決して特殊な職種ではありません。もちろん、業務上の特殊性は認めてくれますが、「企業という組織を構成する一員」であるという点では、営業職や事務職と同様の基準で採否の評価を行います。 まずは自社の一員としてふさわしいかどうか。仕事に対して意欲的か。そして、会社に帰属心を持ち、チームの一員として協調性を発揮できるかどうか。仕事がどれだけできるかはその次です。
例えば、以下のようなごく基本的なコミュニケーションがしっかり身に付いているかどうかは、人事担当者が非常に気にするところです。
- 話すときは背筋を伸ばし、相手の目を見て話す
- 斜に構えず、誠実な受け答えをする
- お辞儀の角度、名刺の受け取り方などのビジネスマナーを重視する
「自分はクリエイターとしてこれだけの実績がある。新入社員のような振舞いは今さら必要ない」 「自分はクリエイターだから、営業職のようにマニュアルライクなビジネスマナーは要求されない」 などと考えているとしたら、それは面接の場では大きな落とし穴となります。
Webディレクター職であれば、入社後はその会社の名前を背負って対外交渉をしなくてはならないシーンがあるでしょう。ゲームプランナー職なら、その会社の命運を左右する主力商品である「ゲームの顔」として対外的な折衝を行わなくてはならないシーンがあります。また、デザイナー職であれば、クライアントに対してデザインの意図や設計思想などを説明しなくてはならないシーンがあるはずです。そうしたシーンで、あなたはどのように振る舞うのか。人事担当者の関心事はそこにあると考えるべきでしょう。
「そういう大切な場なら、自分のポジションにふさわしい振舞いができる。しかし、転職の面接ではそこまでの必要性はないだろう」という認識を持った人もいるかもしれません。しかし、こう考えてください。
転職は自分の今後のキャリアを大きく左右し、人生に大きな影響を与える一大事。もちろんそれは会社にとっても同様で、自社にふさわしい優秀な人材を採用できるかどうかは、会社の将来を大きく左右する。
面接はそれが決まる重要な場です。この大事な面接の場にふさわしい振舞いができない人を、人事担当者は信頼することができるでしょうか?
マイナビクリエイターのキャリアアドバイザーも、「クリエイターとしてのスキルは問題なかったが、基本的なコミュニケーション能力に疑問を感じ、採用に踏み切れなかった」という人事担当者の話を、度々耳にしています。また、コミュニケーションマナーに大きな問題が見られる場合、スキルというよりも基本的な「人間性」そのものが疑問視されるケースも少なくありません。 基本的なことだからこそ、コミュニケーションマナーをしっかり守ることが重要なのです。 キャリアアドバイザーも、転職希望者の方と面談してみて「基本的なコミュニケーションマナーに問題がある」と感じた場合は、率直にシビアなアドバイスを差し上げるようにしています。
[Point2]
自分語りはバランスが重要
面接という場は、面接担当者が知りたいことを一方的に質問する場ではなく、あなたが自分を一方的に語る場でもありません。
面接担当者はあなたのスキルや意欲、仕事に対する姿勢、会社への貢献度を見極めようとしますし、あなたは、自分がこの会社に入ったらどんな活躍の場が与えられるのか、会社とともに自分がどのように成長していけるのかを見極めるべきでしょう。そのためには、常にキャッチボールのような形で情報をやり取りしながら、コミュニケーションが展開していくことが望ましいと思われます。
例えば、「自己紹介をしてください」と言われたとき、履歴書をなぞるように高校時代から話をスタートしてしまうと、面接担当者はあなたの話が終わるまで黙って聞いていなくてはなりません。面接担当者は履歴書の内容を面接前にチェックしているはずですし、自分がすでに知っている情報を長々と聞かされるのは誰にとっても決して愉快なことではないはずです。このような姿勢では会話が弾みにくく、面接担当者があなたについて知りたいポイントをつかめないまま時間だけが経過し、もどかしい印象を残してしまいます。
また、自己紹介では「自分をしっかり語れること」が必要不可欠なのですが、一方的に自分を語るのではなく、「人事担当者の関心事項に沿って」「適切な時間内で」簡潔に必要な情報を伝える工夫が必要になります。一般論として、クリエイターは「自分語り」を苦手とする人が多い一方、自分の興味が強い事柄が話題になると、つい話に熱中してしまう傾向があります。
面接担当者は、面接の場では応募者の話に合わせてくれることが多く、応募者のペースで面接が進行していきますが、「○○の話題で大いに盛り上がったから合格だろう!」と思っていたら、実は「コミュニケーションがあまりに一方的」と判断されて採用を見送られるケースも少なくありません。特に人事担当者による一次面接では、面接全体の時間や内容の配分を意識した自己紹介を心掛けてください。
[Point3]
過去→現在→未来のストーリーを意識した自己紹介を
では、人事担当者が特に知りたい関心事項を、適切な時間内に簡潔に伝えるにはどうしたらいいのでしょうか?一番シンプルな方法としては、以下のような過去・現在・未来の時系列に沿ってストーリーを構成することです。
- 自分は何をやってきたのか?(過去)
- 自分の強みとその根拠(現在)
- この会社で何をやりたいのか?(未来)
また、この流れは一般的な面接によく見られる「職務経歴の確認」「自己PR」「志望動機」「これからのビジョン」という流れに沿っていますから、自己紹介でこれらの主要項目に軽く触れておくことで、面接全体をスムーズに進行させるのに役立つでしょう。
自分は何をやってきたのか?
最初に挨拶をして名乗ったあと、職歴を簡単に振り返ります。
面接をしているのは人事担当者ですから、ここでは具体的なキャリアの内容を掘り下げず、前職のポジションや職務内容だけをまとめ、代表的な業績をひとつかふたつ盛り込めばいいでしょう。自分の性格や信念、趣味、座右の銘など、仕事に直接関係ない情報は冗長になるので省略します。
転職回数が多い人も、ここでは直近の経歴だけを述べればいいと思います。ただし、前職とそれ以前の職務内容が大きく異なる場合は、違和感を与えないよう簡単な説明を加えるべきでしょう。
自分の強みとその根拠
自分のアピールポイントを簡潔に述べます。
ポイントは、「今、自分は人事担当者と話をしている」ことを意識して、「ほかの応募者と比較した場合の『人材としての自分の強み』」をひとつだけアピールすることです。いくつもアピールポイントがあると話が冗長になり、インパクトが薄れます。
また、「なぜ強みといえるのか?」について、事実に基づく根拠を添えましょう。
この会社で何をやりたいのか?
今後の抱負、自分が実現したいキャリアプラン、会社に貢献したい内容などを具体的に述べます。ポイントは「この会社で」というところにあります。自分がどのような働きをすることで、この会社にどのように貢献でき、自分がどのように成長していけるのかということを簡潔にまとめましょう。
そのためには、企業研究の段階で、その会社のマインドや業務内容、業界内でのポジション、競合他社に対する強みなどをしっかり理解しておくことが大切です。
首尾一貫して「自分と会社との利害が一致しており、ともにWin-Winの関係を築ける。だから自分はこの会社の一員になりたい」という結末にたどり着けるまで内容を練り込んでください。
300文字にまとめてみよう。職種ごとの自己紹介例文
自己紹介の長さは、1分間から1分半を目安にしましょう。30秒ではちょっと短すぎ、2分以上話し続けると、スピーチのように一方的にしゃべり続けている印象を与えてしまいます。
テレビのニュース番組などでは、ニュースキャスターがスムーズに原稿を読み上げているときの1分間の文字数は、およそ350文字とされています。ただし、これは滑舌良くしゃべる訓練を積んだ、プロが原稿を読み上げるときのスピードです。私たちが普通に人前でしゃべるときは、1分間に300文字を目安にすればいいでしょう。なお、緊張すると人は早口になりがちです。原稿を棒読みするのではなく、相手の目を見ながら「言葉で伝える」ことを意識して、ややゆっくり話すようにしてください。
300文字で自己紹介をすると、例えばWebデザイナー(デザイナー職全般も同様)では、次の例文のようになります。
Webデザイナーの自己紹介 例文
○山○夫と申します。前職ではWeb制作会社で、デザイナーとして中規模ECサイトの運用を3年間担当してきました。得意分野はUXデザインです。ショッピングにエンターテインメント性を加えることでユーザー満足度を高め、クライアントからは「好感度ランキングで競合サイトを抜いた」と高い評価をいただきました。
御社は大手ECサイトを運営しておりますが、私が培ってきたUXのテイストを盛り込むことで、さらにCSを高められると思います。また、私も前職では経験できなかった多くのジャンルのアイテムを扱う総合ECサイトで幅広い経験を積ませていただき、御社とともに大きく成長していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。
これで約300文字です。 次にWebディレクター(ディレクター職)の例文です。
Webディレクターの自己紹介 例文
○野○美です。前職ではWeb制作会社でコミュニティサイトの立ち上げを担当しておりました。私はユーザーとのエンゲージメントを大切に考え、運営改善のための多くの提案をしてきました。採用された提案は、職務経歴書に記したような実績があります。しかし、前職では運営はほかの会社が担当していたため、提案の多くは実現できませんでした。
御社は自社メディアを運用し、ユーザーとのコミュニケーションを通じて独自のブランディングに成功しておられます。深い共感を覚え、活躍の場を求めて志望させていただきました。企業と個人とを結ぶ新しいコミュニケーションのあり方を、御社とともに追求していければと願っています。どうぞよろしくお願いいたします。
デザイナー職に比べ、「業界他社との比較」という視点が鮮明に表現されている点に注目してください。また、「提案力がある」というアピールポイントから、職務経歴書に興味を持ってもらうよう面接担当者を誘導しています。
最後に、ゲームプランナー(プランナー職)の文例をご紹介しましょう。
ゲームプランナーの自己紹介 例文
○岡○郎です。前職ではチーフプランナーのアシスタントとして、おもに○○というソーシャルゲームのイベント企画を担当していました。主要KPIの管理を任されていたので、データに裏付けされた企画提案には自信があります。また、ゲームプレイ分析に着目し、分析結果をイベントのタイミングに連動させるという提案が採用された結果、アクティブユーザー○%増に成功しました。
前職の会社は新規開発が少なく、ジャンルも限られていることから、意欲的に新タイトルをリリースしておられる御社を志望させていただきました。御社でリーダーシップに磨きをかけ、着実な収益力を持つゲームを開発できるプランナーになれればと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
ゲームプランナー職では、企画書などで「斬新な企画力」などをアピールしようという人が多く見られます。もちろんそれも重要ですが、人事担当者はそうした企画の力量は、評価する立場ではありません。そのため、人事担当者へのアピール材料としては「貢献の実績」「着実な収益」「データ解析力」の3点がほしいところです。
プランナー職は、クリエイター職の中では最も経営サイドに近い視点や価値観が要求されますから、自己紹介にもそういうものを織り込んでください。
まとめ
多くの転職希望者は、何らかの形で面接対策に取り組んでいます。しかし、「人事担当者をターゲットにした自己紹介」を準備しているクリエイターは少ないのではないでしょうか。
例えば、営業職や経理職などの職種では、ここまで人事担当者を意識する必要はないかもしれませんが、上記で説明したように、クリエイター職の面接では配属部署の上司(クリエイター職の理解者)と人事担当者とで評価のポイントが大きく異なるため、人事担当者を意識した面接対策が特に重要になってきます。
とはいえ、特に対応が困難というわけではありません。ここで説明したような「人事担当者のチェックポイントと価値観」さえ理解しておけば、対策は比較的容易なはずです。 また、一度入念に自己紹介文を練り込んでおけば、後半の一部を変更するだけで、いろいろな会社の面接に応用できます。容易ながら有効な対策ですから、ぜひ準備しておいてください。
注意点
なお、自己紹介の内容と、面接時の会話や質問の回答に矛盾がないように気を付けましょう。例えば「提案力がある」とアピールしておきながら提案内容の説明資料がない、「強い」とアピールした分野でちょっと突っ込んだ質問をされるとしどろもどろになるというような矛盾があると、取り返しのつかない大減点をされてしまう可能性があります。
マイナビクリエイターのキャリアアドバイザーは、転職希望者一人ひとりの事情や個性に合わせて自己紹介文の添削を行い、面接担当者に伝わりやすい話し方のトレーニングまでを一貫して徹底指導させていただいています。この記事を読んで、もしも自己紹介に不安を感じたら、私たちにお気軽にご相談ください。きっとあなたに役立つ実践的なアドバイスができるはずです。